対話データの分析から見えた、成果を上げるMRのディテーリングの特徴とスキル向上のポイント/MDMD2023Autumnレポート
2023年9月末に開催したMedinew Digital Marketing Day(MDMD)2023 Autumn。MRと医師との面会回数が限られてきている昨今、1回あたりの面談の重要性はますます高まっています。リープ株式会社の堀貴史氏が講演した本セッションでは、同社が保有する25,000以上のディテーリングデータの分析結果をもとに、成果を上げるMRのディテーリングの特徴、課題の抽出やスキル向上のポイントなど、医師の満足度の高いディテーリングを叶えるためのデータ活用の有効性について紹介されました。
ディテーリングスキルの向上はビジネスゴール達成へつながる
堀氏はディテーリングを「顧客の行動変容を促すために、患者・患者家族や医師、医療関係者などの課題を特定し、自社医薬品やサービスなどのソリューションを提案、合意を得るための対話」と定義しました。
リープでは、このディテーリングスキルがビジネスゴールの達成に寄与すると考え、顧客の課題解決までの対話を評価しMRのディテーリングスキルをデータとして可視化しています。それにより、ディテーリングにおける課題や強化ポイントを抽出しフィードバックしています。
アセスメント項目
ディテーリングスキルは、対話の流れに沿って下図の6フェーズ15項目に分け、1〜6点の中で点数を付けて全項目の平均点で評価します。点数は、3点を「基本的な情報提供が正確になされている状態」として及第点とし、低いレベルを1点、高いレベルを6点とします。
処方合意獲得に必要なディテーリングスキルのレベルは製品領域によって異なる
リープでこれまでに蓄積した25,000のアセスメントデータを分析すると、医師の期待を上回る(3.75点以上)MRの割合は15%ほど、期待に対して不十分な情報提供に留まる(3点未満)割合は24%ほどでした。
及第点レベルにおける処方合意確度は、処方合意確度予測モデル(ロジスティクス回帰)のヒストグラムを描くことで、スキルレベルが何点の時にどのくらいの成果が得られるのかが予測できます。プライマリー製品Xでは及第点レベルで30~40%程度処方合意を得られるのに対し、スペシャリティ製品Yでは10%程度、希少疾患製品では0%に近い状態であり、製品領域ごとに確度には差があり、求められるスキルレベルが異なることが示されました。
スキル格差はディテーリングプロセスの前半から生じる
スキル育成に力を入れるポイントを考える上で、堀氏はディテーリングプロセスのうち前半の「ニーズの把握」「課題形成」「解決策の提示」に重要な要素があるのではないかと指摘しました。
上位群(High Level DTL)と中間群(Average Level DTL)、下位群(Low Level DTL)の平均点数をディテーリングのプロセス順にグラフ化すると、医師との対話が進むにつれ、課題形成パートから差が出てきます。また、その後は差が広がるばかりで縮めていくことが難しいことも読み取れました。そこで、差がつきやすい項目から優先的に学び、スキルアップしていくことでディテーリングレベルを向上させることができ、組織全体も底上げされていくと考察しました。
医師のニーズを捉えた話題で良好な関係を構築
ディテーリングスキルのレベルと面談時間にも相関があると堀氏は指摘します。ディテーリングスキルが上位(High Level Class2)のMRは、下位(Low Level Class5)と比較して約1.4倍の面談時間を確保できていることが示されました。同様に、プロービング(ニーズ把握・課題形成)における医師の発話量は約1.6倍、情報提供(解決策の提案・質問対応)におけるMRの発話量は約1.5倍と、情報量の差も浮き彫りになっていると言います。
それでは、上位層のMRは下位層のMRと比較してどんな情報を+αとして提供できているのでしょうのか。具体的にディテーリングで扱われた話題を分析してみると、6倍もの顕著な差が見られたのが「潜在的な患者ニーズ」の話題量であり、スキルレベルによって理解度の差が大きいトピックであると考えられます。
成果を上げるディテーリングのための課題抽出にはデータの可視化こそ効果的
堀氏は、個々のMRのディテーリングスキルに差があること、そしてそれらの差が成果(ビジネスゴール)に影響している状態を可視化し課題を特定する必要性を提示しました。リープでは、MRのディテーリングスキルを分析し、フィードバックするサービス「Skill Palette」を提供しています。ディテーリングスキルを数値化することで、MRが重点的に学ぶべきポイントがわかり、学習のモチベーション向上、ひいては組織全体のレベルアップにつながると結びました。