製薬企業デジタル＆データ活用 実態調査2023レポート – ツール編

ツール利活用サマリー

製薬企業デジタル＆データ活用実態調査 実施背景

新型コロナウイルス感染症収束後もデジタルを利活用する動きが製薬業界全体で加速しています。

Medinewでは、昨年に引き続き、製薬業界のデジタル・データの利活用実態を探るべく、2023年7月に業界調査アンケートを実施しました。
（調査期間：2023年7月11日～20日、調査対象：製薬企業勤務の方（デジタルマーケティング部門、営業企画部門、プロダクト部門、メディカル部門など）、回答者数：150名、調査方法：ウェブによるアンケート形式）

「デジタル全体の利活用状況」とともに、「デジタルチャネルの利活用」「ツールの利活用」「データの利活用」の3つのテーマで現状・課題を調査。本記事では、昨年の調査結果との比較を交えながら、製薬業界におけるツール利活用の実態を考察します。

今年も昨年度に引き続き、「オンライン面談ツール」「顧客管理ツール」「動画・Web講演会配信ツール」が導入率上位

顧客に関する活動において、あなたの所属する部署ではどのようなツールを活用しているかという設問では、全体の7割以上（72.7%）が「オンライン面談ツール」、5割以上（52.0％）が「顧客管理ツール」、4割以上（44.7％）が「動画・Web講演会配信ツール」と回答。これら上位3ツールは2022年度の結果と同様でした。

また、今年から調査に加えた「Web分析ツール」は32.7％で5位、「生成AIツール」は16.0％で8位となりました。

今後の焦点はMA（マーケティング・オートメーション）と生成AI

顧客に関する活動において今後利活用を強化する（予定を含む）ツールについて尋ねたところ、「マーケティング・オートメーションツール」（27.3％, 1位）、「顧客管理ツール」（26.7％, 2位）、「生成AIツール」（24.7％, 3位）が上位にランクイン。MAおよび生成AIツールはどちらも現在の使用率が少ない分、今後の利活用に注目です。

デジタルツールを多く導入しているからといって、デジタル化が順調というわけではない

顧客に関する活動におけるツールの導入数について、デジタル化順調・非順調^※1、および売り上げ規模^※2別に調べました。

その結果、デジタル化順調群と非順調群では、所属部署内で利活用しているデジタルツールの数に大きな差はありませんでした。このことから、デジタルツールを多く導入しているからといって、デジタル化が順調というわけではないことが推察されます。

また、売上規模別で見たところ、売上規模の低い企業の方がデジタルツールを多少多く利用している傾向が見られました。

※1 顧客へのセールス・マーケティングにおいてデジタルの利活用は順調に進んでいるかという設問への回答から、順調群（「順調に進んでいる」と回答）と非順調群（「あまり順調に進んでいない」「全く順調に進んでいない」と回答）に回答者を分類
※2 所属企業の売上規模別（100億円未満～1兆円以上の中で6段階）に回答者を分類

デジタル化順調群は「新規顧客の開拓」よりも「既存顧客との関係深化」を重視してツールを利活用

顧客に関する活動においてツール利活用を強化する目的についての設問を、デジタル化順調群と非順調群で比較しました。その結果、両群で共通して高かったのは「顧客の興味関心の把握・行動データの取得・分析」（順調群 45.5％、非順調群 47.7％）であり、双方で顧客をよく理解しようとする姿勢が伺えます。

そのほか、デジタル化順調群では「自社製品を処方している顧客のサポート」「顧客へ最適なタイミングとチャネルで最適なコンテンツを発信」と回答した割合が非順調群よりも高い傾向にあり、デジタルツールの目的として新規顧客の開拓より既存顧客との関係深化に重きを置いていることが考えられます。

一方、非順調群で高い傾向が見られたのは「MRのディテーリング活動の機会創出・回数増加・効率化」「マーケティングリソース・コストの最適化」「自社製品の認知拡大」であり、デジタルツールの目的を売込みとコスト削減に置いていることが考えられます。

デジタル化非順調群では、予算やルール整備といった基本的なことが課題に

ツール利活用に関して抱えている課題について、デジタル化順調群と非順調群で比較しました。その結果、両群で高かったのは「ツールを使いこなせる人材が不足している」（順調群 63.6％、非順調群 64.8％）であり、人材不足は共通の課題と言えます。

全体的に、非順調群は順調群と比較して課題に感じている項目の割合が高い傾向であったものの、特に顕著な差が見られたのは「ツールの取り扱いに関する社内ルールが整備されていない」「ツール導入に対し十分な予算確保がされていない」であり、予算やルール整備といった基本的なことに立ち返って課題をクリアすることが、ツール利活用を順調に進めるための第一歩と言えそうです。

ダウンロード資料「製薬企業におけるデジタル＆データ活用 実態調査2023」

本記事で紹介したグラフを含む資料「製薬企業におけるデジタル＆データ活用 実態調査2023」は、以下フォームよりダウンロードいただけます。
※資料の無断引用・転載はお断りいたします。