大企業のDX進捗に関する実態調査|DXの認識レベルと課題の把握が推進のポイントに

大企業のDX進捗に関する実態調査|DXの認識レベルと課題の把握が推進のポイントに

2018年9月に「DXレポート(経済産業省)」が発表されて以降、日本国内におけるDXの展開が本格的に始まりました。2023年2月にIPA(情報処理推進機構)が発表した「DX白書2023」によると、DXに取り組む日本企業は7割弱に達するとされ、着実な広がりを見せています。また、同調査によると従業員1,001人以上の企業は94.8%がDXに取り組んでいるとされており、これは米国企業と比較しても高い数値です。

企業向けのマーケティングやAI、BtoB人材の育成SaaSサービスの提供を行う株式会社グロースXは、大企業(従業員数1,000名以上)の経営者・役員100名を対象に、DX進捗に関する実態調査を実施しました。同調査で示されたDX推進の実態と課題を参考に、自社のDX推進への取り組みにご活用ください。

以下、株式会社グロースXのプレスリリースより

調査概要

大企業のDX進捗に関する実態調査
調査日:2023年3月27日~3月28日
調査方法:IDEATECHが提供するリサーチPR「リサピー®︎」の企画によるインターネット調査
対象および有効回答数:大企業(従業員数1,000名以上)の経営者・役員100名 ※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはなりません。
調査実施企業:株式会社グロースX

調査結果のサマリー

サマリー

「DX」について、64.0%が「レベル4|新たな価値を創造するもの」以上と理解

「Q1.あなたは、DX(デジタル化)に対してどのような認識を持っていますか。」(n=100)と質問したところ、「「DX」について、デジタル化によって業務を効率化・自動化するもの、と理解をしている」が25.0%、「「DX」について、デジタル化によって事業を再構築し、新たな価値を創造するもの、と理解をしている」が43.0%という回答となりました。

Q1 DXに対する認識
  • レベル1|「DX」について、見聞きしたことはない:1.0%
  • レベル2|「DX」について、見聞きしたことはあるが、内容は理解していない:7.0%
  • レベル3|「DX」について、デジタル化によって業務を効率化・自動化するもの、と理解をしている:25.0%
  • レベル4|「DX」について、デジタル化によって事業を再構築し、新たな価値を創造するもの、と理解をしている:43.0%
  • レベル5|「DX」について、顧客起点に立ち、デジタル化によってビジネスモデルを抜本的に変革するもの、と理解をしている:21.0%
  • あてはまるものはない:1.0%
  • 答えられない/わからない:2.0%


バックオフィス関連部署におけるDX推進、73.0%が「レベル3|業務の効率化」以下

「Q2.あなたがお勤めの会社では、財務や経理、総務などのバックオフィスといった売上に直接的には関連しない部署におけるDXはどれほど進められていますか。」(n=100)と質問したところ、「DX推進に向け、業務の棚卸しや課題の洗い出し、デジタル技術に関する情報収集などを行っている」が37.0%、「デジタル技術の活用によって業務の効率化ができている」が31.0%という回答となりました。

Q2 コストセンターにおけるDXの進捗状況
  • レベル1|DX推進に向けた取り組みに着手していない:5.0%
  • レベル2|DX推進に向け、業務の棚卸しや課題の洗い出し、デジタル技術に関する情報収集などを行っている:37.0%
  • レベル3|デジタル技術の活用によって業務の効率化ができている:31.0%
  • レベル4|デジタル技術の活用によって新たな価値創造ができている:10.0%
  • レベル5|デジタル技術の活用によって業務プロセスやビジネスモデルを抜本的に変革できている:7.0%
  • 社内のDX推進の取り組みに関して、実態を把握していない:5.0%
  • あてはまるものはない:1.0%
  • 答えられない/わからない:4.0%


売上に直結する部署におけるDX推進、66.0%が「レベル3|業務の効率化」以下と回答

「Q3.あなたがお勤めの会社では、営業やマーケティングといった売上に直結する部署におけるDXはどれほど進められていますか。」(n=100)と質問したところ、「DX推進に向け、業務の棚卸しや課題の洗い出し、デジタル技術に関する情報収集などを行っている」が42.0%、「デジタル技術の活用によって業務の効率化ができている」が14.0%という回答となりました。

Q3 プロフィットセンターにおけるDX推進
  • レベル1|DX推進に向けた取り組みに着手していない:10.0%
  • レベル2|DX推進に向け、業務の棚卸しや課題の洗い出し、デジタル技術に関する情報収集などを行っている:42.0%
  • レベル3|デジタル技術の活用によって業務の効率化ができている:14.0%
  • レベル4|デジタル技術の活用によって新たな価値創造ができている:13.0%
  • レベル5|デジタル技術の活用によって業務プロセスやビジネスモデルを抜本的に変革できている:10.0%
  • 社内のDX推進の取り組みに関して、実態を把握していない:7.0%
  • あてはまるものはない:1.0%
  • 答えられない/わからない:3.0%


DX推進における課題、「デジタル人材不足」が61.0%、「ビジョンや経営戦略が不明瞭」が26.0%

Q2またはQ3で「DX推進に向けた取り組みに着手していない」「DX推進に向け、業務の棚卸しや課題の洗い出し、デジタル技術に関する情報収集などを行っている」「デジタル技術の活用によって業務の効率化ができている」と回答した方に、「Q4.あなたがお勤めの会社でDXを進めるにあたって、どのような課題がありますか。(複数回答)」(n=77)と質問したところ、「社内のデジタル人材が不足している」が61.0%、「DXに向けたビジョンや経営戦略が不明瞭である」が26.0%、「経営層のデジタル・ITに関する知識が不足している」が19.5%という回答となりました。

Q4 勤務先の会社でDXを進める上での課題
  • 社内のデジタル人材が不足している:61.0%
  • DXに向けたビジョンや経営戦略が不明瞭である:26.0%
  • 経営層のデジタル・ITに関する知識が不足している:19.5%
  • 予算が不足している:13.0%
  • 取引先とのやりとりに支障が出る:9.1%
  • 時間や工数が不足している:9.1%
  • その他:1.3%
  • 特にない:7.8%
  • わからない/答えられない:0.0%


「社員のITスキルそのもの」や「関係者全員のやる気と当事者意識」などにも課題を実感

Q4で「特にない」「わからない/答えられない」以外を回答した方に、「Q5.Q4で回答した以外に、DXを進めるにあたっての課題があれば、自由に教えてください。(自由回答)」(n=71)と質問したところ、「社員のITスキルそのもの」や「関係者全員のやる気と当事者意識」など57の回答を得ることができました。
 
<自由回答・一部抜粋>
・64歳:専門のコンサルタントが必要。
・65歳:テクノロジー人材は、スキルを身につけると、転職していく。
・55歳:社員のITスキルそのものに課題がある。
・64歳:関係者全員のやる気と当事者意識。
・76歳:セキュリティとの関連。
・59歳:社内ではDXがそれなりに浸透しているが、社会一般ではそれほど浸透しておらず、そのギャップに苦慮している。
・60歳:デジタル人材の不足を既存の契約ベンダーに頼っているため、業務内製化や人材育成が進まない。

売上に直結する部署でDXを推進する人材、55.0%が「いない」と回答

「Q6.あなたがお勤めの会社には、営業やマーケティングといった売上に直結する部署で、DXを推進する人材はいますか。」(n=100)と質問したところ、「あまりいない」が39.0%、「全くいない」が16.0%という回答となりました。

Q6 勤務先の会社の営業やマーケティングといった売り上げに直結する部署でのDX推進する人材の有無
  • ややいる:34.0%
  • あまりいない:39.0%
  • 全くいない:16.0%
  • わからない/答えられない:6.0%


デジタルを活用した事業による売上の比率、「2割未満」が42.0%で最多

「Q7.あなたがお勤めの会社の売上に占める、デジタルを活用した事業による売上の比率を教えてください。」(n=100)と質問したところ、「2割未満」が42.0%、「2割以上4割未満」が15.0%という回答となりました。

Q7 勤務先の会社の売上に占める、デジタルを活用した事業による売上比率
  • 2割未満:42.0%
  • 2割以上4割未満:15.0%
  • 4割以上6割未満:10.0%
  • 6割以上8割未満:5.0%
  • 8割以上:2.0%
  • デジタル事業は行っていない:15.0%
  • わからない/答えられない:11.0%


DX推進人材を獲得・確保するために行っていること、「社内人材の育成」が58.0%で最多

「Q8.あなたがお勤めの会社で、DXを推進する人材を獲得・確保するために行っていることを教えてください。(複数回答)」(n=100)と質問したところ、「社内人材の育成」が58.0%、「外部採用(中途採用)」が44.0%、「既存人材(他部署からの異動も含む)の活用」が30.0%という回答となりました。

Q8 勤務先の会社で、DXを推進する人材を獲得・確保するために行っていること
  • 社内人材の育成:58.0%
  • 外部採用(中途採用):44.0%
  • 既存人材(他部署からの異動も含む)の活用:30.0%
  • 社外の専門家との契約(コンサルタントなど):16.0%
  • 関連企業(親会社、情報子会社)からの転籍・出向:11.0%
  • 新卒採用:10.0%
  • 特定技術を有する企業や個人との契約:6.0%
  • M&A、他社への出資で人材の獲得:4.0%
  • 人材の獲得・確保を行っていない:3.0%
  • 離職者再雇用:2.0%
  • その他:0.0%
  • 特にない:3.0%
  • わからない/答えられない:2.0%


社内人材の育成方法、「eラーニングサービスの活用」や「外部セミナーの受講」など

Q8で「社内人材の育成」と回答した方に、「Q9.あなたは、社内でDXを推進する人材を育成するために、どのような教育環境やサービスを整備、導入していますか。(複数回答)」(n=58)と質問したところ、「eラーニングサービスの活用」が50.0%、「外部セミナーの受講」が50.0%、「外部研修への派遣」が41.4%という回答となりました。

Q9 あなたは、社内でDXを推進する人材を育成するために、どのような教育環境やサービスを整備、導入していますか。
  • eラーニングサービスの活用:50.0%
  • 外部セミナーの受講:50.0%
  • 外部研修への派遣:41.4%
  • 交流会・勉強会への派遣:22.4%
  • 外部講師派遣サービスの活用:19.0%
  • 自社独自の社内研修の運用:19.0%
  • コーチングサービスの活用:13.8%
  • スクールへの通学・派遣支援:5.2%
  • 書籍やテキストの提供:5.2%
  • 自主学習にかかる費用の負担:3.4%
  • その他:0.0%
  • 特にない:1.7%
  • わからない/答えられない:5.2%


「社内管理職登用試験」や「ベンチマークする企業の研究」などの対応も

Q9で「特にない」「わからない/答えられない」以外を回答した方に、「Q10.Q9で回答した以外に、DXを推進する人材の育成のために整備、導入している教育環境やサービスがあれば、自由に教えてください。(自由回答)」(n=54)と質問したところ、「社内管理職登用試験」や「ベンチマークする企業の研究」など37の回答を得ることができました。
 
<自由回答・一部抜粋>
・62歳:外部コンサルタントとの契約検討。
・59歳:勉強会やミニプロジェクト活動の推進。
・64歳:社内管理職登用試験。
・48歳:昔ながらのやり方から変えられない社員の整理。
・67歳:ベンチマークする企業の研究。
・66歳:大学や大学院への入学。

まとめ

今回は、大企業(従業員数1,000名以上)の経営者・役員100名を対象に、大企業のDX進捗に関する実態調査を実施しました。

まず、DXの認識レベルに関する質問に対しては、64.0%が「レベル4|デジタル化によって事業を再構築し、新たな価値を創造するもの」以上と理解しているようですが、一方でバックオフィスと売り上げに直結する部署について、それぞれDX推進状況に関して聞いたところ、バックオフィスは「レベル3|業務の効率化」以下が73.0%、売上に直結する部署は「レベル3|業務の効率化」以下が66.0%となり、まだ十分にDXを推進できていない実態が明らかになりました。

次に、DX推進における課題について尋ねたところ、「デジタル人材不足」を嘆く声が多い他、DXに向けた経営戦略が不明瞭であることなどが挙がりました。特に、売り上げに直結する部署においては、55.0%が「DXを推進する人材がいない」と回答しており、ITリテラシーがあり、かつ現業を変革できる人材が不足していることが分かりました。

政府からの呼びかけもあり、多岐にわたる業種や分野でDX推進の認知が進む中、同じ企業の中でも部署によってDX推進度合いに格差が出てきている実態もあります。経営者としても、人材を確保するために、社内人材の育成に特に力を入れてはいるものの、実際に実務に落とし込むところまで実行力がある人材を活用できてはいないようです。

DXによるバックオフィス関連部署の業務効率化も勿論必要ですが、売上に直結する部署での事業の再構築、新しい価値の創造など外部の専門家やアドバイスを取り入れながら、DX推進を図ることが事業や売上を伸ばすカギになるのではないでしょうか。

<参考>※URL最終閲覧日2023.04.17
PR TIMES, 2023.04.11,大企業のDX実態をレベル別で調査!営業やマーケティング部門におけるDX、42%が「情報収集レベル」に留まる実態が明らかに(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000030.000063830.html