2025年を見据える!製薬マーケティング有識者らが語る2024年の業界動向振り返りとこれから

2025年を見据える!製薬マーケティング有識者らが語る2024年の業界動向振り返りとこれから

2024年、医師の働き方改革施行とそれに伴うコミュニケーションの変化、生成AIやデータ活用の進展などさまざまな変化に直面した製薬業界。製薬マーケターのみなさまは、この複雑な課題にも果敢に取り組んできました。2025年、この業界は何が起こると予測され、我々はどのように向き合っていけばよいのでしょうか。本記事では、10名のエキスパートに、多角的な視点から2024年の業界動向の振り返りや2025年の展望を語っていただきました。

▼本記事とのタイアップ企画として、セミナーを2回に分けて開催予定です!ぜひご視聴ください。
※2回目のセミナー情報は近日公開予定です。

2025年の製薬マーケティングの行方は?現役マーケター含む各エキスパートによるスペシャルトークセッション
2024.12.23
2025年の製薬マーケティングの行方は?現役マーケター含む各エキスパートによるスペシャルトークセッション

医療現場の視点から

医療現場の動向と2025年製薬企業への期待:医療チームの一員としての協働を可能とする体制構築を(Dr.心拍氏)

医師の情報収集は、ネットワーク社会の深化に伴いさらなる効率化が求められています。普段からどこを見ればその情報にアクセスできるのかというようなリサーチ力が養われた結果、比較的短時間で情報を収集できるようになってきた印象です。

一方で、肺癌化学療法中の患者さんの予期せぬ副作用の出現といった時間的猶予のない状況下では、従来通りDI室の薬剤師や製薬企業担当者の方への相談が重要な役割を果たしています。

MRとのアポイントについては、医師の働き方改革以前から必要最小限という傾向が定着しており、2025年もその傾向は継続、もしくはより顕著になっていくと予想しています。このような環境下で、より良いコンテンツは生き残り、多くの医師の情報収集に利用されると思いますので、製薬企業の医師向けコンテンツなどは医師の需要にしっかりマッチさせた内容となることを願っています。

また、MR教育などにおいて、どうやったら医師とアポイントを取れるのかという視点から脱却し、医療チームの一員として同じ目線で協力できるような体制を目指していただきたく、希望も込めて予測したいと思っています。

Dr.心拍 氏    
呼吸器内科の勤務医とライター、ヘルスケアビジネスに取り組んでいる。多様化する医師のキャリア形成とそれを実現するための「複業」に関する発信と活動を行っている。 ヘルスケアに関わる情報発信と人をつなぐことを目的としたメディア「Dr.心拍のヘルスケア最前線」を2024年9月リリース。 肺癌コミュニティや医師キャリアコミュニティを運営。 各種医療メディアで本業知見を生かした企画立案および連載記事の執筆、医療アプリ監修やAI画像診断アドバイザー、また、ヘルステック関連スタートアップ企業に対する事業提案などのコンサル業務を複数行う。 事業を一緒に考えて歩むことを活動目的としている。 X(旧Twitter):@dr_shinpaku

製薬業界全体の視点から

製薬業界の弱体化のリスクがより鮮明化した2024年と、その延長にある2025年(Prospection株式会社/日本医業経営コンサルタント協会 高橋氏)

<2024年の日本の製薬業界の振り返り>
1. 総括
2024年の医薬品の欠品、出荷調整は、社会からの信頼を大きく損ないました。その背景には薬価改定時の薬価の引き下げ、後発品使用促進策、選定療養の開始などがありますが、これらが緩むことなく、製薬業界を悩ませ続けています。

2.新たな期待
一方、AIを創薬研究に活用することによって、開発期間を大幅に短縮できた製薬企業も出てき始めました。これは今後の業界の隆盛の兆しと考えます。

3.MRとプロモーションの変化
MR数の減少は歯止めがかからず、オムニチャネルのプロモーションも模索が続いています。RWDの活用による新たなInsightsの探索と活用が、業界内に浸透しているように見受けられます。

<2025年の日本の製薬業界の動向予測>
2025年は、以下のトレンドが予測されます。
1.グローバル戦略の再構築とオープンイノベーションの加速
国内市場の縮小を見据え、海外展開を加速させる製薬企業が増加するでしょう。
一方、単独での新薬開発には限界があるため、大学やバイオベンチャー、スタートアップとの連携によるオープンイノベーションがますます重要となります。

2.デジタル化によるビジネスモデル変革 
オンライン診療やデジタル治療などのHaaSの分野への投資が活発化します。
製薬企業は、従来の医薬品提供に加え、デジタル技術を活用した新たなサービス提供モデルによる医薬品以外の収益源の確保が必須となるでしょう。

3.人材の流動化、獲得競争の激化とリスキリングの重要性 
デジタル化やグローバル化に対応できる人材の確保が課題となります。
積極的にリスキリングや社外からのキャリア採用を進め、変化に対応できる組織作りが求められます。人材から選ばれる製薬企業作りが経営陣に必須です。

2025年の日本の製薬業界では、技術革新やデジタル化をチャンスと捉え、果敢に挑戦していく企業が未来を切り開いていくと予測されます。これらの技術を駆使した新たなマーケティングの取り組みも始まるでしょう。

日本政府も、イノベーションを促進するための環境整備や人材育成に力を入れています。製薬企業がこの取り組みを活用し、国際競争力を強化することに本格的にチャレンジする1年となりそうです。

※記載内容は著者個人の見解であり、著者が所属する企業の見解や方針を代弁・表明するものではありません。また、記載内容は著者が所属する企業の状況に関するものではなく、あくまで著者の認識における製薬企業一般の話であることをご承知おきください。

公益社団法人日本医業経営コンサルタント協会 認定登録 医業経営コンサルタント  
PROSPECTION株式会社カスタマーサクセス プリンシパル
高橋 洋明 氏  
 
約25年、医療・製薬業界に携わる。MR、製薬業界へのマーケティング支援、MRの採用・教育・スキルトレーニング等を経て、現在はヘルスケアデータ分析を専門とするPROSPECTION株式会社にて、プリンシパル・カスタマー・サクセスを務める。その傍ら病院経営コンサルティングも手がける。

国内製薬産業のドラッグロス解消への動きと基本に立ち返るマーケティング戦略(製薬キャリア3.0 こういち氏)

2024年はドラッグロスというキーワードをたくさん聞いた一年でした。課題と言われ続けた中で、さまざまな変化があった一年だったのではないでしょうか?国際共同治験における日本人Ph1要件の見直し、小児適応取得を高く評価するポジティブな薬価改定、PMDAのワシントン事務所開設など、ドラッグロスを解消していこうとする製薬産業の姿勢を感じた一年となりました。

我々製薬企業に勤めるものとしては、これらの変化に柔軟に対応し、アンメットニーズの残る未承認薬の導入に向けた企業活動の加速が2025年には求められると感じています。すでに内資系製薬企業を中心に、導入案件のプレスリリースが目に付くようになってきたことは、プラスのニュースです。

業界的には早期退職の話題が昨年に引き続き注目された2024年でしたが、新薬発売を数多く控える製薬企業では、むしろ組織の構成人数を増加させた1年であったように思います。

マーケティング/セールスの文脈では、生成AIの活用やデータ活用が話題にあがりがちですが、Face to Faceの面談機会が戻ってきた2024年/2025年において、必要な心構えは「マーケティング原則の基本に忠実に」が重要だと感じています。

STP理論(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)や、AMTUL理論(Awareness〔認知〕、Memory〔記憶〕、Trial〔試用〕、Usage〔利用〕、Loyalty〔愛用〕)といった、マーケティングの王道と言われる理論を、正しいデータやコンテンツを用いて実行していく。質を高めるための試行錯誤を繰り返す。こういった取り組みを愚直に行えるマーケティング/セールスチームが2025年に成果の残せる組織になっていると予想します。

最後になりますが、本年も執筆を通じてMedinewさんの良質な記事をたくさん目にする機会をいただきました。製薬マーケティングやセールスに役立つコンテンツが充実しており、日々勉強させていただいております。本年のまとめとして、御礼申し上げます。

運営ブログ:製薬キャリア3.0
こういち 氏  
 
大学卒業後、外資系製薬会社に入社。営業、メディカル、デジタル戦略部、製品戦略部を経て、現在経営企画部にて勤務。製薬・ヘルスケア・キャリアに関する情報をブログやTwitterを通じて発信中。
X(旧Twitter):@seiyaku_career

マーケティング戦略の視点から

2025年 製薬マーケティング 注目のトレンド(ユーシービージャパン 川野氏)

2025年の製薬業界を考えると、大きく以下の3つのキーワードが浮かびます。 

【サードパーティーメディアの活用】
コロナの収束後、フィジカルへの揺り戻しが継続するかに思われた医師とのコミュニケーションですが、MCI DIGITALが実施した調査(医師版マルチメディア白書2024年夏号)によると、デジタルへのシフトは着実に進んでいそうです。この市場機会を捉えるべく、製薬各社はコロナ禍からサードパーティーメディアに加え、自社サイトの構築やCustomized e-mailなどのチャネル配備をふくめたオウンドメディアの強化に取り組んできました。一方、サードパーティーメディアにおいては、顧客ニーズを捉えて急速に成長しているHOKUTO などの新興勢力が市場に変化を与えています。今後、製薬各社がどのようにサードパーティーメディアを活用していくのか注目されます。 

【マーケティング業務における生成AIの活用】
業務効率の改善を最初の目的として製薬各社・各部署で生成AIの活用が推進されており、日常業務の生産性は徐々に改善することが期待されます。次のステージとして、マーケティング部門において生成AIをどのように活用していくのか?活用できる人材をどのように育成するのか?我々は考えていかなければなりません。 マーケティング部門やオムニチャネル部門/デジタル関連部門における生成AIの活用推進は、オムニチャネルアプローチの進化にも影響を与え、結果的にCX(顧客体験)の向上を通してより良い医療に貢献していくことが期待できるのではないかと考えています。

【マーケティング分野における行動経済学の活用】
フレームワークをベースにブランドプランは論理的に組み立てられます。くわえて、顧客インサイトをもとにAMTULなどの顧客の購買モデルを活用して医師をロイヤル顧客にステップアップさせる取り組みが製薬各社で推進されています。しかしながら人は合理的な生き物ではなく、さまざまなバイアスによって行動変化(医師の処方行動の変化)は妨げられます。これらの不合理な行動の背景を理解するとともにどのようにアプローチするのか、行動経済学の観点からのアプローチは、可能性を秘めていると私は考えています。

※記載内容は著者個人の見解であり、著者が所属する企業の見解や方針を代弁・表明するものではありません。また、記載内容は著者が所属する企業の状況に関するものではなく、あくまで著者の認識における製薬企業一般の話であることをご承知おきください。

ユーシービージャパン株式会社 免疫炎症事業部 マーケティング部長
川野 清伸 氏  
 
武田薬品工業 マーケティング部門にて糖尿病薬のローンチに従事したのちスペシャルティ事業部の立ち上げメンバーとして炎症性腸疾患のバイオ製剤のローンチを担当。この時の経験を契機にTakeda Chinaマーケティング部にて同薬剤のローンチをサポート。2020年Japan Oncology Business Unitに異動後、同社初の肺癌領域への参入および同社初のMarketing Automationの導入に従事。2022年4月ユーシービージャパン初のソロローンチを担うために入社、約2年半で7つの新しい効能追加をリードする傍ら、Change Management Office室長としてUCB Japanの組織文化改革に貢献。また、製薬ビジネス研究会の共同代表として人材育成や製薬業界のネットワーク構築を推進するなど精力的に活動している。

進むアリーナ思考の浸透とサービタイゼーション。新たな視点で顧客体験デザインを(トランサージュ 瀧口氏)

「Best Global Brands」は、ブランド・コンサルティング企業のインターブランド社が毎年発表しているブランド価値評価ランキングです。10月に発表された2024年版では、AppleやMercedes-Benz、LVMHなどの錚々たるブランドが競い合うなか、ランキング62位のFerrariがブランド価値対前年成長率でトップの座を獲得しました。その他に高成長率を示したブランドには、あのエルメスとプラダがありました。

インターブランド社は「成長している企業は、顧客とのより深い関係を築いてロイヤリティとレコメンドを促している」と分析します。実際、Ferrariはファッションからテーマパーク、レストランに至るまで、顧客にアピールする新しい方法を見出し魅了しています。こうした「新しい場」を作り出してブランドの陣地を拡げる考え方は「アリーナ思考」と言われます。Appleは秀逸なデザイン性や高品質性、革新性などに基づくブランドが顧客ロイヤルティを高め、さまざまな製品群によるエコシステムの構築によりAppleという「アリーナ(場)」を広げて来ました。

アリーナを広げるためには、優れた顧客体験の提供による強固な関係構築(エンゲージメント)が重要ですが、これは世の中のテクノロジーや価値観の多様化がさらに進むであろう2025年以降も進化する、と考えられます。

Medinewの記事で「製薬会社のサービタイゼーション」を紹介しましたが、この考え方はアリーナ思考と同じ方向にあると言えます。今後サービタイゼーションやアリーナ思考の浸透がさらに進むとすれば、『日頃、患者さんや医師が何を想いどう行動しているか』という深い顧客理解に基づく新たな顧客体験デザインが、ますますマーケティングに重要な視点になるのではないでしょうか。

トランサージュ株式会社 代表取締役
瀧口 慎太郎 氏  
 
米国系製薬企業入社後、HRにて人事制度設計や組織文化活性化委員などを経験。その後、マーケティングにて体外循環用剤や内分泌代謝用剤、循環器用剤などのプロマネを経験後、カナダでの実務経験を経て大型新規循環器用剤の上市をリード。過去の同領域製品の成長を刷新する成功を実現。欧州系製薬企業で大型循環器用剤のためのKOL部隊組織化など、20年以上に渡り製品マーケティング実務およびマネジメントを経験。

「面」と「点」、両輪のアプローチで貢献力を高める(JMDC 小沢氏)

<市場導入戦略の多様化>
2024年は推定患者数1,000人に満たない希少疾患から1,000万人以上にわたる疾患まで、さまざまな薬剤が上市されました。

市場規模の大きな疾患では、多くの医師や施設への効率的なアプローチや、優先順位付けが重要になりますが、一方、希少疾患では、患者数や専門医数、また、担当されるMR数が限られるという制約の中で、精緻なターゲティングや、医師とMRさんとの信頼関係構築がひとつの鍵となると思います。

<データ活用の新常識:分析が作る未来>
製薬業界のマーケティング活動において、データがもはや単なるサポートツールや成績表ではなく、戦略の核になっています。

特に希少疾患では、従来の分析の枠を超えて、患者さんごとの治療の変遷を深く掘り下げることで、患者さんや医療従事者の課題を精緻に捉えることができるようになりました。

ビッグデータは、どちらかというと疾患や市場環境を俯瞰した「面の分析」に活用されてきましたが、今やN=1、つまり個々の患者さんの課題を把握する「点の分析」へと進化しています。

このアプローチは、患者数が少ない希少疾患において、適切な治療機会を逃さないために特に重要になっています。

「面の分析」と「点の分析」の両立。この視点が、医療従事者や疾患が抱える課題の解決への貢献をさらに深めています。

<2025年への展望:「ディスカッション品質」が鍵に>
一見するとデジタル化が進む時代に逆行しているように感じられるかもしれませんが、2025年はMRさんやMSLさんと医師との「ディスカッション品質」がひとつの大きなテーマではないかと考えています。

質の高いディスカッションには、患者さんの背景や治療歴を深く理解し、医師の意思決定を支援する具体的な情報提供や提案力が求められるかと思います。

今こそ改めて、OPD(One Patient Detail)の本来の概念を重視したいですし、ここにこそデータ活用の本当の意義があると思っています。

データを面でとらえるだけでなく、N=1をも見逃すことなく見つめる。我々もデータ駆動型でMRさんやMSLさんと医師との「ディスカッション品質」の更なる向上に貢献できましたら幸いです。

株式会社JMDC
製薬本部 マーケティングソリューション部 部長
小沢 晴久 氏  
 
ジョンソン・エンド・ジョンソンなどを経て、医療系広告代理店マッキャンヘルスケアワールドワイドジャパンに入社し、主に製薬会社・医療機器会社を担当。10年のアカウント経験ののち、2018年からGMとして5年間エージェンシーをリード。新薬ローンチ、リブランディング、デジタル戦略、インサイトドリブンマーケティングモデルの導入など、多くのプロジェクトを指揮。2023年7月JMDCに参画し、マーケティングソリューション部を新設。

2025年の医師向けマーケティングのカギ ~顧客理解を深めるデータ活用と医師との新たな関係構築(医薬情報ネット 笹木)

昨年もこの時期に同様のテーマで本コラムを執筆しました。私は、「『顧客理解を深め、顧客課題を解決する』という基本に立ち返り、マーケティング活動を推進できるか否かが、競争力を左右する」と書きました。2024年は、従来にも増して、顧客の深い理解と適切なアプローチを実現するため、複数のデータを組み合わせて顧客動向を理解する動きが加速したと実感しています。

医師の専門領域、学術活動実績、処方傾向、施設の規模、処方実績、各社のプロモーション履歴、営業記録など、さまざまなデータから医師のプロファイルやインサイトを分析。さらにAIや機械学習の活用も進んでいます。

一方、医師らは「製薬企業がさまざまな手法を駆使して、医師とのコミュニケーションを最適化する取り組みに注力していることは理解できる。ただ、医師から情報を収集するだけでなく、シンプルに自分の研究内容や問題意識などを十分に把握した上で、実りあるディスカッションに臨んでほしい」と期待を語っていました。

医師との面談機会が限られる中、データを活用した準備を徹底し、適切なコミュニケーションを通じて価値提供できるかが、医師との関係づくりのポイントとなりそうです。医師とのコミュニケーション機会が増えれば、データでは読み解けないニーズを補完することができ、より良い医療を提供するパートナーとして製薬企業の役割が一層高まっていきます。

2025年は、引き続き、よりパーソナライズされたマーケティング活動が鍵となるでしょう。医師一人ひとりの情報ニーズを的確に捉えたコンテンツ提供や、オンライン・オフラインを統合したハイブリッドな施策が求められると予想されます。また、プライバシー保護規制の強化やデータの正確性確保といった課題にも対応しながら、信頼性の高いマーケティング活動を展開することが、企業の競争力を左右すると言えます。

株式会社医薬情報ネット
代表取締役
笹木 雄剛  
 
総合商社系の調査・コンサルティング会社にて、バイオ、医療、食品技術のコンサルタントとして事業開発やマーケティング支援プロジェクトに従事。2018年、医療用医薬品専門の企画制作代理店、株式会社医薬情報ネットに入社。学会情報データベース、論文情報データベースを中心に、製薬企業、医療機器メーカーのデータマーケティング支援を担当。

製薬マーケティング クリエイティブのトレンド

具現性の高い映像表現技術を用いた心に残る配信で差別化(東京アドメディカ 一ノ宮氏、田澤氏)

2024年は生成AIをはじめとし、デジタルを活用したさまざまなコミュニケーションの創造が日常になった年になりました。
 
弊社としましては、さまざまなデジタルの活用に注力した中で、今年多くの機会をいただいたものが「バーチャルスタジオ撮影」です。
 
クロマキーを用いた既存の撮影方法では完成のイメージがつきにくいというデメリットがありましたが、バーチャルを用いたテスト撮影を行うことによって質の高い納品をもたらし、壮大な空間表現によりアイデアの具現性の高い映像表現をもたらしました。

この技術は、配信においてもさまざまな可能性を広げます。例えば、リアルタイムで壮大な空間を合成することで、視聴者に臨場感あふれる体験を提供することができます。さらに、背景に動的なアニメーションを加えることで、静止画では表現できない迫力や動きを演出でき、配信イベント全体の印象を一層高めることができます。これにより、視聴者を引き込み、心に残る配信を実現することが可能になります。
 
弊社ではこの撮影方法を用いて、2025年は新たな映像表現の模索やみなさまとの協業に注力していきたいと考えています。

来年、是非「バーチャルスタジオ」でお会いしましょう!

株式会社東京アドメディカ
メディカルアド クリエイティブプロデューサー/XRプロデューサー
一ノ宮 緋奈子 氏  
 
東京アドメディカでプロジェクトマネージャーとして活躍。 HATONOMORI STUDIOでは、さまざまなバーチャル撮影に関わり業界最速で数多くのリアルタイムバーチャル撮影をプロデュースしている。

株式会社東京アドメディカ
メディカルアド クリエイティブプロデューサー/XRディレクター
田澤 侑樹 氏  
 
東京アドメディカでプロジェクトマネージャー兼ディレクターとして活躍。HATONOMORI STUDIOで撮影などのプロジェクトマネージメントの他、XR撮影のディレクターとしてリアルタイムバーチャル撮影を手掛けている

医師向け講演会 開催トレンドと今後のポイント

トレンド分析×パーソナライズドマーケティングで医師のニーズを満たす新しいWeb講演会に(Jストリーム 小山氏)

2024年は「医師の働き方改革」の影響もあり、製薬企業主催のWeb講演会にも少なくない変化が生じています。

弊社が保持している統計データでは、①夜開催減少、昼開催増加 ②30分程度の短尺講演会増加と、働き方改革施行前後でWeb講演会企画そのもののトレンドの変化が見られました。このことから、主催者(製薬企業)が働き方改革を見据え、今までより早い時間帯・短い時間での講演会を企画・運営し始めていることが伺えます。

また医師の視聴動向も主催者側の意向に沿う形で変化しており、①昼開催の人数および視聴時間の増加 ②30分未満(短尺)の人数および視聴時間の増加、かつ60分以上(長尺)の減少 ③日中帯はPC、夜間はスマホの利用率が増加 ④早期離脱率(5分未満)は減少傾向、となっています。一方、興味あるポイントを自由に巻戻し・早送りが出来る「追いかけ再生機能」の利用率は予想に反してほぼ横ばいでした。

これらの傾向から、短くなった情報収集時間でより効果的に活用できる工夫と合わせて、隙間時間にデバイスフリーで視聴できる新しいWeb講演会の形式や手法のニーズがさらに高まるものと推察します。

「2025年の壁」を目前に、医療現場での業務効率化はますます不可欠となります。マクロ視点でのWeb講演会分析で最新トレンドを定点観測しつつ、より多様化する医師個人のニーズやインサイトに応えるため、AIやデータ分析を活用した「パーソナライズドマーケティング」 が今後重要になってくると考えています。合わせてWeb講演会実施後、医師へのタイムリーかつ適切なフォローアップを実現するため、担当MRへの情報共有もより効率化していく必要があるのではないでしょうか。

株式会社Jストリーム
営業本部 メディカルエンゲージメント部 部長
小山 智治 氏  
 
2009年に株式会社Jストリームへ営業職として入社。メーカー、サービス、ITなど、ビジネス領域を中心に動画活用案件に携わりながら、2014年4月、医薬・医療機器企業を中心とした医療系専門営業組織となるメディカルマーケティングソリューション部に立ち上げメンバーとして参画。2024年4月より新設されたメディカルエンゲージメント部部長として医療メーカー様のデジタルマーケティング施策支援に従事。

多様化する価値観に応える講演会運営の進化(医薬情報ネット 加藤)

目的や予算、効果に合わせ、集客型、ハイブリッド、Webなど適切な開催形式を選択する傾向が如実になり、中でも集客型講演会の開催は昨年同様、堅調な1年となりました。

コンプライアンスの見直しや変更も多く、マーケティング担当者が注意を払うべき点は増え続け、戦略立案に集中するための業務の切り分けは、欠かせない要素となっています。

大規模講演会よりも、150名程度までの中規模講演会を複数都市で開催し、参加医師とじっくり向きあえる開催規模を選択する傾向が高まっていると感じます。宿泊費の高騰、タクシードライバー不足による交通手配が困難な点なども、大規模開催が敬遠される要因のひとつと考えると、この傾向はしばらく続くでしょう。

2024年9月に実施した「医師の製薬企業主催講演会の活用実態とニーズ調査 2024」からも、薬剤の採用・処方により影響を与える傾向はWeb講演会よりも集客型講演会の方が高く、リアルコミュニケーションの濃度を重要視していることが分かります。情報交換会は、活発なコミュニケ―ションを行うための場と医師の間にも再認識されているようです。

SDGsやフードロス対応など企業姿勢を敏感に感じる医師も増えていますので、細部に注意を払った講演会運営が求められます。医師だけでなく、社会全体の働き方や価値観の多様化を敏感に感じ取り、持続可能性やコミュニケーションの質を高めた効果的な講演会運営が必要とされるでしょう。

株式会社医薬情報ネット
GC Convention Unit 取締役/Coordinator Manager
加藤 朝  
 
医療機器マーケーティング、コンピューター会社の秘書を経て、2007年に(株)ゴールデン・チャイルドに入社。年間40-50本の講演会運営に携わり、延べ700本以上の講演会、学会や展示、アドバイザリーボード会議などの企画・運営に携わる。2022年9月に㈱医薬情報ネットと吸収合併をし、GCコンベンションユニットとして、コンベンション事業を継続。