アステラス製薬、日本の営業組織を再編。その狙いとは?

アステラス製薬、日本の営業組織を再編。その狙いとは?

2024年2月7日のプレスリリースで、アステラス製薬株式会社は、同年4月1日から新たな日本コマーシャル(日本の営業組織)の組織体制をスタートすることを発表。「製品ごとの最適な営業モデルの構築」と「カスタマーエンゲージメント(顧客と企業の深い信頼関係)の強化」を目的として、6つのスタッフ機能と、2つのセールス機能から構成される新たな日本コマーシャルの組織体制をスタートするといいます。この組織再編の狙いについて、アステラス製薬の広報の方にお話を伺いました。


アステラス製薬組織体制
アステラス製薬(株)プレスリリースより(https://www.astellas.com/jp/news/28891)

―今回の組織改編のきっかけとして、「新しい生活様式の浸透」や「医師の働き方改革」が挙げられていました。具体的には、現場でどのような変化が起き、どのような課題を感じているのでしょうか?

外部要因としては、コロナ禍によって、MR面談もリモート化の動きが加速し、WebメディアやWebセミナー、メールなどを通じた情報発信の需要が高まるなど、医師をはじめとした医療従事者が情報収集するチャネルに変化が生じ、多様化しました。

こういったデジタル化の趨勢に対応すべく、オンラインMR、オンラインによる情報提供・収集の活動を強化する「オンラインカスタマーエンゲージメント部」を設置するなど、チャネルの多様化に対応できる組織体制とする運びとなりました。

―新体制では「オンコロジー」と「スペシャリティケア」の2系統でマーケティング部・セールスをそれぞれ設置されています。この狙いを教えてください。

背景として、弊社では「経営計画2021」のもと、国内製品ポートフォリオのスペシャリティ化を進めています。主要製品は、がん、骨粗しょう症、過活動膀胱、リウマチといった専門性の高い疾患の治療剤であり、大きく分けて「オンコロジー」と「スペシャリティケア」に分類できるため、今回の組織再編ではそれぞれの領域にマーケティング部とセールスを設置しました。

「経営計画2021」では、我々が優先的に経営資源を投入する「Primary Focus」として、「遺伝子治療」「がん免疫」「再生と視力の維持・回復」「ミトコンドリアバイオロジー」「標的タンパク質分解誘導」という5つの領域を選んでいます。その中でもがんに関する分野は今後もニーズが増えることが予測されており、特に注力している領域です。

こういったアンメットメディカルニーズの高い疾患に対して、より最適な体制で製品やサービスを届けるために、今回の組織再編に至りました。

また、今までは「マーケティング部」という一つの部門が、各領域のマーケティングを担当していました。しかし、実際はオンコロジーならオンコロジー、スペシャリティケアならスペシャリティケアで、それぞれの領域に特有のニーズが存在します。

そこで、各領域でマーケティング部とセールスをセットにして配置することで、その領域のニーズに特化した情報提供や、マーケティング部とセールスのより密な連携を可能にしたいという狙いから、このような組織体制となりました。

―連携という点では、今回「カスタマーエンゲージメントの強化」を企図して「カスタマーエクセレンス部」と「オンラインカスタマーエンゲージメント部」を設置されていますが、各領域のマーケティング部やセールスとの関係性はどのようになっているのでしょうか?

カスタマーエクセレンス部とオンラインカスタマーエンゲージメント部の役割は、それぞれ以下のようになっています。

  • カスタマーエクセレンス部:データに基づくオムニチャネル戦略の企画・実行・検証と、より高いカスタマーエンゲージメントを実現する営業ケイパビリティを強化する
  • オンラインカスタマーエンゲージメント部:これまでのオンラインによる情報提供・収集を専門に行うアステラス オンラインMRの活動をさらに強化する


そのうえで、もちろん各部とセールス・マーケティング部は情報共有を行い、密に連携していきます。中でもオンラインMRが所属するオンラインカスタマーエンゲージメント部は、デジタルでの情報提供を行うチャネルの1つとして、積極的にセールス・マーケティング部と連携していくという想定です。

カスタマーエクセレンス部で扱うデータとは、例えば、Webサイトを来訪した顧客のデータなどです。そこから顧客の潜在的なニーズをくみ取り、オウンドメディアやWebセミナーといったオムニチャネルの戦略立案や実行・検証、あるいは営業ケイパビリティの強化に活用していくのがカスタマーエクセレンス部の役割です。

―最後に、今後の展望について改めてお聞かせください。

プレスリリースの通りになりますが、アステラス製薬は「経営計画2021」の戦略目標の一つに、「患者さんのより良いアウトカムの実現」を掲げています。2024年4月にスタートする新たな日本コマーシャルのもとで、今後も医療関係者への情報提供・収集活動を通じて、患者さんに「価値」を届けていきます。

アステラス製薬は「変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの『価値』に変える」というビジョンを掲げています。今回の再編を通じて、患者さんにさらなる価値を提供し続けられる組織となることを目指しています。

プレスリリース原文:https://www.astellas.com/jp/news/28891