【製薬企業におけるデジタルマーケティングの全貌|前編】マーケターが知るべき8つのITツール

コロナ禍が始まったこの数年で、製薬企業各社はさまざまな新しい取り組みを模索しています。マーケティング、営業関連では、オンラインMR、顧客データ統合、AIを利用したターゲティングなどなど、デジタルマーケティングに関する話題は事欠きません。しかし、デジタルマーケティングに関するキーワードを目にすることは多いものの、なかなかその意味や全体像を把握することは容易ではありません。
本記事では、デジタルマーケティングの全貌について解説。前編は、「DMP・DWH・CDP」など似たような単語が多く理解しにくいデジタルマーケティングに関するITツールの全体像を紹介します。

デジタルマーケティングの特徴

デジタルマーケティングと一口に言っても、定義は多種多様で、曖昧です。
本記事では、デジタルマーケティングを以下3つの特徴を持ったマーケティング活動の一環と考えます。

  1. 売上や顧客行動などの営業・マーケティング関連のデータを活用すること
  2. チャネル・接点として、デジタルを含んでいること(オウンドメディア、3rd Partyメディア、メール、スマホアプリなど)
  3. ITツールやPC・スマホなどのソフト&ハードのデジタル技術が活用されていること

つまり、デジタルマーケティングとは、「データ」「チャネル」「ITツール」の3つの掛け算で展開するマーケティング活動の一種です。
具体的には、オウンドメディア(自社の会員制サイト等)の構築・運用や3rd Partyメディア(エムスリーやケアネット等)の運用管理、SEO、メールマーケティングなど、かなり幅広い活動が含まれます。

デジタルマーケティングの位置づけ・特徴

デジタルマーケティングには4タイプの機能を持つITツールが必要

「データ」や「チャネル」については、営業やマーケティングを行うときに比較的馴染みがあるものの、「ITツール」にはあまり馴染みがない、似たような単語が多くてよく分からないなど苦手意識を持つ方もいるかもしれません。

デジタルマーケティングを行うためには、大きく4タイプの機能を持ったITツールが必要になります。

  1. データを集める/まとめる
  2. データを取り出す/送る
  3. 見える化/分析する
  4. 施策の支援・実行する

データを水に例えて水道の流れをイメージすると、分かりやすくなると思います。水には、自分たちが水道水として利用できるまでに、さまざまなプロセスがあります。

  • 水源となる水(データ)が必要、ダムに水をためる(①データを集める/まとめる)
  • ダムから水道管を通じて浄水場などへ送る(②データを取り出す/送る)
  • 水をきれいにして飲める・使える状態にする(見える化/分析する)
  • 手元に送って水を飲んだり、トイレやシャワーなど用途に応じて使用する(④施策の支援・実行する)

水を使うためには、ダムや浄水場、水道管、蛇口などさまざまな設備が必要になるのと同じように、デジタルマーケティングでもさまざまなITツールが役割分担をして、はじめて施策として実行できるということを理解する必要があります。

デジタルマーケティングで活用する4タイプの機能を持ったITツール

デジタルマーケティングで使用されるITツールの概要

ITツールが理解しにくい原因として、どのITツールが、どのタイプの機能を持っているか分かりづらい、複数の機能を持っていたりして違いが見えづらい、そもそもITツールがたくさん世にありすぎる、などが挙げられます。
そこで、製薬企業のデジタルマーケティングでよく活用されているITツールを以下の図のように8種類に分け、代表的な製品や、機能、活用イメージを解説します。

デジタルマーケティングで活用する主なITサービスの種類

データを集約して、他ツールに連携するITツール:DWH、ETL、DMP、CDP

まず、デジタルマーケティングを実行するうえで、最初に必要な機能は「データを集める/まとめる」ことです。

デジタルマーケティングで扱うデータは売上、顧客Webの閲覧データ、顧客とMRの面談データなど多岐に渡ります。それらは、源泉システムとして、別々のシステムで管理されていることが通常で、データはバラバラになっています。ダムがなく、バラバラの貯水池で、各々が勝手に水を使っているようなイメージです。

そのため、データを集めて/まとめて/保管する機能を持ったITツールが必要で、その代表ツールがデータウェアハウス(Data warehouse:DWH)です。その名の通り、データの倉庫をイメージしてください。

DWHは、マーケティングなどの意思決定のためにテーマ別、時系列に集めたデータの集合体です。
最近ではクラウド型のDWHである、Amazon Redshiftや、Google Big Queryを導入する製薬企業も見られます。
ただし、DWHは集めて保管しておくことがメイン機能なので、データを分析したり、マーケ施策に活用するような機能はもっていません。

そこで、分析や施策用のITツールに、DWHからデータを取り出して送る機能が必要になります。それがETL(Extraction、Transfer、Loading:抽出。変換/加工、ロード/送信)というツールです。データを取り出して、形式を変換/加工して、ロード/送信できます。最近のETLでは取り出したデータを別のITツールに連携することも可能です。

さらに、マーケティングに特化し、顧客セグメント別のデータ粒度など、DWHより細かく顧客データを扱うツールとしてデータマネジメントプラットフォーム(Data Management Platform:DMP)があります。
製品にもよりますが、最近のDMPは、DWHとETL、簡易な分析機能も保有しているものもあり、DMPだけでも、顧客セグメントをしたり、顧客のプロファイル概要を表示したりすることでデジタルマーケティング施策につなげることができます。

最近では、カスタマーデータプラットフォーム(Customer Data Platform:CDP)という、さらに細かい顧客の行動データを追うことができるITツールが伸びています。

製品によっても違いますが、DMPとの主な違いはデータがセグメントや時系列だけでなく、顧客一人一人のデータ粒度になっている点、広範囲のデータ統合が可能になっている点、ダッシュボード機能で「見える化」できる点などがあります。他の数百種類のITツールと連携できるようになってることも多く、多様なデータを統合して、One to Oneマーケティングなど顧客の個別化を促すのに最適なツールといえます。

DWH、ETL、DMP、CDPの違い

顧客管理や営業活動の支援に特化したITツール:CRM/SFA

製薬企業の営業担当者やマーケティング担当者は、CRM(Customer Relationship Management)やSFA(Sales Force Automation)といった、デジタルマーケティング関連のITツールがなじみ深いでしょう。代表的な製品としては「Veeva」や「Salesforce」が挙げられます。

CRMは顧客との継続的な関係構築を目的にしたITツールで、多くは顧客関連の情報を集約したり、MRの営業活動の支援や管理機能があります。SFAは営業活動の支援に特化した機能を持ち、CRMの一環として扱うことも多いです。

製品によってはさらに幅が広いですが、CRMやSFAの主な機能は下記の5つです。

  1. 顧客情報管理機能
  2. 顧客データ簡易分析機能
  3. 売上などレポート機能
  4. MRの営業活動記録機能
  5. セミナーやイベント管理機能

MRにとっては、営業活動を支援してくれるツールでもあり、営業活動や、症例情報等を本社に報告するツールでもあるかと思います。

一方でデジタルマーケティングの側面では、CRMを直接デジタルマーケティング施策に用いるというより、CRMに蓄積された貴重なデータ源としての役割を持ちます。CRMのデータを分析して、優良顧客選定などのターゲティングをしてMRへのレコメンデーションに用いたり、他データと組み合わせてターゲットのみにメール配信を行ったりする事例があります。
デジタルマーケティングの視点からみると、重要なパートナー、連携ツールに位置づけられます。

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集めたデータを見える化・分析するITツール:BI、AI

続いて、DWHやCDPを活用して、データ集めて、まとめて、取り出せる段階になったら、データを利活用できるようにすることが重要です。
水道の例えでいえば、そのままでは飲めない水を、用途に応じた自分たちの欲しい水(清潔、おいしい、健康に悪影響がない等)に変える浄水場の部分です。それが「見える化/分析」です。

水をきれいにするにも、遠心分離したり、濾過したり、薬剤を添加したり、さまざまな方法がありますが、データ分析にも同じようにたくさんの手法があります。このたくさんの手法を機能として持っているITツールがBI(Business Intelligence)です。

身近な事例としては、Excelなどの表計算ソフトも広義の簡易BIともいえるでしょう。BIはExcelがさらに高度になった、豊富な機能をもったITツールと捉えれば大きな間違いはありません。

さらに最近では機械学習という方法を使って、予測や自動分類などをするAI(Artificial Intelligence)を利用したITツールも増えています。いわゆるデータサイエンティストが主に活躍するのは、この見える化/分析する領域です。

BIの具体的な製品としては、「Tableau」やマイクロソフトの「Power BI」などが挙げられます。利用事例としては、エリア別、施設別などのセグメント、時系列など、より細かく製品売上を見える化したり、売上進捗管理を一目でわかるようにKPIをダッシュボード化する等があります。

BI、AIツールの違い

デジタルマーケティング施策を実行するITツール:MA

デジタルマーケティング施策を実行するためのITツールの代表例は、マーケティングオートメーション(Marketing Automation:MA)です。

簡単にいえば、データから顧客をセグメンテーションして、ターゲットセグメントごとにシナリオを作成し、段階的にメールを配信していく施策に用いられます。高度に使いこなせば、メールに限らずさらに広い施策にも応用できますが、ほとんどは上記のようなメール施策の一環として利用されているのが現状です。

MAによるデジタルマーケティングを展開するには、オウンドメディア(自社が保有する会員制サイト)やCRMとの連携がカギになります。なぜなら、顧客のメールアドレスが分からなければ、メールの配信ができないからです。
DMPやCRMなどと連携して、メールアドレスをはじめ、顧客の行動データを合わせて、最近よくコンテンツを視聴している医師などのセグメントを抽出し、シナリオに沿ってメールを送信します。

MAが持つ主な機能は以下の4つです。

  1. 見込み顧客(リード)管理、スコアリング機能
  2. メール配信機能
  3. 開封・クリックなどのレポート機能
  4. 簡易Webページ(ランディングページ)作成機能

製薬企業でよく使われているMAの代表的な製品としては、「Marketo」や「BtoD」などが挙げられます。
こうしたMAを使って、オウンドメディアのコンテンツをメール配信したり、Webセミナーの案内等を使用している事例があります。

MAの分類

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製薬企業もデジタルマーケティングの本格展開へ

コロナ禍の影響によって、急速にデジタルマーケティングの浸透が進み、今後はAIなども活用したさらに高度なデジタルマーケティング施策の展開が増えると考えられます。

さらに全社的なDX推進と相まって、オムニチャネル化やOMO(オフラインとオンラインの統合)など、製薬企業の営業・マーケティングはさらなる変革期に入る可能性が高いでしょう。
それに伴い、営業やマーケティング活動も新しいチャレンジが始まり、製薬企業の営業やマーケティングに関わる方は、さらにデジタルマーケティングが自身の業務に直結してくると予想されます。ややこしい単語が多く理解しにくいデジタルマーケティングですが、まずは本記事で紹介したようなさまざまなツールの概要を理解し、他社事例の動向をチェックするなど情報のアンテナを広げてみることから始めてみましょう。


<参考>※URL最終閲覧日2022.08.19
・ITトレンド, DWH(データウェアハウス)とは?要件・活用事例まで詳しく解説(https://it-trend.jp/dwh/article/149-0001
・ITトレンド, ETLとは?社内データを活かすを実現!(https://it-trend.jp/etl/article/explain
・Treasure data, CDPとDMPの違いとは?(https://www.treasuredata.co.jp/cdp-vs-dmp/
・Salesforce,CRMとは?導入検討時に知っておきたい基礎知識と活用方法(https://www.salesforce.com/jp/hub/crm/what-is-crm/
・Salesforce, SFAとは?CRMとの違い・活用の基礎知識(https://www.salesforce.com/jp/hub/sales/sfa/
・ITトレンド, BIツールとは?機能や目的、種類などわかりやすく徹底解説!(https://it-trend.jp/bi/article/explain