製薬企業の事例から見る、データを用いた効果的な医師ターゲティング/MDMD2024Summerレポート
製薬企業にとって医師ターゲティングは重要な課題ですが、その実現には客観的なデータの活用が不可欠です。2024年6月に開催したMedinew Digital Marketing Day(MDMD)2024 Summerで株式会社医薬情報ネットの芳賀瑞枝が登壇した本セッションでは、データを用いた医師ターゲティングの効果的な手法について講演しました。本記事では、その講演内容をもとに、製薬企業が医師ターゲティングを成功に導くためのポイントを解説します。
医師ターゲティングの現状と課題 ~属人的な方法から脱却し、客観的なデータ活用へ~
マーケティングを行ううえで欠かせないターゲティング。製薬業界でも医師ターゲティングは行われていますが、従来のやり方では「リストが属人的で客観性や網羅性に欠ける」「当該分野に精通している人材が不足していて、重要医師のリストアップが進まない」「MRからの情報も限られているため、信憑性に欠ける面がある」といった課題や悩みがありました。
医薬品・医療機器業界における医師分析手法において、データを活用せず経験や勘だけで行う状況を「医師分析1.0」と定義するならば、現在は多くの製薬企業で定量的・定性的データを活用した客観的な分析を行う「医師分析2.0」の段階だといえます。しかし、より高度な分析を行う「医師分析3.0」の実現には、データ収集のタイムリー性や分析ツールの面でハードルがあると考えられます。こうした課題を解決するためには、客観的なデータに基づいたアプローチが必要不可欠です。
医師個人に紐づくデータの収集と活用が差別化のカギ
製薬企業が医師ターゲティングのために使用するデータは、主に3rdパーティやオープンデータがあります。しかし、法律や個人情報保護の観点から取得できるデータのソースは限られているため、他社との差別化が難しいという課題が生じます。差別化を図るためには、医師個人に紐づくデータをいかに収集し活用するかがポイントとなると考えられます。データを網羅的かつ正確に収集し、高度かつ迅速な分析を行うこと、さらに社内のデータと組み合わせることで、精度の高いターゲティングを実現できます。
具体的に、医師ターゲティングに活用される医師個人に紐づくデータには、以下が挙げられます。
- 学会情報
- 論文情報
- 臨床試験情報
- 厚労科研・AMEDの情報
- 学会の役員情報
なかでも学会情報と論文情報は発表数や公開数が多く、医師の臨床における影響度やインパクトを評価する上で特に重要なデータであるといえます。
学会は論文と比べて発表のハードルが低く、研究から発表までの時間も短いため、臨床医や裾野の広いターゲットを見つける際に有効です。一方、論文情報は専門性の高い医師を絞り込む際に役立ちます。
これらのデータを目的に合わせて組み合わせることで、下記のさまざまな場面で効果的な医師ターゲティングが可能になります。
- 新薬上市のタイミングでのターゲット医師の選定
- 若手医師の発掘
- 面談の質の向上
- KOLの人間関係の把握
- 自社講演会の演者選定
- 競合企業の動向分析 など
医薬情報ネットの支援事例に見る、データ活用による精度の高いターゲティング
データを組み合わせてターゲティング精度を高める方法について、本記事では医薬情報ネットが支援した2つの事例を紹介します。
事例1:学会・論文情報を活用したKOL選定と優先順位付け(アキュリスファーマ)
アキュリスファーマでは学会・論文情報を活用することで、以下の3ステップでKOLの選定と優先順位付けを行いました。
STEP1:客観的なデータからKOLを選定
STEP2:基準を設けて優先順位付け
STEP3:KOLへのヒアリングによる精度の検証
この結果、短時間で精度の高い医師ターゲティングを実現し、選定したKOLとの活動を進められています。医薬情報ネットでは、学会情報と論文情報から医師ごとの登場回数を役割別に集計し、重み付けを行ってKOLスコアを算出するリストを作成しています。
アキュリスファーマの事例をより詳しく知りたい方は、別記事「製薬ベンチャーの実例に学ぶ、限られたリソースでのKOLターゲティング戦略/ファーマIT&デジタルヘルス エキスポ2024」をご覧ください。
事例2:市場性、処方決定権、影響力の3つの観点から医師を評価(ユーシービージャパン)
ユーシービージャパンでは「市場性」「処方決定権」「他者への影響力」の3つの観点から医師を評価し、可視化しました。
市場性は、その医師の受け持つ患者数の規模など複数のデータを組み合わせて算出し、処方決定権はMRからの情報を活用、他者への影響力は学会情報と論文情報のデータから分析しました。データを組み合わせることで、ターゲット医師数は絞られたものの、市場カバレッジは増加するという成果が得られました。
リサーチ時間を大幅に短縮し、多角的な分析を可能にする「Doctorna(ドクターナ)」
医薬情報ネットでは、医師の学術情報のデータをもとに分析を行うプラットフォーム「Doctorna(ドクターナ)」を提供しています。Doctornaは、スピード感と柔軟性を重視し、医師のリサーチ時間を大幅に短縮できるのが特徴です。
主な機能として、以下が挙げられます。
- キーワードや対象疾患、領域などを指定して、独自の医師ランキングを作成できる
- 学会や論文の登場回数を役割別に集計し、重み付けを変更してランキングを調整できる
- 都道府県や卒業年次で絞り込むことで、エリアや年代に合わせた医師のリストを作成できる
さらに、医師同士の人間関係を可視化する「ソーシャル分析」機能では、ターゲット医師と関係の強い医師をマッピングし、アプローチの糸口を見つけられます。また、競合企業と医師との関係性を分析する「企業分析」機能では、特定のキーワードにおける競合企業とのスポンサードセミナーの実施状況を可視化できます。これらの機能は医師ターゲティングだけでなく、その後のマーケティング活動にも役立ちます。
Doctornaについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
医師ターゲティングの成功は、客観的なデータ活用と多角的な分析がポイント
製薬企業が医師ターゲティングを成功に導くためには、客観的なデータの活用が鍵となります。学会情報や論文情報を中心に、臨床試験情報、厚労科研・AMEDの情報、学会の役員情報、アンケートや社内データを目的に合わせて柔軟に組み合わせて分析することで、精度の高いターゲティングが可能になります。
Doctornaを用いることで、医師ターゲティングにおけるリサーチ業務を効率化し、多角的な分析ができます。また、医師同士の人間関係や競合企業との関係性の可視化もでき、ターゲティング後の戦略立案やマーケティング活動にも役立てることが可能です。
本講演で紹介された(株)医薬情報ネットが提供する医師分析プラットフォーム「Doctorna(ドクターナ)」について、ご質問やご相談があればぜひ以下フォームよりお問い合わせください。そのほか、医師ターゲティングや製薬マーケティングでのデータの活用のお悩みなどに関する相談も受け付けています。お気軽にフォームよりご連絡ください。