新薬ローンチ、何を準備すればいい?製薬プロマネのための上市準備ガイド

新薬ローンチ、何を準備すればいい?製薬プロマネのための上市準備ガイド

新薬の承認申請が視野に入ると、製薬企業内では多部門による上市に向けた準備が本格化します。その全体を俯瞰し、製品の市場価値を最大化する戦略を立てる役割を担うのが、プロダクトマネージャー(プロマネ)です。しかし、初めて上市準備に携わる場合、具体的に何を行えばいいのか戸惑うことも少なくありません。
本記事では、新薬上市に向けた準備の全体像をイメージし、各フェーズにおける主なタスクや関係部門との連携ポイントを整理しました。プロマネ初心者の方でも実務に生かせる形で分かりやすく解説します。

▼Medinewでは、効果的なマーケティング戦略を立案するためのヒントを「プロマネTipsシリーズ」として公開しています。ぜひ併せてご覧ください。

【プロマネTips. 1】製薬企業のプロダクトマネージャーは、今何に困っている?/コラム
2022.09.07
マーケティング戦略
【プロマネTips. 1】製薬企業のプロダクトマネージャーは、今何に困っている?/コラム

上市準備のプロセスとプロマネの役割

プロマネは、単なる進捗管理を行う担当者ではありません。製品のライフサイクル全体を通して、その市場価値の最大化を目指し、戦略を立案・実行する重要な役割を担っています。プロマネの具体的なタスクは、企業や製品の状況によって異なりますが、一般的には以下のような活動が含まれます。

ここでは、製品の上市までのプロセスをいくつかのフェーズに分け、各フェーズで行うべきタスクをタイムラインとともに解説します(タイムラインは発売日を基準日として0カ月としています、図)。

※プロマネの役割は企業や製品領域によって異なるため、以下の内容がすべてのプロマネに該当するわけではありませんが、一般的な例として参考にしてください。

製品上市までのプロセスとプロマネの役割

<-24カ月~-18カ月>市場調査・戦略立案

上市準備のスタートは、市場調査と戦略立案から始まります。市場調査では、製品のターゲット領域での医療・患者ニーズ、競合状況、成長性などを分析し、製品の強みや差別化ポイントを明確にします。この情報をもとに、製品コンセプトや訴求点を明確にしていく流れです。

また、製品戦略では、ポジショニング戦略や価格戦略、販売戦略を定め、将来の収益予測やKOL(キーオピニオンリーダー)の選定も行います。

<-24カ月~-18カ月>にプロマネがやること

✔︎ 市場調査(ターゲット領域での医療・患者ニーズ、競合状況)
✔︎ 製品コンセプトや訴求点の明確化
✔︎ 将来の収益予測
✔︎ KOL(キーオピニオンリーダー)の選定
など

<-18カ月~-12カ月>承認申請準備

品目や内外の要因で時期は変わると思いますが、この時期に承認申請準備として、規制当局に提出する必要があるデータを整理し、医薬品申請前相談により、申請資料の方向性や留意点を確認します。臨床データやCMC(化学、製造、品質管理)情報などの書類を整備し、社内レビューなどを通じて品質を高めていきます。

新薬上市にあたっては、デジタルマーケティング推進の一役を担う新たなオウンドサイトを構想したり、今あるオウンドサイトのリニューアルや疾患啓発サイトを準備したりするのもこの時期ではないでしょうか。

<-18カ月~-12カ月>にプロマネがやること


✔︎ 医薬品申請前相談

  • 申請資料の方向性や留意点を確認
  • 臨床データやCMC(化学、製造、品質管理)情報などの書類を整備

✔︎ オウンドサイトの準備

  • 新たなサイトの構想、既存サイトリニューアル、疾患啓発サイトの構築(リニューアル)準備

など

<-12カ月~-3カ月>承認申請提出・審査対応、マーケティング・コミュニケーション計画

承認申請準備が整ったら、規制当局への申請を行います。申請後は、審査期間中に発生する照会事項や追加データの要求に迅速かつ適切に対応できる体制を整えることが重要です。薬事申請担当者や薬事部、品質保証部、安全性部門、研究部門などの関連部門との連携を強化し、スムーズな審査対応を目指します。

規制当局の審査が進む中で、製品上市に向けたマーケティング戦略を立案します。製品のポジショニングの最終決定、製品名やパッケージデザイン、広告をはじめ、さまざまな資材を制作します。資材としては、基本資材(インタビューフォーム、総合製品情報概要、適正使用ガイドなど)、医薬品リスク管理計画(RMP)資料、また、各種パンフレット、説明会用資料、インフォームドコンセント資材といったプロモーション資材の制作を行い、販促計画を具体化します。MR研修用資材の準備も重要です。また、医療機関やKOLとの連携を深め、学会発表や展示ブース出展、講演会などの計画も進めます。

<-12カ月~-3カ月>にプロマネがやること

✔︎ 医薬品承認申請

  • 照会事項などへの体制整備

✔︎ マーケティング戦略、販促戦略の立案

  • 製品のポジショニング明確化
  • 製品名やパッケージデザイン最終化
  • 広告制作
  • 資材制作(基本資材、RMP資材、プロモーション資材、MR研修用資材)

✔︎ 医療機関やKOLとの関係性強化
✔︎ 学会発表や展示、講演会などの計画推進
など

<-3カ月~-1カ月>販売開始直前の最終調整

販売開始直前は、これまで立案した戦略や計画を最終確認する段階です。プレスリリースや製品説明会、ローンチイベントなどの施策準備を整え、関連各部門との連携状況を確認します。また、全体のリスクマネジメントや問題点の洗い出しを行い、販売開始に向けて万全の体制を整えます。営業部門へのトレーニングも欠かせません。

<-3カ月~-1カ月>にプロマネがやること

✔︎マーケティング戦略、販促計画の最終確認
✔︎ローンチイベントの最終準備
✔︎販売開始に向けた準備最終化
✔︎MRトレーニング
など

<0カ月~数カ月>販売開始および初期市場フィードバック

正式な販売開始日を迎えた後は、ローンチイベントや販促キャンペーンを通じて、製品を市場に投入します。初期段階では、販売データや現場からのフィードバックをリアルタイムで収集し、課題を迅速に抽出・改善することが求められます。市場の反応をモニタリングし、必要に応じて戦略の調整を行います。さらに、製品のライフサイクルマネジメントとして、追加適応症の検討や製品改良、次期プロモーション施策の計画を策定し、市場シェア拡大につなげます。

<0カ月~数カ月>にプロマネがやること

✔︎市場からのフィードバックにより課題を迅速に抽出・改善
✔︎戦略の調整
✔︎シェア拡大に向けた時期プロモーション施策の計画
など

新薬上市準備の流れを把握しておくことは、製品価値最大化の第一歩

新薬上市におけるプロマネの主な役割は、製品の承認申請準備や審査対応、プロジェクトマネジメントにとどまりません。市場調査やブランド戦略、マーケティング施策、販売後の市場フィードバックに基づく戦略修正など、製品の価値を最大化することが求められます。各フェーズでのタスクを的確かつスケジュール通りに実行し、関連部門と密接に連携することで、スムーズな製品上市が実現できます。そのためにも、まずは本記事で紹介したような全体像を把握しポイントを理解しておくことで、適切な業務の見通しや優先順位付けにつながります。
上市準備はタイトで複雑なプロセスです。製品価値の最大化に向けて早めに準備し、一歩ずつ着実に進めていきましょう。