【広報担当者向け】製薬企業のプレスリリース、正確な情報を広く届けるためには?

【広報担当者向け】製薬企業のプレスリリース、正確な情報を広く届けるためには?

新薬の発売や臨床試験の結果など、製薬企業は様々な情報をプレスリリースとして発信しています。しかしメディアを通して正確な情報を幅広く届けることが、最近では難しい場合もあります。メディアに正確な記事を書いてもらうためには、どのようにプレスリリースを作れば良いのでしょうか、そのポイントを解説します。

メディアの多様化。情報を幅広く、正確に届けることは難しい。

プレスリリースは、より多くの人に情報を知ってもらえるようメディアの記者に記事を書いてもらうための文書です。情報の拡散手段として、メディアは大きな役割を担っています。

一方、製薬企業が発信する情報は、人々の命や健康に関わることから正確性も求められています。以前までは、専門性の高い情報は医療専門メディアや一般紙の医療部など、専門性の高い媒体で専門性の高い書き手が記事を作成することが一般的でした。

ところが、近年では個人の発信も含めたメディアの多様化に加え、コロナ禍を通して、医療専門以外のいわゆる一般メディアも専門的な情報を伝えるケースが多くなってきました。そのような一般メディアの記事を読むと、時折、メインの情報は合っているのに、疾患の説明が異なっていたり、医学的に正確でない情報が補足されていたりするのを見かけます。

一般メディアはプレスリリースを起点にパッチワークで記事を作成することも

医療専門メディアや新聞・雑誌などの旧来からある媒体では、独自の視点や取材を大切にするため、基本的にプレスリリースをそのまま記事にすることはありません。その分、情報の正確さを担保するために書き手には相応の専門性が求められています。

一方、Webメディアの一部では速報性を重視するため、プレスリリースを起点に、補足情報として厚労省データや学会ガイドラインなど別の一次情報を加え、パッチワーク的に記事を作ることもあります。最近では「コタツ記事」と揶揄されていますが、取材対象者に直接取材を行わず、また医師監修などの専門家によるチェックが行われないまま、意図と異なる情報が記事化され、それがSNSなどで拡散されるケースが見受けられます。

意図を正しく伝える情報発信にするには

「意図が正しく伝わらない記事化」を防ぐために、一部の製薬企業では報道関係者向けページをオウンドメディア化し会員登録を義務付けるなどしています。しかし、記事の正確性はある程度担保される一方、一般メディアにとってはハードルが高くなってしまい、本来の目的である「広報=広く報じる」ことが難しくなる現状があります。

「正確に記事を書いてもらえる」ため、プレスリリースにおいて、丁寧な情報発信を行っているケースを2例ご紹介します。

1. メインだけでなく補足情報も提供するファイザー

ファイザー社のプレスリリースは、メインの情報だけでなく、疾患の基本情報やコメントなど、「ニュース記事はどういった要素を組み合わせて作られるか」を把握したうえで作られています。

2021年1月28日にリリースされた「長時間作用型遺伝子組換えヒト成長ホルモン製剤ソムアトロゴンの日本における製造販売承認申請を発表」のリリースでは、メインの「製造販売承認申請を厚生労働省に行った」という情報に加えて、「国内第3相試験の結果」「製剤の説明」「成長ホルモン分泌不全性低身長症の疾患解説」「ファイザーR&D合同会社社長のコメント」が掲載されており、メディアの読者層に合わせて組み合わせて記事が作成しやすいプレスリリースといえます。

また、2月14日に発表された「ファイザーとBioNTech、COVID-19ワクチン『コミナティ筋注』の日本における製造販売承認を取得」では、一般メディアでも取り上げるコロナワクチンのリリースということもあり、画像だけでなく、国内倉庫内の様子や日本国内到着時の様子、ベルギー製造拠点のそれぞれの動画も公開しています。

2. プレスリリースの解説動画をYouTubeで配信する理化学研究所

理化学研究所は、専門用語ばかりになりがちなプレスリリースを、いかに分かりやすくメディアに伝えるかを試行錯誤している好例の1つです。かつては、報道発表資料とは別に「60秒で分かるプレスリリース」という動画を掲載していたことがありました。現在ではYouTubeチャンネルで記者発表の動画だけでなく、プレスリリースの解説動画も掲載するなど、情報の最終到達者だけでなく、その間に立つメディア関係者に対しての細かな情報提供も行っています。

メディアだけでなく、「その先」も見据えた情報提供を

SNSなどで不正確な情報、怪しい情報が提示されると「情報ソースは?」と尋ねることが当たり前のようになりつつある現代において、公開されるプレス向け情報はもはや「メディアのためだけのもの」とはならなくなっています。発信する情報は、「追加取材などの内容確認が行われないまま記事化される」「患者さんや医療者も見る」ことを前提に、広報担当者だけではなく、製品に関わる担当者もしっかりとチェックすることをおすすめします。


【参考】 (2021年2月19日最終閲覧)
・「長時間作用型遺伝子組換えヒト成長ホルモン製剤ソムアトロゴンの
日本における製造販売承認申請を発表」2021年1月28日/ファイザー
https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2021/2021_01_28.html

・「ファイザーとBioNTech、COVID-19ワクチン『コミナティ筋注』の日本における製造販売承認を取得」2021年2月14日/ファイザー
https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2021/2021_02_14.html

・youtubeチャンネル「rikenchannel」/理化学研究所 
https://www.youtube.com/user/rikenchannel/videos