運営サポート実績累計 1,500 本の現場担当者が語る、医師向け講演会の変遷と成功のポイント
COVID-19感染拡大の影響で、製薬企業が主催する医師向け講演会の大半はオンラインに移行しました。約3年が経過し、まもなくCOVID-19の感染症分類が5類に引き下げられる中で、医師向け講演会はどのように変わっていくのか。講演会のこれまでの変遷や成功に導くために留意すべきポイントについて、医師向け講演会の運営サポートに20年以上携わる株式会社医薬情報ネット GC Convention Unit※の現場担当者2名に取材しました。
※1990年設立以来32年間超、運営代理店として多岐にわたる講演会のサポート実績を有する医学・医療に特化したコンベンション企業である株式会社ゴールデン・チャイルドが、2022年9月1日より医薬情報ネットに参画
- COVID-19の感染拡大が収束に向かう中で、再びリアルの講演会が増加傾向に
- ―まずは、医師向け講演会の主な形式とそれぞれの特徴を教えてください。
- ―医師向け講演会は、昔と比べてどのように変わってきていますか?
- ―COVID-19感染拡大を経て、今後はどのようなスタイルになっていくことが予想されますか?
- テーマ設定と医師のスケジュール確保が成功するポイント
- ―多くの医師が参加する講演会となるために、製薬企業各社はどのような工夫をしていますか?
- ―参加された医師の満足度が高い講演会の特長をお聞かせください。
- 試行錯誤で講演会のテーマ設定のノウハウを蓄積
- ―医師向け講演会に向けて、マーケティング担当者は、どのような役割を果たすべきでしょうか?
- ―最後に、より良い講演会を開催していくためにはどうすればいいでしょうか。
COVID-19の感染拡大が収束に向かう中で、再びリアルの講演会が増加傾向に
―まずは、医師向け講演会の主な形式とそれぞれの特徴を教えてください。
医師向け講演会には、大きく分けて4つの形式があります。
最も歴史があるのは、集客型(リアル)講演会です。ホテルなどの会場で開催する記念講演会や各領域の医師による情報交換会などで、来場いただいた医師とMRの皆さまがコミュニケーションをとる機会を創出できることが評価され、多くの集客型講演会が開催されていました。
次に、COVID-19の感染拡大によって急速に普及したのが、Web講演会です。比較的短期間で開催できる手軽さもあり、最近では一般化してきました。また、メタバースを活用したものなど、新しい技術も取り入れられています。
これらの集客型とWeb講演会を融合させたものがハイブリッド型講演会です。会場の収容人数に制限がある集客型に、収容人数に制限がないWebをプラスできるので一番集客力がある講演会です。
この他に、少人数プレミアム型講演会があります。スピーカーズミーティング、アドバイザリーボード、若手育成ミーティングなど参加者を少数に絞った講演会で、Zoom(Meeting/Webinar)やMicrosoft Teamsなどのツールを利用した小規模な講演会・会議など、手軽かつ安価に開催することができます。
―医師向け講演会は、昔と比べてどのように変わってきていますか?
私たちがゴールデン・チャイルド時代に入社したのは20年程前になりますが、当時は、インパクトのあるショーのようなオプションがある集客型講演会が多数開催されていました。しかし、厚労省からの指導や製薬企業のコンプライアンスが強化されるにつれて、華やかなおもてなしのある講演会は影をひそめるようになり、現在主流となっているセミナースタイルが中心になってきました。
そして、COVID-19の感染拡大が始まると、密になることを避けるため、非接触であるWeb講演会が主流となりました。それまでは、医師向け講演会というと集客型が中心で、Webは軽視されていたのですが、参加する医師側の意識も変わり、Web講演会が受け入れられるようになりました。
―COVID-19感染拡大を経て、今後はどのようなスタイルになっていくことが予想されますか?
COVID-19禍で急激に増えたWeb講演会は、足を運ばずに業務の合間に参加できる便利さや、システムにもよりますが匿名で質問をすることができる手軽さなどのメリットから、これからも減少することなく開催されていくと思います。
一方で、集客型は再び増加の動きが出てきており、現在でも会場が抑えられない、売れっ子のディレクターは年内の土日は埋まってしまっている、といった状況が出てきています。ただ画面を見るだけよりも会場で聴講する方が集中力が続く、講演会後の情報交換会で追加質問ができる、さまざまな医師とリアルにお会いして人脈作りができるといった理由から集客型を好まれる医師も根強く存在することや、COVID-19が5類に移行することを政府が決定したことで、集客型はこれからも増えていくことが予想されます。
ハイブリッド型については費用がかかることもあり、まず集客型で企画を始めて、3ヶ月程度前になったところで集客が上手くいっていなければ予算をつけてハイブリッド型に切り替える、といった方法が取られる事例が多く見られることが現在の傾向としてあります。今後集客型が増えていくことで、ハイブリッド型は少し減っていくのではないかという気がしています。
テーマ設定と医師のスケジュール確保が成功するポイント
―多くの医師が参加する講演会となるために、製薬企業各社はどのような工夫をしていますか?
講演会に多くの医師を集客するためには、医師のスケジュールを確保することが重要です。そこで、最低3カ月程度前に案内状を発送することから逆算してキックオフのミーティングを行います。
なぜ3カ月前かというと、講演会に参加できる医師の日程が、ほぼ決まっているからです。ゴールデンウィークや夏休み、年末年始、年度初めなどの休暇や繁忙期、さらに年次や各エリアでの学会日程などを考慮し、土日の週末に開催するとなると、自動的に日程は絞り込まれます。最低でも3カ月程度前からインフォメーションしておかないと、参加される医師はもちろん、講演者やファシリテーター、座長をお願いする医師の日程も確保できません。
このようにして3カ月前を目安に1回目の案内状を発送し、2回目、3回目と、何回かフォローアップしながら参加される医師を確保していかないと、多くの参加者を集める講演会の開催は難しいと思います。
さらに、講演会のテーマ設定も重要だと思います。私たちは、このような講演会のテーマ設定などのサポートはしていないのですが、これまでの中で参加された医師の満足度が高い講演会の多くは、時事的に話題になっているテーマや各領域で関心が高いテーマ、新たな治療法に関するテーマなど医師の興味・関心を引くものが多かったように記憶しています。
―参加された医師の満足度が高い講演会の特長をお聞かせください。
医師の情報ニーズを捉えた講演会の反響がいいのはもちろんなのですが、その中でも、「この先生のお話を聞いてみたかった」と他の医師から定評のある先生を講演者として招聘した講演会は、評価も高くなる傾向があります。そのためにも、人気のある先生のスケジュールを早めに確保することも成功する一歩だと思います。
また、講演者やファシリテーター、座長などの医師と密にコミュニケーションを取って良好な関係を築けていると、講演会そのものがスムーズに運営できることはもちろん、講演後の情報交換会など交流の場にも参加していただくことが容易になりますので、より参加者にとって有意義な会となっている印象です。
さらに、少人数のラウンドミーティング形式で、1つのテーマに対してディスカッションするプログラムを入れた参加型の講演会は、参加者にとって持ち帰ることのできる学びが多い内容となるので好評です。このラウンドミーティングをスムーズに運営するためには。各々のラウンドミーティングのファシリテーターである医師と製薬企業の担当者が良好な関係性を築いていることが重要です。医師に対して「時間が押しているので巻いてください」とか、「そろそろ別のテーマに」といった合図を送って、その合図をしっかりと受け止めながら進行するファシリテーターの医師との連携プレーを拝見していると、両者が良好な関係を築けていることが参加される医師の満足度を高めるキーポイントだということを肌感覚で実感します。
製薬企業の担当者の方が、こうしたテーマ検討や、講演者やファシリテーター、座長などと密にコミュニケーションを取って良好な関係を築くことに注力するためにも、技術的な分野やホテルや旅行代理店、配信会社などとの事務連絡などについては、できるだけ運営代理店に一任することをお勧めします。製薬企業各社から私たちが高い評価を得ているのは、特に各所への事務連絡までワンストップできめ細やかに対応してきたからです。
試行錯誤で講演会のテーマ設定のノウハウを蓄積
―医師向け講演会に向けて、マーケティング担当者は、どのような役割を果たすべきでしょうか?
これまでお話してきた内容と重複する部分もありますが、医師向け講演会を開催することが決まった時点で、すぐ運営代理店に連絡し、集客型であれば場所を確保されることをお勧めします。講演会が開催できる日程は、各社ともほぼ同じようなものなので、早めに行動されることが肝要です。
集客型であれば、機材スペースや消防法の観点から、実際にセッティングしてみると会場の収容人数に対して入る人数が大幅に減る可能性もありますので注意してください。加えて、現在ではCOVID-19感染拡大前のように会場にフル動員した状態で開催するのではなく、500名収容の会場に200名といった、余裕のある定員での開催がほとんどですので、その点も考慮する必要があります。
また、講演者やファシリテーター、座長などをお願いする医師とのコミュニケーションを密にとり良好な関係性を築くことはもちろんですが、その中で、コンプライアンスの面から開示できるデータの範囲など内容面についてのすり合わせも綿密にしておいた方が良いと思います。直前になってスライド変更などをすると、医師との関係性が壊れてしまうことにもなりかねませんので、ここは特に注力された方がいいでしょう。お互いの信頼関係を築くことができれば、次回の講演の相談などの依頼もしやすくなります。
―最後に、より良い講演会を開催していくためにはどうすればいいでしょうか。
MRの皆さまから担当医師の情報ニーズやフィードバックを収集する仕組みがあるといいと思います。講演会に参加される医師の情報ニーズは、一番身近で接している各現場のMRの方が一番ご存知のはずです。これらの情報ニーズを上手くキャッチアップしながら、試行錯誤で講演会のテーマ設定のノウハウを蓄積することができれば、より集客力のある講演会を行うことができると思います。
また、自社製品の情報提供にとどまらず、疾患全体の啓蒙活動などを含む幅広い視野を持つ講演会は、参加した医師から高い評価を受け、息の長い講演会になる傾向があります。また、ひいては製薬会社様自体の評価を高めることにもつながります。
そうした企画戦略部分や役割者の医師とのコミュニケーションに集中できるよう、運営に関わる手配や技術的な心配を私たちのような運営代理店にお任せいただければと思います。本来注力すべきところにリソースを投入していただけるよう全力でサポートいたしますので、役割分担をしながらより良い講演会を一緒に作り上げていければと考えています。