4/18はよいお肌の日-製薬企業の皮膚科領域の疾患啓発サイトを調査

今回は4/18「よいお肌の日」にちなみ、皮膚科領域における製薬企業の疾患啓発サイトを調査しました。アトピー性皮膚炎や乾癬、蕁麻疹、脱毛症、にきびなどの幅広い疾患の疾患啓発サイトが対象となりました。患者が自身の症状に気づきやすい皮膚科領域では、正しい知識を発信し、適切な治療へと導くことが製薬企業の重要な役割です。皮膚科領域ならではの工夫や特徴的なコンテンツなどをご紹介します。
皮膚科領域の疾患啓発サイトを運営している製薬企業一覧
皮膚科領域はアトピー性皮膚炎や乾癬、蕁麻疹、脱毛症、にきびなど幅広い疾患が対象となる領域です。肌表面に病変が現れるため患者自身が異変に気づきやすく、インターネット検索したり受診したりしやすい領域と言えるかもしれません。
皮膚科領域の中でも患者数が多いアトピー性皮膚炎は、1996年の約32万人から2017年には約51万人へと患者数が約1.5倍に増加しており1)、注目されるべき疾患です。治療において、塗り薬が重要な役割を担う分野でもあります。適切に塗ることで治療効果も変わってくるため、製薬企業としてスキンケア方法を伝えることも重要な任務であり、疾患啓発サイトで工夫できるポイントでしょう。
今回は製薬企業が運営する皮膚科領域の疾患啓発サイトを調査しました。調査対象となった疾患啓発サイトは、13社・22サイトとなり以下のとおりです。
※調査対象は、2023年4月~2024年3月の販売会社ベース企業売上ランキング(出典:IQVIA)より抜粋した20社

疾患基礎知識ではデータを用いて疾患の傾向を説明したり、病態・治療ではイラストを用い分かりやすく解説したりしているサイトが多くありました。また、症状写真をクリック後に表示する仕組みを採用するなど、患者の心理的負担へ配慮した設計も見られました。
関連コンテンツへのリンクボタンや次コンテンツへ進むボタンなど、サイト内回遊を高める仕組みはほとんどのサイトで行われています。しかし、一部導入できていないサイトもあり改善の余地はありそうです。
コンテンツについては、LINEアカウントやアプリの配信、動画コンテンツや漫画コンテンツなど、各サイトで工夫が見られました。例えば、協和キリンが運営する「SORA」では、各メニューから選択し1週間の運動メニューを作成できる運動コンテンツを用意。自分で選択できるほかに、おまかせでメニューを組むこともできるコンテンツです。
今回は、22サイトのうち3サイトをピックアップしてサイトの特徴やコンテンツ情報をご紹介します。その他のサイトを含めた調査結果はダウンロード資料をご用意していますので、ページ下部よりダウンロードください。
大塚製薬 アトピース
各コンテンツの文書やイラストが適切な量で挿入されており、閲覧しやすくまとまっています。各コンテンツの下部には「この記事は参考になりましたか?」にいいねボタンを設置しており、反応を可視化する仕組みも採用しています。
沐浴とスキンケアの仕方・外用薬の塗り方のコンテンツでは、解説動画を用意。文章やイラストでは細かなところまでは伝え難いポイントも、動画を用いてすぐにアクションに移せる工夫がなされています。ショートバージョンの提供もあり、患者さんそれぞれが参考にしたいところを繰り返し再生することも可能です。また、漫画での疾患解説も用意しています。
チャットボットを搭載している点も、このサイトの特徴でしょう。質問の項目から選択して進めていく仕様で、具体的な質問内容に困る方も使いやすく、かつ自由記入による副作用や効能効果外の質問を避けられる仕組みです。回答はサイト内コンテンツへの誘導ではなく、チャットボット内で解説を行っています。
患者インタビューは画像を挿入し読みやすくまとめ、最後に「私のPeaceな時間」と題し、治療により喜びある生活になれる印象を持てる内容です。外部サービスの小児科オンラインを導入し、サイト独自の合言葉の発行し利用できるようにしています。
アトピース
https://atopic-dermatitis.jp/
サイトディスクリプション
専門医監修に基づいて、アトピー性皮膚炎に関する様々な情報を提供するサイトです。
キーワード
アトピー性皮膚炎,大塚製薬,治療,専門医
コンテンツ一覧
・子どものアトピー性皮膚炎
データを用い子供における疾患の特徴を紹介。スキンケアのポイントでは動画解説あり
・お子さんがアトピー性皮膚炎かな?と思ったら
早めの受診を促すコンテンツを掲載
・アトピー性皮膚炎を知る
データより疾患の傾向を紹介。基礎知識や原因、症状を図や写真を挿入し解説。
・アトピー性皮膚炎の治療
治療の目標や期間、治療方法、塗り薬の使い方について図や動画を用い解説。
・生活習慣のヒント
スキンケアと服装の選び方についてイラストと共に紹介。
・マンガでまなぶ!うちの子のアトピー性皮膚炎
キャラクター「ドクター・ピース」が疾患・治療について解説する漫画を4話配信。
・患者さんインタビュー
イラスト付きで体験談を3つ掲載。
・小児科オンラインで相談
無料で小児科医へ相談できる外部サービスを紹介。サイト独自の合言葉あり
・動画ダウンロード専用ページ
スキンケアのポイント解説動画がダウンロード可能。ショートバージョンあり
・チャットボットに聞いてみる
選択形式のチャットボットを利用可能
日本ベーリンガーインゲルハイム GPPひろば®
疾患の基礎知識から治療、患者インタビューなど幅広いコンテンツを用意しているサイトで、特に患者支援コンテンツが豊富です。「GPPチェックリスト」や「受診準備シート」はチェックするのみで簡単に使え、画像保存して診察時に持参できます。「GPPチェックリスト」では症状画像を掲載しており、モザイクをかけONボタンを押すと表示される仕様になっています。
アプリ「GPPひろば®」を提供し、症状や服薬の記録、症状の変化のグラフ表示、メモ機能などを利用可能。症状は画像での記録もでき、手軽に症状管理ができます。アプリ内には患者同士のコミュニティルームがあり、抱える悩みや想いの投稿、いいねボタンでの反応など、双方向でのコミュニケーションを楽しめます。投稿内容は公開前に運営側でチェックを実施しているため、安心して利用できるコミュニケーションツールです。アプリ利用者によるアプリ紹介動画も配信し、アプリ内容を分かりやすく伝える工夫もなされています。
コンテンツ「患者と医師の認識アンケート調査」では、アンケート結果より患者と医師の認識の違いを紹介。医師とのコミュニケーションを高め、希望や治療目標を相談する大切さを訴求しています。患者自信が自分の価値観を伝えるための「膿疱性乾癬コミュニケーションノート」のPDFでの提供も行っています。
過去にはランタンの光の色や形で表現するデジタルアートを用いた、参加型の疾患啓発プロジェクトを実施。2024年も疾患啓発活動を行い、SNSで活動報告を行っています。
GPPひろば®
https://www.gpphiroba.jp/
サイトディスクリプション
―
キーワード
―
コンテンツ一覧
・受診前の方
疾患の特徴や症状、原因、診断、受診サポート情報などをデータや写真を用いて解説。疾患チェックリストあり。医師へのインタビュー記事を掲載
・治療中の患者さん
治療に関する幅広い情報を提供。アプリの配信や医療費助成制度、患者と医師の認識アンケート調査レポートもあり
・患者さんの声
患者会の活動紹介や患者インタビュー動画を掲載
・イベント
過去に開催した市民公開講座のレポート記事を掲載
・Illuminate Tomorrow
デジタルアートを用いた啓発プロジェクトの活動紹介
・膿疱性乾癬(GPP)の治療を受けている方へ
当該治療薬を使用している患者向け情報サイトへ遷移
・専門病院を探す
外部の医療機関検索サイトへ遷移
・監修医のご紹介
監修医師の氏名と所属、経歴を顔写真付きで掲載
武田薬品工業 腫れ・腹痛ナビ-HAE(遺伝性血管性浮腫)の情報サイト
診断されていない方と診断された方に分け、コンテンツページを用意しています。状況別の知りたい情報を的確に提供しているサイトです。
共通コンテンツの「腫れ・痛み チェックシート」では、16の質問にチェックで回答すると、HAEの可能性を判定。結果はダウンロード可能で、病院検索のリンクボタンも同ページに配置し、受診を促す流れが構築されています。結果ではHAEに関連する回答欄を色付けし、専門医でなくてもHAEの可能性に気付けるよう工夫がなされています。
診断された方向けのコンテンツでは、周囲や血縁者へ疾患を伝えやすい動画、患者インタビュー動画など、動画を豊富に用意。コンテンツ「はばたけ、HAEから。」でもイメージ動画を複数配信し、患者サポートに重きを置いた内容のコンテンツにまとめています。
「HAEノート」は症状や診察日、服薬の記録・通知機能があるアプリです。症状記録では発作部位の写真も残せ、記録データをグラフやカレンダーで確認したり、診察時に活用したりすることが可能です。また希少疾患で課題となる医療費制度のコンテンツでは「指定難病・自己負担シミュレーター」を提供。はい・いいえを選択していくと、1ヶ月の自己負担額上限を判定できるコンテンツです。
看護師資格を有する担当者が対応するコールセンターの設置もあり、患者サポートが充実したサイトとなっています。
腫れ・腹痛ナビ-HAE(遺伝性血管性浮腫)の情報サイト
https://www.harefukutsuu-hae.jp/
サイトディスクリプション
HAE(遺伝性血管性浮腫)という病気をご存知ですか?日常的に起こる「腫れ」や「むくみ」に何かの病気が隠れていることがあります。腫れ・腹痛ナビはくり返す腫れやむくみ、腹痛が起こるHAE(遺伝性血管性浮腫)という病気についての情報サイトです。【腫れ・腹痛ナビ-武田薬品工業】
キーワード
HAE,遺伝性,血管性浮腫,腫れ,むくみ,腹痛,診断,セルフチェック,医療費助成制度,武田薬品工業株式会社,武田薬品
コンテンツ一覧
【HAEと診断されていない方へ】
・なぜ腫れる?なぜ痛む
腫れやむくみのタイプ、考えられる疾患について紹介
・こんな場所に、こんな腫れ・むくみ、症状がありますか?
腫れ・むくみをくり返す体質とクインケ浮腫について紹介。症状チェックシートの利用を推進
・遺伝性血管性浮腫(HAE)について
疾患の特徴や原因、診断について図や写真を用いて解説。メカニズムの解説動画あり
・コールセンター
看護師資格を有する担当者が電話またはメールにて疾患や医療施設について問合せ対応
【HAEと診断された方へ】
・HAEの治療とつきあいかた
治療や生活のアドバイス、遺伝に関してイラストを用いて解説
・知っておきたい「医療費助成制度」
利用可能な医療費助成制度を紹介。自己負担額シミュレーションも可能
・ファミリーテスト・遺伝カウンセリングについて
ファミリーテストについて3コマ漫画と動画で紹介。遺伝カウンセリングの紹介もあり
・お役立ちツール
ガイドブック・アプリ・携帯カード・薬剤携帯証明書を紹介
・患者さんインタビュー
家族を守る・ファミリーテスト・付き合っていける病気・診断の4つをテーマに動画を配信
・はばたけ、HAEから
患者のリアルな声をもとにイメージムービーを作成し配信
【共通コンテンツ】
・腫れ・痛み チェックシート
はい・いいえの回答で症状をチェック。回答結果は印刷可能
・病院を探す
外部の診断・治療可能な医療機関検索サイトを紹介
カスタマイズできるコンテンツとSNSの配信に工夫が必要
今回の調査では、医療費の自己負担シミュレーション・オリジナルの運動メニュー作成・チャットボットを利用した検索のように、一個人にアプローチするコンテンツがいくつか見られました。いかに個々の患者にとって有用となるコンテンツを作れるかはポイントとなってきそうです。
またSNSの活用状況では、年に1~2回の投稿に留まるケースが多く、さらなる発信強化の余地があります。アッヴィ合同会社のInstagram公式アカウント「atopykaiwa」2)では、アトピー性皮膚炎に「あたらしい会話 自分らしい毎日」と題し、定期的に情報を発信しています。SNSでの情報収集が増えてきている現在において、信用度が高い製薬企業が積極的にSNSで発信していくことも求められていくのではないでしょうか。
〈出典〉
1)厚生労働省,令和2年 患者調査 傷病分類編(傷病別年次推移表)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/10syoubyo/dl/r02syobyo.pdf
2)Instagramアカウント, atopykaiwa
https://www.instagram.com/atopykaiwa/
ダウンロード資料「製薬企業の皮膚科領域の疾患啓発サイトを調査 【2025年3月版】」
・皮膚科領域 22サイト
(各サイトのディスクリプション/キーワード/コンテンツ一覧/特徴/SNS)