KOL(Key Opinion Leader)はどう選ぶ?KOLの判断基準&要素の出し方を解説!

KOL(Key Opinion Leader)はどう選ぶ?KOLの判断基準&要素の出し方を解説!

KOLとはKey Opinion Leader の略語です。ターゲット顧客のセグメント分けとして、影響力を持つ顧客をKOLと定義し、マーケティングやセールスに活用する事があります。医療用医薬品の市場ではステークホルダーが多岐に渡るため、様々な観点からターゲティングを考える必要があります。Medinewを運営する株式会社医薬情報ネットでは、論文・学会情報データベースを所有していることから、多くの薬剤のマーケティングにおいてKOL(Key Opinion Leader)選定を行ってきました。
本記事では、その経験を踏まえて、医療用医薬品の最重要ステークホルダーであるKOLの選定方法について紹介します。

KOLマッピング

KOLとは?

医薬品のマーケティングにおいて、KOL (Key Opinion Leader)とは、「対象領域で影響力を持つ権威ある医師」を表す言葉として捉える方が多いではないでしょうか。講演会のスピーカー・座長をお願いする医師をKOLとしているマーケティングチームもあれば、何となく有名な論文著者をKOLとしているマーケティングチームもあるかと思います。多くの場合では、明確な判断基準は設けられず、マーケティングチームの担当者がデスクトップリサーチの結果、何となくKOLが選定されていることが多いように見受けられます。KOL選定は、正解があるものではありません。

KOLの判断基準を設けていますか?

しかし、KOLを選定する上でどういった医師をKOLとするか、判断材料に“客観的データ”を含め、判断基準に“明確な基準”を設けることには、「ターゲットの検証・見直しが簡易」になり、「漏れなく網羅的に選定できる」というメリットがあります。(図1)多くのマーケティングチームでは、KOLの定義が明確にされず、MRからのアンケート結果、過去に経験のあるプロダクトマネージャーの意見を採用しKOLを決定しているケースがあります。もちろん、KOL選定に答えが明確にあるわけではないため、間違っているわけではありません。ですが、KOL選定のノウハウが俗人に帰属しているため、担当者が変わると現在のKOLがなぜ選ばれれているのか、見直しの必要有無など、KOL選定の理由が分からず組織課題となってしまうケースもあります。そのため、マーケティングチーム内で、客観的データを用いて、ターゲットの明確な基準を設ける事は、マーケティングの再現性やPDCAサイクルを進めていく上で、とても重要になります。

KOL選定の既存手法と提案手法
図1: KOL選定の既存手法と提案手法

KOLの判断材料(データベース&選定指標)と選定フロー

KOLの判断基準を設けるための客観的データには、どんな種類のデータが考えられるでしょうか。下図に各種データソース、及び、各種データベースから抽出できる選定指標を挙げてみました。(図2)

KOL選定のためのデータベース&選定指標
図2:KOL選定のためのデータベース&選定指標

上記のデータソース以外からもKOL選定は可能ですし、対象の薬剤により、選定指標もデータソースも異なってくるはずです。データソースは多ければ多いほど、精度が高まる事もありますが、データ収集のコスト、集めたデータの集計・加工のコストも比例して高くなります。そのため、最低限度のデータソースはどこまでなのか見極める事が必要です。見極めるポイントとしては、ターゲット医師の抽出量で、漏れが無いようにデータソースを決定することはとても重要です。

また、対象のデータソースが決まったら、各種のデータソースからどのような指標が定量化できるか確認していきます。例えば、学会情報データベースでは、「第一演者経験数」「座長経験数」「学会登場回数」「企業セミナー経験数」などが指標として抽出することができます。この指標を用いてKOL選定を進めます。

▼関連資料
【PR】無料DL!医薬品マーケティングにおける学会情報データベースの活用ガイドブック 【PR】無料DL|「論文情報データベースの活用ガイドブック」~論文情報を活用した製薬企業のデータドリブン・マーケティングについて~

KOL選定フロー①各種データベースからキーワードで関連する人物を抽出する

対象のデータソースと選定指標が決まったら、データを抽出していきます。薬剤の「対象疾患」「生体分子名」「症状名」など、特定のキーワードを選び、各種データソースから抽出します。
例えば、
‐ 学会情報データベースであれば、 特定キーワードが含まれる学会演題に関連した人物
‐ 論文であれば、 タイトルに特定キーワードが含まれる論文 に関連した人物
このように、特定のキーワードに紐づく人物データを抽出することで、より精度の高いターゲットリストが作成でき、その中からKOLを選定することができます。

データベースやサービスにより、データの抽出難易度が異なりますが、Pubmedなどの論文データベースであれば簡易に抽出できます。複数のデータソースからデータを抽出した場合には、それぞれ抽出したデータを突合しましょう。人物の名前表記が日本語・アルファベットなどテキスト情報が異なるため、人的に確認を行う必要があり、同姓同名の人物を除くために必要な作業であり、目視でデータを確認するため、ある程度の工数がかかります。

データをランキング化するステップ
図3:データをランキング化するステップ

KOL選定フロー②人物単位でスコア化(スコアリング)する

判断要素となるデータを人物単位で抽出したら、マーケティングにおいて重要とするべき選定指標に重み付けを行い、スコア化していきましょう。指標をスコア化することで、ランキングが生成でき、用途に応じたKOLを選定する事が可能になります。以下には重み付けの例を示します。(図4)

人物単位のスコアリング例
図4:人物単位のスコアリング例

重み付けをどの指標を何パーセントにするのかは、経験値で判断するしかなく、繰り返し見直すことで精度を高めていくしかないかと思います。昨今では、新発薬剤がプライマリケア領域から、スペシャリティ領域へ移行している傾向もあり、KOLの選定要素も学術寄りに変わってきたように感じます。そのため、論文の第一著者登場回数、Lastオーサー登場回数、学会での座長経験数など、重み付けの比重が高まる傾向になります。

どのくらいのKOL数をマーケティングチームはカバーすべきか

KOLをランキング化したところで、どのくらいの人数をKOLとしてマーケティングアクティビティでカバーするべきなのでしょうか。薬剤のターゲット患者数、医師数に応じて大きく変動するかと思いますが、一般論として、20〜30名、多くて40名程度のKOLをカバーする薬剤が多いのではないでしょうか。KOLの数も、薬剤の全体ターゲット数により変わりますし、そもそもスペシャリティ領域において、専門性が高度になっていくため、KOLが数名しか上げられないというケースも今後増えていく可能性が高いはずです。

KOL選定フロー③必要に応じてインタビュー・アンケートなどの定性調査を

KOLをスコアリングしランキング化できたことで、一定基準でKOLを選定する事が可能になります。ただ、記載のやり方で算出した数値には、医師の診療方針や、影響を受けている医師など、薬剤のマーケティングに影響を及ぼす多くの要素(定性情報)は含まれていません。そのようなKOLの思考回路、影響力などを、インタビューやアンケートなど実施して深掘ることで、KOLの解像度を上げていく必要もあります。すでに貴社内で得られている情報や予算に応じて、実施可否を判断されるのがオススメです。
最初からインタビューやアンケートを実施してしまうと莫大な費用とリサーチ工数がかかってしまいます。そのため、KOLをランキング化しTOP20位までをリサーチするなど、リサーチ対象の目星を付けてから定性調査を実施することを推奨しています。

KOLの選定タイミングは

KOLを選定するタイミングは、上市のタイミング、もしくはその前、プレマーケティング時に選定することが多いかと思います。1度決めてしまうと長年KOLを変えない場合もあるかと思いますが、薬剤によっては毎年定期的に見直しているマーケティングチームも多く見受けられます。毎年、定期的に見直すことで、領域においての動きを把握し、漏れなく必要な医師をフォローすることが可能になります。

また、昨今ですと部位を横断していくような薬剤も多く登場しているため、対象疾患や部位別にKOLを整理し、疾患や部位の重複して専門性の高い医師をKOLとして選定するなど、薬剤の将来性を含めて検討する重要性も高まってます。

最後に

医薬品のマーケティング業界において、KOLといえば誰でもわかる略語ですが、しっかりとKOLを定義付けし、定量的に判断・見直しができているマーケティングチームはそう多くないと感じています。
医薬情報ネットでは、様々なデータベースを用いて、定量的にKOL選定や、ターゲティングを行える支援をしていますので、ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

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