「今年の新薬」「今年の製薬企業」は?サイトライン・ジャパン・アワード2024発表
日本の製薬・バイオテクノロジー業界における優れた業績を表彰する「サイトライン・ジャパン・アワード2024」が、2024年10月22日にパレスホテル東京で開催されました。
多くの業界関係者が集った中で発表された、「今年の新薬」「今年の製薬企業」「今年のライセンス取引」などの各カテゴリーの受賞企業・受賞者。本記事ではその一覧を紹介します。
※サイトライン・ジャパン・アワードは全て英語で発表されており、日本語訳はMedinew編集部による非公式の編注です。
- サイトライン・ジャパン・アワードとは?
- 今年、業界で耳目を集めた企業・人・薬が受賞
- 今年の新薬(BEST NEW DRUG)
- 今年のエグゼクティブ(EXECUTIVE OF THE YEAR)
- 今年のバイオテクノロジー企業(BIOTECH COMPANY OF THE YEAR)
- 最優秀CRO(BEST CONTRACT RESEARCH ORGANIZATION)
- 最優秀CDMO(BEST CONTRACT DEVELOPMENT MANUFACTURING ORGANIZATION)
- 今年のライセンス取引(LICENSING DEAL OF THE YEAR)
- 今年の資金調達取引(FINANCING DEAL OF THE YEAR)
- 今年の製薬企業(PHARMA COMPANY OF THE YEAR)
- 生涯功績賞(LIFETIME ACHIEVEMENT AWARD)
- 製薬・バイオテクノロジーのトップランナーらが謝辞
サイトライン・ジャパン・アワードとは?
「サイトライン・ジャパン・アワード」は、日本の製薬・バイオ医薬品業界における優れた業績を表彰する賞で、今年で第3回の開催を迎えました。英国では20周年を迎える、製薬・バイオ医薬品業界の業績を称える賞である「Scrip Awards」の日本市場版です。
9つの表彰カテゴリーが設けられ、主に1年間(2023年7月1日~2024年6月30日)の業績に基づいて、2024年7月にエントリーが募集されました。カテゴリーごとに3名以上の日本での豊富な経験を持つ専門家が審査員となり、独立した立場から各エントリーを10点満点で評価。その集計に基づいて受賞企業・受賞者が決定されました。
今年、業界で耳目を集めた企業・人・薬が受賞
今年の新薬(BEST NEW DRUG)
対象期間に日本で承認され、その領域の治療を最も進歩させたと思われる低分子医薬品または生物学的製剤、細胞・遺伝子治療、デジタル治療、ワクチン製品を表彰。
受賞:アジンマ、武田薬品工業 Adzynma, Takeda
先天性血栓性血小板減少性紫斑病(cTTP)の初めてかつ唯一の治療薬である遺伝子組み換えADAMTS 13製剤。cTTPは国内の診断患者数が70人の希少疾患。2024年3月に国内承認。
今年のエグゼクティブ(EXECUTIVE OF THE YEAR)
対象期間に卓越したリーダーシップを発揮したエグゼクティブを表彰。
受賞:シモーネ・トムセン氏、日本イーライリリー Simone Thomsen, Japan Eli Lilly
日本イーライリリー代表取締役社長。2002年にイーライリリー・アンド・カンパニーに入社後、営業・マーケティングの役職を歴任し、米国本社で事業全体のマーケティング統括を務めた後、2019年9月より現職。日本イーライリリーでは初となる女性社長。
今年のバイオテクノロジー企業(BIOTECH COMPANY OF THE YEAR)
対象期間に卓越した業績を挙げたバイオテクノロジー企業を表彰。
受賞:ネクセラファーマ NXERA
旧そーせい(2024年4月にグループ全体で社名変更)。バイオ医薬品企業として30年以上の歴史を持つ。
最優秀CRO(BEST CONTRACT RESEARCH ORGANIZATION)
日本またはアジア地域に拠点を持ち、顧客にサービス提供しているCRO(医薬品開発業務受託機関)を表彰。
受賞:シミック CMIC
1992年に創業した日本の大手CRO。
最優秀CDMO(BEST CONTRACT DEVELOPMENT MANUFACTURING ORGANIZATION)
日本またはアジア地域に拠点を持ち、顧客にサービス提供しているCDMO(医薬品開発製造受託機関)を表彰。
受賞:エリクサジェン・サイエンティフィック・ジャパン Elixirgen Scientific Japan
2016年に米ボルチモアで創業、mRNAによるヒト幹細胞分化誘導に取り組む。コロナ禍に日本進出した。
今年のライセンス取引(LICENSING DEAL OF THE YEAR)
特定の薬剤・プロジェクト・研究開発アセットを、さらなる開発・販売のために他の企業にライセンス供与するディールを表彰。
受賞:第一三共とメルク、3つのADCに関するライセンシング契約 Daiichi Sankyo & Merck & Co for ADCs
ADC(抗体薬物複合体)技術を用いた3製品のグローバル開発・販売に関するライセンシング契約で、第一三共とメルクが220億ドルの取引。
今年の資金調達取引(FINANCING DEAL OF THE YEAR)
日本における製薬・バイオテクノロジー企業による資金調達の成功を表彰。
受賞:ネクセラファーマ NXERA
旧そーせい。30年間でさまざまな取引があり、2024年10月には塩野義製薬と新たな取引を結んだことを公開したという。
今年の製薬企業(PHARMA COMPANY OF THE YEAR)
対象期間に傑出した業績を挙げた製薬企業を表彰※。
受賞:第一三共 Daiichi Sankyo
オンコロジーへの戦略的な転換により、前年度比の総売上高50%増、株価40%増などの大きな成功をおさめた。昨年10月に締結された3つのADCの大型契約により、同社のもつプラットフォームを世界的に知らしめた。
生涯功績賞(LIFETIME ACHIEVEMENT AWARD)
医薬品・バイオテクノロジー分野において、キャリアを通じて卓越した功績を残してきた個人を表彰※。
受賞:大杉義征氏 Dr Yoshiyuki Ohsugi
元中外製薬の研究者。関節リウマチなどの治療薬であるトシリズマブ(アクテムラ)の開発で知られる。
※審査員による審査ではなく、主催するサイトライン社のジャーナリストとアナリストからなるエディトリアルチームが選出する賞。
製薬・バイオテクノロジーのトップランナーらが謝辞
各賞が発表されると、会場からは拍手があがり、授賞式に来場した受賞企業・受賞者はそれぞれ登壇して謝辞を述べました。
生涯功績賞を受賞した大杉氏は、「関節リウマチの治療薬として、アクテムラはなくては困るものだ。バイオ医薬品の登場で革命が起きた。患者や家族から、アクテムラのおかげで元気になったという声を聞くことは本当に嬉しく、開発できてよかったと思う」と振り返り、中外製薬を退職した後も、さらなる新薬創出に貢献するために、バイオファーマ・コンサルティング、大学講師、AMED委員などとして活動していると説明しました。
大杉氏は、「欧米で開発された抗体医薬はどれもベンチャーで開発されており、その役割は大きい。日本では創薬ベンチャーの環境が整っていないことが課題だ。私は80歳になったが、体が動く間は、創薬のために微力ながら協力したい」とした感謝の辞を述べ、授賞式の締めを飾りました。