製薬業界マーケティング/DX最新動向まとめ 2025年1・2月版

製薬業界マーケティング/DX最新動向まとめ 2025年1・2月版

昨今、医療・製薬業界でも、業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)やデジタルマーケティングに注力する動きが多くなってきました。本記事では、2カ月に1回、各製薬企業のプレスリリースより、最新製薬マーケティングやDXの取り組みをピックアップ。マーケティング、プロモーション、DXについて、業界全体の最新トレンドや、他社がどのような動きをしているのかを把握できます。今回は、2025年1・2月を対象に最新動向をまとめました。

※調査対象の企業は2024年5月にIQVIAより公開された23年度販売会社ベース企業売上ランキング(期間:2023年4月~2024年3月)より抜粋した19社。50音順にリストアップ

【2025年1・2月サマリー】

  • 2025年1月、2月はデジタルマーケティングやDX関連のプレスリリースが少なめ
  • デジタルテクノロジーによる新たな医療ソリューションが実装

近年の製薬業界は、従来の医薬品開発にとどまらず、テクノロジーを活用した新たな医療ソリューションの開発や医療システムの効率化に向けた取り組みを加速させている。

大塚製薬と株式会社アイ・ブレインサイエンスは、認知症の診療支援のための神経心理検査用プログラム「ミレボ®」を発売。これにより、検査者の知識や経験に依存せず、一定の品質で認知症の早期発見をサポートすることが期待されている。

また、アストラゼネカは治験プロセスのデジタル化を推進。同社が開発した分散型臨床試験(DCT)のための治験アプリ「Unify(ユニファイ)」は、治験への参加障壁が下がり、より多様な患者からのデータ収集が可能になる。

  • データ活用による予防医療と地域ヘルスケアへの貢献

製薬企業が、地域全体の健康増進に関与するパートナーとしての新たな役割を模索している。日本ベーリンガーインゲルハイムは佐賀県多久市と連携し、「多久市データヘルスプロジェクト」を立ち上げ。このプロジェクトでは、地域の医療データを活用して健康課題の解明とその対策、保健師等への情報提供支援、健康教育などを推進する。患者さんや地域医療に貢献するための幅広い取り組みをおこなう。

【各社プレスリリース抜粋】
■アストラゼネカ株式会社

自宅からも参加可能な新しい治験のカタチ ~治験アプリ「Unify」本格始動~

2025年2月26日

アストラゼネカは、分散型臨床試験(DCT:Decentralized Clinical Trial)に有用な治験アプリ「Unify(ユニファイ)」で「スマートフォンと検査機器の連携による治験データの測定」、「バーチャル来院」、「治験薬の患者さんへの直接配送」などが可能となる治験の実施において、本格的に患者さんへの使用を始動した。Unifyを導入することで、患者さんの治験参加に対する負担や障壁が下がり、さらに、製薬会社は新薬開発までの時間とコストを削減できることが期待できる。
DCTを実現するUnifyは、アストラゼネカ英国本社(AstraZeneca PLC)が独自開発し、2025年1月末現在54か国以上、93言語に対応、統合的な治験ソリューションを提供する治験アプリ。治験のより効率的な運用を通じて、ドラッグラグ・ロス解消に貢献していく。

https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2025/202502261.html

■大塚製薬株式会社

日本初、認知症の診療支援に用いる神経心理検査用プログラム「ミレボ®」 新発売‐2025年1月1日より認知症領域のSaMDとして初めての保険適用‐

2025年1月14日

大塚製薬とアイ・ブレインサイエンスは、認知症の診療支援のための神経心理検査用プログラム「ミレボ®」について、2025年1月1日付けで認知症領域のSaMD*1として初めて保険適用を取得し、販売を開始した。

「ミレボ®」は、アイトラッキング(視線計測)技術を用いて行う神経心理検査用プログラム。タブレット端末にインストールしたアプリ「ミレボ®」を用いることにより、約3分で、簡便に検査を行い、客観的な検査結果を得ることができる。画面に表示される質問に沿って被検者が正解の箇所を見つめることにより、データが自動的にスコア化され、定量的かつ検査者の知識や経験に依存せず客観的に評価することが可能。神経心理検査の選択肢を広げ、認知症の早期発見の一助になることが期待される。

*1:Software as a Medical Device プログラム医療機器

https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2025/20250114_1.html


■日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社

「多久市データヘルスプロジェクト」始動 - 佐賀県多久市と日本ベーリンガーインゲルハイム、地域の医療データを活用した保健事業の推進に関する連携協定を締結

2025年1月10日

佐賀県多久市および日本ベーリンガーインゲルハイムは、地域の医療データを活用した保健事業の推進に関する連携協定を締結。本協定では、多久市と日本ベーリンガーインゲルハイムが「多久市データヘルスプロジェクト」として相互に連携および協力し、以下の取り組みを推進することで、多久市の健康寿命の延伸および医療費の適正化を目指す。

連携・協力項目

  1. 健康課題の解明とその対策
  2. 地域医療に従事する保健師等への情報提供の支援
  3. 各種健康教育等ポピュレーションアプローチへの支援


多久市において2023年度より試験的に使用を開始している「糖尿病合併症リスク予測モデル」の活用や、ベーリンガーインゲルハイムがグローバルで開発した「地域医療分析ツール」の試験的な導入、後期高齢者データを階層化して過去の医療データを追跡する探索的分析などの事業を直近では予定している。

https://www.boehringer-ingelheim.com/jp/press-25-0110