製薬業界マーケティング/DX最新動向まとめ 2023年7・8月版

製薬業界マーケティング/DX最新動向まとめ 2023年7・8月版

昨今、医療・製薬業界でも、業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)やデジタルマーケティングに注力する動きが多くなってきました。本記事では、2カ月に1回、各製薬企業のプレスリリースより、最新製薬マーケティングやDXの取り組みをピックアップ。マーケティング、プロモーション、DXについて、業界全体の最新トレンドや、他社がどのような動きをしているのかを把握できます。今回は、2023年7・8月を対象に最新動向をまとめました。

※調査対象の企業は2023年5月にIQVIAより公開された22年度販売会社ベース企業売上ランキング(期間:2022年4月~2023年3月)より抜粋した19社。50音順にリストアップ

【2023年7・8月サマリー】

  • デジタル技術を使った健康データの活用が広がる。アステラス製薬は、Eko社のデジタル聴診器を心不全に対するデジタルセラピューティクスとしてWelldoc社と共同開発中のZ1608に統合。食事や活動、服薬アドヒアランスなどの健康データに基づく自動コーチング、心不全に関連する主要な生理学的バイオマーカーの遠隔モニタリングに活用することで、急性心血管イベントの発生頻度を低減できるか検証していく。

沢井製薬は凸版印刷と協業し、沢井製薬が提供するPHR管理アプリ「SaluDi」と、凸版印刷が販売しているPHRデータを収集する「cheercle®(チアクル)」を連携。質の高い医療の提供や、生活者や地域の医療・ヘルスケアサービスの向上を目指す。


  • 疾患啓発は、さまざまなチャネルを活用したより多角的な取り組みに。MSDは、肺炎予防を啓発するためのキャンペーン『65歳からの肺炎予防。』を2023年8月より開始し、テレビや新聞、オンラインなどの各種媒体を通じて展開。肺炎予防啓発サイト「肺炎予防.jp」でも情報を提供している。

ファイザーは、一般の方の感染症予防の認知向上を目的としたPodcastチャンネル『ワクチンを学ぶPodcastを開設。日本の医療用医薬品企業としては初となり、今後はPodcast、YouTube、Webサイトからオムニチャネルで感染症予防の情報を発信していくとしている。

【各社プレスリリース抜粋】
■アステラス製薬株式会社

アステラス製薬 Eko社のデジタル聴診器Eko CORE 500™を心不全に対するデジタルセラピューティクスとしてWelldoc社と共同開発中のZ1608に統合することで合意

2023年8月1日

アステラス製薬は、Eko Health Inc.(本社:米国カリフォルニア州、Co-Founder and CEO: Connor Landgraf、以下「Eko社」)と、Eko社の最新のデジタル聴診器Eko CORE 500TMおよびAIを活用した心血管疾患検出ソフトウェアについてグローバル供給・ライセンス契約を締結。アステラス製薬はWelldoc, Inc.(本社:米国メリーランド州、以下「Welldoc社」)と協働し、Eko社のテクノロジーとWelldoc社のケイパビリティを活用して、デジタルセラピューティクス(Digital Therapeutics :DTx)に統合し、心不全患者向けで非侵襲性のZ1608の開発を進めている。
アステラス製薬は、今後の研究を通じて、食事や活動、服薬アドヒアランスなどの健康データに基づく自動コーチングに加え、心不全に関連する主要な生理学的バイオマーカーの遠隔モニタリングにZ1608を活用することで、急性心血管イベントの発生頻度を低減できるかどうかを評価していく。

https://www.astellas.com/jp/news/28181

国内営業体制の見直しについて

2023年8月1日

アステラス製薬は、国内営業戦略の見直しに伴い、日本における中長期的な成長を実現するため、改めて製品ポートフォリオの優先順位づけを実施。顧客ニーズに基づいたオムニチャネルの活用とデータ分析を強化した新たな営業体制を構築した。
また、この営業体制の見直しに伴い、「特別転進支援制度」を導入することについて、アステラス労働組合と協議を開始。2023年12月より募集を開始し、2024年3月末の完了を予定している。

https://www.astellas.com/jp/news/28216


■MSD株式会社

肺炎予防啓発キャンペーン『65歳からの肺炎予防。』、俳優 段田 安則さんを起用し、テレビやオンラインで展開

2023年7月28日

MSDは、肺炎予防を啓発するためのキャンペーン『65歳からの肺炎予防。』を2023年8月18日より実施。このキャンペーンは、俳優、段田 安則(だんた やすのり)さんを起用し、テレビや新聞、オンラインなどの各種媒体を通じて展開している。
MSDは、肺炎予防啓発サイト「肺炎予防.jp」(https://www.haien-yobou.jp/ )でも、高齢者とそのご家族の方を対象に、肺炎とその予防方法を紹介し、毎日の感染対策や予防接種の重要性などを解説している。

https://www.msd.co.jp/news/product-news-20230728/

■小野薬品工業株式会社

小野薬品とアイエクセス、共同で医学論文のトピック抽出分析AIシステムを開発

2023年7月18日

小野薬品工業と、AI(人工知能)開発会社である株式会社アイエクセス(本社:東京都中央区、代表取締役:山﨑 邦利、以下 「アイエクセス」)は、アイエクセスが保有するAI自然言語処理技術を用いて、PubMedに収載されている医学論文のトピック抽出分析AIシステムであるMaTCH(Mapping out Trend Changes)を共同で開発。小野薬品のメディカルアフェアーズ統括部で同システムを活用して診療上の課題を特定し、メディカル戦略の構築に向けて運用を開始した。
このシステムにより、これまで人による読み取りでは困難であった膨大な医学論文全体の重要トピックを俯瞰的に捉え、過去から現在に至るまでの研究トピックを迅速に把握し、臨床上の課題の見落としを防ぐことが可能に。
メディカルアフェアーズ統括部での活用を経て最適化された後、小野薬品全社での活用に向けてシステムを発展させていくとしている。

https://www.ono-pharma.com/ja/news/20230718.html


■沢井製薬株式会社

沢井製薬と凸版印刷、PHRの利活用事業での協業で合意

2023年7月5日

沢井製薬と、凸版印刷株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:麿 秀晴、以下 凸版印刷)は、新たな健康支援サービス提供の開発に向けた協業を検討していくことで合意。2024年の社会実装を目指す。
沢井製薬は、PHR(パーソナルヘルスレコード)データを管理、本人同意のもとで医療従事者と共有、治療や服薬指導にも活用できるPHR管理アプリ「SaluDi」を展開。凸版印刷は、住まいの中からさりげなく居住者の体重変化や体組成などのPHRデータを収集する「cheercle®(チアクル)」を販売している。この二つのサービスを連携することで、居住者の健康情報を確認しながら質の高い医療の提供や、生活者や地域の医療・ヘルスケアサービスの向上が可能となるとしている。

https://www.sawai.co.jp/release/detail/604

■ファイザー株式会社

ファイザー、『ワクチンを学ぶPodcast』開設

2023年8月24日

ファイザーは、一般の方の感染症予防の認知向上を目的としたPodcastチャンネル『ワクチンを学ぶPodcast(https://www.pfizervaccines.jp/learn/podcast )』を、日本の医療用医薬品企業として、初めて開設した。Podcastは5回シリーズで構成され、感染症の基礎、細菌やウイルスから体を守る仕組み、ワクチンのリスクとベネフィットや歴史などについて、分かりやすくそれぞれ3分程の音声情報を無料提供している。
Podcastチャンネルを開設することで、Webや動画を見る時間が取れない働き盛りの忙しい方にも感染症予防情報を発信していくとしている。ファイザーは『ワクチンを学ぶ』Webサイトを昨年9月、YouTubeチャンネルも本年3月に開設しており、感染症予防に関する多角的な情報をオムニチャネルで提供している。

https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2023/2023-08-24