COVID-19の流行から2年。製薬企業各社はデジタルマーケティングに力を入れていますが、医師も同様に、この2年で情報収集スタイルがリアルからデジタルへと変わってきているようです。Medinewでは、COVID-19拡大以降の医師の情報収集スタイルの変化を探るべく、2022年3月に医師を対象としたアンケートを実施。その結果をまとめます。
医師の情報収集方法および製薬企業との関わりに関するアンケート調査 実施概要
Medinewでは、COVID-19拡大以降の医師の情報収集スタイルの変化を探るべく、2022年3月に医師を対象としたアンケートを実施。医師プラットフォームを提供するAntaa会員の医師を対象に、医師はどこから情報を集めているのか、そして製薬企業にどのような情報を求めているのか、調査しました。
(実施期間:2022年3月22日~3月28日、調査対象:Antaa会員医師、回答者数:104名、実施方法:Webアンケート)
アンケート結果をもとに、臨床経験年数15年以下の医師と16年以上の医師を区分し、臨床経験年数によって情報収集スタイルにどのような差異が出るかをまとめました。
アンケート結果サマリー
- 臨床経験15年以下の医師はSNSを頻繁に活用 することで不特定多数から多くの情報を得るが、16年以上の医師は製薬企業のWebサイトやウェビナーなど、 信ぴょう性の高い(出所の確実な)情報を重視 している。
- 臨床経験16年以上の医師は、COVID-19流行以降の製薬企業からの情報収集量の減少幅は少ない 。15年以下の医師は、COVID-19流行以降、施設の訪問規制もあってか MRを含む製薬企業からの情報提供の割合が大きく減少 。代わりに、SNSなどを用いて他の医師からの情報収集が増加した。
- 臨床経験年数問わず、ほとんどの医師が製薬企業実施のWeb講演会を利用 。臨床経験15年以下の医師はWeb講演会の活用は70%以上と積極的だが、メルマガ登録、資材発注、サイト内検索など製薬企業のwebサイト全体の活用が16年以上の医師に比べて低い。
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臨床経験15年以下の医師にとってMRはビジネスパートナー
であり、専門分野や医薬品に関する適切な知識を持ち、それらをオンラインを含め、
適切かつ迅速に提供する
ことが求められている。
臨床経験16年以上の医師にとってMRはビジネスパートナーであるとともに、相談相手でもある。
情報収集に使用するデジタルチャネルは臨床経験年数で異なる
今回のアンケート結果から、医師の臨床経験年数によって情報収集のために使用するデジタルチャネルが異なることが分かりました。
2022年3月時点での日常的な情報収集の方法をうかがったところ、臨床経験15年以下の医師の79.5%が「医師間SNS」を利用していると回答。SNSを経由し、不特定多数から情報を得ていると考えられます。一方、臨床経験16年以上の医師が最も利用しているデジタルチャネルは、「電子メール(メールマガジンなど)」(71.4%)でした。また、16年以上の医師は約6割が「Webサイト」から情報収集をしており、複数のメディアからメールやWebサイトを通じて情報収集していることがうかがえます。
より製薬企業から多く情報を収集しているのは臨床経験16年以上の医師
「普段どこから発信された情報を収集していますか」という設問では、臨床経験15年以下の医師の33.3%、16年以上の医師60.7%が製薬企業が発信する情報を収集していると回答。臨床経験年数によってダブルスコアに近い差が出ました。
同様に、MRからの情報収集については、臨床経験15年以下の医師は25.6%、16年以上の医師は42.9%と、こちらも大きく差が出る結果となりました。
COVID-19流行によって各情報収集元の利用頻度の変化を問う設問では、臨床経験15年以下の医師は約7割が製薬企業からの情報収集が「減った」「非常に減った」と回答。対面でのMRとのやり取りの減少も影響していると考えられます。
一方で、16年以上の医師もCOVID-19流行による訪問規制の影響を受けているにも関わらず、製薬企業からの情報収集の減少幅は15年以下の医師と比較して約30ポイント少ない結果に。さらに32.1%の医師が、製薬企業からの情報収集が「増えた」「非常に増えた」と回答しています。
臨床経験16年以上の医師は15年以下の医師に比べて、COVI-19流行後も、Webサイトや電子メールなどデジタルチャネルを用いて、製薬企業からの情報収集を積極的に行っていると考えられます。
臨床経験年数問わずWeb講演会の利用がさかん
では、医師たちは製薬企業が発信する情報のうち、どのようなサービス・ツールを用いて情報収集をしているのでしょうか。
製薬企業の医療従事者向けサイトで利用したことのあるサービス、機能を問う設問では、臨床経験年数にかかわらず、「Web講演会」がトップでした。
COVID-19流行以降、多くの製薬企業がWeb講演会のコンテンツ拡充に力を入れており、実際に医師の利用率も高いことが分かります。今後は他社にない付加価値を自社のWeb講演会にプラスしたり、視聴履歴などのデータを有効活用してマーケティングに活用することで、他社との差別化・コンテンツ価値の向上が見込まれるでしょう。
MRの位置づけは臨床経験年数の長さで異なる
医師の臨床経験年数に応じて、MRに求める情報やMRを評価するポイントも異なることが分かりました。
医師が「優れたMR」として評価するポイントを問う設問では、「自社・他社問わず、医薬品に関する情報に詳しい」ことが医師の臨床経験年数にかかわらずトップでした。しかし、臨床経験15年以下の医師は、次点で「問い合わせに対する返答が的確かつ迅速」(53.9%)、と回答。16年以上の医師は、次点に「最新の医学情報・専門情報に詳しい」(60.7%)という結果になりました。
この結果から、臨床経験15年以下の医師はMRに対して、特に適切かつ迅速な情報提供行う、ビジネスパートナーと認識していると考えられます。対して16年以上の医師は、MRをビジネスパートナーとして位置づけるとともに、最新の医学・専門情報をMRに期待しているといえるでしょう。
ダウンロード資料「医師の情報収集方法および製薬企業との関わりに関する調査」
本記事で紹介したグラフを含む、今回のアンケート結果をまとめた資料「医師の情報収集方法および製薬企業との関わりに関する調査」は、以下フォームよりダウンロードいただけます。
※資料の無断引用・転載はお断りいたします。
- 調査概要
- サマリー
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主な調査結果 ①情報収集するデジタルチャネルは臨床経験年数で異なる
-調査結果|日常的な情報収集の方法
-調査結果| COVID-19の影響で減少した情報収集の方法
-調査結果| COVID-19の影響で増加した情報収集の方法 -
主な調査結果 ②臨床経験16年以上の医師は製薬企業から多く情報を収集
-調査結果|収集する情報の発信元
-調査結果| COVID-19感染拡大以降 情報の発信元別 情報収集量の変化 -
主な調査結果 ③臨床経験年数問わず、Web講演会の利用がさかん
-調査結果|「製薬企業」からの情報における情報収集手段の変化
-調査結果|製薬企業の医療従事者向けサービスの利用状況 -
主な調査結果 ④MRの位置づけは臨床経験年数の長さで異なる
-調査結果| COVID-19感染拡大以降 対面/オンラインMR 情報収集量の変化
-調査結果|優れた(評価する)MR
-調査結果|オンラインMRに期待する情報 -
Appendix