製薬企業デジタル&データ活用 実態調査2023レポート – チャネル編
製薬企業の医薬品マーケティングでは、あらゆるデータ、チャネル、ツールを活用して、戦略を設計、実行していく必要があります。各製薬企業におけるそれらの活用状況や課題を探るべく、Medinewでは昨年に引き続き、2023年7月にデジタル利活用の業界調査アンケートを実施。本記事ではその調査結果から、チャネルの利活用に関する結果をレポートします。
製薬業界デジタル利活用全体状況+チャネル利活用サマリー
- 昨年に比べてデジタル化に順調な企業は微増(約5ポイント)したものの、半数以上の企業は順調でないと回答。特に営業企画部門でのデジタル化が遅れている。
- 「順調」と「順調でない」を分けた要因の多くは、「専門部署の機能」「個人のリテラシー」。
- 新型コロナウイルス感染症収束後も、デジタルチャネルの活用は継続。しかし、オンライン面談や講演会は落ち着き、疾患啓発サイトが今後の焦点に。
製薬企業デジタル&データ活用実態調査 実施背景
新型コロナウイルス感染症収束後もデジタルを利活用する動きが製薬業界全体で加速しています。
Medinewでは、昨年に引き続き、製薬業界のデジタル・データの利活用実態を探るべく、2023年7月に業界調査アンケートを実施しました。
(調査期間:2023年7月11日~20日、調査対象:製薬企業勤務の方(デジタルマーケティング部門、営業企画部門、プロダクト部門、メディカル部門など)、回答者数:150名、調査方法:ウェブによるアンケート形式)
「デジタル全体の利活用状況」とともに、「デジタルチャネルの利活用」「ツールの利活用」「データの利活用」の3つのテーマで現状・課題を調査。本記事では、昨年の調査結果との比較を交えながら、製薬業界におけるデジタルチャネルの実態を考察します。
製薬企業におけるデジタル・データ利活用の順調度を分けた3つの要因
自身が所属する部署では顧客へのセールス・マーケティングにおいてデジタルの利活用は順調に進んでいるかという設問では、全体の約3割(29.3%)が順調と回答。昨年同時期の調査の結果(24.7%)から、約5ポイント増加となりました。残りの7割は、順調に進んでいない、分からないと回答。順調に進んでいない組織は、昨年に比べ10ポイント減少しました。
デジタルの利活用「順調」「順調でない」を分けた3つの要因
「順調」と回答した理由としては、「さまざまなチャネルのデータが統合され始めている」「ツールを活用し、専門部署との連携を強化している」などの回答が多く寄せられました。
一方、「順調でない」と回答した理由には、「データの使い方に現場と本部で乖離がある」「ツールはあるが営業が使いこなせていない」「デジタルコンテンツが足りない」などが挙げられました。
これらの回答を受け、Medinewは製薬企業におけるデジタルの利活用において、「順調」「順調でない」と回答を分けた要因は大きく以下の3つと考察しました。
- 組織横断的な専門部署の有無と機能
- 個人のリテラシーや意識のバラツキ
- AIなど先端的なデジタル技術の活用の有無
昨年は、チャネル・ツール・データ各種を導入した上での全体的な体制・戦略など、煩雑化したデジタル面の整備が順調・非順調を分けるカギとなると推測しました。
今年のアンケート回答結果からも、専門部署の有無と個人のリテラシー格差が順調・非順調を分けた理由であることが明らかとなりました。
製薬企業がデジタルの利活用を進めていく上で、デジタル面の体制・戦略などの整備を実施した後の専門部署の立ち上げや個人リテラシー強化のためのフォローが重要と推測できます。
アフターコロナでもデジタルチャネルの活用は継続。今後の焦点は
顧客へのセールス・マーケティングにおいてどのようなデジタルチャネルを利用しているかの設問では、昨年に比べ、新型コロナウイルス感染症の収束を背景に、デジタルチャネルの利用は全体的に減少。最も活用が減ったチャネルはMRのWeb講演会で、利用率は32.5ポイント減少しました。
顧客へのセールス・マーケティングにおいてデジタルの利活用は順調に進んでいるかという設問への回答から、順調群(「順調に進んでいる」と回答)と非順調群(「あまり順調に進んでいない」「全く順調に進んでいない」と回答)に回答者を分類(n=132)し、それぞれの結果を比較。
デジタル化順調群の約7割が、「自社医療関係者向けWebサイト(オウンドメディア)」「Web講演会(本社主導・3rdメディア配信)」「オンライン面談(担当MRと顧客)」を利活用しており、非順調群よりも多くのチャネルを利活用していました。
特に大きく差をつけたのは「医療関係者向け疾患啓発サイト」「チャットツール」「医療関係者向けSNS」の3つで、利用率に13ポイント以上の差が見られました。一方、「Web講演会(エリアのMR主導)」の利活用のみ、非順調群の方が高い結果となりました。
オンライン面談や講演会の活用は落ち着き、疾患啓発サイトの活用が今後の焦点になると考えられます。
売上規模の大きな企業はパーソナライゼーションを目的にデジタルチャネルを活用
所属する部署における、デジタルチャネルに関する今年度の投資額を問う設問では、「3rd Partyメディア」への投資額が最も多い結果に。回答者のうち16%は1億円以上の投資を予定しています。次いで多かったのは、医療関係者向けWebサイトであり、回答者のうち10%は1億円以上の投資を予定しています。
売り上げ規模が5000億円以上の企業は、デジタルチャネルの利活用を強化する目的として、「顧客へ最適なタイミングとチャネルで最適なコンテンツを発信」「顧客の興味関心の把握・行動データの取得・分析」を挙げ、パーソナライゼーションを目的とした活用が進んでいる傾向が見られました。
一方、年商5,000億円未満の企業は「自社製品の認知拡大」「自社製品の理解促進」など自社製品の売込みや、コスト削減を目的とした活用が多いと考えられます。
デジタルチャネル利活用の課題は「費用対効果」「顧客情報の収集」「データ連携」
デジタルチャネル利活用に関する課題を問う設問では、「費用対効果に見合う効果的なデジタルチャネルを構築できていない」「自社医療関係者向けWebサイト、Web講演会などのデジタルチャネルからの顧客情報の収集/データ連携ができていない・不十分」が回答者の約4割を超えました。デジタルチャネルを有効に活用するために、戦略的な投資、データを連携するためのツールの活用、データドリブンな体制構築などに焦点を当てる必要があると考えられます。
デジタルチャネルに求められる「MR活動の補足・支援」「顧客への情報発信の最適化」
「デジタルチャネルの利活用を強化する目的」を問う設問では、「顧客へ最適なタイミングとチャネルで最適なコンテンツを発信」「自社製品の認知拡大」「顧客の興味関心の把握・行動データの取得・分析」が上位に入り、オウンドメディアを中心に顧客データを取得した上で、情報発信のタイミングとコンテンツの最適化を図っている姿勢が伺えます。
また、自由回答では、
- 疾患啓発キャンペーン
- 疾患認知度の向上
など、患者への疾患啓発を目的に強化する製薬企業も見られました。
ダウンロード資料「製薬企業におけるデジタル&データ活用 実態調査2023」
本記事で紹介したグラフを含む資料「製薬企業におけるデジタル&データ活用 実態調査2023」は、以下フォームよりダウンロードいただけます。
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▼「製薬企業におけるデジタル&データ活用 実態調査2023」掲載内容(全89P)
- 調査概要
- 調査結果サマリー
- デジタル利活用の順調度
- デジタルチャネル活用実態
-デジタルチャネルの活用
-デジタルチャネルの活用強化
-デジタルチャネルの投資額
-デジタルチャネルの課題
- デジタルツール活用実態
-デジタルツールの活用
-デジタルツールの活用強化
-デジタルツールの投資額
-デジタルツールの課題
- データ活用実態
-データの活用
-データの活用強化
-データ活用の投資額
-データの活用課題
- 回答者属性
- Appendix
-所属部門別集計
-売上規模別集計