新たな医薬品を販売しようとする際に、幾つかのハードルがあります。
例えば処方薬である場合、患者が医薬品名を指定して購入することが一般的ではないことや、
概ねどの分野にも強力な先発医薬品が存在すること、などがその代表です。
近年アメリカにおいて顕在化しつつあるハードルは、ベビーブーマー世代への訴求力をどのように高めるか、ということです。
アメリカにおけるベビーブーマー世代は、概ね1946〜1964年の間に生まれた世代を指し、
一番下の年代でも50歳を超えるようになりました。
その世代の問題点は、自分自身を“無敵”だと捉えている点です。
“無敵”のベビーブーマー世代
肺炎球菌ワクチンのPrevnar13を50歳以上に向けて販売する際に、ファイザーが直面した問題がまさしくこの“無敵”感でした。
何歳になろうと、自分は病気になる可能性がないと思っている、など、
年齢を重ねるごとに高まる医療リスクを身近に感じていないことがこの“無敵”感の源泉です。
そのため、本来予防として大変効果的である肺炎球菌ワクチンを、肺炎になることがないと思っているベビーブーマー世代へ訴求させることは大変困難でした。
ファイザーが行った戦略、“自信”を持ってもらう
“One Step”と名付けられたTVCMは、ヨガやブルーベリーといった、健康を維持する一般的な活動の中にPrevnar13の利用を織り交ぜています。
これは、Prevnar13が他の活動と比較しても単純でやりやすい選択肢であることを主張するとともに、
疾患のリスクを強調せず、ベビーブーマー世代が既に行っている健康を維持するための活動の一環であることをアピールし、
同時に既に日々行っている活動自体の正しさも訴えています。
これらの行動に“自信”を持ってもらいつつ、肺炎球菌ワクチンを無理なく利用してもらうという戦略です。
ベビーブーマー世代へのアプローチ、今後の問題点
“One Step”のTVCMの効果もあり、Prevnar13の認知度は上がり、利用を促すことに成功しました。
言わば“自信”を持ってもらうというファイザーのメッセージが効果的であったということが証明されたのですが、
Prevnar13の販売自体はそれほど芳しいものではありません。
“One Step”は一定の範囲に訴求することが出来ましたが、ベビーブーマー世代にはそのメッセージが届かない消費者層も存在するため、今後はそれらの層へのキャンペーンを行っていく必要があります。
ベビーブーマー世代へのマーケティングキャンペーンはやはり一筋縄ではいかないようです。
ニュース元:FiercePhama
http://www.fiercepharma.com/marketing/how-do-you-convince-invincible-consumers-they-need-a-vaccine-lean-pfizer-says