PubMed Tips: MeSHをよく知らなくてもできるMeSH検索!

PubMed Tips: MeSHをよく知らなくてもできるMeSH検索!

Medinewをご覧になっている方であれば、PubMedをご存じない方はほとんどないでしょう。無料で誰でも利用できますし、業務で利用している方も多いのではないでしょうか。しかし、PubMed検索をしていて、目的とするテーマの文献になかなかたどり着けない、ノイズが多くて絞り込みに手間取る、といった話をときどき耳にします。そのようなときに利用するとよいのがMeSH検索です。「MeSHは聞いたことがあるけど、よく分からないから使ったことがないなぁ」、そういう方も多いかもしれませんが、でも安心してください。
本記事では、MeSHがよく知らなくてもできるMeSH検索についてご紹介します。


PubMedの簡単なおさらい

MeSHの話題に入る前に、PubMedについて簡単におさらいしておきましょう。
PubMedは、アメリカ医学図書館(National Library of Medicin: NLM)が運営する生物医学文献書誌データベースです。現在、3200万件弱の文献情報が登録されています(2020年12月11日時点)。全件数は検索ボックスに「All[filter]」と入力すれば確認できます。

PubMedは、2020年5月に新システムへの移行が行われ、ユーザーインターフェイスも一新されました。しばらくの間は移行期間として従来のPubMed(レガシーPubMedと呼ばれます)も利用できましたが、2020年10月31日をもって閉鎖され、新PubMedに一本化されました。

現在のPubMedトップ画面

念のため、自由語(フリーワード、自然語ともいいます)による検索の方法について簡単に触れておきましょう。

  • トップ画面の検索ボックス:思いつくキーワードを検索ボックスに入力し検索します。AND、OR、NOTの論理演算子、検索式が使用できます。半角スペースで単語を区切ると自動的にAND検索になりますので、複数の単語を一つの検索語としたい場合はダブルクォーテーション「”」でくくります。
    ここでの検索は施設、著者、発行時期、ジャーナルなど全てのフィールドを対象とした検索が行われます。特定のフィールドで絞り込んで検索したい場合はAdvanced検索を利用します。

  • Advanced検索:フィールドの限定、履歴を使ったAND、OR、NOT検索などが行えます。
    なお、PubMedには自動用語マッピング機能が備わっているため、入力された自由語のみで検索されるのではなく、システム内の辞書を使用して自動的に適切な語句に置き換えられて検索されています。

MeSH とは

MeSHとは何かを簡単に触れておきます。
MeSHは、NLMが定めた統制語で Me dical S ubject H eadingsの略です。統制語とは、言葉のあいまいさを避けるため、同義語を整理して一つの概念に一つの語を当てたものです。文献データベースでは一般に用いられ、医中誌やJDreamなどでも使用されています。そして、統制語の上位概念、下位概念などの関連性を含めまとめた用語集をシソーラスといいます。

MeSHを使うメリットは、

  • 検索漏れを防ぐ:完全ではありませんが、自由語検索での漏れを防ぐことができます。例えば「がん」について検索する際、自由語では「cancer」「tumor」「neoplasia」「carcinoma」など複数の語を使用しなければなりませんが、MeSHなら「neoplasms」だけでOKです。
  • ノイズを減らす:1文献には10~20のMeSH用語が振られています。そのうち中心的主題として2~3程度の Major Topic が付与されています。これを利用することで、よりテーマに即した文献をヒットさせることができノイズが軽減できます。

一方でデメリットもあります。

  • 新しい文献には付与されない:MeSHが付与されるのはMEDLINEに登録され索引付けされたものに限るので、PubMedには登録されただけでMEDLINEにまだ、という文献はヒットしません(確認はできていませんが、中には、MEDLINEに登録されても索引付けされない文献もあるとのこと)。
  • 索引付けが完全には統一されていない:人手による索引付けが行われているため、個人差による多少の揺らぎはあるらしい。
  • 新しい概念や用語がMeSHにない:MeSHは年1回の更新なので、次年度以降、反映されるのを待つ必要があります。

こうしたデメリットをカバーするために、自由語検索の併用が勧められます。

MeSHがよく知らなくてもできるMeSH検索

それでは、「MeSHがよく知らなくてもできるMeSH検索」について説明します。MeSH構造の概説は検索方法の後に記しましたので、もう少し理解を深めたいという方はそちらを参照ください。

MeSH検索についての解説では、まず、MeSH DatabaseでMeSHを検索することから始めるように書かれていることが多いようです。しかし、この時点で「なんか面倒くさそう・・・」って思う人は少なくないようです。
そこで、この方法では「調べたいテーマに沿った文献の抽出」に的を絞り、MeSH Databaseを使わず「取りあえず自由語で検索してみる」からMeSH検索します。初めてだと少しややこしいかもしれませんが、慣れてしまえばどうということのない操作だと思いますので、一度お試しください。

以下の操作例では、検索テーマを「COVID-19の治療薬としてのfavipiravir」(かなりざっくりとしたテーマですが・・・)としています。

  1. テーマに関連する自由語でひとまず検索します。
    COVID-19 AND treatment でひと まず検索してみましょう。
    表示された文献リストを見て、テーマに沿っていそうなタイトルの文献の詳細情報を開きます。
  1. 文献の内容を確認し、テーマに沿っていそうなら下へスクロールします。
  1. MeSH terms 」を見つけたら、「*」が付いていて目的とするテーマに関連ありそうなMeSHをクリックします。ポップアップが出るので「 Search in PubMed 」を選択・クリックします。
    ここでは、 Coronavirus Infections / drug therapy* を選択しました。

「*」が付いているMeSHは Major Topic であることを意味しています。また、「/」以降の「drug therapy」はサブヘディングといって、絞り込みのために使用される補助的な用語です。「/drug therapy」を付けることで薬物療法に限定し、さらに「*」で文献の中心的主題に「コロナウイルス感染症の薬物療法が含まれる」ものに限定するという意味になります。
Major Topic、サブヘディングの詳細については、後述する「MeSHの構造」を参照ください。

  1. 「”Coronavirus Infections/drug therapy”[MAJR]」の検索式の結果が表示されます。 [MAJR] はMajor Topicに限定していることを示すタグです。
    この検索式は後で使うのでメモ帳などに保存しておいてください。
  1. 検索語が複数ある場合は、こここまでと同様の操作を繰り返します。
    この例では、favipiravirで同様の操作を行います。
    すでに COVID-19 AND treatment で検索していますので、改めてfavipiravirで検索する必要はありません。ブラウザーの履歴で、先ほどMeSH termsを表示した画面まで戻り、 Antiviral Agents / therapeutic use* を選択し、「 Search in PubMed 」で検索します。
  1. 検索ボックスに表示されている検索式に加えて、メモ帳に保存しておいた検索式を貼り付けANDで結合し、再検索します。
    この例では次の検索式で再検索します。
    “Antiviral Agents / therapeutic use”[MAJR] AND “Coronavirus Infections/drug therapy”[MAJR]

検索結果が表示されて、いったん作業は終了です。

ここまでの操作で、文献数は COVID-19 AND favipiravir AND treatment による全フィールド検索の218件から、41件にまで絞り込まれました。さらに、favipiravirのフィールドを[Title/Abstract]にして検索すると、29件まで絞り込まれました(検索件数は2020年12月10日時点)。

今回の検索例は、あくまでもデモとして示したものです。COVID-19に関する文献なので全体の対象文献は元々少ないですし、MeSHを使わなくても、もっと効率よく絞り込みはできると思いますが、実際の検索で、同様の方法を組み合わせれば、かなりのところまで文献を絞り込めると思います。
また、この例では、各検索語に対して一つのMeSHしか選択していませんが、複数のMeSHとフィールドによる絞り込みを組み合わせることで、さらに絞り込むことや、この例ではヒットしなかった文献を見つけられるかもしれません。

MeSHの構造

以下は、MeSHの構造についての概説です。
MeSHの詳細画面には次の情報が記載されています。

(1) MeSH用語(標目)

MeSHは大きく16カテゴリーに分けられ(表)、さらにいくつかのサブカテゴリーで分類されたツリー構造を形成しています。ツリー上の配置番号としてツリーナンバーが付与されている。一つのMeSHが複数のカテゴリー/サブカテゴリーに含まれることもあるので、複数のツリーナンバーを持っているMeSHがあります。
MeSHツリーはこちらのリンクから参照できます→ https://meshb.nlm.nih.gov/treeView
ツリーナンバーの他に、個々のMeSH用語には一意のMeSH Unique IDも振られています(Dで始まる7桁コード)。

MeSHのメインカテゴリー

Anatomy 解剖学 [A]
Organisms 生物 [B]
Diseases 疾患 [C]
Chemicals and Drugs 化学物質と薬物 [D]
Analytical, Diagnostic and Therapeutic Techniques, and Equipment
分析、診断、治療の技術と機器 [E]
Psychiatry and Psychology 精神医学および心理学 [F]
Phenomena and Processes 現象と過程 [G]
Disciplines and Occupations 学問分野と専門分野[H]
Anthropology, Education, Sociology, and Social Phenomena
人類学、教育、社会学、社会現象 [I]
Technology, Industry, and Agriculture 工業技術、産業、農業 [J]
Humanities 人文科学 [K]
Information Science 情報科学 [L]
Named Groups 人物 [M]
Health Care ヘルスケア [N]
Publication Characteristics 出版特性 [V]
Geographicals 地理的情報 [Z]

(2) サブヘディング(Subheading)

MeSHをさらに絞り込むためのサブキーワードのようなもの(通常、副標目といわれます)です。MeSH用語ごとに使えるサブヘディングは決まっています。サブヘディングによる絞り込みは、スラッシュで区切ってMeSH用語の後ろに記載します(例.Coronavirus Infections / drug therapy)。
サブヘディングのリストはこちらのリンクから参照できます→ https://www.nlm.nih.gov/mesh/subhierarchy.html

(3) 絞り込みオプション

中心的主題(MeSH Major Topic)のMeSHに限定するかどうかと、現在のMeSHより下位のMeSHを除くかどうかのオプションです。
既述の通り、MeSH Major Topicは1文献に2~3語付与されています。MeSH termsのリスト上では「*」が付いています。MeSH Major Topicを指定しないと、論文主題からずれたMeSHを引っかけてしまいます。例えば、抄録に記載されているけれど主題とあまり関連のない単語も拾ってしまいノイズが増えることになります。

(4) MeSHツリー番号とユニークID

MeSHツリー番号と個々のMeSHのユニークIDです。検索で使うことはまずありません。
一つのMeSHが異なるカテゴリーに付与されている場合、それぞれのツリー上で番号を持っています。ですから、一つのMeSHに複数のツリー番号が付与されていることがあります。

(5) 同義語(Entry Terms)

同義語と呼ばれていますが、実際には、自由語検索したときに自動用語マッピング機能によって内部的に特定のMeSHに自動変換される語のことです。
MeSH Database、MeSH Browserで同義語は確認できます。
 MeSH Database→ https://www.ncbi.nlm.nih.gov/mesh
 MeSH Browser→ https://meshb.nlm.nih.gov/search

(6) MeSHツリー

MeSHはツリー構造になっています。一つのMeSHが複数のツリーを持つこともあります。


PubMed検索をするときに、毎回MeSHを使う必要はないと思いますが、知っていて絶対に損はしないテクニックです。MeSH検索ができればPubMedを活用する幅も広がると思いますので、ぜひ試してみてください。