製薬業界マーケティング/DX最新動向まとめ 2024年7・8月版

製薬業界マーケティング/DX最新動向まとめ 2024年7・8月版

昨今、医療・製薬業界でも、業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)やデジタルマーケティングに注力する動きが多くなってきました。本記事では、2カ月に1回、各製薬企業のプレスリリースより、最新製薬マーケティングやDXの取り組みをピックアップ。マーケティング、プロモーション、DXについて、業界全体の最新トレンドや、他社がどのような動きをしているのかを把握できます。今回は、2024年7・8月を対象に最新動向をまとめました。

※調査対象の企業は2024年5月にIQVIAより公開された23年度販売会社ベース企業売上ランキング(期間:2023年4月~2024年3月)より抜粋した19社。50音順にリストアップ

【2024年7・8月サマリー】

  • デジタル技術を活用した医療ソリューションの提供が相次ぐ

製薬業界では、デジタル技術を活用した新しい医療ソリューションの開発が急速に進んでいる。大塚製薬は、FDA認可を受けた世界初の大うつ病用デジタル治療アプリ「Rejoyn™」を米国で発売。沢井製薬とインテグリティ・ヘルスケアが提供を開始した「生活習慣病管理 療養計画書作成支援プログラム」は、医療機関における生活習慣病管理を支援する。こうしたデジタル治療アプリや医療支援プログラムの開発は、患者の治療選択肢を拡大するとともに、医療従事者の業務効率化と患者ケアの質向上も期待できる。

  • 疾患啓発のアプローチが多様化

製薬企業の啓発活動は、より多様な方法での情報発信が当たり前になってきている。MSDは、子宮頸がん疾患啓発の新キャンペーン「娘の未来に、私が今できること」を開始。GSKは、帯状疱疹の疾患と予防啓発を目的とする2つの新TVCMを放映開始。異なる俳優を起用し、基礎疾患のある患者や帯状疱疹の体験者など、多様な視点から疾患の重要性を訴える。日本イーライリリーは、がん患者とその家族、友人を対象にした絵画・写真・絵手紙コンテスト「リリー・オンコロジー・オン・キャンバス」を開催。いずれもキャンペーンの受け皿として疾患啓発サイトを活用。疾患に関する情報を、ターゲット層により効果的に伝えるためTVCM、YouTube、サイトなどさまざまなチャネルを活用している。

  • 地域社会や他社と連携したヘルスケア施策

地方自治体や他業種と連携し、地域に根ざしたヘルスケア施策を展開。沢井製薬を含む複数企業は、福岡県飯塚市と連携し、PHRサービスを起点とした健康なまちづくり形成に関する実証事業を実施。ファイザーは、QLife の協力を得て2024年度の新型コロナワクチンの任意接種を希望する人向けに、医療機関を検索できる情報サイトを立ち上げ。自治体や他社との連携により、より包括的で効果的なヘルスケアソリューションの提供を目指す。

【各社プレスリリース抜粋】
■MSD株式会社

俳優 小雪さんを起用子宮頸がん疾患啓発の新キャンペーン 「娘の未来に、私が今できること」8月5日(月)より、テレビ・オンラインで開始

2024年8月5日

MSDは、子宮頸がん疾患啓発の新キャンペーン「娘の未来に、私が今できること」を開始したことを発表。本キャンペーンは、10代の娘を持つお母さんに向けて、ご自身も3児の母親で10代の娘さんがいらっしゃる俳優の小雪さんを起用し、TVCMやオンラインをはじめとする各種媒体を通じて展開している。
若いうちから予防することが重要な子宮頸がんだが、10代の若い女性が「がん」について日常生活で意識する機会は少ないと考えられ、保護者をはじめとする周囲の方々が正しい情報を伝えてあげることが重要。MSDは、10代の女性にとって身近な存在であるお母さんが子宮頸がんとその予防方法について深く理解し、「娘の未来のために、私が今できること」を考えてもらうべく、本キャンペーンを実施することになった。MSDは、子宮頸がん予防に関するWebサイト「もっと知りたい 子宮頸がん予防」でも、最新の疾患・予防情報を提供しており、本CMも掲載中。

https://www.msd.co.jp/news/product-news-20240805/

■大塚製薬株式会社

デジタル治療アプリ「Rejoyn™」を米国で発売開始ーFDAで認可された世界初の大うつ病アプリー

2024年8月14日

大塚製薬は、デジタル治療アプリ「RejoynTM(以下、「リジョイン」)の発売を全米で開始したことを発表。リジョインは、抗うつ薬を服用している22歳以上の大うつ病(MDD)の患者さんに対する補助療法として、本年3月に米国食品医薬品局(FDA)の認可を取得した世界初のデジタル治療アプリで、その使用には医療者からの処方箋が必要。
患者さんは、医療機関でリジョインの処方箋を入手することができるほか、ウェブを通じたリモート診察を通じて処方箋を入手することが可能。リジョインはデジタル治療アプリであり、モバイルアプリケーションストアからダウンロードし、患者さんの都合の良い場所と時間で使用することができる。
リジョインの6週間の治療プログラムの正式な販売価格は現在のところ200米ドル。より多くの患者さんがアクセスできるよう、販売直後は期間限定の割引価格で提供される。また、医療保険会社からの保険適用も近日中に予定されている。

https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2024/20240814_1.html

■沢井製薬株式会社

飯塚市におけるPHRサービスを起点とした業種間連携型の健康なまちづくり形成に関する実証事業 結果のお知らせ

2024年7月1日

日福岡県飯塚市、株式会社日立システムズ、株式会社インテグリテ ィ・ヘルスケア、ANA X 株式会社、沢井製薬の日本ウェルビーイングコンソーシアムの4社は、飯塚市で実施した 「PHR サービスを起点とした業種間連携型の健康なまちづくり形成に関する実証事業」の結果を公表。
本実証事業では、ANA X が提供する日々の移動でマイルが貯まる「ANA Pocket」と沢井製薬が提供する PHR1) を管理する「SaluDi」の 2 種類のスマートフォンアプリケーション(無料で利用可能)を 活用し、自治体の課題である健康無関心層2) への「健康意識の向上」「体重の減少」「健康行動への行動変容」の有用性が確認できた。

①健康意識の向上
実証後アンケートより 72.8%が「実証前と比べて健康に関して意識することが増えた」と回答

②体重の減少
2024年1月~3月の参加者全体の平均体重は 0.6 ㎏減、BMI は 0.3 減、健康無関心層においては平均体重 1.6 ㎏減(体重 2.4%減3))、BMI0.6 減とより有意な体重減少を確認

③健康行動への寄与
実証後アンケート回答より 6 割が飯塚市限定チャレンジやインセンティブが「行動(外出・運動)のきっかけになった」と回答

沢井製薬は SaluDi を、個人の健康データの蓄積だけでなく、連携医療機関・調剤薬局などとの連携拡大、医療の場での PHR の利活用を推進し、疾病管理・未病予防に役立てることをめざしていく。

1)PHR(Personal Health Record):個人の健康診断結果、服薬履歴、日常生活でのバイタルデータ等の保健医療情報。
2)健康無関心層:本実証事業においては、事前アンケートで日頃から運動または食事について、「まったく意識していない」「あまり意識 していない」の両方、もしくはどちらかを選択した方、かつ疾病による治療を受けていない群を無関心層とする。
3)(参考)日本肥満学会ガイドライン:「肥満症」の減量目標は現体重から3%

https://www.sawai.co.jp/release/pdf/640

沢井製薬とインテグリティ・ヘルスケア 医療機関における生活習慣病管理を支援する「生活習慣病管理 療養計画書作成支援プログラム」をPHR管理プラットフォーム「Smart One Health」でサービス提供開始

2024年7月3日

沢井製薬と株式会社インテグリティ・ヘルスケアは、医療機関において生活習慣病管理を行う際に必要な療養計画の作成を支援するサービス「生活習慣病管理 療養計画書作成支援プログラム」(以下、本プログラム)の提供を開始したと発表。
療養計画の立案においては患者の病状、生活習慣などから目標と指導項目を作成し、患者へ説明、同意を得る必要がある。本プログラムでは測定・検査データ、病歴・薬歴、問診結果から各種ガイドライン1)に対応した推奨する目標と指導項目を生成する機能と、生成された目標と指導項目を療養担当規則に対応した所定の様式に出力する機能を備えており、インテグリティ・ヘルスケアが提供するSmart One Healthの医療機関管理機能のオプションとして提供される。
沢井製薬とインテグリティ・ヘルスケアは、PHR管理プラットフォームSmart One Health、SaluDiの開発提供で培った知見と最先端のDXテクノロジーを活用し、臨床領域におけるPHRの活用を推進するプロダクトを提供することで、より良い医療提供に今後も貢献していく。

1) 各種ガイドライン一覧
-  肥満症診療ガイドライン2022(一般社団法人日本肥満学会)
-  高血圧治療ガイドライン2019(特定非営利活動法人日本高血圧学会)
-  高血圧診療ガイド2020(特定非営利活動法人日本高血圧学会)
-  動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022年版(一般社団法人日本動脈硬化学会)
-  動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド 2023年版(一般社団法人日本動脈硬化学会)
-  糖尿病診療ガイドライン2024(一般社団法人日本糖尿病学会)
-  糖尿病治療ガイド2022-2023(一般社団法人日本糖尿病学会)
その他、日本人間ドック学会、メタボリックシンドローム判定、健康日本21(第三次)、日本人の食事摂取基準(2020年版)、健康づくりのための身体活動基準2013で示されているエビデンス、診断基準にも対応

https://www.sawai.co.jp/release/detail/642#

■グラクソ・スミスクライン株式会社

GSK、帯状疱疹の疾患と予防啓発を目的とする2つの新TVCM「聞いてみませんか?帯状疱疹のこと」篇と「まさか自分が」篇を8月19日より全国で放映開始

2024年8月19日

GSKは、帯状疱疹について認知を向上させ、医師への相談のきっかけとなるよう、俳優の風吹ジュンさんを起用した帯状疱疹疾患啓発の新TVCM「聞いてみませんか?帯状疱疹のこと」篇と、同じく俳優の阿南健治さんを起用した「まさか自分が」篇を8月19日(月)から全国で放映を開始した。
帯状疱疹という病名について、50歳以上の98%が認知している一方で、「自分が帯状疱疹を発症する可能性がある」と認識している人の割合は、いまだ30%程度にとどまっている1)
新TVCM「聞いてみませんか?帯状疱疹のこと」篇では、基礎疾患のある患者さん役の風吹さんが、通院時、帯状疱疹に関する医師への質問をきっかけに、基礎疾患による発症リスクの増加や予防の選択肢について知るストーリーで、患者さんと医師との対話の重要性を伝える。「まさか自分が」篇では、帯状疱疹の体験者役の阿南さんが、自分が帯状疱疹を発症することを予期していなかったことを語るなど、身近な疾患である帯状疱疹について正しく知ることの大切さを描く。
MSDは、帯状疱疹に関するWebサイト「帯状疱疹予防.jp」でも、疾患情報を提供しており、本CMも掲載中。

1) GSK「帯状疱疹とワクチン接種に関する日本人の意識調査2023」(日本人50歳以上男女6,000名対象としたオンライン調査、2023年10 月16 日~10月25日実施)

https://jp.gsk.com/ja-jp/news/press-releases/20240819_taijouhoushin-yobou-tvcm/

■日本イーライリリー株式会社

がん患者さん、ご家族、ご友人が対象の絵画・写真・絵手紙コンテスト 「第 15 回リリー・オンコロジー・オン・キャンバス がんと生きる、わたしの物語。」 応募登録を開始

2024年8月27日

日本イーライリリーは、がんと診断された方、そのご家族、ご友人を対象にした絵画・写真・絵手紙コンテスト 「第 15 回 リリー・オンコロジー・オン・キャンバス がんと生きる、わたしの物語。」(以下、リリー・オンコロ ジー・オン・キャンバス)の応募登録を開始した。
リリー・オンコロジー・オン・キャンバスとは がんと告知された時の不安や、がんと共に生きる決意、がんの経験を通して変化した生き方などをアート 作品とエッセイで表現し、多くの人と想いを分かち合っていただく「場」として、日本イーライリリーが2010年 に創設。
日本イーライリリーは、本コンテストを通じて、ひとりでも多くの患者さんや支援者の方々の心に寄り添うとともに、がんになっても自分らしく生きられる社会の実現を目指して継続的なサポートを提供していくとしている。 なお、応募作品は、リリー・オンコロジー・オン・キャンバスのWebサイトおよびFacebookに掲載。

https://mediaroom.lilly.com/jp/previewPDF/2024/24-25_co.jp.pdf

■ファイザー株式会社

新型コロナ感染状況を受け、ワクチン任意接種の医療機関情報検索サイトを開設 ~今、新型コロナワクチン接種を希望される方々を医療機関に繋ぎ、情報ニーズに対応~

2024年8月22日

ファイザーは、新型コロナウイルスの感染状況を受け、2024年度の新型コロナワクチンの任意接種を希望される方を対象に、医療機関を検索できる情報サイト「新型コロナワクチンの任意接種を相談できる病院検索」(以下、本サイト)を、株式会社QLifeの協力により立ち上げたことを発表。
本サイトでは、新型コロナワクチンの任意接種を受けることができる全国の医療機関のうち、QLifeが掲載許諾を取得した医療機関について、キーワード、エリア(都道府県・市町村)、路線や駅名の条件設定をすることで、新型コロナワクチンの製造販売元を問わず検索することが可能。本サイトは2024年/2025年シーズンの新型コロナワクチン定期接種が開始されるまでの期間での限定公開となる。
ファイザーは、新型コロナウイルス感染症に関するお役立ち情報を幅広く入手できるWebサイト「新型コロナを学ぶ」も運営。

https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2024/2024-08-22