知ってスッキリ!資材制作の「転載」の基本

こちらの記事で、資材の「引用」について触れましたが、「引用」と似て非なるものに「転載」があります。「転載」も資材制作を行う上で欠かすことのできない事柄です。しかし、「引用」とどう違うのか、「転載許諾」はどのように取得するのか、「~より改変」と「~より作図」はどう違うのか、など転載の周辺情報についてあまりご存じない方も少なくないと思います。
本記事では、資材制作に関わる上で、絶対に押さえておきたい「転載」の知識をご紹介します。


「引用」と「転載」

「引用」と「転載」、どちらも公表された別の著作物の内容(たいていの場合は一部分)を持ってきて掲載することです。「引用」とは、別の記事で紹介したように、元の文章などをそのままの体裁で掲載することです。適切な引用なら「無断引用」はごく普通に行われることで、著作権法上の問題はありません。

これに対して、元の内容のままではなく一部に変更を加えて掲載することが「転載」で、転載に伴う変更を一般に「改変」と呼んでいます。「転載」は引用の範囲を超える行為ですから、著作権者の許可(転載許諾)が必要です。転載許諾は有償のことも無償のこともあります。しかし、たとえ無償であっても、「無断転載」は著作権侵害となり損害賠償請求の対象となる可能性があります。また、本の奥付などに「無断転載禁止」と表示されていることがありますが、表示がなくても当然、転載許諾は必要です。

「転載許諾」が必要なケースとは

「無断引用」は著作権法の上で認められていることなのですが、資材制作の実務上は、どこまでが引用でどこから転載許諾が必要なのかという明確な線引きができないこともよくあります。

  • 文章を扱うケース
    資材制作で文章を扱うケースでは、直接引用/間接引用にかかわらず少量なら、引用としての対応でまず問題はないでしょう(もちろんケースバイケースですが)。ガイドラインなどを掲載するため文章量が多くなる場合や、改変していなくても許諾が必要と著作権者(出版社や学会)が定めている場合は、転載許諾申請を前提とした作業を進めます。
  • 図表を扱うケース
    このケースでは、原則として転載許諾が必要と考えておくのが無難です。著作権法の上では引用と判断できるものであっても、著作権者(出版社や学会)が許諾を取得するよう求めていることが多々あるからです。この際、1.引用・転載元は国内誌か海外誌か、2.学術著作権協会(学著協)が管理する著作物か、という点にも配慮して許諾申請を進めます。

    それぞれの具体的な例を挙げます。

    1. 海外誌の場合、引用・転載にかかわらず許諾が必要と考えましょう(参考:NEJMの例)。国内誌でも同様に許諾は必要ですが、一部の団体では、少量の図表に限って事実上の引用を認めていることもあります。日本医書出版協会は、改変がなければ、1文献から最大3点までの図表は無償で許諾するとしています(日本医書出版協会転載許諾ガイドライン 2017年7月1日)。「転載許諾」とは書かれていますが、改変しない前提ですから著作権法で言う「引用」と同様と解釈できます。ただし、許諾は必要ですから、指定された方法で必ず許諾申請しましょう。トラブルになる可能性があるので「無断引用」はしないでください。
    2. 学著協は、文化庁登録の著作権等管理事業者で、国内の学術団体や海外の協定団体(アメリカのCopyright Clearance Centerなど)の著作権管理・著作権処理を行っている団体です。学著協では、転載許諾申請用のシステム(JAC転載許諾申請システム)を公開しています(システム利用にはユーザー登録が必要です)。学著協へ転載許諾申請すると、学会への直接申請では学会と著作者の両方へ必要な場合でも、学著協1カ所で済むことや、許諾承認までの期間が比較的短いという利点があります。

転載図表の「~より改変」「~より作図」はどう違う?

転載された図表に「~より改変」や「~より作図」と記載されていることがあります。これらはどういったルールで付けられているかをご存じでしょうか。
「~より改変」は、元の図表を変更した、すなわち「転載」であることを改めて表明しているにすぎません。資材で利用される図表は、オリジナルとして作成したもの以外は全て転載と言ってよいので、「~より改変」は省略して構いません。ただし、出版社や学会から記載方法を指定されることがありますので、その場合は指示に従ってください。

「~より作図」は、参照した資料のデータを元に、新たに図表を描き起こすことです。「実験や研究のデータは、単に客観的な事実を示したにすぎないので創作性はなく、著作物には当たらない」という法律的な解釈が一般的です。そのため、論文の数値データからオリジナルの図表を作図する場合は、許諾の必要はないとされています。ただし、論文本文の内容を抜き出して図を作成するような場合は、その本文に創作性がある著作物だと判断される可能性もあり得るので注意が必要です。また、作図の元資料が何であるかを明らかにする必要がありますので(著作権法第48条:出所の明示)、転載と同様に出典を記載します。その際、この図表が転載ではなくオリジナルで作成したことを示すため「~より作図」と記載します。こうすることにより、読者が出典をたどったのに該当の図表がない、といった問題を避けることができます。そのため、「~より作図」は省略せずきちんと記載します。

資材の転載許諾はどのように行えばよいのか?

すでに少し触れましたが、転載許諾申請は、転載の要否の判断、転載許諾の申請先や申請手続きの調査、申請書類の作成など、かなり煩雑な作業も伴い決して容易とは言えません。もちろん、時間が許すのなら、一つ一つ地道に調べて手続きしていくことは可能ですが、それなりの手間と時間がかかることは覚悟してください。
ですから、効率性を考えれば、転載許諾を請け負っている団体・企業に依頼するのが賢い選択でしょう。というよりも、この記事をご覧になっている方でしたら、すでにそのようにされているとは思いますけれど。

資材の転載許諾であれば、制作依頼先のエージェンシーで併せて対応してくれるのが普通です。もし、転載許諾の対応はできないと言われるようなことあるときは、文献複写サービスを行っている企業などに問い合わせてみるとよいでしょう。もちろん弊社でも、転載許諾のご相談を承ることが可能ですので、何かお困りのことがありましたら、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。