バイエル薬品株式会社インタビュー【前編】|デジタルプロモーションの考え方とその中におけるオウンドメディアの役割、今後の展望

バイエル薬品株式会社インタビュー【前編】|デジタルプロモーションの考え方とその中におけるオウンドメディアの役割、今後の展望

コロナ禍の影響もあり、製薬企業各社は医療従事者や患者に向けた情報提供活動の在り方を模索しています。そんな中、バイエル薬品株式会社は2021年に医療従事者向けWebサイト「バイエルファーマナビ」のリニューアルを行い、2022年4月にはデジタルプロモーションにおいてDXを推進していく旨をリリースしました。そこで、Medinewではバイエル薬品(株)の石倉浩司氏と閔 珍植氏にインタビュー。「バイエルファーマナビ」での取り組みと、今後のMA化についてお聞きしました。

医薬品マーケティングの問題解決の視点から考えるデジタルプロモーション

―デジタルプロモーションの取り組みについてお聞かせください

<バイエル薬品(株) 石倉浩司氏(以下、石倉氏)> デジタルプロモーションというと、とかく新しいシステムやツールを導入することが話題に挙がることが多いのですが、当社オンコロジー事業部では、カスタマージャーニーを重視しています。カスタマージャーニーの中でどの段階に課題があるのか考え、その課題を解決するために、どのようなツールが最適か検討して導入することを意識しています。

こうした課題を同定し、解決に向けた仕組みが構築できていることの要因の1つに医療従事者や患者様を含む一般ユーザーの行動を解析できる、データサイエンティストの専門部署があることが挙げられます。

バイエルファーマナビのリニューアルで顧客体験の充実と運用面での効率化を目指す

―2021年にバイエルファーマナビを全面リニューアルされた狙いをお聞かせください

<バイエル薬品(株) 閔 珍植氏(以下、閔氏)>  バイエルファーマナビは、医療従事者やドクター、さらに弊社の製品を服用している患者さん、もしくはその家族の皆さんのポータルサイトです。弊社のDxの取り組みとしは、ニューコマーシャルモデルイニシアティブを2020年ぐらいから始めました。バイエルファーマナビは、その中でもパイロット的な役割を果たしてきました。そして2021年、これまで各国でバラバラな仕様であったものをグローバルで統一を図るために、全面リニューアルを実施しました。このリニューアルにより、サイト内での顧客体験の充実と運用面での効率化を図ることができました。

リニューアルは、グローバルで枠組みを標準化し、コンテンツと運営に関しては日本の医療従事者、患者さんのことを深く理解しているローカルに任せることでバイエルファーマナビのプレゼンス強化に集中できるようになりました。現在、当社製品に関連する情報を提示し、多くのアクセスをいただいています。現在は、バイエルファーマナビを閲覧されるユーザーの利用経験・情報ニーズを把握して、そこから少しでも関連性のある情報提供を行うサイクルをどのように回していくかというところに力を入れています。

昨今では、直接自社サイトへのダイレクトなアクセスよりも、サーチやさまざまなサイトを経由して、バイエルファーマナビにアクセスするケースがメジャーになっています。今後は、製薬業界が向かうデジタル化の波の中で、重要な対象になるとなる方々のトラフィックの流れを解析し、自然とバイエルファーマナビに辿り着くことができるプレゼンスの強化が重要です。具体的な対応策としては、顧客の情報ニーズに合わせてコンテンツの多様化を推進し、サイト内の顧客体験の充実に取り組んでいきます。

バイエルファーマナビのMA化を推進

―今後、バイエルファーマナビでは、どのような取り組みを加速していかれますか?

<石倉氏> バイエルファーマナビでは、コンテンツの多様化に加えて、オウンドメディアとしての役割も持たせる動きを検討しています。当社の他事業部では、新型コロナウイルスの感染拡大前から、リモート専任MRによる説明会を外部の医療情報プラットフォームを活用して実施してきました。現在では、そのコンテンツを内製化して、バイエルファーマナビで展開しています。リモート専任MRによる説明会のページを設けて、そこからドクターに入っていただいて、登録して予約をしていただくことで、バイエルファーマナビというWebサイト上で、リモート専任MRがドクターにリモート説明会を行うことも実践しています。

さらに、当社の各領域の事業部が運営している製品サイトについても、対象となる医療従事者が重なる事業部間では、お互いのWebサイトのバリアを外して、共同で情報提供する取り組みを進めていきます。
特に、オンコロジー事業部とラジオロジー事業部はターゲットが重なるケースがあるので、両者でこのような取組みを進めている最中です。

<閔氏> 今後、バイエルファーマナビでは、利用者を細かくセグメントして、それぞれに適したコンテンツを提供するカスタマイズされたサビース化を推進していきます。特に医療従事者と、患者様とのよりよいコミュニケーションをサポートする情報を提供できるようになります。つまり、バイエルファーマナビを訪れた利用者の情報ニーズを解析し、仮説を組んだ上でカスタマイズした情報を提供する、データ分析とMA(マーケティングオートメーション)の機能を持たせようという構想です。こうした構想ができるのも、当社内で、顧客のニーズ・動きを細かく解析できる専門部署があるからです。

ドクターの行動を解析する専門部署

―貴社のデジタルマーケティングには、どのような強みがあるのでしょうか?

<石倉氏> 私が、他社から転職して、まず気が付いたのは、当社がカスタマージャーニー上の課題に正面から向き合い、着実に成果を上げていることでした。その要因は、多様なデータを収集してドクターの行動を解析する、データサイエンティストを擁する専門部署が設置されているからだと考えています。

<閔氏> 少し前から、顧客の行動データを分析するデータサイエンティストは、あらゆる産業で注目され、こうした人財を採用する動きは製薬業界でもあったと思いますが、各社でせいぜい1名ないしは2名程度の採用に留まっていたように聞いています。しかしながら、当社の場合は製薬業界関係者だけではなく、さまざまな産業の経験を持っているデータサイエンティストのチームがあって、多様な角度や観点からデータの分析を行うことができる深いケイパビリティを持っています。彼らの分析・解析は、当社の重要な情報資産の1つといえるでしょう。

こうした能力を活用することで、当社のマーケティング活動は、対象顧客によりカスタマイズされた体験を提供できるものに進化して行くと確信しています。

マーケティングの基本PDCAによりMA化を推進

バイエル薬品(株)が目指す医薬品デジタルプロモーションは、やみくもに新たなツールやシステムを導入するというものではありません。むしろ、これまでカスタマージャーニーの考え方と既存のデジタルケイパビリティをベースに、課題を解決するための仮説を立て、それを検証しながら、必要なマーケティングツールを導入するという、マーケティングのPDCAサイクルを追求するものだと考えられます。

後編では、MRを中心とした情報提供活動の事例として、オンコロジー事業部のデジタルプロモーションを中心に解説します。

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2022.11.16
マーケティング戦略
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