学会を活用した医師へのアプローチ方法<MRとの連携編>

学会を活用した医師へのアプローチ方法<MRとの連携編>

外資系製薬企業の経営企画室に勤めるこういちと申します。製薬企業の営業、メディカル、デジタル戦略部、製品戦略部、経営企画部での勤務経験をもとに、今回は、MRが国内学会・海外学会を利用して医師へアプローチする方法について独自の視点から解説します。MRの方は、自身の営業活動の参考に、本社マーケティング部門の方はMRの動きを考慮したマーケティング活動の参考に、ぜひご覧ください。

学会はターゲット医師に効果的かつ効率的にアプローチできるチャンス

新型コロナウイルス感染症の規制も緩和され、医師が学会に参加する機会も多くなってきました。

私は過去にMR・メディカル・デジタルマーケティングの担当者として多くの学会に参加した経験がありますが、学会はターゲットにしている医師に効果的かつ効率的にアプローチできる機会と捉えていました。

製薬企業内で置かれている立場によっても、学会に参加する目的とアプローチは異なると考えています。

今回は、MRの場合について、学会を活用した医師へのアプローチ方法を独自の視点で解説していきたいと思います。

  • 学会前(6ヶ月前~直前)
  • 学会中
  • 学会後


の時間軸ごとに、ポイントを解説します。

学会前(6ヶ月前~直前)

まずは、ターゲットにしている医師がどこの学会に参加するかを把握するところからスタートします。ターゲットにしている医師の専門領域をインターネットで調べたり、会話の中で聞き出したりなど、情報収集に努めます。

ポイントはターゲット医師が参加する学会を可能な限り数多く把握することです。

  • どこの学会に参加するのか?
  • メインの目的はどこにあるのか?
  • 現地参加するかどうか?
  • 学会での発表はあるのか?ないのか?


こういった観点で情報収集を進めます。

可能な限り数多く把握すると書いた理由は、重要顧客が参加する学会を見極めて、自身の営業活動に組み込むためです。

関連学会について情報を集める

通常、専門分野の主要な学会の学術集会があり、それに関連する学会の学術集会が行われることが一般的です。“整形外科”の例を紹介します。

<主要な学会の学術集会>
日本整形外科学会学術集会

<関連する学会の学術集会>
日本脊椎脊髄病学会学術集会
日本人工関節学会学術集会
日本骨軟部腫瘍学会学術集会
日本骨折治療学会学術集会
日本小児整形外科学会学術集会
・・・・

どういった関連学会が存在するかは、専門分野の主要な学会のホームページにリンクがあることが多いので、そこから確認しましょう。

例)
関連学会 関連リンク|公益社団法人 日本整形外科学会 
認定学会一覧(分科会・関連学会・生涯教育研修会)日本脳神経外科学会 

リンクを見ていただくと、非常に多くの関連学会が存在することがわかります。また学会の地方会も存在するので、そちらも確認するようにしてください。

参加する学会を決める

ターゲットとする医師が参加するすべての学会に参加することが理想ですが、それは現実的ではありません。MRの方が学会に参加できるのは年間1つか2つというのが一般的かと思います。まだ学会に参加したことがないという方も、若手の方であればいらっしゃると思います。従って、MRが参加する学会は、ターゲットとする医師の参加状況を見極めて、意思決定する必要があります。また上長との交渉も必要になるでしょう。

超重要顧客で、なんとしてもアプローチしたい医師の場合には、自社が注力していない関連学会への出席であったとしても、上長と一度交渉し、その先生にアプローチできるような営業活動も検討されると良いと思います。このような工夫により、コロナ禍でなかなかターゲット医師に面会できない状況を突破したMRさんがいることを知っています。

学会に参加できない場合

また自身が学会に参加できなくても、取り組める営業活動は工夫次第でいくらでもあります。過去こういちが行ったこととしては、以下の通りです。

  1. 学会発表のリファレンスに使えそうな学術情報の提供(リクエストベース)
  2. 大学の医局員が発表予定の演題と日程のリストアップ
  3. 移動や宿に関する情報の提供
  4. ご当地グルメ情報の提供
  5. 学会会場周辺のおすすめランニングコースの提供

③④⑤は正当な営業活動とは言えないかもしれませんが、ターゲットとする医師のニーズを捉えて、関係性を深め、将来的に薬剤の話をするための布石として行った活動です。経験のあるMRの方であれば、こういった部分にも医師のニーズが存在することはご理解いただけるのではないかと思います。

ちなみに、医師が海外学会に参加するケースでも上記①~⑤のアプローチは有効です。

学会中

学会に参加できるのであれば、その機会を最大限活用するために行動します。

スケジュールを立てる

ターゲットとする医師が学会発表されるのであれば、その発表は必ず聴講できるようにスケジュールを事前に確認しておきます。スケジュールの確認は学会ホームページ、また抄録集で可能です。

また、ターゲットにしている医師が専門とする領域のセミナーや教育講演、ポスター発表は可能な限り聴講するようにします。自分の知識力アップはもちろんのこと、医師との共通の話題を作りにいくことを意識した行動を心がけます。

こういった知識は学会後のフォローアップの会話に活かすことが可能です。

医師との接点を意識的に作る

学会中は、医師との接点を意識的に作りにいきます。

学会会場にいる医師は普段の緊張した職場を離れられるということもあり、病院で会う時に比べて、時間に余裕があり、リラックスしていることが多いです。普段話すことができないようなことを聞き出したり、関係性を深めたりするチャンスでもあります。

すでに関係のある医師であれば、自社の学会展示ブースに来てもらって話をするといった工夫や、本社のマーケティング担当者に事前に協力を仰ぎ、普段表に出てこない医師のニーズや本音を聞き出してもらうといった工夫も考えられます。

初めてのアプローチは、次回に繋がるよう心がける

また学会で「初めまして」というケースもあると思います。コロナ禍でなかなか会えない状況を打破しようと、アプローチを試みるケースが該当します。

その場合はその面会だけで終わりにならないよう、今後のコンタクト方法、連絡先、どういった情報にニーズがあるかなどの情報を聴取して、次回の面談に繋がるような会話を心がけます。

すべての医師でこのアプローチが成功するとは限りませんが、こういった方法で1st コンタクトを成功させたMRさんを何人も知っています。“学会”というある種、特殊な環境を利用したアプローチになります。まだ実践されたことがないというMRの方には、試す価値のある方法かと思います。

学会後(開催後1週間以内)

学会後のフォローアップは意識的に行います。同じ学会に参加していたという共通項を次回の訪問に活かさない手はありません。

開催1週間以内に訪問し、学会で印象に残った講演や、今後の学会での展望をディスカッションするには良い機会です。その際、その学会で自社の薬剤に関する発表があったのであれば時間をいただき、改めてどういった話が展開されたのか、口頭ベースでも構わないので紹介すると良いと思います。

MRの大事な仕事の一つは、自社の医薬品に関する情報を医師に提供し、適切に薬剤を使ってもらうことです。

「学会、有意義でしたね。(以上)」

で面談を終わらせてはいけないと思います。

また学会では多くの競合企業がランチョンセミナーを実施します。医師は多くの最新情報に触れるため、考えに変化が起きている可能性があります。そこを敏感に感じ取る必要があります。場合によっては早急に対策が必要になるかもしれません。

したがって、学会終了後は自社医薬品の話を皮切りに、他の医薬品に関する印象や考えがどう変化したかを確認する時間でもあります。

気が付いたら競合製品にシェアを奪われていたということがないよう、常にアンテナを張っておきましょう。

国内学会を利用して医師に効果的にアプローチしよう!

コロナ禍で会えない、関係性が作りにくい環境がここ2〜3年続いていましたが、状況は徐々にコロナ前に戻りつつあります。学会も会場での参加を前提とする形式に戻ってきています。久々の学会での現地参加を楽しみにしている医師も数多くいらっしゃいます。そういった環境変化を一つの機会と捉え、ぜひ、計画的に学会を活用されることをご検討ください。

本記事の内容が皆さまの日々の業務のお役に立ったのであれば嬉しく思います。

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