MDMD2022 Autumnレポート/デジタル施策成功のカギはチャネル、ツール、データの積極的な活用
「連携から読み解く製薬DX」をテーマに2022年9月に開催したオンラインカンファレンス「Medinew Digital Marketing Day(MDMD) 2022 Autumn」。本セッションでは、株式会社医薬情報ネットの笹木雄剛が、Medinewが実施した製薬企業におけるデジタル&データ活用に関する実態調査の報告と、医薬情報ネットが提供するサービスについて紹介しました。
- 製薬業界のデジタル&データ利活用の進捗を調査
- リモート専任MRの活用が大きく伸びる
- リモート専任MRの実態と期待
- デジタルコンテンツ制作に関する課題は改善
- 医薬情報ネットが提供するマーケティング支援サービス
- マーケティングオートメーションの活用率がアップ
- 人材と現場の巻き込みが課題
- 医薬情報ネットが提供するデジタルツール
- エリア講演会一元管理ツール「Conference Manager for MR」
- 製薬企業・医療機器メーカー特化型チャットボット「Pharma Bot」
- 「医師アンケート調査結果」の注目が高まる
- 医師に関する客観情報が不足
- 医薬情報ネットが提供するデータベースサービス
- 学会情報データベース/論文情報データベース
- 医薬品マーケティングを高速化・強化する「Doctorna」(ドクターナ)
製薬業界のデジタル&データ利活用の進捗を調査
Medinewでは、2021年に続き、製薬企業に勤務するMedinew読者を対象に「製薬企業のデジタル&データ活用実態調査」を実施。デジタルチャネル・ツール・データの3つの調査視点から、活用状況、課題、今後の意向を定量的に把握しました。
(調査期間:2022年7月12日~24日、調査対象:Medinewメルマガ登録者のうち、製薬企業勤務の方(デジタルマーケティング部門、営業企画部門、プロダクトチーム、メディカル部門など)、回答者数:85名、調査方法:ウェブによるアンケート形式)
リモート専任MRの活用が大きく伸びる
デジタルチャネルについて、オンライン面談(担当MRと医師)やオウンドメディア、3rdパーティーメディアを過半数が活用していると回答。特定のチャネルではなく、複数のチャネルを活用していることが分かります。
昨年より10%以上伸びたチャネルは、Web講演会、患者向け疾患サイト、オンライン面談(リモート専任と医師)、チャットツールでした。
リモート専任MRの実態と期待
以下は、デジタルチャネル活用が順調に進んでいると回答した群(順調群)と、順調に進んでいないと回答した群(非順調群)で、各チャネルの活用度合いを比較したグラフです。
ほぼすべてのチャネルで、順調群は非順調群よりも10%以上活用が進んでいます。特に、オンライン面談(リモート専任MRと医師)は40%以上の差があることが特徴として挙げられます。
2022年1月にMedinewが実施した「製薬企業のメルマガ、チャットボット、WEBディテーリングの導入状況を調査」によると、リモート専任MRを導入する製薬企業は増加しています。自社ツールか外部ツールなのか、オンライン予約なのかMR経由の予約なのかといった違いがあり、「自社ツール×オンライン予約」という形態が多くなっています。自社ツールと外部ツールを併用しアクセシビリティを高めている企業も見られます。
▼関連ダウンロード資料
Medinewでは、2022年3月に医師を対象にコロナ禍における情報収集方法を調査しています。医師がリモート専任MRに最も期待している情報は「医薬品に関する情報」で、臨床経験16年以上の医師は「専門外の分野」に関する情報ニーズが高くなっています。
▼関連ダウンロード資料
デジタルコンテンツ制作に関する課題は改善
課題は、「デジタルチャネルで配信する定期的なコンテンツ制作/掲載ができていない・不十分」が、昨年に比べ10%以上改善。一方で「費用対効果が合っていない」が10%以上悪化しました。コンテンツ制作は進んでいるものの、費用に見合う実績が十分でない 現状がうかがえます。
また、順調群と比べ非順調群は、「デジタルチャネルからの顧客情報の収集/データ連携ができていない・不十分」「定期的なコンテンツの制作/掲載ができていない・不十分」が、30%高くなりました。
アンケート調査から、デジタルチャネルの活用に関しては以下の実態が見えました。
- 順調群は、複数のデジタルチャネルを満遍なく活用できている
- 非順調群は、デジタルチャネルからの情報収集や定期的なコンテンツについて課題を感じている
医薬情報ネットが提供するマーケティング支援サービス
医薬情報ネットでは、コンテンツマーケティングや医療従事者向けオウンドメディア構築、オムニチャネルマーケティング・データドリブンマーケティングの支援といったサービスを提供しています。
オウンドメディアは医療従事者など顧客への情報提供を行うだけでなく、顧客情報を取得する役割を担っています。オウンドメディア運営におけるKGIは、「ロイヤリティの獲得」と「適切な情報提供」に加え、「顧客情報の取得」も重要です。
顧客情報を分析し、オウンドメディアを改善していくには、マーケティングに活用することを想定したコンテンツ制作、データ取得の仕組みが必要です。医薬情報ネットでは、コンテンツ制作に加え、顧客の興味・関心を測定するタグ付け、熟読率のデータ取得など、コンテンツ分析をサポートしています。
マーケティングオートメーションの活用率がアップ
デジタルツールは昨年と同様にZoomなどの「オンライン面談ツール」が最も活用されているという結果に。「マーケティングオートメーションツール」は、昨年の26.1%から32.9%に活用率がアップしました。
順調群と非順調群の比較では、Web講演会やマーケティングオートメーション、チャットボットにおいて、順調群の活用率が顕著に高いことが分かります。
人材と現場の巻き込みが課題
課題は、昨年同様「ツールを使いこなせる人材不足」と「現場の巻き込み・コミュニケーション不足」が上位となりました。そのほかも大きな変動がなく、引き続き人材・組織・予算面で課題を感じている状況が続いています。外部の力を借りながら目的を明確にした上でツールを導入し、現場との連携を加速することが重要といえそうです。
アンケート調査から、デジタルツールの活用に関しては以下の実態が見えました。
- 順調群は「動画・Web講演会配信ツール」「マーケティングオートメーション」「チャットボット」といったツールの活用が顕著
- 業界全体で人材や組織的な課題が多く、デジタルツールを十分に使いこなせていない
医薬情報ネットが提供するデジタルツール
医薬情報ネットは、2つのデジタルツールの提供を通じて、医薬品マーケティングの強化・推進を支援しています 。
エリア講演会一元管理ツール「Conference Manager for MR」
1つは、エリア講演会一元管理ツール「Conference Manager for MR」です。特徴は大きく以下の3つ。
- 案内ツールの自動作成による業務効率化
- メール配信の自動化による講演会対応の品質向上
- 医師の行動データをマーケティングに展開可能
MRが実施するエリア講演会を一元管理でき、アンケート結果や案内メールの開封率といったデータの管理・分析、申込管理、リマインドメール送付など運営サポートを支援します 。エリア講演会実施における、業務効率化と品質向上が期待できます。
製薬企業・医療機器メーカー特化型チャットボット「Pharma Bot」
もう1つは、製薬企業・医療機器メーカーに特化したチャットボットツール「Pharma Bot」です。Pharma Botは、医療従事者向けオウンドメディア内で使用できる「Pharma Bot」と、製薬企業の社員向けに開発した社内情報チャットボット「Pharma Bot for Office」の2種類を用意。いずれも、以下の特徴を有しています。
- テンプレートやAIを活用した簡単導入
- 医学用語の辞書搭載、シソーラスで医学用語対応可能
- 対話ログを見える化し、改善しながら運用
Pharma Botは、学習データ不要で、医学用語を搭載可能なため、導入にかかる期間やコストを大幅に削減することが可能です。AIによる想定質問パターンの拡張、メディカルライターによるアンマッチキーワードの確認などを取り入れることで、手間のかかるチャットボット導入・運用を簡便にします。
「医師アンケート調査結果」の注目が高まる
データ活用については、全ての項目で順調群が非順調群を上回る結果となりました。違いが顕著だった項目は、「医師へのアンケート調査結果」と「地域医療情報」の項目です。順調群は、より多くのデータを組み合わせて分析・活用していると考えられます。
医師に関する客観情報が不足
課題は、「医師個人に紐づいた客観的なデータ不足」が昨年と比較し10ポイント以上増加。訪問規制などで医師との面談機会が限られる 中、医師に関する情報収集が課題となっている と想定されます。結果として「医師へのアンケート調査」の活用が伸びていると推定できます。
非順調群は「データに精通した人材・体制不足」「部門間のデータ共有・連携」「社内外のデータ統合」が課題であることが分かりました。データからさまざまなインサイトや示唆を得るためにも、複数のデータを連携して、分析する環境を整えることがポイントといえるでしょう。
アンケート結果から、製薬業界のデータ活用に関しては次の傾向があることが分かりました。
- 自社データだけでなく、医師アンケートや地域医療情報など外部からのデータ導入が加速。特に医師に関するデータ収集を強化している
- 非順調群を中心に、データに精通した人材が不足。部門・システム間のデータ連携が十分に機能していない
医薬情報ネットが提供するデータベースサービス
医薬情報ネットでは、データに関連する以下のサービスを提供しています。
学会情報データベース/論文情報データベース
「学会情報データベース」は、日本国内で開催される医学系学術集会の演題・開催情報を網羅したデータベースです。2014年以降の国内主要学会を対象に演題や演者、開催日時などの情報をデータベース化しています。営業支援ツールとの連携、ターゲット医師・施設分析、競合企業分析といった各種マーケティングリサーチ、オウンドメディアコンテンツなどに活用できます。
「論文情報データベース」は、日本人医師が英語で執筆した論文情報をMEDLINEから抽出したデータベースです。論文タイトル、著者名、著者順、書誌事項などをデータベース化しています。営業支援ツールとの連携、ターゲット医師・施設分析といった各種マーケティングリサーチなどに活用可能です。
学会情報データベースと論文情報データベースの連携も可能です。
▼学会情報データベース、論文情報データベースの活用ガイドブックはこちら
医薬品マーケティングを高速化・強化する「Doctorna」(ドクターナ)
「Doctorna」は、学会・論文を中心に医師の学術活動情報の収集・分析を効率化し、顧客理解・医薬品マーケティングを高速化・強化するクラウドサービスです。対象の疾患や領域などに関する学会情報、論文情報をタイムリーに収集し、ターゲット医師の選定や分析、競合調査などを促進します。客観情報に基づいて一人ひとりの顧客の理解を深め、意思決定、マーケティング施策のPDCAサイクルを高速化・強化します。
具体的には、以下のような機能を備えています。
- 病名や症状などのキーワードをもとに独自の医師ランキングを生成。
- 学会、論文の共著関係から医師の人間関係を分析
- スポンサードセミナーの情報から医師と企業の関係を可視化