COVID-19の5類移行でオンライン診療はどう変化する?|利用実態調査から見る今後

COVID-19の5類移行でオンライン診療はどう変化する?|利用実態調査から見る今後

感染拡大から3年、COVID-19の流行はあらゆる業界のDX推進に大きな影響を及ぼし、医療業界でもさまざまな場面でDX化が進んでいます。中でもオンライン診療は、2020年の規制緩和が後押しとなり、今まで利用が難しかった患者も通院の選択肢として選ぶことが可能になりました。

2023年5月の感染症分類の移行に伴い、オンライン診療はどう変化するのか。医療ヘルスケア領域でインターネットサービスを提供している株式会社メドレーは、インターネット調査から見る最新の利用実態や実例を交えつつ、オンライン診療の今までとこれからを解説しました。

以下、メドレーのプレスリリースより

調査概要

調査名称:オンラインサービス・オンライン診療意識調査
調査日: 2023年2月16日~17日
調査方法:インターネット調査
調査対象:東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、愛知県在住の20~60代の男女
有効回答数:400件
※各回答項目の割合(%)は端数処理の関係上、合計が100%にならない場合があります

オンライン診療の今までを振り返る:コロナ禍での大規模な規制緩和が、オンライン診療普及のきっかけに

オンライン診療に関する規制の変化

オンライン診療は、1997年に厚生省(のちの厚生労働省)によって正式に利用が認められました。当時は「遠隔診療」と呼ばれ、離島・僻地の患者などに限られた条件付きであったため、すぐに一般に浸透することはありませんでした。

その後、2015年に厚生労働省から、「前述の条件以外の患者に対しても医師の判断のもと利用できる」という事務連絡がなされたことで、事実上のオンライン診療の解禁となりました。

そこから、未来投資会議などの政府における重要な会議でのオンライン診療の推進についての言及や、インターネット・通信技術の発達などを受け、普及に対する期待感は高まっていきました。

2018年、厚生労働省から「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が策定され、オンライン診療に関する具体的な運用が整理されましたが、同年の診療報酬改定においては有用性と安全性が考慮された算定要件となった一方で、普及の方向性とは反し、「対象疾患の制限」や「初診以降の対面診療期間の制限」など、大きな制限がかかりました。

診療報酬改定とは、2年に一度、保険診療の費用のベースとなる検査・治療などの診療報酬の点数を見直すもので、同年の改定では、オンライン診療料、オンライン医学管理料、オンライン在宅管理料などの診療報酬が新設されたものの対面診療との診療報酬に大きく差がつくこととなりました。

転機となったのは2020年のことで、新型コロナウイルス流行がきっかけとなり、同年4月には特例措置として「対象疾患の制限初診以降の対面診療期間の制限などの制限が緩和されました。この措置によって、コロナ禍での感染拡大防止を目的とした通院手段としてオンライン診療が注目されることになりました。

さらに、2022年の診療報酬改定では、前述の特例措置で緩和された制限が概ね恒久化されるとともに、オンライン診療定着の大きなボトルネックとなっていた診療報酬が、対面診療の9割程度まで引き上げられました。

令和4年度 診療報酬 改定前、改定後

この改定によって、今までオンライン診療の利用が難しかった患者も、医師の判断のもと、通院における選択肢としてオンライン診療を選ぶことが可能になったのです。

調査から見る最新の利用実態:若い層を中心に対面診療との併用で活用が進む、利用者の継続意向は8割以上

メドレーがインターネットで実施した意識調査によると、オンライン診療は20〜30代での利用率が高く、全体の6割近くを占めています。

利用者全体では「休日の空いてる時間」「仕事の昼休みや休憩時間」などのスキマ時間に利用している人が多く、若い層を中心に忙しい現代人のライフスタイルに寄り添うツールとして活用されていることがわかりました。

オンライン診療利用者の内訳オンライン診療はいつ利用していますか



オンライン診療を利用する際に重視するポイントについては、半数近くの人が「適切な診断が受けられるか」(48.3%)をあげており、次いで、「信頼できる病院を選ぶことができるか」(36.5%)「費用が対面費用と比べてどの程度差があるか」(30.3%)「時間短縮になるか」(28.5%)「登録などの手続きが簡単か」(26.3%)の回答となりました。時短等の利便性でオンライン診療を活用する一方、対面診療と同様に医療への信頼性を重視していることが伺えます。

オンライン診療を利用する際に重視したい、もしくは重視しているポイント



診療科ごとのオンライン診療の活用状況について見ると、受診をしたことがある診療科の上位5つの科目では、すべての診療科でオンライン診療のみよりも対面とオンラインを組み合わせての受診が上回る結果となっています。

さらに、オンライン診療利用者における利用意向では、8割を超える人が今後も利用したいという結果となっており、対面とオンラインを組み合わせた受診スタイルは、次世代型の診察方法として、今後さらに浸透していくことが予想されます。

活用事例:かかりつけ医からのオンライン診療の勧めが後押しとなり、1,500キロ離れた島へ移住

利用者は実際にはどのようにオンライン診療を生活に取り入れているのでしょうか。アトピー性皮膚炎を患い、皮膚科に通院しているAさんのケースをご紹介します。

2021年末に宮古島に移住したAさんは、もともと住んでいた関西圏の自宅近くのクリニックに6年以上通院していました。移住後はオンライン診療を取り入れて1,500キロ離れた引っ越し先から、移住前と変わらずにかかりつけ医の診療を受けています

出身地でもある関西で働いていたAさんは、仕事によるストレスでアトピー性皮膚炎が悪化してからさまざまなクリニックに訪れましたが、どこへ行っても薬を処方するだけの診察となり、症状はなかなか改善しませんでした。

そんな中出会ったのが現在のかかりつけ医で、症状を診るだけでなく生活環境について聞いてくれたり、仕事のストレスについても共感してくれたりと、患者の気持ちに寄り添った診察で、Aさんはやっと信頼できる医師を見つけたと感じました。

Aさんの症状はスギ花粉のアレルギーで悪化することがあり、ひどい時はかゆみのせいで仕事を休むこともありました。ある日の診察で「沖縄はスギ花粉がほとんど飛んでいない」という話を医師から聞き、宮古島への移住を考え始めます。

一方で、やっと出会った信頼できるクリニックに距離の問題で通院できなくなる事を懸念していました。

そんな中、かかりつけ医からの「オンライン診療なら引っ越しても診察を続けられる」という言葉が移住の後押しになりました。移住後は、オンライン診療を活用して診察を受け、島内の薬局に処方箋を持参して薬を受け取っています

また、年に1〜2度、関西の実家へ帰省する際には対面での受診を行い、直接肌の状態を見ながら症状の経過を確認してもらっています。

移住によって症状を悪化させていたスギ花粉やストレスなどが減ったことで、肌の状態は劇的に良くなったそうです。

Aさんの事例以外にも、オンライン診療はさまざまな疾患や症状で活用されています。

とくに、月経困難症などの婦人科疾患に対する低用量ピルの処方や高血圧に対する降圧薬の処方、睡眠時無呼吸症候群に対するCPAP(持続陽圧呼吸療法)、アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法など、継続して定期的な通院が欠かせない場合でも、忙しくて通院の間隔が空いてしまったり通院ができなくなるケースもあります。

医師と相談しながらオンライン診療を取り入れて通院の負担を減らすことで、治療が継続しやすくなります。

治療方法・期間の一例

オンライン診療のこれから:コロナ5類移行後も、感染症の経過観察や生活習慣病での通院利用に期待

コロナ禍を経て浸透してきたオンライン診療ですが、新型コロナウイルス感染症の5類移行によって患者としての利用にはどのような影響があるのでしょうか。

冒頭でのオンライン診療への規制緩和の振り返りの通り、2022年の診療報酬改定によって緩和された条件は恒久的なものとなっているため、コロナの5類移行によって現在オンライン診療を取り入れている患者の利用が制限されることはなく、これからも継続してオンライン診療を活用することが可能です。

なお、厚生労働省は、感染症法上の位置づけ変更後の療養期間の考え方として「発症後5日間が他人に感染させるリスクが高いことに注意してほしい」と示していることからも、コロナ陽性となった場合の療養中のオンライン診療は引き続き有効だと考えられます。

とくに、介護施設や高齢者入所施設におけるコロナ陽性者に対する診療では、看護師同伴のもとでのオンライン診療の活用が推奨されています。

また、活用例で紹介したように定期的な通院を必要としている患者にとっては、今後も医療機関ごとの診療経験が蓄積されていったり、幅広い活用事例が共有されていくことで、さらなる活用の幅が広がっていくことが期待できます。

<参考>※URL最終閲覧日2023.05.16
PR TIMES, 2023.04.26,【コロナ5類でオンライン診療はどうなる?】調査と事例から見る最新の利用実態と今後(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000080.000013108.html