先発医薬品の専売特許が切れた後に、同じ有効成分を持ち、安価で製造販売されるジェネリック医薬品。その程度なら理解できるけれど、AG(オーソライズド・ジェネリック)とかバイオシミラーとか、ジェネリック医薬品の中にもいろいろな呼び名が出てきて、なんだかよくわからないと思いませんか?
本記事では、ジェネリック医薬品の超基本のおさらい解説とあわせて、用語解説的にジェネリック医薬品の種類について紹介します。
おさらい解説① ジェネリック医薬品ってなんだっけ?
製薬企業が、膨大な費用と時間をかけて研究・開発して世に出した医薬品を先発医薬品といいます。先発医薬品には、特許が続く限り独占的に製造販売できる権利がついています。ざっくり言うと、その特許が切れた後、先発医薬品と同じ有効成分で、基本的に効能・効果や用法・用量が同じである医薬品が製造販売できるようになり、これを、先発医薬品に対して後発医薬品といいます。研究・開発に注がれる費用や時間が短い分、先発医薬品に比べ安価です。
欧米では処方箋に成分名(一般名=ジェネリックネーム)を記載するのが一般的で、安価な医薬品の方が選択されやすく、そこからジェネリック医薬品と呼ばれるようになったという説があります。
ちなみに、後からゾロゾロ出てくるという業界の隠語で「ゾロ品」とも呼ばれていたことがありましたが、最近はあまり聞かなくなりました。
おさらい解説② 有効性や安全性は先発医薬品と比較してどうなのよ?
上に書いたように、ジェネリック医薬品の有効成分は先発医薬品と同じで、効能・効果や用法・用量も基本的には同じです。その点で、すでに多くのエビデンスが蓄積され、有効性や安全性が確認されている先発医薬品と比較して有効性や安全性は同じといってよいとされています。
※厚生労働省のサイトには、ジェネリック医薬品への疑問に対して、科学的見解をまとめた「ジェネリック医薬品への疑問に答えます」ページがあります。
また、政府広報オンラインサイトにも、ジェネリック医薬品を安心して利用するためのコンテンツがありますので、ご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000026nso-att/2r98520000026nu5.pdf
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201309/4.html
ジェネリック医薬品にもいろいろあります
ジェネリック医薬品は、有効成分が同じ、効能・効果、用法・用量が基本的に同じ、と説明してきました。一方で、例えば錠剤であれば、有効成分が同じでも、錠剤を成型するために使用される賦形剤などの添加剤は違うこともあります。
ここでは、冒頭で書いたAGやバイオシミラーなどのように、ジェネリック医薬品の中でもどのような種類があって、それぞれがどう違うのか、できるだけわかりやすく説明してみます。
<AG(オーソライズド・ジェネリック)>
有効成分や効能・効果、用法・用量だけでなく、添加物から製造方法まですべてが先発医薬品と同じジェネリック医薬品がAGです。先発医薬品メーカーから許諾を受けた(authorized)ジェネリック医薬品ということになります。ですから、AGは基本的に、先発医薬品メーカーの関係会社が製造販売します。AGには、先発医薬品の特許が切れる半年前から独占販売が認められるので、他社のジェネリック医薬品に先駆けて発売が可能となるメリットがあります。患者側としても、先発医薬品と何から何まで同じなら、安心感が増しますね。
<バイオシミラー(バイオ後続品)>
化学合成で作られる低分子医薬品と異なり、遺伝子組み換えや細胞増殖といったバイオテクノロジーによって作られるバイオ医薬品。その後発品がバイオシミラーです。シミラー(similar)は「似ている」という意味ですね。バイオ医薬品は、分子量が大きく構造がとても複雑で、後発医薬品として、完全に同一のものを作ることができないのです。そういった意味でシミラー……だからと言って、バイオシミラーが先発医薬品と比較して品質が劣るかというと、そうではありません。バイオシミラーは先発医薬品との同等性や同質性を臨床試験によって評価するなど、厚生労働省の定める基準をクリアして初めて販売されます。
<バイオベター>
バイオシミラーが、先発バイオ医薬品とほぼ同じだとして、先発バイオ医薬品を改良したバイオ医薬品がバイオベターです。改良とは例えば、従来品よりも投与量が減少する、投与間隔が広がる(投与回数が減少する)、効き目が強い、副作用が軽減される、といったものです。こうなると改良品というよりももはや新規医薬品のようなものですね。
<バイオセイム>
バイオシミラーがあって、バイオベターがあれば、バイオセイムはあるのでしょうか……あります。バイオセイムは、ジェネリック医薬品に対するAGと同じく、先発バイオ医薬品を製造販売している製薬企業が、関連会社を通じて有効成分、添加物、製造方法、製造場所まで同じものを発売するものになります。
まとめ
ジェネリック医薬品の薬価は、先発医薬品薬価の半分程度ですが、種類によって引き下げ割合が異なります。いずれにしても安価なのは間違いないですが、ジェネリック医薬品メーカーはその中で医療従事者の扱いやすさや患者さんの飲みやすさを追求しています。
厚生労働省では、平成25年4月に策定した「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」で、平成32年度までにジェネリック医薬品のシェア80%以上を目標にし、どうやらこの目標は達成しているようです。ですが、医療現場で得る感覚としては、後発医薬品はまだ浸透率が低いイメージです。この感覚の違いは、先発医薬品のプロモーションが主に医師に対してであるのに対し、後発医薬品では薬剤師に対する比重が高いからなのではないでしょうか。もしかすると、ここら辺にもプロモーション戦略のヒントがあるかもしれません。