働き方改革で変わる医師の講演会ニーズが調査で明らかに。成果を最大化するポイントは?/MDMD2024Summerレポート
2024年6月5日、業界をリードする専門家が集い、製薬マーケティングの最新トレンドや成功事例を共有するイベント「Medinew Digital Marketing Day 2024 Summer(MDMD2024Summer)」が開催されました。
セッション「『医師の働き方改革の変化に対応する』視聴データ分析と双方向コミュニケーションで実現する“成果が出るWeb講演会”」では、株式会社Jストリーム 執行役員 ソリューション推進本部長の岡田至功氏から、Web講演会の成果を最大化するためのポイントについてお話しがありました。
「医師の働き方改革」で講演会はどう変わる?
新型コロナウイルス感染症の影響で大きく転換した、医師への情報発信のあり方。「医師の働き方改革」が4月に施行されたことにより、さらなる変化が予想されています。
医師にとっての有用な情報源の一つが、製薬企業による講演会です。では、講演会はこれから、どのような変化をたどることになるのでしょうか?
アフターコロナの今、医師が最も重視する情報源は「Web講演会」
2024年3月、Jストリームは医師に対し「製薬企業の開催する講演会」に関する調査を実施。調査によると、最も処方に有用な情報源は「Web講演会」70.5%で、2020年調査時の63.0%から7.5ポイントアップしました。「学会、研究会」の66.2%(2020年調査時73.0%)、「リアル講演会」の43.5%(2020年調査時44.0%)を抑え、医師のデジタルシフトを示唆する結果となりました。
また、2020年に同社が行った同様の調査結果と比べると、医師がWeb講演会に抱える課題感は全体的に減少しています。Web講演会に参加することが日常となり、リアル講演会との違いに不満を感じることが減ってきていることが推測できます。一方で、「ほかの参加者との交流ができない」「音声が聞き取りにくいことがある」といった点は、引き続き課題として挙げられています。
見逃せないのは「ハイブリッドな講演会」へのニーズ
今や、Web講演会は医師が情報を得る手段として欠かせないものになりました。同時に、「リアルとWeb参加を自分で選べるようになるとよい」との要望が72.0%と高くなっていました。
この結果から、リアル参加への根強いニーズが読み取れるとともに、多忙な医師にとって、自身の意思でリアルかWebかの手段を選べることも大事なポイントであることが示唆されます。
リアル参加とWeb参加、どちらも選べる形式の「ハイブリッド講演会」のニーズが今後も高まっていくことが予想されます。
「医師の働き方改革」で講演会への参加率が下がる?
同調査では、50%以上の医師が、「医師の働き方改革」以降も講演会・イベントへの参加回数は変わらないと回答しています。しかし、リアル講演会で36.7%、Web講演会で24.6%と、一定の割合の医師は参加回数が減るだろうと回答。大幅な変化とは言えずとも、講演会に参加する医師の人数はリアル・Webともに一定の影響を受ける可能性が高いといえます。
また、医師が1日の中で情報収集にかける時間も減っていく見込みです。情報収集にかける時間帯も、働く時間内である日中が増えていくことが予測されており、製薬企業側が有用な情報を絞り込んで適切なタイミングで医師に届ける必要性が高まるでしょう。
ニーズは「隙間時間を利用した情報収集」を可能にする講演会
「医師の働き方改革」以降、情報収集を効率化するための要望としては、過半数が「Web講演会のLIVE配信終了後のオンデマンド配信」を希望。次いで「 Web講演会の講演時間の短縮」が38.2%、「Web講演会のタイムシフト配信(追っかけ再生)」34.8%という結果となりました。
短時間で複数回に分けた講演会や、あるいはスケジュールに応じて好きなときに情報収集できる、オンデマンド配信・追っかけ配信のニーズが高まる見込みです。
Web講演会の効果を最大化するためのポイント
では、医師が講演会にかける時間が減っていくことが予測される中で、成功するWeb講演会はどのような条件を満たしているのでしょうか。
まず、製薬業界を取り巻く現状として、岡田氏が挙げるのは以下の3点です。
<製薬業界の現状>
- MR数の減少や活動規制強化、コンプライアンスの厳格化により、従来の情報提供ではカバーしきれなくなっている
- 医師の情報取得の方法が、年々デジタルシフトに向かっている
- 「医師の働き方改革」により、医師の情報収集時間や方法が変わりつつある
これらの現状を踏まえて、今後の製薬企業からの情報発信は、以下のようにシフトしていく必要があります。
<これからの情報発信>
- Webの特性を活かして、より効果的・効率的な講演会を企画する
- 双方向コミュニケーションにより、最大限にその効果を引き出す
以降、上記をそれぞれどのように実現していくかについて解説がなされました。
Web講演会の効果を最大化する5つのステップ
岡田氏によると、以下5つのステップを通じて、Web講演会の効果が最大化されるといいます。
- ターゲティングとセグメンテーション、コミュニケーションマップの作成
- 適切なゴール設定(期待する心理変容または行動変容は何か?)
- 視聴者の行動変容を促すための講演会のコンテンツ企画
- 視聴者の心理変容を分析することにより、課題を抽出し、講演会の成果を測る
- 講演会実施後のアフターフォロー
この5つのステップでは、ターゲットとなる医師に対して、情報発信がどのような変化をもたらすべきかをあらかじめ設定しておき、それに基づいてコンテンツを企画します。そして、講演会実施後は期待する心理変容が起きているかを分析することで、講演会の成果を測るとともに、アフターフォローにつなげることができます。
特に岡田氏が重要視するのは、ステップ4における「心理変容の分析」です。
では、医師の心が動いているかどうかを、どのように分析すればよいのでしょうか。心理変容の各フェーズと、それを評価する指標を整理した以下のAIDCAモデルに基づいたマップを見てみましょう。
まず、医師は「興味」を持って講演会に参加し、その中で「気づき・学び」「もっと知りたい」といった心の動きや、「課題・態度の変容」「処方傾向・診療内容の変化」といった具体的な態度・行動の変化につながっていきます。
そのような心理変容は、図中「分析観点」に記載の、視聴時間、アンケート回答率、関連情報ページのPV数、MR・MSLへの問い合わせ数や、口座数・処方数といった定量的な指標で評価していくことができます。
コンテンツの質分析手法①:「視聴時間割合」
上記のような定量的な指標の中でも、特に重要な指標となるのは「視聴時間割合」です。
つまり、コンテンツの何割まで視聴する人数が多いのか。あるいは、何割が開始すぐに離脱し、何割が最後まで視聴(完視聴)したのか。さらに「どのシーンで早期離脱が生まれたのか」を見ていくことで、離脱の要因を分析し、最後まで視聴される割合を高めることができるでしょう。
コンテンツの質分析手法②:「インサイトボタン」
もう一つ、岡田氏がコンテンツの質を分析するために推奨したのは、動画視聴ページにソーシャルメディアの「いいねマーク」のようにインサイトボタンを設置し、視聴中のリアクションを収集することです。
例えば「知らなかった」「役に立った」「もっと知りたい」「処方してみたい」といったボタンを設置し、動画中のどのシーンでどのようなリアクションが起きているのか、医師の心理変容の分析に役立てることができるでしょう。
コンテンツ分析の質を上げる各種サービス
最後に、コンテンツ分析をサポートするJストリーム社のサービスが紹介されました。
- Webinar Analytics:Web講演会ごとに視聴者の行動データをタイムリーに集積するとともに、速やかに定量分析を実施。講演会の課題発見や、視聴者のニーズ把握、満足度の向上に役立つサービスです。
詳細はこちら:製薬会社・病院など実績多数「医薬・医療業界向けソリューション 」 - Jストリーム (stream.co.jp)
- Webinar Lounge:医師同士のディスカッションや双方向コミュニケーションを支援するサービス。臨床疑問をその場で解決するためのプラットフォームとして、アプリ不要でパソコン・スマホから利用できます。
詳細はこちら:双方向コミュニケーションサービス「Webinar Lounge」 - Jストリーム (stream.co.jp)
上記のようなサービスを取り入れることで、さらにWeb講演会のコンテンツの質や満足度を高めるとともに、医師同士の交流の場も創出することができるといいます。
「医師の働き方改革」以降、Web講演会は今まで以上に、ターゲットとなる医師のニーズに合わせた企画・制作が重要となります。製薬企業はより一層のコンテンツ精査やデータ分析を通じ、忙しい医師に選ばれる情報を厳選して提供する必要があるといえます。