本記事では、2カ月に1回、各製薬企業のプレスリリースより、最新製薬マーケティングやDXの取り組みをピックアップ。マーケティング、プロモーション、DXについて、業界全体の最新トレンドや、他社がどのような動きをしているのかを把握できます。今回は、2022年月9・10月を対象に最新動向をまとめました。
※調査対象の企業は2022年5月にミクスonlineに掲載された21年度販売会社ベース企業売上ランキング(出典:IQVIA)より抜粋した19社。50音順にリストアップ
製薬業界DX/マーケティング最新動向
- アプリを活用した健康データの取得・利活用が進む。 アステラス製薬は、スマートフォン向けゲームアプリ「ムーミンムーブ」を通じた歩行習慣や行動に関するデータを取得・解析について、北海道および青森県とそれぞれ提携した。同社は「ムーミンムーブ」から得られるデータを研究目的に利用できる契約を開発元であるTribered Oyと締結しており、今回の提携により、アプリを通じて得られるデータを取得・解析することができるようになる。
- 新しいデジタル技術を持つ外部企業と製薬企業の協業の動きにも注目。 大塚製薬とジョリーグッドは、統合失調症患者向けの社会スキルトレーニング支援するVRプログラム「FACEDUO」の申込み受付を開始。ファイザーは、「第三回ファイザーヘルスケア・ハブ・ジャパン ピッチイベント」を開催し、先進テクノロジーやサービスを持つスタートアップ企業との新たな協業を検討している。こうした外部企業のデジタル技術を活用した協業の動きは、今後も拡大していくと考えられる。
- 患者向けオウンドメディアの新規開設、コンテンツ拡充を図る企業が多数。 エーザイは、世界アルツハイマーデーにちなみ、企画動画を「相談e-65.net」にて公開。日本ベーリンガーインゲルハイムは、肺線維症啓発月間に伴い「肺線維症.jp」のリニューアルオープンなどを実施した。ノバルティス ファーマは、「多発性硬化症.jp」内に新たに特設ページを立ち上げ疾患啓発活動を行なっている。また、ファイザーはウェブサイト「ワクチンを学ぶ」を新たに開設。アストラゼネカは、LINEアカウント「わかる乳がん」を開発、提供を開始した。患者向けの情報提供は、オウンドメディアを中心として今後も拡大していくとみられ、今後は患者インサイトを踏まえたより深いコンテンツ作りが重要になるだろう。
■アステラス製薬株式会社
歩行習慣に関するデータ解析で北海道、青森県と提携
2022年10月13日
アステラス製薬は、スマートフォン向けゲームアプリ「ムーミンムーブ」を通じた歩行習慣や行動に関するデータを取得・解析することについて、北海道および青森県とそれぞれ提携した。
「ムーミンムーブ」は、位置情報を使用し、利用者が実際に歩くことでアイテムを入手したり、ストーリーを進めたりして、ムーミンに登場するキャラクターやムーミン谷の世界観を楽しむことができるゲーム。アステラス製薬は「ムーミンムーブ」から得られるデータを研究目的に利用できる契約を「ムーミンムーブ」の開発元であるTribered Oy(本社:フィンランド)と締結している。
今回の提携により、アプリを通じて得られる利用者の歩行習慣や行動に関するデータを取得・解析することができるようになる。北海道、青森県は、アプリの案内、利用促進を担い、アステラス製薬は、利用者の行動データを解析し、その結果を北海道、青森県へ提供することで、歩行促進や健康増進に役立てられる。
https://www.astellas.com/jp/news/26491
■アストラゼネカ株式会社
乳がん情報へのアクセスを支援、LINEアカウント「わかる乳がん」の提供を開始
2022年9月7日
アストラゼネカは、乳がん患者や乳がんの不安を感じている方が必要とする情報を簡単に入手できることを目的に、公益財団法人がん研究会 有明病院の監修の下、LINE公式アカウント「わかる乳がん」を開発、提供を開始した。
乳がんの発症と進行の背景にはさまざまな因子が存在し、また患者さんのサブタイプによって治療が異なることから、患者さんごとに必要とする情報も異なる。そのため、乳がん患者さんや乳がんの不安がある方が正しい情報を必要な時に簡単に入手し、理解できる環境の整備は重要だと考えられる。
https://www.astellas.com/jp/news/26491
■エーザイ株式会社
認知症情報サイト「相談e-65.net」に認知症の疾患啓発動画を公開
2022年9月21日
エーザイは、「世界アルツハイマーデー」である9月21日、認知症への理解を深めることを企図し、認知症疾患啓発動画『日々はつづいていく』「ないわけない篇」「タイムスリップ篇」を同社の認知症情報サイト「 相談e-65.net (そうだんイーロゴ・ネット)」にて公開した。
認知症への関心は個人差が大きく、誤解や思い込みが認知症に対するネガティブなイメージを生み出すという課題がある。周囲の方がその症状の意味や当事者の想いを知り、誤解や思い込みを解くことが、当事者の不安を取り除く第一歩になる。世の中の認知症への理解を深めることで、認知症の患者さんやそのご家族のwell-beingの実現をめざし、「知ることから、やさしくなれる」をコンセプトとした2本の動画を制作した。
「相談e–65.net」では他にも、認知症の種類や原因、病院に行く前に知っておきたい診断・治療に関する情報、認知症に関わる方を支えるための支援制度や相談先、認知機能の維持・向上の対策、介護方法、体験談などの情報を掲載している。
https://www.eisai.co.jp/news/2022/news202268.html
■大塚製薬株式会社
大塚製薬とジョリーグッド、統合失調症向けVR支援プログラム「FACEDUO」を提供開始
2022年10月10日
大塚製薬と株式会社ジョリーグッド(本社:東京都、代表取締役CEO:上路健介)は、VRを活用したメンタルヘルスケア共同事業の第一弾として、統合失調症患者向けのソーシャルスキルトレーニング ※ (SST)支援プログラム「FACEDUO(フェイスデュオ)」の申込み受付を2022年10月17日より開始した。
本VRプログラムは、VR映像内でコンビニや職場などの日常場面におけるリアルな当事者体験が再現されることで、場面が理解しやすくなり、患者さんと支援者との状況共有が圧倒的にスムーズになる。また、VR映像内には患者さん向けの「アドバイス」が表示され、経験の少ない支援者もSSTを実施できる。
※社会生活を送る上で必要な対人関係や自己管理能力などを養い、身に付ける訓練
https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2022/20221010_1.html
■グラクソスミスクライン株式会社
医療従事者向けにオンライン診療をテーマにしたセミナーを実施
2022年10月13日
グラクソ・スミスクライン(以下、GSK)は2022年9月22日、医療従事者向けセミナー「喘息・COPD患者さんにオンライン診療を活用するには」を実施した。
セミナーでは、株式会社インテグリティ・ヘルスケア 代表取締役会長 武藤真祐先生が、オンライン診療を取り巻く制度の変遷を紹介し、特に2022年の診療報酬改定により、オンライン診療に取り組みやすい環境となってきていることを説明。COPD患者を対象とした臨床研究 ※ で、遠隔モニタリングに対する受容満足度について患者の5割超、医療従事者の約6割から大変満足あるいは満足したとの肯定的な回答があったと紹介した。
また喘息・COPD患者を対象にした調査では、オンライン診療や遠隔モニタリングにより患者・医療従事者間のコミュニケーションが増大し、症状変化を把握しやすくなったと評価する結果となった。武藤先生は「点と点になりがちな診療が、デジタルの活用により線としてつながることで、今までになかった診療スタイルが生まれつつある。オンライン診療や遠隔モニタリングの活用に様々な将来の可能性が示されている」と述べた。
※Telemedicine研究。詳細情報は 2022年4月25日発表のプレスリリース を参照
https://jp.gsk.com/ja-jp/news/press-releases/20221013-telemedicine-seminar/
■ノバルティスファーマ株式会社
多発性硬化症患者さんに向けて「つづけ、ワタシ」をテーマに疾患啓発活動を開始
2022年10月20日
ノバルティス ファーマは、多発性硬化症の患者向け情報紹介サイト「 多発性硬化症.jp 」内に新たに特設ページを立ち上げ、 「つづけ、ワタシ」 をテーマとした疾患啓発活動を開始した。本ページは、多発性硬化症の患者の日々の活動に役立つ医療情報を提供し、患者が自分自身の疾患と向き合うサポートをすることを目的としている。
疾患や治療に関する情報に加えて、患者と医師とのコミュニケーションを手助けするツールや実際に各地域で患者の診療にあたっている先生方の応援メッセージを予定している。また、新たに作成した「治療相談シート」は、患者がより自分の疾患について考え、「自分らしい生活」や「やりたい」と思ったことを実現するために、生活や仕事・ライフイベントに関して医師に詳しく確認したいことや「こうありたい」との思いを具体的に医師に伝えるコミュニケーションツールになっている。
https://www.novartis.co.jp/news/media-releases/prkk20221020
■ファイザー株式会社
「ワクチンを学ぶ」ウェブサイトを開設
2022年9月1日
ファイザーは、新型コロナウイルス感染症流行や、それに伴う感染対策への関心の高まりを背景に注目が集まるワクチンに関し、その的確な情報とともに、一般的な基礎知識(免疫メカニズム、予防できる疾患の概要など)について学べるウェブサイト「 ワクチンを学ぶ 」を公開した。
ワクチンをはじめとした感染症予防にまつわる情報は過去に例を見ないほど増加し、インターネットやSNS等を通じて、根拠が不明瞭なものを含む大量の情報が不安とともに拡散される、いわゆる「インフォデミック」が新たな社会的課題となっている。このような状況を鑑み、誰もが安心して感染症とその予防に資するワクチンに関する的確な情報を得られることを目指し、本サイトを開設。一般の方々を対象として、感染症を防ぐメカニズムである免疫に関する基礎知識、ワクチンで防ぐことが可能な疾患などについて子ども・大人の世代別に解説し、ワクチンの種類や、接種スケジュールなども掲載している。
https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2022/2022-09-01.html
第三回ファイザーヘルスケア・ハブ・ジャパン ピッチイベントを開催
2022年9月28日
ファイザーは、先進テクノロジーやサービスを持つスタートアップ企業との協業というオープンイノベーション戦略を通じ、未解決課題へ挑戦して患者さんに貢献することを目指す「第三回ファイザーヘルスケア・ハブ・ジャパン ピッチイベント」を開催した。日本では2018年に第一回、2020年に第二回のイベントを開催し、2020年の取り組みでは、過活動膀胱治療の受診サポートにおける協業事例 ※ 等が生まれている。
ピッチイベント当日は、スタートアップ企業三社(株式会社I’mbesideyou、株式会社ネクイノ、株式会社Medii)の代表者と、当社各部門の担当者が登壇し、未解決課題への協業アイディアを発表した。今後、各社とのPoC(概念実証)実施とその精査を通じ、患者さんに貢献するイノベーションを生みだすために取り組みを進めていく。
※Ubieとファイザー、過活動膀胱(OAB)患者さんへのさらなる貢献を目指し協業開始( 2021年10月15日プレスリリース より)
https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2022/2022-09-28.html
■日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
膠原病患者向け「肺の線維化 いきいきチェック!」キャンペーンを開始
2022年9月1日
日本ベーリンガーインゲルハイムは、膠原病に伴う間質性肺疾患をはじめとする肺線維症を啓発するため、9月の肺線維症啓発月間(Pulmonary Fibrosis Awareness Month)に伴い、「肺の線維化 いきいきチェック!」キャンペーンを実施。
キャンペーンでは、明日の会(強皮症の患者会)や膠原病友の会 北海道支部と共創し、「肺の線維化 いきいきチェック!」を訴求するとともに、膠原病に伴う間質性肺疾患をテーマとした特別番組を北海道エリアで放送およびYoutubeチャンネルで公開。また、日本ベーリンガーインゲルハイムの運営する 「わかる、つながる、肺線維症」 のリニューアルオープンや、膠原病における呼吸器合併症をテーマとした市民公開講座の実施など、さまざまな啓発活動を予定している。
https://www.boehringer-ingelheim.jp/press-release/20220901_02
■沢井製薬株式会社
「健康サポートコミュニティ supported by SaluDi」をクオンが運営する「“絆”のコミュニティ」に開設
2022年9月29日
沢井製薬とクオン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:武田 隆 以下、クオン)は、共同で「健康サポートコミュニティ supported by SaluDi」をオープンした。
「健康サポートコミュニティ supported by SaluDi」は、健康寿命の延伸やヘルスケアに関心のある人々や沢井製薬が提供するPHR
※
管理アプリ「SaluDi」のユーザー・使用を検討している人などが集うコミュニティ。参加者同士の双方向のコミュニケーションを通して、健康寿命やヘルスケアへの意識が高まったり、またPHRについても理解を深めることが可能。
沢井製薬とクオンは、コミュニティを通じて顧客理解を深めていくとともに、そこで得られたインサイトやニーズを「SaluDi」のさらなる改善・拡張に活用し、生活者のQOL向上達成を目指していく。
※血圧・体重・体温などのカラダの状態に関する情報や歩数・食事内容・摂取カロリーのような生活データ等、健康に紐づくその人その人の情報のこと