昨今、医療・製薬業界でも、業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)化やデジタルマーケティングに注力する動きが多くなってきました。本記事では、2か月に1回、各製薬企業のプレスリリースより、最新製薬マーケティングやDXの取り組みをピックアップ。マーケティング、プロモーション、DX化について、業界全体の最新トレンドや、他社がどのような動きをしているのかを把握できます。今回は、2021年7月・8月を対象に最新動向をまとめました。
※調査対象の企業は2021年5月にミクスonlineに掲載された20年度販売会社ベース企業売上ランキング(出典:IQVIA)より抜粋した19社。50音順にリストアップ
製薬業界DX/マーケティング最新動向
- 医療従事者向けサイトの新規開設やリニューアルに踏み切る企業が増えている。アストラゼネカ株式会社は、2つの医療従事者向けウェブサイトを公開。医療従事者の学びや製品理解をサポートするためのサイトとして、新たなポジションを築く。
- 新型コロナウイルス感染症の影響もあり、各社では医療従事者への情報提供活動にデジタルを活用する動きが見える。日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社はe-MRの運用を本格化し、医療従事者に寄り添ったオンラインの情報提供活動にさらに注力する。
- 患者さん向け情報提供やサポートサービスでは、積極的にDX化が進む。日本イーライリリー株式会社は「糖尿病@LINE ヘルスケア」で、患者さん向け情報提供を開始した。ノバルティスファーマ株式会社では、PHRとチャットボットを活用したプラットフォームで、患者さんは症状を記録するほか、不安や悩みに対し医師監修済みの回答を得られる。
- ファイザーR&D合同会社は、株式会社NTTデータと連携しDXを推進。電子カルテデータと臨床データ収集システムを連携することで、臨床研究の業務効率化を図る。
■アストラゼネカ株式会社
医療従事者向けウェブサイト、“IMPACT Academy”を新規開設
2021年7月28日
アストラゼネカは、医療従事者向けのウェブサイト“IMPACT Academy”を新たに開設。本サイトでは、アストラゼネカの三大注力領域の一つである循環器・腎・代謝疾患領域における国内外の最新エビデンスを提供する。
“IMPACT Academy”は、アストラゼネカのメディカル部門が作成した疾患情報を中心としたサイトで、販売促進活動とは一線を画している。循環器・腎・代謝領域における基礎研究から臨床試験まで最新のエビデンスを提供し、国際的に活躍する専門家の協力のもと、国内外の知見を取り扱うサイトとする。
また、ダウンロード可能なスライドや動画コンテンツを多く掲載し、医療従事者の効率的な学びを支援する。
https://www.astrazeneca.co.jp/content/az-jp/media/press-releases1/2021/2021072801.html
医療従事者向けに製品に関するメディカルコンテンツを提供するウェブサイト「AZmedical」を公開
2021年8月12日
アストラゼネカは、医療従事者向けに製品に関するメディカルコンテンツを提供するウェブサイト「AZmedical」(URL:http://medicalinformation.astrazeneca.co.jp)を公開。
「AZmedical」は中央に検索ボックスがあるシンプルなインターフェースで、必要な情報にアクセスしやすいつくりとなっている。サイトにアクセスした医療従事者は、アストラゼネカの製品情報を検索し、製品回答書にアクセスできる。一般の検索エンジン同様、製品や疾患といった複数のキーワードを掛け合わせたり、製品名や疾患名でフィルターし絞り込んだりしての検索が可能。「AZmedical」から、添付文書やその他関連サイトにも遷移でき、アストラゼネカが提供する他のコンテンツを探す際にも利用できる。
「AZmedical」公開に伴い、これまで医療従事者向けにアストラゼネカ製品のQ&Aを検索するために提供されていた「AZpedia」は8月12日に閉鎖された。
https://www.astrazeneca.co.jp/content/az-jp/media/press-releases1/2021/2021081201.html
■日本イーライリリー株式会社
LINE ヘルスケアと連携し、LINE 公式アカウント「糖尿病@LINE ヘルスケア」を2021年8月24日に開設
~糖尿病治療を続ける患者さんに寄り添う疾患啓発情報を提供~
2021年8月24日
日本イーライリリーは、LINE ヘルスケア株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:室山 真一郎、以下、LINE ヘルスケア)が 2021 年 8 月 24 日に開設する LINE 公式アカウント「糖尿病@LINE ヘルスケア」において、糖尿病患者さんが簡単に実践できる食事法や運動法など、糖尿病と上手に付き合うための情報の提供を開始する。
「糖尿病@LINEヘルスケア」では、糖尿病治療や血糖コントロールに役立つ情報として、患者さんが日常生活にすぐに取り入れられる簡単で美味しい食事法や、無理なく自分のペースで続けるための運動法、糖尿病の最新治療情報など、医師や専門家監修による様々な情報をコンテンツとして発信。また、血糖値や合併症などの状態をチェックし、医師との円滑なコミュニケーションや最適な治療法の発見を後押しする「相談シート」も提供します。
ほか、日本イーライリリーのコンテンツに加えて、LINE ヘルスケアが提供している LINE アプリ上で医師に健康相談ができるサービスも利用できる。
※「LINE」はLINE株式会社の登録商標です
https://news.lilly.co.jp/down2.php?attach_id=813&category=19&page=1&access_id=2141
■日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
医療関係者との新たなコミュニケーションチャネルである「e-MR」の組織を本格始動
2021年8月5日
日本ベーリンガーインゲルハイムは、全国の医療関係者が患者さんにより早く診断・治療を提供できる環境づくりを支援するため、オンライン面談やメールによる情報提供を専門に行うe-MRを組織化した。同社はe-MRを2019年から試験的に配置しており、医療関係者の多様化する情報提供チャネルへのニーズを踏まえて、2021年1月に正式に組織化し、本格的にe-MR活動をスタートした。
e-MRとの面談は、メールやQRコードの読み込み、LINEなどにより予約可能。面談は医療関係者が所有するパソコン、スマートフォン、タブレット端末などで実施できる。通常の面談の他、e-MRが演者となり、全国の複数の先生方を対象とした製品説明会も実施する。そのほか、地区担当のMRや外部医療情報サイトとの連携に加え、当社の医療関係者向けサイト「ベーリンガープラス」による情報提供を含めた複合的なアプローチを図っていく。
https://www.boehringer-ingelheim.jp/press-release/20210805_01
■ノバルティス ファーマ株式会社
慢性特発性血小板減少性紫斑病の患者さんを支援する2つのデジタルプラットフォームを活用したサービスを開始
~患者さんの体調の自己管理と医師とのコミュニケーションをサポート~
2021年7月5日
ノバルティス ファーマは、慢性特発性血小板減少性紫斑病(以下、ITP)と診断されている患者さんとその家族向けに、メディカルノート社と協働したWebサイトでの「ITPお悩みチャットボット」サービス、および、Welby社と協働し、同社開発のプラットフォームを活用した「WelbyマイカルテONC」サービスを開始。2つの新サービスで患者さんの毎日の体調の自己管理と、医師との良好なコミュニケーションの促進をサポートする。
血球・症状が落ち着いたITP患者さんにとって、通院の負担は減少する一方、医師とのコミュニケーションの機会も減少するため、日常生活の中で疑問や不安が解消できない事が課題となる。「ITPお悩みチャットボット」を使用することで、患者さんはご自身のご都合に合わせたタイミングで、質問や不安に対して医師監修済の回答を得られる。精神的な負担の軽減や、気軽なサービスの活用で主体的に治療に向かう効果が期待できる。
Welby社のPHR(Personal Health Record)プラットフォーム「WelbyマイカルテONC」を利用したスマートフォンアプリの新サービスは、患者さんが日々の生活の中でだるさや内出血、頭痛など気になる症状をアプリに入力できる。通院時、医師はアプリ内の記録を元に、日々のデータと症状の関係性などを把握しやすくなる。
https://www.novartis.co.jp/news/media-releases/prkk20210705
■ファイザーR&D合同会社/株式会社NTTデータ
臨床研究における業務効率化に向けた共同研究を開始
~電子カルテデータと臨床データ収集システムを連携~
2021年7月9日
ファイザーR&D 合同会社と、NTTデータ(本社:東京都江東区、代表取締役社長:本間 洋、以下:NTTデータ)は、国立研究開発法人国立がん研究センター東病院(千葉県柏市、病院長:大津 敦、以下:国立がん研究センター東病院)と臨床研究における臨床データの収集およびデータ品質点検の効率化に向けた共同研究を2021年7月から開始した。
臨床研究では、新薬等の効果と安全性を検証するためにALCOA(Attributable:帰属性、Legible:判読性、Contemporaneous:同時性、Original:原本性、Accurate:正確性)が担保された臨床データの収集が不可欠であり、一般的に臨床データは、電子カルテを含む複数の原資料(研究の事実経過の再現と評価に必要な記録)から収集される。電子カルテのデータを原資料として利用する場合、医療機関では電子カルテおよび臨床データ収集システム(EDC:Electronic Data Capture)への入力作業が必要で、重複した作業が発生している。
本共同研究では、こういった背景を踏まえ、電子カルテのデータを国際標準に準拠して効率的に変換・転送するソリューションを開発し、重複する入力作業と データ点検作業の大幅な軽減を含む医療機関・製薬企業双方に有益な新しい臨床研究の仕組みの実現を目指す。この治療と臨床研究の橋渡しは国際的に関心をもって取り組まれている課題であり、今回、国立がん研究センター東病院が協力医療機関として共同研究を推進する。
https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2021/2021_07_09.html