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医師調査から導く、製薬企業のオウンドメディアとメルマガ運用のポイント/MDMD2023Summerレポート

医師調査から導く、製薬企業のオウンドメディアとメルマガ運用のポイント/MDMD2023Summerレポート

2023年6月に開催された「Medinew Digital Marketing Day(MDMD) 2023 Summer」。株式会社メディクトの下山直紀氏による講演「医師向けサイトとメルマガ 医療業界デジタルマーケティングの現在地 ~医師調査データから~」では、これからの医師向けサイトの在り方や、デジタルマーケティングを成功へ導くMAツールの活用などについて、医師調査データを踏まえながら解説がありました。

医師への情報提供チャネルの変化

昨今の製薬業界を取り巻く環境変化の中で、医師への情報提供の方法も大きく変化してきました。「COVID-19によるMR活動の制限」「MR数の減少」「MR数が少ない希少疾患専門の企業やスタートアップ企業の増加」などで、従来のMRによる情報提供活動から、デジタル活用またはハイブリッドによる情報提供が進んでいます。

COVID-19禍の影響を受け、ペイドメディアの活用や、自社のWebサイトやメールマガジンなどのデジタルチャネルでの情報発信により、デジタルマーケティングを強化する企業が増えてきました。

ペイドメディアのメリットは、医師のメールアドレスを自社で保持していなくても、ペイドメディアで保持しているメールアドレスからアクセス可能であることや、メディアの認知度の高さ、開封率の高さが挙げられます。一方で、掲載のたびに費用がかかることや費用対効果が不明瞭、条件や期間などのルールはペイドメディア側に依存しやすいといったデメリットがあります。

ペイドメディアの活用増加
2023.6.1(株)メディクト『医師向けサイトとメルマガ 医療業界デジタルマーケティングの現在地』資料より抜粋


オウンドメディアのメリットは、自社のメディアであるため掲載費用がかからないこと、コンテンツの権利が自社に帰属しているため再利用可能なこと、コンテンツの削除や改訂、掲載ルールの設定を自社で管理できることが挙げられます。また、メールアドレスがあれば直接医師にアプローチでき、詳細な効果測定が可能である点も特徴です。

メディクトが2023年5月に実施した医師調査によると、新薬を最初に知る情報源は単体では特に医師向け情報サイトが高いですが、「医師向け情報サイト(ペイドメディア)+メルマガ」が合計48.4%、「製薬企業チャネル(医師向けサイト+メルマガ+MR」が合計42.2%という結果が出ており、製薬企業チャネルとペイドメディア各チャネルの合計は近い割合を示しています。各メディアやチャネルをうまく活用することで、より多くの医師にリーチができることが示されました。また、自社のデジタルチャネルやMRの活用も有効といえます。

新薬に関して最初に知る情報源は
2023.6.1(株)メディクト『医師向けサイトとメルマガ 医療業界デジタルマーケティングの現在地』資料より抜粋

製薬企業のメルマガ運用における5つのポイント

製薬企業の医師向けサイトは、会員制が主流になっています。会員に向けて情報発信が可能なことから各社メールマガジンを実施していますが、裏を返せば医師は毎日複数社から多くのメールを受け取っているということです。

「1日に何通“製薬企業”からのメルマガを受信しているか」という設問では、「2〜3通」が最も多く32.6%、「4〜5通」「6〜7通」「8通以上」受信する医師も全体の約2割にのぼりました。

1日に何通製薬企業からのメルマガを受信していますか?
2023.6.1(株)メディクト『医師向けサイトとメルマガ 医療業界デジタルマーケティングの現在地』資料より抜粋


「そのうち何通のメルマガを開いて読んでいますか」という設問では、「1通」が23.3%、「2〜3通」が20.0%でした。また、メルマガを「受け取っていない」が26.5%、「全て開封しない」が10.2%、「仕分けられて見ていない」が4.7%であり、合計するとメルマガが到達しない医師が41.4%にものぼることも明らかとなりました。

下山氏は、「メルマガが届かない医師が4割以上いるという前提で、メールの開封率やクリック率を判断していく必要がある」と解説しました。

そのうち、何通のメルマガを開いて読んでいますか?
2023.6.1(株)メディクト『医師向けサイトとメルマガ 医療業界デジタルマーケティングの現在地』資料より抜粋

製薬企業のメルマガを開くポイント、開かないポイント

それでは、メルマガの開封率を高めるにはどうすればよいのでしょうか。
「メルマガを開くポイント」についての設問では、「最新記事を知りたい」が28.1%、「Web講演会の情報を知りたい」が20.5%、「診療に役立つ情報を知りたい」が17.8%で上位を占めました。

一方、「メルマガを開かないポイント」の設問では、「製薬企業からのメールは開かない」と回答した医師が20.0%。「自分には関係ないメールが多いため開かない」が11.9%、「興味がある内容が無いため開かない」が10.8%と受け取り手にとってのミスマッチはメール開封に大きく影響することがわかりました。

製薬企業からのメルマガを”開かない”ポイント
2023.6.1(株)メディクト『医師向けサイトとメルマガ 医療業界デジタルマーケティングの現在地』資料より抜粋


また、「製薬企業からのメルマガを開く、開かないの判断に影響すること」の設問では、メルマガの開封に判断を及ぼすのは「件名・タイトル」が45.6%であり、最も重要であることが明らかとなりました。

下山氏は、アンケート結果から見えてきた製薬企業のメルマガ配信におけるポイントを、以下のように挙げました。

  • メルマガによる訪問機会の創出は有効である
  • 開かれる3通に選ばれる必要がある
  • 多様なニーズに応える
  • 自分に関係がない、興味がない内容は不要と判断される
  • 件名やタイトルを工夫する


タイトルを工夫し、医師の属性やニーズに合ったメール配信をすることで、開封率や顧客満足度は上がると考えられます。

活用される医師向けサイトの特徴は「効率」と「利便性」

下山氏は、調査結果から導き出された「活用される医師向けサイトのポイント」を2つ挙げました。

1つ目のポイントは「短時間かつ少ないページ数で医師のニーズを満たす」ことです。
医師向け会員サイトでの1回あたりの利用時間は、「2〜3分」が21.5%、「5分程度」が30.6%という結果でした。

また、視聴ページ数は、1回あたり「2ページ」が28.1%、「3ページ」が20.2%で、約半数の医師が視聴するのは「2~3ページ」までであることが分かりました。このことから、短時間かつ、少ない視聴ページ数で、医師のニーズを満たすサイト運営を実現させていく必要があることが示唆されます。

医師向け会員サイトでの1回あたりの利用時間
2023.6.1(株)メディクト『医師向けサイトとメルマガ 医療業界デジタルマーケティングの現在地』資料より抜粋


2つ目のポイントは「医師が求める機能を把握し、サイトの利便性を向上させる」ことです。
「医師向けサイトに設置されていて便利だと思う機能は」という調査項目では、おすすめコンテンツやアクセスランキングの表示、オンラインMRやチャットボットなどのWeb接客機能のニーズが高いことが明らかとなっています。

また、「MRお問い合わせ機能」と回答した医師も13%いることから、サイトで解決できない、その場で解決したい問題や悩みがあり、MRに聞いてすぐに解決したいというニーズがあることも分かりました。しかしながら、MRお問い合わせ機能を実装している企業は少ないのが現状です。

医師向けサイトに設置されていて便利だと思う機能は
2023.6.1(株)メディクト『医師向けサイトとメルマガ 医療業界デジタルマーケティングの現在地』資料より抜粋


また、昨年度調査ではWebセミナーの視聴や会員限定コンテンツなどのニーズが高い傾向にありましたが、本年度調査では、これら2つの目的でサイトの会員登録をする割合が減少していることも、アフターコロナにおける見逃せない医師のニーズ変化の一つです。

WEBセミナー ニーズの低下
2023.6.1(株)メディクト『医師向けサイトとメルマガ 医療業界デジタルマーケティングの現在地』資料より抜粋


下山氏は、「調査結果を踏まえて、これからの医師向けサイトの運用においては医師数と利用時間は有限なため、既存会員の定着、離脱(休眠)の抑制が重要としたうえで、そのためには医師ごとにおすすめコンテンツを表示する機能や、サイトの利便性の向上など、見るべきコンテンツに無駄なくアクセスできるサイト設計が求められている」と考察しました。

ニーズを満たすカギとなるマーケティングオートメーション

製薬企業がMA(マーケティングオートメーション)を用いるメリットとして、顧客データを活用したプロモーションの実現が挙げられます。顧客データから得られるインサイトをもとに最適なコンテンツを提供し、One to Oneコミュニケーションの自動化を実現します。

例えば、ユーザーの属性、興味・関心、行動履歴をもとに最適なコンテンツをサイト上にレコメンド表示させたり、個別におすすめメールを配信したりなど、MAツールを利用することで顧客それぞれのインサイトに応じたアプローチが可能です。

One to Oneコミュニケーションを実現する「BtoD」

BtoDサービスフロー
2023.6.1(株)メディクト『医師向けサイトとメルマガ 医療業界デジタルマーケティングの現在地』資料より抜粋


メディクトでは、製薬マーケティングの戦略から実行までを一貫して支援する「BtoD」サービスを展開しています。MAツールの導入のみではなく、顧客一人一人に最適な情報を届けるシナリオ設計や運用体制の構築に注力し、成果にコミットするサービス提供を強みとしています。また、ペイドメディアやCRMとのデータ連携や、その他媒体とのデータ連携も可能で、カスタマイズ性の高さも魅力の一つです。

下山氏は、「アフターコロナフェーズでは、オウンドメディアの会員獲得や活用、メルマガの最適化などのマーケティング課題に対して、さらなる創意工夫が求められます。さまざまなデータをもとに調査分析し、情報提供を顧客の属性やニーズを分析し最適化していくことが、これからのデジタルマーケティングを成功に導く重要なポイントとなるでしょう」と締めくくりました。