昨今、医療・製薬業界でも、業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)化やデジタルマーケティングに注力する動きが多くなってきました。本記事では、2か月に1回、各製薬企業のプレスリリースより、最新製薬マーケティングやDXの取り組みをピックアップ。マーケティング、プロモーション、DX化について、業界全体の最新トレンドや、他社がどのような動きをしているのかを把握できます。今回は、2021年9月・10月を対象に最新動向をまとめました。
※調査対象の企業は2021年5月にミクスonlineに掲載された20年度販売会社ベース企業売上ランキング(出典:IQVIA)より抜粋した19社。50音順にリストアップ
製薬業界DX/マーケティング最新動向
- 患者の生活に寄り添った仕組みで、患者への疾患啓発・情報提供に力を入れる企業が多数。 アストラゼネカは、卵巣がん患者に向けた情報提供を行うLINEアカウント「わかる卵巣がん」の提供を開始し、基本的な卵巣がんの治療や患者の体験談などもLINEアカウントで発信する。ノバルティスファーマは知識集団「QuizKnock」とタッグを組み、慢性骨髄性白血病(CML)の理解促進を狙うプロジェクトを開始。特設サイトを立ち上げ、CMLに関するクイズを解きながら知識を深められる。ファイザーはUbie株式会社と協業し、過活動膀胱(OAB)の患者に向けた情報提供体制を強化した。両社の持つ情報提供サービスを連携させ、患者がスムーズに、十分なOABに関する情報にたどり着ける設計を行う。
- 第一三共は、製品に関する医療従事者からの問い合わせを24時間365日対応するためのAI搭載チャットボット「いつでもDI24」を公開した。すでにほぼすべての製品において対応しており、製品適正使用をサポートするひとつのツールとなりうる。チャットボットの導入は多くの製薬企業が検討しており、 いかに医療従事者にとってスムーズに十分な情報提供ができるか、いかに製薬企業にとって業務効率化が図れるか も導入検討のポイントとなるだろう。
■アストラゼネカ株式会社
患者さんの卵巣がん情報へのアクセスを支援、LINEアカウント「わかる卵巣がん」の提供を開始
2021年9月22日
アストラゼネカは、卵巣がん患者さんに適切な卵巣がん情報を素早くお伝えすることを目的に、特定非営利活動法人 婦人科悪性腫瘍研究機構の監修および認定NPO法人キャンサーネットジャパンの協力により、LINEアカウント「わかる卵巣がん」を開発、提供を開始した。
【わかる卵巣がんLINEアカウント概要】
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治療や療養生活に役立つ幅広い情報
►卵巣がんの特徴や基本的な治療などを解説
►患者さんが抱きやすい疑問について、Q&A形式で解説
►さまざまな年代、家族構成の患者さんの体験談を掲載 - 解説記事と動画でわかりやすい
https://www.astrazeneca.co.jp/content/az-jp/media/press-releases1/2021/2021092202.html
■第一三共株式会社
AIを活用したDIチャットボット「いつでもDI 24」を公開
2021年10月1日
第一三共は、自社製品に関する医療従事者からの問い合わせに24時間365日対応するため、人工知能(AI)を活用したDIチャットボット「いつでもDI 24」を、医療従事者向けサイト「Medical Library」会員サイトにて公開した。
第一三共は2018年よりAIが質問文を判読し最適なQ&Aを瞬時に提示するシステムを製品情報センターに導入。2019年にはその利用範囲をMRに広げ、医療従事者へ正確かつ迅速な情報提供を行ってきた。約3年間の継続したAI学習によりシステム精度が高まったこと、コロナ禍以降医療従事者からのWeb上での情報提供ニーズが高まっていることを受けて試行的な公開を進めていた。10月より、ほぼ全ての製品(約100製品)を対象として本格的に「いつでもDI 24」の公開となった。
「いつでもDI 24」は、Medical Library会員で医療機関に所属する医師・薬剤師が使用できるAI搭載型Q&A応答システム。質問を入力すると、AIがその意図・意味を解釈し、最適なQ&Aを提示する。医師、薬剤師から多く寄せられるQ&Aをデータベース化し、回答時には根拠となるデータも併せて提示する。
https://www.daiichisankyo.co.jp/files/news/pressrelease/pdf/202110/20211001_J.pdf
■ノバルティスファーマ株式会社
慢性骨髄性白血病の患者さんや専門医、QuizKnockとともに新たな疾患啓発プロジェクトを開始
2021年9月22日
ノバルティス ファーマは、9月22日の「世界CMLデー」に合わせ、クイズを通して慢性骨髄性白血病(以下:CML)に対する正しい理解を促進し、患者さんがよりよい生活を送ることができる社会を作ることを目的とした取り組み「C.M.L.PROJECT~ちゃんと・学んで・リンクする~」を立ち上げた。
本プロジェクトでは、老若男女を問わず親しまれている“クイズ”を通して、多くの人たちにCMLについて正しく・楽しく理解していただく活動を推進。クイズは、本プロジェクトの趣旨に共感・賛同いただいた慢性骨髄性白血病(CML)患者・家族の会「いずみの会」や専門医、また、多方面で活躍されている伊沢拓司氏率いる知識集団QuizKnockとともに制作する。
クイズは11月25日(木)に、
公式サイト
での公開を予定。
https://www.novartis.co.jp/news/media-releases/prkk20210922
■ファイザー株式会社×Ubie株式会社
Ubieとファイザー、過活動膀胱(OAB)患者さんへのさらなる貢献を目指し協業開始
2021年10月15日
ファイザーはUbie株式会社(本社:東京都中央区、共同代表取締役:阿部吉倫・久保恒太、以下:Ubie)と、切迫性尿失禁(UUI)をはじめとする過活動膀胱(OAB)の症状で悩む方の医療機関への早期受診に繋がる一助となるために、Ubieが提供するWeb医療情報提供サービス「ユビーAI受診相談」と、ファイザーが提供する疾患啓発サイト「UUI相談室」の連携を10月から開始した。
本協業は、ファイザーのスタートアップ企業とのオープンイノベーション「ファイザー ヘルスケア・ハブ・ジャパン」
※1
から生まれた取り組みである。
医療機関への受診を躊躇し、OABで困窮される患者さんの課題を解消するため、両社はOABに関する情報提供という部分で協業する。「ユビーAI受診相談」に訪問した方が「OABに関連する症状で困っている」と回答した場合、OABの情報およびファイザーの「UUI相談室」のリンクが表示される。リンク先ではUUIをはじめとするOAB関連の充実した情報が取得でき、疾患の理解促進のサポートとなる。また、「UUI相談室」のトップ画面には「ユビーAI受診相談」のリンクが表示され、リンク先では、近隣の泌尿器科等の医療機関を検索でき、医療機関受診をサポートする。
※1 デジタルヘルステクノロジーやサービスを持つスタートアップ企業と協業し、患者さんにより良い解決策の提供を目指す、ファイザー社の世界的オープンイノベーションの取り組みである「Pfizer Healthcare Hub」の日本版
https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2021/2021_10_15.html