Feloで市場分析レポートがサクッと作れる!乾癬領域で試してみた|製薬マーケターのための生成AI活用術

Feloで市場分析レポートがサクッと作れる!乾癬領域で試してみた|製薬マーケターのための生成AI活用術

製薬企業でも連日のように話題に上る生成AI。その業務効率化の可能性は明らかでありながら、「どこから」「どのように」取り入れるべきか、多くのプロジェクトマネージャーが頭を悩ませています。

そこで今回は、特にマーケティングプラン策定において、Feloという生成AIツールを活用した事例を紹介します。スライドの自動生成機能を持つFeloの特性を生かし、情報収集から分析、資料作成までの作業を効率化しましょう。

進化する生成AI

以前こちらの記事では、PESTLE分析を生成AIである「Genspark」を使って行いました。生成AIは日々進化しており、Genspark自身も2025年2月7日にGenspark MoA v2(Mixture-of-Agents)をリリースしました。この最新バージョンは、複数のAIモデルを統合してさらに正確な応答を生成することを目指しています。Gensparkが他の生成AIとどのように違うのか、どのような特徴があるのかは、ぜひGenspark自身にプロンプトを書いて尋ねてみてください。

生成AIはGenspark以外にもたくさんあります。また、マーケティングのプランニングでも、PESTLE分析以外にやらなければならない分析もあります。

そこで今回は、別の生成AIを使って、PESTLE分析以外のマーケティングプランの策定を試みます。

今回のマーケティング分析では、生成AI「Felo」を使用しました。
Feloは、日本のAIスタートアップ企業であるSparticle株式会社が開発した生成AIです。今回Feloを試した1番の理由は、プレゼンテーションを自動で生成する機能にあります。

さまざまな業務に追われ、多忙な日々を送るプロジェクトマネージャーにとって、プレゼンテーションスライドを自動で生成してくれるFeloの機能は、まさに夢のような機能のひとつでしょう。

今回はこのFeloを用いて、マーケティングのプラン策定で重要な製薬業界および特定の市場の分析を行い、スライド化するまでを取り上げていきます。

今回使用したAI 「Felo」とは?

Feloの特徴は、スライドを自動生成してくれるだけではありません。他にもたくさんの特徴があります。

せっかくの機会ですので、Felo自身にFeloの特徴を尋ねてみましょう。

筆者が書いたプロンプトを以下にお示しします。

▼プロンプト
『Feloの特徴を教えてください。その時、他の生成AIとの違いや特徴、Feloだからできること、Feloよりも他の生成AIの方が優れていることなど、各種生成AIを平等かつ客観的に比較し、評価してください。その結果を一覧表にしてください。』

Feloはどのように回答したでしょうか?Feloの回答のスクリーンショットをお示しします。

これらの回答を、Feloは1分もかからずに示してきました。

回答の内容も、現在一般的に広く評価されている他の生成AIの特徴を含め網羅しています。

では次に、実際に製薬業界と特定の疾患市場の分析をFeloを使い実践してみましょう。

Feloで尋常性乾癬市場と製品Aを分析

今回は、尋常性乾癬市場を分析してみます。

尋常性乾癬市場は、2010年以降生物学的製剤の新薬の上市が続いていて、多様な治療薬がたくさんあり1)、医師もそれらの使い分けに悩むことがありそうです。

この尋常性乾癬市場が現在どのような状況で、今後どのように変化していきそうかを、Feloに分析と予測をさせてみます。

Feloに以下のプロンプトで指示しました。

▼プロンプト
『あなたは尋常性乾癬の治療薬である製品A*のマーケター(プロダクトマネージャー)です。2025年の製品Aのマーケティングプランを作成するために、現在の日本の尋常性乾癬の治療薬全てと市場の各製品の売上やガイドラインでの評価などの情報を収集して、SWOT分析をします。そこで、下記のデータなどを参照して、日本の2025年現在における尋常性乾癬市場と各治療薬を分析してレポートにまとめてください。その時、次のURLの情報は必ず参照してください。
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/kansen2022.pdf
その次に、製品Aと他の尋常性乾癬治療薬を比較したSWOT分析をして、すべての尋常性乾癬治療薬の競争力を評価してください。その評価した結果を一覧表にまとめてください。』

*実際のプロンプトには製品名を入れています。

今回製品Aを選んだ理由は、尋常性乾癬治療薬としては最新鋭であるためです。製品Aが今後、先に市場シェアを獲得している競合品にどのように対峙していくのかをFeloがどのように分析するのかに興味を持ちました。

実際にFeloが回答した画面は下記の通りです。

この回答結果は、尋常性乾癬治療薬を担当しているプロダクトマネージャーから見れば当然の内容かと思われます。ベテランのプロダクトマネージャーほど、「これは当然の情報」、「真新しさがない分析結果だ」と思われるかもしれません。

ですが、これを新入社員にやらせたら、ここまでまとめるだけでも膨大な時間がかかるでしょう。不慣れな人にとっては、未知の疾患領域について分析する際に、どのような情報ソースにあたるのが適切なのかすら、全く見当がつかないからです。

実際にFeloが前述の情報収集・整理・まとめに要した時間はものの2〜3分であり、これは大幅な時間短縮です。この回答に不足あるいは修正が必要なら、その部分だけを手直しすれば済みます。私たちの作業時間が大いに短縮され、私たちができることがどんどん増えていくでしょう。

このように、新卒・新人であっても、未知の領域について情報を収集してまとめることができるのが生成AI、特にGensparkやFeloといったAIエージェントの優れた強みでしょう。

分析結果をプレゼンテーションスライドとして自動生成する

それでは、ここまでの分析結果をプレゼンテーションスライドとして作成してみましょう。

前述の通り、Feloの特徴のひとつにプレゼンテーションスライドを自動生成できることが挙げられます。Feloにプレゼンテーションスライドを作成させるには、画面右上にある「プレゼンテーションを生成」をクリックするだけです。

Felo|プレゼンテーションを生成

赤枠をクリックすると、Feloは自らが分析した回答内容をもとに、プレゼンテーションスライドの全体構成を考え始めます。Feloが作成したアウトラインのスクリーンショットを、一部抜粋してお示しします。

Felo|アウトライン

このスクリーンショットでは第1章の内容のみですが、実際には第6章の結論までがアウトライン化されています。このスクリーンショット内にある「次へ」をクリックしてみます。



Felo|テンプレートの選択

ここでスライドのテンプレートを選択できます。下の方にスクロールしていくと、際限なくテンプレートが表示されます。この中から任意のテンプレートを選択して「PPTを作成します」をクリックしてみます。

すると、Feloはテンプレートを駆使し、分析結果のアウトラインに則って、最適なスライドレイアウトを選び出し、自動的にスライドを作成し始めます。その動作はアニメーションを早回しで見ているかのようです。この様子を見ているだけでも非常に楽しいので、ぜひ皆さまもご自身でFeloにスライドを作成させてみてください。ちなみに所要時間は、今回の尋常性乾癬のスライド作成で10秒もかかりませんでした。

Felo|プレゼンテーションのダウンロード

スクリーンショットの左下にある「ダウンロード」をクリックしてみると、ファイルの種類(パワーポイント/画像/PDF)とテキストの編集の可否(編集可能/編集不可)を選択できます。必要に応じて選んでください。今回はファイルをパワーポイントで、テキストを編集可能としてダウンロードしてみます。

すると、以下のような全25枚のスライドセットがダウンロードできました。一部抜粋してお示しします。

Felo|プレゼンテーション-CONTENTSFelo|プレゼンテーション-疫学Felo|プレゼンテーション-強み(修正前)

Feloが作成したこの製品AのSWOT分析のスライドは、Feloが分析したテキストをうまく反映できていないので、修正が必要です。修正したスライドもお示しします。

Felo|プレゼンテーション-強み(修正後)

このように、スライドをおおまかに作成してしまってから、細かい箇所を任意で修正・加工などができるということは、プロダクトマネージャーのスライド作成作業の時間短縮と作業効率の向上につながります。

その他に気をつけておくべき点は?

製薬企業の各製品にスライドのテンプレートの用意があると思われます。そのテンプレートにFeloが直接書き込むことは、現在(2025年3月15日時点)はできないようです。

そのため、プロダクトマネージャーがFeloを自社製品のマーケティングプランのスライドに利用するには、Feloが作成したスライドを自社製品のスライドテンプレートのレイアウトに変更することになるでしょう。

他にも気をつけておくべき点があります。Sparticle社は、Feloが作成したスライドの商用利用を認めていません。そのため、Feloによって作成されたスライドの扱いは社外秘にするといった注意が必要です。

とはいえ、その作業や注意だけで済むなら、Feloをマーケティングのプランニングで使う価値は非常に高いです。

Feloの無料版では、スライド作成は1日あたりで作成できるファイル数やスライド数が制限されます。筆者が以前試してみた際は1日5ファイルまで作成できました。

これらの諸条件は、時間の経過とともに細かく変わっていくことがあります。これはFeloに限ったことではありません。生成AIはその使い勝手を向上させるための取り組みが継続的になされているということです。
細かい仕様変更を確認しておきましょう。

Feloでマーケティング分析から資料作成を効率化

今回紹介したFeloの活用事例からは、製薬企業のマーケティングプランの策定における生成AIの可能性が見えてきます。情報収集、分析、スライド作成といった一連のプロセスが効率化され、市場分析が数分で完了するなど、時間短縮効果は明らかです。これにより、プロマネはより付加価値の高い業務に時間を割くことができるのではないでしょうか。

<出典>
1) 日本皮膚科学会ガイダンス 乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2022 年版)
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/kansen2022.pdf