製薬業界において、医薬品マーケティングを成功させるためにはデジタルの利活用が欠かせないものとなっています。製薬企業各社はさまざまな課題を抱えながら、自社に適したデジタルの利活用方法を模索しています。Medinewでは昨年に引き続き、2022年7月にデジタルの利活用実態を探るべく、業界調査アンケートを実施。本記事ではその調査結果から、製薬業界全体のデジタル利活用の状況と、デジタルチャネルの利活用状況・課題についてまとめます。
製薬業界デジタル利活用全体状況+チャネル利活用サマリー
- 製薬企業のセールス・マーケティングにおける デジタルの利活用の順調度は昨年に比べ大幅に下落 。順調な組織は2.5割にとどまり、約7割の組織はデジタル利活用が順調に進んでいない。
- 順調と回答したグループは、オウンドメディアやオンライン面談、3rdパーティーメディアなど、複数のデジタルチャネルを使いこなしており、 特にオンライン専任のMRを効果的に活用 している。
- 非順調群の課題として 「デジタルコンテンツの定期的な制作・発信」「デジタルチャネルからの顧客データの収集・連携」 が確認された。
製薬企業デジタル&データ活用実態調査 実施背景
引き続き、医薬品マーケティングにおいてデジタルを利活用する動きが製薬業界全体でみられています。営業所を撤廃・縮小しMRを減らす企業、リモート専任MRを設ける企業、医療従事者向けWebサイトをリニューアルする企業、新たなコミュニケーションツールを導入する企業など、自社に適した医薬品マーケティング戦略を実行すべく、製薬企業各社はさまざまな施策を行っています。
Medinewでは、昨年に引き続き、製薬業界のデジタル・データの利活用実態を探るべく、2022年7月に業界調査アンケートを実施しました。
(調査期間:2022年7月12日~24日、調査対象:Medinewメルマガ登録者のうち、製薬企業勤務の方(デジタルマーケティング部門、営業企画部門、プロダクトチーム、メディカル部門など)、回答者数:85名、調査方法:ウェブによるアンケート形式)
「デジタル全体の利活用状況」とともに、「デジタルチャネルの利活用」「ツールの利活用」「データの利活用」の3つのテーマで現状・課題を調査。本記事では、昨年の調査結果とんの比較を交えながら、製薬業界におけるデジタルチャネルの実態を考察します。
【DL資料あり】製薬企業デジタル&データ活用 実態調査2021レポート – チャネル編
製薬企業におけるデジタル・データ利活用の順調度を分けた4つの要因
自身が所属する部署では顧客へのセールス・マーケティングにおいてデジタルの利活用は順調に進んでいるかという設問では、全体の2.5割弱(24.7%)が順調と回答。昨年同時期の調査の結果(38.1%)から、10ポイント以上の下落となりました。順調に進んでいないと回答した割合は約7割で、昨年に比べ20ポイント増加。各社でデジタルの利活用が進んだ結果、よくも悪くも一定の評価が進んだものと考えられます。
デジタルの利活用「順調」「順調でない」を分けた要因は4つ
「順調」と回答した理由としては、「サイトへの訪問数も伸びており、会員制を昨年末に導入したが、想定以上のログインが確認できている」「無理のない、現実的なスケジュール設定、目標設定により計画しているため」「Dx専門部署がリーダーシップをとって取り組んでいるから」といった回答が寄せられました。
一方、「順調でない」と回答した理由には、「デジタルを利用する企画はあるが、実際のMR活動と紐づいているとはいえない」「インフラ整備および基本的な基盤やスキルの習得が未熟であるため」「社員のデジタルリテラシーが低い」「十分にデータを使えていない」などが挙げられました。
これらの回答を受け、Medinewは製薬企業におけるデジタルの利活用において、「順調」「順調でない」と回答を分けた要因は大きく以下の4つと考察します。
- 全体戦略の有無
- 営業のデジタル化
- データを使いこなす(利活用に向けた取り組み)
- 効果の見える化
昨年は「社内リソースのデジタル化への適応」「まずは『トライする』姿勢」など、社内でデジタルに挑戦してみることがカギと考えられました。しかし、今年のアンケート回答結果からは、チャネル・ツール・データ各種を導入した上での全体的な体制・戦略など、煩雑化したデジタル面の整備が順調・非順調を分けるカギとなると推測できます。
昨年に続き複数のチャネルを適切に使い分けることが重要
顧客へのセールス・マーケティングにおいてどのようなデジタルチャネルを利用しているかの設問では、多くの製薬企業が特定のデジタルチャネルに依存するのではなく、昨年同様、複数のチャネルを活用していることが確認されました。
顧客へのセールス・マーケティングにおいてデジタルの利活用は順調に進んでいるかという設問への回答から、順調群(「順調に進んでいる」と回答)と非順調群(「あまり順調に進んでいない」「全く順調に進んでいない」と回答)に回答者を分類(n=80)し、それぞれの結果を比較しました。
ほとんどのチャネルにおいて、非順調群よりも順調群の方が10ポイント以上多く「活用している」と回答していることが分かりました。特に大きく差をつけたのは「オンライン面談(リモート専任MRと医師)」で、非順調群の活用が40.7%であったのに対し、順調群は81.0%の活用率と、40ポイント以上の開きが生じました。
複数のデジタルチャネルを活用することは前提としながらも、適切なKPIや目標を設定し、デジタルチャネルを使い分けることが重要と考えられます。
チャネル利活用の課題は「費用対効果」「デジタル経由のデータ連携」「デジタルコンテンツの管理」
デジタルチャネル利活用に関する課題を問う設問では、「費用対効果を把握できていない」「デジタルチャネルからの顧客情報の収集/データ連携ができていない・不十分」「デジタルコンテンツの管理ができていない・不十分」が半数以上という結果に。費用対効果、データ連携、コンテンツ管理と、あらゆる面でまだまだ課題が山積していることがうかがえます。
一方、「デジタルチャネルで配信する定期的なコンテンツ制作/掲載が、できていない・不十分」は34.1%であり、昨年(47.6%)よりも10ポイント以上改善しました。デジタルチャネルの利活用が進みコンテンツ制作体制の改善が進んだものの、費用対効果に合う結果を出せていない状況が確認されます。
順調群/非順調群でデジタルコンテンツの制作やデータ連携に大きな差
デジタルチャネル利活用の課題を問う設問を「順調群」「非順調群」で分類したところ、「デジタルチャネルからのデータ収集/連携」「デジタルチャネルで配信する定期的なコンテンツ制作/掲載」が30ポイント近い差が出ました。
デジタルチャネル用のコンテンツ制作/掲載体制を見直すとともに、デジタルチャネル経由で得られるデータの収集/連携という流れの整備が重要と考えられます。
デジタルチャネルに求められる「MR活動の補足・支援」「顧客への情報発信の最適化」
「デジタルチャネルに何を期待するか」を問う設問には、「MRが面会できない顧客との接点、処方獲得」「データを蓄積・分析し、オムニチャネルを推進することで顧客に効果的にメッセージを届ける」「推奨アクションの提案、訪問・メール送付の最適時間の提案」といった回答が寄せられました。
これらの自由回答から、製薬企業はデジタル利活用の順調度合に関わらず「MR活動の補足・支援」「顧客への情報発信の最適化」をデジタルチャネルに期待していることがうかがえます。
【DL資料あり】製薬企業デジタル&データ活用 実態調査2021レポート – チャネル編
ダウンロード資料「製薬企業におけるデジタル&データ活用 実態調査2022」
本記事で紹介したグラフを含む資料「製薬企業におけるデジタル&データ活用 実態調査2022」は、以下フォームよりダウンロードいただけます。
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- 調査概要
- 調査結果総括
- デジタル利活用の順調度
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デジタルチャネル利活用実態
– デジタルチャネルの利活用
– デジタルチャネルの課題
– デジタルチャネルの利活用意向 -
デジタルツール利活用実態
– デジタルツールの利活用
– デジタルツールの課題
– デジタルツールの利活用意向 -
データ利活用実態
– データの利活用
– データの利活用目的
– データ利活用の課題
– データの利活用意向 - 回答者属性
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Appendix:所属部門別集計