学術誌にも採用されている「Creative Commons」とは

学術誌にも採用されている「Creative Commons」とは

Creative Commonsは比較的新しい著作権に対する考え方としくみで、作品を公開する作者が「この条件を守れば私の作品を自由に使って構いません。」という意思表示をし、利用者はそれを確認するだけで作品を自由に使えるようにするためのツールです。「改変禁止」というマークが付いていなければ、従来の著作権処理のような面倒な手続きをせずにすぐに作品を加工できます。
本記事では、さまざまな分野で利用が進んでいるCreative Commonsの成り立ちや具体的な使用方法、そして最後に学術オープンアクセスジャーナルとの関連について触れます。

※本記事の執筆に当たっては、主に Creative Commons JAPANのサイト を参考にしました。その他の参考資料については、記事内に引用番号を振り記事の末尾に列挙しています。

Creative Commonsとは

文章、画像、音楽などあらゆる著作物では、許諾を得ずに複製したり加工(改変)したりすることは認められていません。 ※1
一方、著作者あるいは権利者(以下、クリエイターと記載)によっては、必ずしも著作権の厳密な運用を望んでいないこともあります。「一定の条件を守ってくれれば自由に作品を利用したり、楽しんでもらったり、コピーして拡散してほしい」と考えるクリエイターも少なくないでしょう。

※1 複製については私的利用などの例外が認められていますが改変については例外なく認められていません

こうしたクリエイターの想いをかなえながら、作品の流通を合法的に促すためのしくみとして登場したのがCreative Commons(以下、CCと記載) 1,2 です。CCは、2001年に米国の憲法学者 ローレンス・レッシグらにより提唱されました。そして、CCを実現するための著作権の利用許諾ツールをCCライセンスと呼んでいます。CCライセンスは、著作物を公開する際に利用条件をあらかじめ明示する方法「パブリックライセンス」の一種です。パブリックライセンスを明示しておくことで、個別の許可が不要となり提示された条件内であれば誰でも自由に作品を利用することができます。さらに、将来もし権利者不明の著作物(オーファン著作物)となったとしても、利用者はそれまでと変わらず利用できるメリットもあります。

CCライセンスでは、作品の利用条件を4種類のアイコンの組み合わせで表現します。これにより、作品利用者もクリエイターの意思表示を一目で把握できるという利点があります。また、条件の従って利用すれば、許諾などの面倒な手続きは一切不要です(もちろん、条件外の方法で利用する際には許諾が必要です)。

CC設立の背景

現代のコンテンツ利用環境に追いつけていない著作権法

15世紀の印刷機発明以降、16世紀初頭までに英国では印刷技術が発展し、欧州の印刷の中心地となりました。この頃、しばしば、異端的・せん動的出版物が出回ることを防ぐため、国王の勅命により、書籍業、印刷業、製本業など出版に関わるギルドから成る書籍業カンパニーが設立され、出版の独占権を与えました。この権利は“copyright”と呼ばれ、著作権の英語の語源となっています。しかし、この時点での保護は書籍業カンパニーのみで著作者に対しては行われませんでした。その後、1710年に制定されたアン条例に、初めて著作者の保護が明記されたことから、この条例は原題著作権法の元になった著作権法であると言われています 3, 4

さて、このような古きアナログ時代、著作者の作品を創造するのは作曲家、作家、画家など特別な能力のある人、そしてそれを大量に印刷・流通するなどのノウハウを持っている人たちだけでした。時を経て作品量や流通量が増加しても現物取引が中心のアナログ的な時代までは、18世紀の考え方に源流を置く法律でも、まだ何とか対応できていたようです。しかし、インターネットが当たり前に普及しデジタル技術が著しく進歩するとそうはいきません。誰もがクリエイターになることができ、複製も、改変による新たな作品の創造も、さらに流通までできるという時代が到来してしまいました。ここまで来てしまうと、300年も前のコンセプトで作られた法律では、十分対応できないのは当然のことと言えるでしょう。そして、こうした硬直的な現在の著作権法を柔軟に運用するためのツールとして提供することが、CC成立の背景の一つとして挙げられます。

始まりはミッキーマウス延命法だった

1998年、米国で著作権保護期間の延長法が制定されました。ミッキーマウスの著作権切れ(寿命)を2003年から2023年へと引き延ばしたことから、俗にミッキーマウス延命法(あるいはミッキーマウス保護法)と呼ばれています。実はこの延命措置は1976年にも行われており、背景にディズニー社によるロビー 活動があったとも言われています 5

この法律制定に対し、CCの創設メンバーであるローレンス・レッシグ、エリック・エルドレッドらは、ミッキーマウス延命法のように著作権保護期間が何度も延長されることは、作品がパブリックドメイン ※2 に入ることを阻害し自由な利用が妨げられると訴えを起こしました。
結果として彼らは敗訴しましたが、現在の著作権の元ではクリエイターの創造性が妨げられることを危惧し、インターネット上でより自由にコンテンツを利用するためのしくみを模索します。そして2002年、CCを設立しCCライセンス ver. 1.0を公開しました(その後改訂が加えられ現在はver. 4.0となっています)。CCライセンスは著作権の持っている一部の権利を開放して、著作権法より柔軟に作品を共有・流通させることを可能にするツールなっています ※3

※2 パブリックドメイン:著作権の保護期間が満了したり権利放棄したりして、権利が消滅または発生していない状態のことを指します。許諾やクレジット表記をせずに誰でも利用することが可能です。
※3 CCの思想は、同時期に起こっていたフリーソフトウエア運動やオープンソースソフトウエアの思想に大きく影響を受け、デジタルコンテンツの自由な利用、複製、改変、頒布という思想を著作権に付加するというコンセプトに発展したとされています。

CCの位置づけとライセンスの種類

著作権法では、すべての作品は著作権を「持っているもの All Rights Reserved」と「失っているもの(放棄を含む ※4 )Public Domain」、つまり全か無かの二択しかありません。「自分がクリエイターであることは捨てたくないけど、好きなように制限なく利用してほしい」ということを表明する手段がないのです。CCライセンスは、そんな全と無の仲を取り持つ中間領域(Some rights Reserved)として利用されます(図1)。

※4 著作権法には著作権の放棄についての記載はありませんが、著作権のうち狭義の著作権(著作財産権:複製権、翻案権、譲渡権など)は放棄できると解釈されています。一方、著作者人格権(改変に関連する同一性保持権などを含む)が放棄できるかどうかは議論があります。いずれにしても、本題からはずれ、かつ専門的な内容になりますので、これ以上の説明は専門書等に譲ることとします。

CCライセンスの考え方
図1.水野祐.オープンアクセス(OA)とクリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンス https://www.slideshare.net/TasukuMizuno/oa-mizuno031116-59514669

現行のCCライセンスver.4.0では、「表示(BY)」「非営利(NC)」「継承(SA)」「改変禁止(ND)」という4つの条件があり、その組み合わせによって6種類の利用の自由度が異なるライセンスが用意され、それらは分かりやすいアイコンで表示が可能です(表1)。

4つの条件と6種類のライセンスのまとめ
表1 .4つの条件と6種類のライセンスのまとめ
小林心.オープンアクセスへのクリエイティブ・コモンズ・ライセンス適用の意義と留意点 https://www.jstage.jst.go.jp/static/files/ja/pub_20181031Seminar02.pdf

6種類のCCライセンスの概要

6種類のCCライセンスの概要は次の通りです。

1. 表示(BY)

表示(BY)マーク

原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示することを主な条件とし、改変はもちろん、営利目的での二次利用も許可される最も自由度の高いCCライセンス。
コモンズ証 リーガルコード

2. 表示—継承(BY-SA)

表示—継承(BY-SA)マーク

原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示し、改変した場合には元の作品と同じCCライセンス(このライセンス)で公開することを主な条件に、営利目的での二次利用も許可されるCCライセンス。
コモンズ証 リーガルコード

3. 表示-改変禁止(BY-ND)

表示-改変禁止(BY-ND)マーク

原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示し、かつ元の作品を改変しないことを主な条件に、営利目的での利用(転載、コピー、共有)が行えるCCライセンス。
コモン リーガルコード

4. 表示-非営利(BY-NC)

表示-非営利(BY-NC)マーク

原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示し、かつ非営利目的であることを主な条件に、改変したり再配布したりすることができるCCライセンス。
コモンズ証 リーガルコード

5. 表示-非営利-継承(BY-NC-SA)

表示-非営利-継承(BY-NC-SA)マーク

原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示し、かつ非営利目的に限り、また改変を行った際には元の作品と同じ組み合わせのCCライセンスで公開することを主な条件に、改変したり再配布したりすることができるCCライセンス。
コモンズ証 リーガルコード

6. 表示-非営利-改変禁止(BY-NC-ND)

表示-非営利-改変禁止(BY-NC-ND)マーク

原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示し、かつ非営利目的であり、そして元の作品を改変しないことを主な条件に、作品を自由に再配布できるCCライセンス。
コモンズ証 リーガルコード

各ライセンスの許諾内容に関する3つの説明文書

なお、各ライセンスの許諾内容に関する説明文書が、次の3通りで用意されています。

実際のコモンズ証と利用許諾は、上記各CCライセンスの説明とともにリンクを貼付してありますので参照ください。

・コモンズ証(一般の人向けの許諾内容説明書)

利用許諾書の内容を作品の利用者にわかりやすく伝えるために、利用許諾書の重要な部分を要約したもので、その作品の利用者ができることとできないことを簡潔に示しています。コモンズ証自体に法的効力はありません。(図2左)

・利用許諾(弁護士などの専門家向けの許諾内容説明書)

作品の著作権者と作品の利用者の間で結ばれる利用許諾契約の契約書です。ライセンスともいいます。法的効力があり、万一の紛争の際にはこの文書の内容に基づいて解決が図られます。(図2右)

・メタデータ(検索エンジンによる利用)

コンテンツに付随する説明的な情報で、サーチエンジンで検索できるようにしたもの。

CCライセンス ver. 4.0のコモンズ証とライセンス
図2.CCライセンス ver. 4.0のコモンズ証(左)とライセンス(右:記載量が多いため一部を表示)
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは https://creativecommons.jp/licenses/

その他の表記、CC0について

CCライセンスには、CC0という表記もあります。

CC0とは“No Rights Reserved”「いかなる権利も保有しない」という意味です。実質的にパブリックドメインに置くことを可能にするもので、一切の権利を主張せずに作品利用を許諾するということになります。本来CCライセンスは、著作権を保持しながら権利の一部を行使しないというもので、CCライセンス中の例外規定と言えるものです。
CC0を設定すると変更できないため、細心の注意を払って適用すべきです。なお、CC0は 専用ページ から実施できます。

CCライセンスの作品を利用したときの表記方法について

CCライセンスの作品を利用したときには、トラブル防止のために、次の項目が元の作品にあれば必ず同一ページ内に記載する必要があるとされています。

  • 「©マーク 著作権者 公表年」(この3点セットを著作権表示またはクレジットと呼ぶ場合も)
  •  作者名、タイトル、スポンサー
  •  著作権表示やライセンス情報に関するページのURL
  •  元の作品に記載されているライセンスの告知文や免責文
  •  改変を加えた場合は二次的著作物であること
  •  作品のURL(リンクでも可)

元の作品のURLについては、CCサイトのFAQには記載がありませんが、元画像のリンクを貼っていることが多くみられます。また、これらすべてが記載されていることは少なく、比較的簡略化されていることが多いようです。

写真作品を例にとって、表記例を以下に示します。

※ただし、あくまでも参考のため、「こうすれば大丈夫」と保証するものではありません。利用に当たっては、CCのサイトをご自身で確認いただき、自己責任で実施されるようお願いします。

改変しないでそのまま利用する場合の表記例

改変なし記載例
Beyond the clouds © Mihai Lucîț (2017) / CC BY-2.0

作品タイトル、©マーク、著作権者名(公表年)/CCライセンスを表記しています。リンクは元の作品のURLおよび、コモンズ証に設定しています。元の作品をそのまま掲載するときは、元のCCライセンスを表記する必要があります。

改変した場合の表記例

画像改変時の記載例
Beyond the clouds © Mihai Lucîț (2017) を改変して作成
この作品は クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0国際) のもとに提供されています。

作品タイトル、©マーク、著作権者名(公表年)/改変の表記を行いました。この作品のCCライセンスはCC BY-NC 4.0(表示-非営利)のコモンズ証にリンクしてあります。

この他にも、複数枚の合成やイラストとの合成、複数著作権者の作品の合成などさまざまな例が考えられます。

CCライセンス利用に当たって注意すべきこと

1. 可能な限り、その作品の本当の著作者かどうかを調べる

現在のところ、正当な著作権者がCCライセンス登録しているのかどうかを確認するすべがありません。また、故意でなかったとしても、複数クリエイターによる合作で、一人が黙って登録しているというケースも考えられます。
そのため、CCライセンスの作品を利用する場合は、可能な限りその作品について調べましょう。これという具体的な方法はありませんが、少なくとも画像検索をして同じ作品が別の名前で登録されていないか確認することは必要でしょう。もし疑わしい場合は使用を避けてください。

2. 人物が写っている写真は使用しない

CCライセンスが表示されている作品では、作品の著作権自体は使用条件に従えばいいのですが、人物が写っている場合は、その肖像権やパブリシティ権 ※5 の侵害になる可能性があります。個人情報保護法の観点からも、写っている本人の許可がない限り、人物が写っている作品は使用しないことが望ましいでしょう。

※5 肖像権とは、顔や容姿を無断で撮影されたり、撮影された写真を勝手に公表されたりしないよう主張できる権利です。このうち、著明人など顧客誘引性が高い人物の場合は肖像に商業的価値がありパブリシティ権と呼ばれています。

3. 改変の解釈に気を付ける

改変とは、作品に何らかの手を加えることを意味します。そのため、一見見た目が変わっていなくても何らかの処理をした場合は改変に当たります。画像の変形やトリミングはもちろん、リサイズ、画素数変更、色調・明暗・コントラストの調整、枠線を付けるなども改変に含まれます。

例えば、「改変禁止の画像をA4文書に載せようとしたけどA5サイズくらいあるので縮尺して載せる」というのはNGです。使用するのであれば元画像のまま掲載する必要があります。サイズ調整が必要な場合、多くの画像では複数サイズを利用できるようになっているので、適切なサイズのデータを利用するようにしましょう。

ただし、クリエイターによっては改変不可の範囲を広く許容している場合もあります。もし迷ったら、念のため直接確認を取ってみるのもよいかもしれません。

4. 非営利の範囲が不明確なことを理解しておく

CC BY-NC(表示-非営利)の作品は比較的多いですが、非営利の範囲についてCCでは明確な線引きをしていません。例えば「一般企業の社内向けプレゼン資料として、CC BY-NCの画像を使用することは可能なのか?」といった場合どうなのかという答えはありません。社外に出る資料であれば明らかにNGだと判断できますが、社内向けの場合はどのように考えるべきでしょうか。

この点について、CCのFAQでは次のように記載されています。

何が「営利」で何が「非営利」かは、最終的には裁判所の解釈によって定まりますので、残念ながらクリエイティブ・コモンズ・ジャパンではお答えすることができません。
(中略)
何が営利で何が営利ではないのか、という判断は大変難しく、国によっても異なり、同じ国でも事例によっても異なる可能性があるため、専門的な法律アドバイスが必要になってしまう場合があります。クリエイティブ・コモンズでは、この点が明確になるよう国際的に議論を続けているところです。
もし、どうしてもご自身の利用が営利なのか、非営利なのか迷ってしまうような場合は、明らかに営利利用が許諾されているライセンスのついた作品(例えばBY(表示)、BY-SA(表示-継承)、BY-ND(表示-改変禁止) などが付いた作品)を利用することをおすすめします。そうでなければ、法律の専門家に相談するか、著作権者に直接連絡を取って、別途お問い合わせください。

FAQ よくある質問と回答(creative commons JAPAN)https://creativecommons.jp/faq/#a7

結局のところ、社内向けオンリーの資料はBY-NCの利用も少しグレーのようです。できるだけ利用しない方がよさそう、と考えられます。
もし、こうしたリスクを可能な限り避けたい、権利関係が明確な素材を使いたい、という場合には、有料ストックフォトサービス ※6 を利用するのが賢明でしょう。 6

※6 PIXTA、Adobe Stock、Shutter Stock、iStock、ゲッティ イメージズ、アマナイメージズなど。(その他にも多くのストックフォトサービスがありますので、特にこれらを推奨しているものではありません)    

一般企業がCCライセンスの作品を使用することはあるか

上の非営利範囲に関する項で触れましたが、企業での利用は現時点ではあまりなじまないかもしれません。利用が促進されない理由として考えられるのは次のような点です。

  • クレジット表記が通常の引用に比べて煩雑で面倒
  • そもそもリーフレットなど顧客向け資料には画像にクレジットは付けられない
  • CC BY-NCが多くCC BYが少ないため、使える作品を探す手間がかかる
  • 「利用に当たって注意すべきこと」に書いたようなリスクがある

しかし、多少時間がかかっても構わない、リスクについても十分考慮できるといった場合は大いに利用価値があります。企業での利用は難しくても、NPO法人や官公庁、個人商店、教育機関、そして創作活動やブログの執筆などをしている個人などでは、とても役立つツールになると思います。

学術オープンアクセスジャーナルで進むCCライセンス採用

近年、オープンアクセスジャーナル(OAJ)が増加しています 7 。イギリスの非営利企業であるInfrastructure Services for Open Access(オープンアクセスのためのインフラストラクチャサービス)が管理運営している Directory of Open Access Journals (DOAJ:オープンアクセス誌要覧)に採録されている雑誌数は、現在(2021年5月7日時点)雑誌数は約16,200誌、論文数は約604万5,000件に上ります。2019年3月14日時点で約13,000誌、論文数 約385万8,000件[ Wikipedia.オープンアクセス学術誌要覧 .]だったことから、およそ2年間で雑誌数は約27%増、論文数は約57%増と相当な伸び率です。

学術誌がCCライセンスを採用するメリット

そして、これらほとんどの雑誌がCCライセンスを採用しています。学術誌がCCライセンスを採用するメリットは2つあるとされます。

第一に、CCライセンス採用によって学術誌へのアクセスや再利用の可能性が高まり、研究論文の伝播性が高まる効果が期待されるといわれています。これは、著作権の引用よりもCCライセンスの制約が少ないため、図版などの利用がしやすく再利用が促されるということで、単にインターネット上で公開されただけの状態と異なる点が重要だとされています。

第二に、CCライセンス ver.4.0は世界共通であるため、世界中のユーザーにとって論文の利用条件が分かりやすいという点が挙げられます。国ごとにライセンス条件が異なっているのは、ユーザーにとって煩雑であり、結果として研究の再利用を阻害する恐れがあるとのことです。このため、世界中どこでも同一条件で利用できるCCライセンスの採用は大きな意味を持っているとされます。

CCライセンスを採用している主な医学誌としては、BMJ Open(CC BY-NC, CC BY, CC BY-NC-ND)、NEJM(CC-BY)、PLOS ONE(CC-BY)、JCI Insight(CC-BY)などがあります。気になる方は、一度 DOAJ のサイトをのぞいてみてください。

CCライセンスに則り適切な著作物の利用を

CCライセンスは、一般企業、特に医薬品関連企業のビジネスでは、利用可能な場面は多くないかもしれません。しかし、社内資料での利用、NPO法人や官公庁などでの利用、個人での利用用途を限定すれば、場合によってはとても高品質な作品を無料で利用できる可能性もあるというのは、ある意味魅力と言えるのではないでしょうか。もちろん、上に掲げたようなリスクを回避するよう心掛けることが必要なのは言うまでもありません。

CCライセンスを利用することで、クリエイターはより多くの人に作品を知ってもらう機会、利用してもらう機会が増える一方、利用者はより多くの作品を制約の少ない条件下で、しかも面倒な手続きも必要なく利用できるのは、範囲は限定されますが大きなメリットと言えるのではないでしょうか。また、OAJという学術面での活用も、今後ますます広がりを見せていくことでしょう。

【参考】
1.Creative Commons Japanホームページ FAQ
https://creativecommons.jp/faq/#f2
2.小林 心.オープンアクセスへのクリエイティブ・コモンズ・ライセンス適用の意義と留意点
https://www.jstage.jst.go.jp/static/files/ja/pub_20181031Seminar02.pdf
3.白田秀彰.一橋研究.21:93,1996.
4.飯田幸郷.パテント,55:30,2002.
5.比良友佳理.知的財産法政策学研究.45:79,2014.
6.増田雅史、佐藤亮太.知財管理.65:821,2015.
7.水野 祐.情報管理.59:433,2016.