【コラム】JMDC COOに聞く! データビジネス同士の連携の可能性、難しさ

【コラム】JMDC COOに聞く! データビジネス同士の連携の可能性、難しさ

(株)JMDCのCOO杉田氏が、製薬企業におけるリアルワールドデータ(RWD)などデータ活用のヒントをお伝えする本コラム。
今年JMDCは、同じようにリアルワールドデータを取り扱う、リアルワールドデータ(株)(RWD社)をグループに迎え入れました。それぞれRWD業界に寄与してきた仲間として、一緒にRWD業界を盛り上げられることを嬉しく思いつつ、本コラムではデータビジネス同士、異なるデータソースの連携の可能性や難しさを少しお話しさせていただければと思います。


杉田:JMDCのCOOの杉田と申します。今月は「データビジネス同士の連携の可能性、難しさ」というテーマでお話したいと思います。冒頭で書いたようにJMDCは2022年7月にリアルワールドデータ(株)(RWD社)を子会社化しています。RWD社は、学校健診データや電子カルテデータを取り扱っている会社でして、約2,500万人分のデータを持っています。一方でJMDCもざっくり健保と医療機関から1,000万人ずつ分ぐらいのデータを保有しておりまして、シンプルに合算すると全体で4.500万人分のデータを保有しているということになります。今回はここにはもちろん可能性もありますが、同時に難しさもありますということをお伝えできればと思います。

穴吹:製薬本部マネージャーの穴吹と申します。本記事では私がインタビュワーとなって、進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。私もRWD社と一緒に事業が進められることにワクワクしています。その中で、先に難しさから伺えればと思いますが、データビジネス連携における難しさというのはどういうことでしょうか。

杉田:先に難しさから話してしまうと、少しネガティブな感じに見えてしまうのですが笑、決してそうではなく、あくまでも一般的なデータビジネス連携の話をしますね。

データビジネスの連携が難しいポイントとしては、大きく2つあります。まず1つは、全く異なる2つのデータソースを紐付けしようとすると個人同意が必要になるという点です。我々の扱っているレセプトデータもそうですし、iPhoneに蓄積される歩数のデータであろうと、体重計のデータだろうと、個人情報である限りにおいては、使用目的が明記そして限定された個人情報取扱の同意を経た上で活用されていますので、たとえば、レセプトデータに歩数のデータを紐づけようとすると、その新しい使用目的が書かれた個人同意を新たに取得する必要があるわけです。それまでに100万人分のデータが蓄積されていたとしても、利用できるのは新しく同意を取り直すことができた人だけに限定されてしまいますし、新しく同意を取り直すというのはかなりのハードルなのでなかなかできることではありません。

―なるほど、確かに個人情報であればそうだと思うのですが、弊社が外部に提供しているレセプトデータのように既に匿名化されたデータなら個人情報の同意はもちろん必要ないですよね?

杉田:匿名化されたデータであれば個人情報の同意なく、ある程度自由に使うことができます。しかし匿名化されたデータソース同士はもはや紐づけるすべがないので、紐付けが不可能ということになります。これらの点は、よく考えると当たり前なのですが、多くのデータを蓄積しているスタートアップ企業が誤解している点で、自分達のユニークなデータ、なんでもいいのですがたとえば特定の疾患の患者アンケートデータや食事量のデータなど、とレセプトのデータを紐づければ面白いことができるのではという提案をいただくことが多いのですが、そもそも紐づけることがかなり困難なので、すぐにシナジーが生まれるということになりません。

―2点目の難しさはどのようなポイントなのでしょうか。

杉田:先ほど穴吹さんが言ってくれた点にもつながるのですが、匿名化されたデータベースであれば個人個人を紐づけることはできなくても、合体することはできます。もちろん歩数データと体重データのように全く別のデータは合体させようがないのですが、たとえば、レセプトデータで健保組合由来のものと、医療機関、自治体・国民健康保険由来のもののように、原則同じデータで由来が異なるものであれば合体させることはできます。これらはレセプトなので、ほとんどの項目が標準化されており揃っていますので、データベースを合体させることはできます。

しかしながら、別由来のデータを合体させることに難しさがあります。ご案内のように、それぞれのデータソースによって特徴があるので、それらを混ぜることによって特徴が曖昧になり、データから導かれる結果の解釈が難しくなります。たとえば、健保由来だと比較的若年層のデータが多く、自治体由来だと自営業者や定年退職後の方のデータが多い、というようにそれぞれ特徴があり、それを念頭に置いた上でデータの分析結果を解釈して、この数字は過小評価の可能性が高いとか、上振れするはずというように数字をとらえます。しかしデータベースを少しでも混ぜてしまうと、その解釈がどちらにもできなくなり、よりわかりづらくなるという難しさがあります。

―ここまで聞いてしまうと難しさばかりで、可能性が見えてこないのですが、データビジネスの連携の可能性に関して教えていただけますでしょうか。

杉田:もちろん可能性はありますので、ご安心ください。

可能性の1つ目は、課題の裏返しになるのですが、逆に個人同意が取得できる限り、データソースの紐付けが可能ですので、個人同意が一定のボリュームで容易に取得できるプラットフォームを持っていれば、さまざまなデータベースを突合できるということになります。

JMDCの例で言うと、Pep Upという健保加入者向けのPHRプラットフォームを運営していまして、そちらの中で個人同意を取得することが可能です。その仕組みを活用して、実際にたとえばfitbitのデータとレセプトデータや、個人に対するアンケート結果などを紐付けて分析することが可能になっています。Pep Upは300万人に対して提供しているサービスですので、分析に必要なn数も集めることができています。この仕組みを活用すると、他のさまざまな個人向けサービスを通じて蓄積されるデータとJMDCのデータというのは紐付けが可能になりますので、データビジネスの発展性としては非常に大きなものになります。

別の可能性としては、これは当たり前なのですが、全く同じ種類のデータソースであれば合体させてもなんの問題もありません。たとえば、冒頭で申し上げたRWD社は電子カルテのデータを保有している会社として知られていますが、同時に医療機関からのレセプトやDPCデータも保有しています。それらはJMDCも元々保有しているデータソースになりますので、単純に足し合わせることができ、結果としてより大きなボリュームで分析を行うことができますので、分析精度を上げることができます。というように、レセプトの中でも全く同じデータソースであれば、合算によるシナジーを産むことができます。このあたりは非常に細かい話なのですが、私が冒頭でJMDCグループのデータが合計4,500万人と書きましたが、異なるデータソースの人数を足し合わせることにはあまり意味がなく、その中で同じデータソースごとの人数がどうなっているのかというところが重要になることを理解いただければと思います。

―ありがとうございます。データビジネスの連携には難しさもありつつも、全く不可能ではなく可能性が広がっていることがわかりました。それでは最後に一言いかがでしょうか。

杉田:JMDCとRWD社との連携も始まったばかりで、これから進めていきたいことがたくさんありますが、データソースの掛け合わせによって、可能になることが莫大に増えます。RWD社の持つ電子カルテデータには、製薬企業における分析では非常に重要な、検査結果などのアウトカムのデータが入っていますので、それだけでも分析の幅はレセプトデータから大きく広がります。どんな治療をして結果どうなったのか、それに対してどう治療を変更したのか、たとえばそんな臨床現場での判断が分析によって再現できることによって製薬企業のみならず、患者さんにとっても大きな付加価値が出せると信じています。

JMDCは今後もさまざまなデータビジネスと連携しながら、日本のヘルスケア、患者さんに貢献できる事業を展開していきたいと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。

―ありがとうございます。それでは今回はこのあたりで終了とさせていただきます。

*コラム「COOに聞く!」は今月で終了となります。
 これまでご愛読いただきました皆さま、ありがとうございました!

▷記事提供元は こちら (JMDC REAL WORLD)