自社のマーケティング活動にMA、SFA、CRMなどの業務支援ツールを導入する製薬企業も増えてきました。しかし、それぞれのツールの違いや、運用方法について悩まれる方も多いのではないでしょうか。本記事では、MA、SFA、CRMの機能やメリットについて解説。製薬企業が各ツールを導入する際に、意識すべきポイントについても紹介します。
MA, SFA, CRMとは?
まずは各ツールの概要について解説します。
MAとは「マーケティングオートメーション(Marketing Automation)」の略で、 見込み顧客を獲得し、商談につながる可能性が高い顧客を抽出するまでのマーケティング活動を自動化するためのツール です。
SFAは「セールス・フォース・オートメーション(Sales Force Automation)」の略で、 商談の進行状況の管理など、営業活動に関する業務を管理するツール となります。
CRMは「カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(Customer Relationship Management)」の略で、 顧客情報を管理するためのツール です。
マーケティングにおける「顧客の獲得」から「継続受注」までの流れにおいて、それぞれのツールが必要となるフェーズは、重なる部分もありますが、大まかには下図のように異なります。MAはリードの育成、SFAはクロージングから受注、CRMは受注から継続の部分の効率化を担います。
MA(マーケティング・オートメーション)とは?
MAはマーケティングにおける見込み顧客の獲得・育成・抽出というリードナーチャリングに関わるツールです。
MAの機能
MAの代表的な機能として、オウンドメディアなどに訪問した見込み顧客をリスト化できる管理機能があります。MAを使えばWebサイトへの医師の訪問履歴や流入経路などのリード情報を一元管理できますので、メールマーケティングなどをより効果的に行えます。
- ランディングページ/フォーム作成…問い合わせ、ダウンロードフォームの作成機能
- スコアリング…ユーザーの行動にスコア(点数)を設定し、数値に応じてアクションを実行(情報の発信など)できる機能
- メール配信…ユーザーに向けて自動でメール配信を行い、開封率、コンテンツ閲覧状況の分析まで行う機能
MA導入のメリットとは
MAを使うメリットは、見込み顧客の取りこぼしを防げる点にあります。見込み顧客の行動分析・スコアリングなどの業務を自動化することで、適切なタイミングで最善のアプローチを実施できるようになります。
SFA(セールス・フォース・オートメーション)とは?
SFAは前述のように営業の業務プロセスを自動化・効率化するためのツールです。
SFAの機能
SFAは、顧客や案件の管理など営業活動を可視化する機能が中心となります。たとえば、訪問先の医療機関、担当MR、商談の進捗状況、受注予定金額などを管理・分析することが可能です。
- 売上管理…売上実績や売上予測を確認できる機能
- レポート管理…メールや電話などのコミュニケーション履歴、日報などを管理する機能
- スケジュール管理…MRごとのスケジュールを管理する機能
- レコメンド…案件ごとに、SFAに登録されている類似案件を勧めてくれる機能
SFA導入のメリットとは
SFAを導入すれば、MRの営業プロセスや商談の進捗状況を一元管理できます。そのため、MRが商談に関する情報の記録・管理・報告などに使う時間を削減でき、自身の営業活動に集中できるようになるのが大きなメリットです。
また、本来ではノウハウの蓄積・伝達に時間が必要だった営業活動の知見を効率的に共有できるので、MRの育成促進にもつながるでしょう。
CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)とは?
CRMとは顧客とのコミュニケーションを円滑に行うためのツールで、顧客管理システムとも呼ばれます。SFAと重複する機能もいくつか存在しますが、SFAが営業担当者のためのツールであるのに対し、CRMはマーケティング全体の精度を上げるためのツールであるという点で異なります。しかし最近では、SFAとCRM両方の機能が搭載された製品もあります。
CRMの機能
CRMには顧客情報・案件情報などをデータベース化して一元管理できる、顧客管理機能が搭載されています。CRMでは、担当MR名や所属医療機関といった基本情報以外にも、お問い合わせ履歴や医師のニーズなどもまとめて管理可能です。CRMは、こういった顧客のパーソナルな情報をもとに、より効果的なマーケティング施策を行うためのツールとなります。
CRM導入のメリットとは
CRMを導入するメリットは、顧客・案件に関する最新情報を迅速に社内で共有することによる、マーケティング業務の促進にあります。本来なら時間がかかっていた部署間の横断的な情報の共有も、より効率的に行えるでしょう。
医師の情報や行動履歴を蓄積・分析することで最適なアプローチにつなげられますので、顧客満足度の上昇も図れます。
製薬企業で各ツールを選ぶ際に見るべきポイント
MA、SFA、CRMを適切に選ぶためにはそれぞれのツールの使用目的を明確に把握する必要があります。各ツールの特徴をまとめると、下表のようになります。
MA | SFA | CRM | |
導入目的 | 顧客獲得を自動化する | 営業活動を管理する |
顧客管理を行い最適な
マーケティング施策に つなげる |
取り扱う
データの 種類 |
・見込み顧客データ
・見込み顧客の サイト上での行動履歴 |
・MRの営業活動
・メールや電話の履歴 ・商談の進捗状況 |
・顧客情報
・顧客ニーズ ・問い合わせ情報 |
では、製薬企業がそれぞれのツールを選定する際には、どのようなことをポイントに選べばよいのでしょうか。どのツールも共通して、医師の氏名やメールアドレスを管理するため、セキュリティレベルに関しては厳重なツールを選ぶことが前提です。
MAは「他ツール・システムとの連携機能」が選定ポイント
MAを選ぶ上でSFA・CRM・ストレージサービスなどの外部ツールや、社内システムとの連携機能の有無は、大切なポイントとなります。
製薬企業向けのMAには、医療・製薬業界に特化した専用機能が搭載されている商品もあります。たとえば、担当医師のアクションをMRに通知する機能や、情報提供ガイドラインに対応したNGワードのチェックなどが挙げられます。
SFAは「カスタマイズ性の高さ」が選定ポイント
製薬企業がSFAを導入する場合には、MRが使いやすいよう構成をカスタマイズできるか、といったフレキシブルさが選ぶポイントとして挙げられます。
そのほか、医療・製薬業界にマッチしたテンプレートが用意されているか、医師情報などの周辺データなど外部システムとの連携ができるか、MRが営業情報を記録する作業の負担を軽減するためにできるだけ入力が簡単で使いやすいツールであるか、など業界ならではのルールに則った「使いやすさ」が選定ポイントとなります。
CRMは「製薬業界にマッチしたテンプレートがあるか」がポイント
CRMを選ぶ際にも、医療・製薬業界にマッチしたテンプレートが用意されているかはポイントとなります。専用テンプレートがあれば導入までの期間や費用が抑えられる可能性が高いでしょう。MRの使用も見越して、医療機関までのルート案内機能が搭載されているツールもあります。
CRMを使って、医師が話題に取り上げているトレンドの情報を把握することで、マーケティング施策への反映もできます。そのためには、メール、チャット、SNSなど、ツールが対応しているコミュニケーションツールについても確認するとよいでしょう。
各マーケティングツールの使い分けを理解し、効果的に活用
MAは見込み顧客の育成、SFAは営業活動、CRMは顧客管理全般と、それぞれのツールで自動化できる範囲は異なります。また、製薬企業で各ツールを導入する際には、医療・製薬業界に対応した機能があるかどうかも、選定のポイントです。各ツールの導入目的をしっかり把握して、自社にとって最適なツールを選びましょう。
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