#6 医師の「忙しい」はホントなの?|Dr.心拍の「製薬本社にちょっと言いたい」

#6 医師の「忙しい」はホントなの?|Dr.心拍の「製薬本社にちょっと言いたい」

こんにちは。勤務医として臨床に携わりながら、専門的知見を生かしてさまざまなヘルスケア企業とお仕事をしております、Dr.心拍と申します。普段医療メディアやSNSで発信をしております。臨床医が本音で語る連載シリーズとして、製薬企業の情報提供や、医療現場との関係性について感じていることをお話しさせていただきます。

前回は、治療の選択肢やリスクの話し方についてお話ししました。

今回のテーマは、医師の「忙しい」はホントなの?というお話です。医師は忙しい、確かにそれは事実です。製薬企業の皆さまも、医師とのコミュニケーション戦略においてそのような前提を置かれていることでしょう。また、MRさん含め、アポイントメントが「忙しい」という理由で断られる経験も少なくないはずです。ですが、実際は常に「忙しい」わけではありません。そんな医師の裏側を本音とともにお話します。

医師といっても、内科医、外科医など診療科によってもその業務内容や忙しさの質が違います。外科医の先生であれば、オペ日は早朝に病棟回診を行ってそのままオペへ…そしてオペ室から出てくるのは夕方なんてことも。半日のオペが複数あって、一瞬の休憩しかないということも珍しくありません。お昼を食べる間もなく働いている外科医の先生を尊敬します。

内科医であれば外来に病棟回診、検査や処置などがあるでしょう。外来日は患者さんの待ち時間が長くならないように常に意識しながら時間に追われる一日となります。ひたすら多くの患者さんとお話しするわけですから、外来終わりには疲れ果てていることでしょう。

また、穏やかな日だなと思っていたら病棟患者が急変し対応していたら一日が終わった、外来で緊急入院が必要になった患者さんの対応やご家族への説明などで気づいたら夕方に、なんてことも珍しくありません。

なんとなく、医師の日常がイメージできたでしょうか?常に時間に追われている、または予定外の出来事が起こり、それに急遽時間を費やすこともあります。

さて、そのような時にMRさんとのアポイントを打診されたらどうでしょう。正直もし病院で直接声をかけられたら、「今忙しいから後にして」と言ってしまうと思います。物事にはタイミングが大切です。医師がどんな状況かを察するのは難しいと思いますが、忙しそうな時に呼び止めるのはマイナスな印象となるのでやめましょう。

以前、あるMRさんが外線で直接PHSに電話してきて、アポイントをもらえないかと言われたことがあります。こちらの状況を顧みず突然診療中に外線をかけられるのは非常に迷惑です。実はその担当者は同じことを2回繰り返したので、申し訳ないですがその後は出禁とさせていただきました。

常に忙しいわけではないのです。しかし、イレギュラーなことが多々起こる医療に携わっているなかで、MRさんにも適切な配慮をしていただければと願っています。上記のようなマイナスな印象を感じたMRさんには、たぶん常に「忙しい」と言ってアポイントを断ることでしょう。時間があったとしても、その時間を割くべきところに割きたいと思うのは当然です。

また、MRさんの中には情報提供したい、ヒアリングしたい、アポイントを取りたいなどいろんな思惑があると思います。ですが、それが医師にとって本当に有用なものなのか考えてみてほしいです。もしそうでないなら、医師も「忙しい」と返事をしてしまうかもしれません。

製薬企業本社のMR教育に携わる方やMRさんにはぜひ、今回の記事を通して、医師の日常と本当の「忙しさ」を想像し、その上で医療をサポートするチームの一員として何ができるのか考えて情報提供やそのためのアポイントを打診していただきたいと思います。

さて、今回は医師の「忙しい」について本音でお話しました。お声掛けいただければ製薬企業の方へ勉強会なども行っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。