#1 欲しい情報は医師以外から入手せよ|Dr.心拍の「製薬本社にちょっと言いたい」
こんにちは。勤務医として臨床に携わりながら、専門的知見を生かしてさまざまなヘルスケア企業とお仕事をしております、Dr.心拍と申します。普段医療メディアやSNSで発信をしております。臨床医が本音で語る連載シリーズとして、製薬企業の情報提供や、医療現場との関係性について感じていることをお話しさせていただきます。
最近では、MRによる情報提供に関して病院内で規定が設けられており、アポイントがない場合には不可といった病院もあります。
MRにとって医師へ情報提供を行う意義としては、適切な情報提供を行うことで正しく患者さんに薬剤が使われてほしいという想いがあるかと思います。
一方で医師目線で考えると、インターネットなどの普及により現在ではほとんどの情報がMRを経由せずとも入手可能になりました。わざわざアポイントを受けて時間を割くほどのメリットがなく、まったくアポイントを受けない医師もいるのが実情です。
私も実際ほぼ受けていません。理由としては情報の新規性、独自性がないというのに加えて、どちらかというとMRによる情報提供ではなく、我々が情報提供をする側になっているからです。
「現在〇〇な患者さんを診療していますか?」「〇〇の治療薬を使っている患者さんはいますか?経過はいかがでしょうか?副作用は問題ないでしょうか。」など。
これって、情報提供を受けているのではなく、情報を取りに来ているわけですよね。そこになぜこちらが無償で時間を割かなければならないのか疑問です。通常専門家に対するヒアリングは医師でなくても1時間につき数万円以上は必要になります。そのような専門的ヒアリングを無償で行う意義はないと考えていますので、そういう観点でも私はお受けしないようにしています。
それでは、「MRの存在意義がないのか」というとそうでもありません。本社から言われるままの営業ではなく、どんなニーズがあるのか、レギュレーションという言い訳をせずに専門職として何がやれるのかぜひ自分の頭で考えていただきたいと思います。そういう視点で本社勤務の方もMR教育に生かしていただければと思います。
前置きが長くなってしまいましたが、医師へのアプローチが困難となっている今、他職種へのアプローチも一つの方法です。
例えば、我々医師が診療中に副作用で困っている時、特に新規治療薬の場合などは、ドラッグインフォメーション(DI)に記載してあるようなメジャーなもの以外の副作用で困って薬剤師に相談することが度々あります。その際、薬剤師もいろいろ調べながら時にMRに情報提供を依頼することがあります。
結果として、MRを経由して提供された情報提供により、患者さんの副作用への対処に役立ったということもあります。
また、実際の患者さんの看護に当たっているのは主に看護師です。入院治療中の患者さんから何か訴えがあるとすると、医師でも薬剤師でもなく看護師が対応に当たります。ですので、MRから看護師への情報提供により、病状理解、特にどんな疾患に対してどんな治療をしていて、どんな副作用が出る可能性があるのかなどを適切に看護師に理解してもらうことで、結果として患者利益が大きく、治療も適切に継続できることになります。
このように、これまで医師に特化して行ってきた情報提供をいろんな視点で考えてみると、アプローチを変えることにより、結果としてよい医療が提供でき、患者さんにも貢献できるでしょう。一例として薬剤師や看護師を挙げましたが、他にも多数の職種が関わっていますので、チームとして貢献できる、その一員に製薬企業の社員もなれるような関わりができると良いですよね。
さて、今回はMRの情報提供に関して視点を変えてアプローチしてみましょうという内容をお伝えしました。最後に注意点としては、医師以外でもやっぱり限られた時間を割くのだからお互いにとって有意義な時間になるように、そして突然訪問はしないことなどは注意していただければと思います。