資材制作におけるデザインのやり取りを一通り終え、外注先から納品見本が届いて確認すると、「あれ?思っていた色と違う……」と思った経験はありませんか? 本記事では、印刷すると色が違う原因と対策についてご紹介します。
色が違ってしまう、考えられる原因
1. モニターと印刷物での色の表現方法の違い
モニターで見ると鮮やかで綺麗な色なのに、印刷すると色が暗く沈んでしまう。その理由として考えられるのは、モニターは「RGB」、印刷物は「CMYK」と、色の表現方法が異なることです。
RGB
RGBとはモニター表示などに利用されている色の再現方法です。R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の光の三原色を利用しており、色を加えれば加えるほど、明るくなっていくため最終的には白に近づきます。CMYKに比べて表現できる色の範囲が広く、鮮やかな色を表現することができます。そのため、蛍光色に近い色なども表現することが可能です。
CMYK
CMYKとは印刷などに使われる色の再現方法です。Cyan(シアン)、Magenta(マゼンタ)、Yellow(イエロー)の色料の三原色に、Key plate(キープレート)を加えたもので、色を加えれば加えるほど黒に近づいていきます。ちなみに、キープレートとはもともと画像の輪郭などを示すのに用いられた印刷版(印刷に用いる板)のことですが、この印刷版に黒インクが使われていたことからキープレートの「K」が「黒」の意味となりました。
RGBと比べ、表現する色の範囲が狭く、もし蛍光色のような鮮やかな色が入った印刷物を作成したい場合、「特色」指定をして特別なインクを作成しなければなりません。
2. 印刷方式の違い
印刷方式には、大きく分けて3種類あります。
「社内でプリントアウトして確認したはずなのに、外注先からもらった納品見本と色が全然違う」というのは、この印刷方式が違うために起きている可能性があります。
インクジェットプリンター
粒子化したインクをプリンター用紙に直接吹き付けて印刷するタイプ。色味の再現性が高く、写真印刷に適しています。
レーザープリンター
感光体(ドラム)という筒状の上に、熱で溶かしたトナーパウダー(色を付ける粉)を噴きつけ、それをプリンター用紙に押し付け印刷するタイプ。印刷速度が早く、熱で紙に押し付ける方式のため、滲みにくく文字の印刷に適しています。
(印刷会社の)印刷機
CMYKの4色のインキを重ね合わせることで文字や絵柄を印刷するタイプ。印刷には、CMYKそれぞれの「版」が必要になります。 ただし、印刷会社に依頼したものが、必ずこのCMYKの版で印刷されるとは限りません。指定のない限り、印刷会社は、表現したい制作物によって適した印刷方法を選択するため、時にはインクジェットでの印刷を行う場合もあります。印刷会社で使用する印刷機には多くの種類があり、どの印刷機を使用するかによってさらに色が変わる可能性があります。
3.使用している紙による違い
紙と一言で言っても、その中にはたくさんの種類があり、それぞれ質感や白色度が違います。外注先が使用している用紙と、自身が使用している用紙は必ずしも同じとは限りません。そのため、同じ印刷機、同じ印刷データでも、紙の種類が違うだけで見た目が異なります。
4.環境光による違い
照明器具には「白熱球」、「蛍光灯」、「LED電球」とさまざまな種類があります。
それぞれが放つ光の色には、オレンジ色の暖色系から青みのある寒色系まで幅広く、それにより色の見え方が異なります。
5.モニターのカラーマネジメントによる違い
モニターの光も原因の一つです。家電量販店で並んでいるテレビ画面の色が、メーカーによって違うと思ったことはありませんか? PCも同じように、メーカーや機種ごとに光の加減や色の表現が違うため、同じデータを見ていたとしても、相手が同じ色を見ているとは限りません。
6.個々人が見ている世界の違い
これまで説明してきた要素がすべて同じでも、ひとはそれぞれ見えている世界の色が違います。例えば、若年層と比べて老年層は、眼の水晶体の黄変化により、世界が黄味がかって見えているという報告があります。
他にも、色弱の人は似た色の区別がつかなかったり、色自体が他の人と比べて、全く違うように認識したりしていることもあります。
以上のようなことから、印刷会社や機械・紙などが一緒でも色の差異が起こる可能性はあります。
印刷物を思った通りの色に近づけるには?
これまでの話から、さまざまな要因から自分が思った通りの色が出ない可能性があることが伺えたのではないでしょうか。では、どのような対策を行えば理想の色を出すことができるのでしょうか。
色校正を行う
本印刷してから、「思った通りの色ではなかった」となる前に、色校正を行うことが一番の対策になり得ます。
色校正とは、実際の印刷の仕上がりと色の認識が違っていないか、イメージ通りの表現ができているかどうかを確認する試し刷りのことです。
外注先と自身のちょっとした環境による違いで色が変わってしまうことは、これまでの話で理解できたかと思います。できる限り色の認識の差異を少なくするために「同じ印刷会社」、「同じ紙」、「同じ印刷データ」で印刷されたものを、外注先と共有することが大切です。 色校正を見て、思い通りの色になっていなければ、ここで調整を加えることができます
あらかじめ色のイメージを共有する
もし、「この色にして欲しい」という強い要望があれば、外注先とその情報を共有することが重要です。
特に、会社のロゴなど色が変わってしまうと問題が起きてしまうものに関しては、そのロゴは何色で作成されているのかを伝えましょう。
企業のロゴには「ロゴ使用ガイドライン」があり、その中には色は何色で配色するべきかなど、ロゴを使用する際のガイドラインが表記されています。そうしたガイドラインのデータをあらかじめ自身で管理し、外注先に依頼する際に共有することも、色の認識の差異を生み出さない対策の一つになります
まとめ
いかがでしたでしょうか? 印刷物を確認する際、色はちょっとした要因で違いが出ることをあらかじめ理解しておけば、イメージした色と違うものが色校正で上がってきたとしても、落ち着いて対処することが可能です。
また、外注先との色の共有のためのガイドライン資料などの用意も、この機会に検討してみてはいかがでしょうか。
参考:
KIMITO SEIBIDO|「印刷」の違い
https://kimoto-sbd.co.jp/original/printstudy/difference/
最終閲覧日 2020年6月22日
印刷会社ugo/ユーゴ|画面の色と印刷物の色が違う理由と対処法(RGB、CMYKとは?)
https://blog.u-go.co.jp/pa-mgmt-171117
最終閲覧日 2020年6月22日
オレンジページネット|年齢によって色の見え方が違うって、ホント?!
https://www.orangepage.net/daily/1076
最終閲覧日 2020年6月22日