疾患啓発に新たな選択肢?進化するOOH(屋外広告)プロモーションのいま

疾患啓発に新たな選択肢?進化するOOH(屋外広告)プロモーションのいま

屋外広告(OOH)というと街中にあるアナログの看板をイメージする方が多いかもしれません。しかし、OOHはデジタル化により表現やメッセージの訴求方法が大きく進化しています。今回は、疾患啓発など、製薬企業のプロモーションにおけるOOHの活用のヒントとなるよう、OOHのいまについて、話題になった最新の事例などを交え紹介します。

OOHは公共性・信頼性の高いメディア

OOHをご存じでしょうか。Out of Home(アウト・オブ・ホーム)の略で、一般的には屋外広告と呼ばれ、家の外にいる不特定多数の人たちに向けた広告のことをいいます。具体的には、街中にある看板や、電車の中吊り、駅構内のポスター、タクシー内の広告、お店や薬局内の広告などです。つい目にしてしまうOOHには、自分の意志とは関係なく強制的に情報を見させる、老若男女問わず幅広い層にアプローチできるといった特徴があります。さらに、多くの人が目にする場所に設置することから、掲載内容には自治体の厳しい審査があるため、公共性・信頼性が高いという面もあります。

OOHはとくにエリア・ターゲティング性に優れており、特定の場所や属性(若者・ビジネスパーソン・主婦・高齢者など)の人たちに限定して伝えたいときに効果的です。通勤や通学、日中の往訪などで何度も同じ情報に触れることから、刷り込み効果も期待できます。また、OOH自体はその場でしか見られませんが、ユニークな広告はSNSなどで拡散されるため「バズメディア」とも呼ばれています。

このような魅力を持ったOOHですが、広告効果が特定しにくいというデメリットもありました。例えば、テレビCMには視聴率、インターネット広告にはインプレッション数、メールマガジンには開封率などがありますが、OOHにはそのような指標がありませんでした。しかし、近年、その課題も解決されつつあります。

デジタル化が進むOOH

現在はあらゆる業界でデジタル化が加速していますが、OOHも例外ではありません。約20年前からデジタル化が進み、今ではネットワークにつながったDOOH(Digital Out Of Home)と呼ばれる、デジタルサイネージを活用したOOHが一般的になりました。そして、位置情報データをもとに、どの場所でどれくらいの人に広告を見られたか、といった効果測定もできるようになってきました。過去のデータではなく実際の人流データや注視率をもとにしたインプレッションを算出して、そのインプレッションに応じて課金する広告サービスも生まれています。

また、進化したOOHでは、広告内部に設置したセンサーやカメラによって外側の情報をリアルタイムで認識し、AIにより状況を分析することで、その場所・その時間帯に適した内容の広告を自動配信することも可能です。
例えば、交通広告であれば、車内の乗客の年齢層や性別を瞬時に識別し、その人が好みそうな広告表現を選んで配信できます。また、天気・気温・時間帯・男女比率などによって広告表現を変えることもできます。ターゲットを細分化して最適なアプローチが行えることから、深くて強い訴求ができるメディアとして、費用対効果の高いマーケティングの実施も現実的になっています。

OOHのデジタル化に伴い、業界団体による環境整備も進んでいます。
2021年2月には日本広告業協会が、「OOH 新共通指標策定プロジェクト」を発足 *1 。広告主がメディアを横断して統合プランニングを行う際に、メディアの可能性や選択を幅広く提供できるよう、その根幹となる標準的な新指標を策定し、OOH媒体がより信頼され活用される環境を整備・啓蒙することを目的にしています。本プロジェクトでは、交通広告、屋外広告、空港広告、タクシー・バス広告など、各メディアのアナログとデジタル双方を含む OOH媒体を範囲としています。

さらに2021年3月には一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアムが、DOOHのオーディエンスの測定に関する標準を示すことを目的に「オーディエンスメジャメントガイドライン(第1版)」を策定 *2 。DOOHメディア価値の透明性・客観性・信頼性を高め、マーケットの拡大に寄与することを目指します。

OOHの最新事例

ここからは、進化・発展が目覚ましいOOHの最新事例をご紹介します。

事例1)新宿東口に現れた巨大な三毛猫

【公式】クロス新宿ビジョン( https://youtu.be/awRLybwcYd0 最終閲覧日:2022/01/21)

2021年7月、新宿3丁目のビル屋上に巨大な三毛猫の3D映像が出現しました。これはビルの外壁をまるごとプロモーションに利用できるクロススペース新宿に設置された大型街頭ビジョン「クロス新宿ビジョン」のプレ放送にあたり実施された企画です。正面と側面がつながったディスプレイによる奥行のある3D映像が特徴で、突如現れた本物そっくりの巨大な三毛猫に多くの人が立ち止まりました。映像はSNSでも話題になり、多数のメディアでも取り上げられました。

事例2)表参道のビル屋上を駆け抜けるBMW

BMW JAPAN( https://youtu.be/juLzhn_fm6k 最終閲覧日:2022/01/21)

2021年10月には、表参道にある200㎡超のL字型の大型屋外ビジョンに、次世代電気自動車BMW iXが登場。屋外広告を専門とする株式会社ヒットが新設した「表参道ヒットビジョン」の第一弾広告の映像です。充電を終えたBMWが空へと飛び出すように駆けぬけていく、大迫力の3D映像が楽しめます。

事例3)ポンタとリアルタイムコミュニケーション

https://twitter.com/Ponta/status/1451131380193062912
Ponta( https://twitter.com/Ponta/status/1451131380193062912 最終閲覧日:2022/01/21)

共通ポイントサービス「Ponta」のキャラクターのポンタが、2021年10月に新宿と池袋の大型ビジョンに登場しました。ポンタが通行人に「みなさん、こんにちは! いい天気ですね」と話しかけたり、じゃんけんをしたり、通行人がポンタに向けて手を振ると手を振り返すなどのコミュニケーションを行いました。
Pontaの「便利・おトク・楽しい」世界を伝え、親しみを感じていただくことと話題化を狙ったキャンペーンによるもので、キャラトーカー *3 というアバターアプリサービスを使うことで通行人とポンタとのリアルタイム双方向コミュニケーションを実現。通行人は立ち止まるだけでなく、スマートフォンで撮影したりSNSに投稿したりするなど、盛り上がりを見せていました。

事例4)ヘアサロン専用のデジタルサイネージ

サキザキテルコ【公式】( https://youtu.be/rJiU-zdDJFI 最終閲覧日:2022/01/21)

「サキザキテルコ」は、ヘアサロンに特化したデジタルサイネージメディアです。来店したお客さまに対して、美容・ファッション・食・ライフスタイル・エンタメなどのお役立ち情報や広告などを配信します。
広告主は地域や店舗のセグメント配信が可能で、時間帯・曜日・天気情報などヘアサロンの環境やお客さまに合った広告を配信することもできます。また、レポートも充実しており、AIがお客さまの着座有無を判定し、着座状態(席についている状態)で広告が再生された回数を「着座再生数」として評価。視聴ごとの単価を日別・時間帯別・地域別などの項目で知ることもできます。サキザキテルコは全国のヘアサロンに11,000台以上設置しており、月間リーチ数は約110万人以上です *4

OOHで従来とは違った疾患啓発プロモーションを

デジタル化によって進化したOOHでは、ターゲットに広くアプローチするだけでなく、データやAIの活用により狭く深くアプローチすることも可能になりました。このような特徴に加えて、OOHには公共性・信頼性の高さもあるため疾患啓発プロモーションに適したメディアのひとつと考えられます。

OOHを活用することで、インターネットやSNS上だけではリーチできない人にもリーチできます。街中で広告を見た方がSNSに投稿することで、さらにたくさんの人に見てもらうことも期待できます。これまでインターネット上で疾患啓発を行ってきたがあまり効果が得られなかった場合や、広く話題になるプロモーションを実施したい場合には、新たな選択肢としてOOHの活用を検討してみてはいかがでしょうか。


*1「OOH 新共通指標策定プロジェクト」発足について,一般社団法人日本広告業協会. https://www.jaaa.ne.jp/wp-content/uploads/2021/02/9ef63e7b883c568a53fcd7b02bb0a0d1.pdf
*2 オーディエンスメジャメントガイドライン(第1版),一般社団法人デジタルサイネージコンソーシ アム. https://digital-signage.jp/wp-content/uploads/AudienceMeasurementGuideline1.0.pdf
*3 3DCGキャラクターで双方向に対話ができるデジタルサイネージアバターアプリ(キャラトーカー公式サイト. https://www.eje-c.com/charatalker
*4 2021年7月31日時点の月間リーチ数(サキザキテルコ公式サイト. https://sakizakiteruko.jp/

<参考> ※URL最終閲覧2022年1月21日
・『宣伝会議』,株式会社宣伝会議,2021年6月号(特集 ブランディングメディアとしてのOOHの可能性)
・『販促会議』,株式会社宣伝会議,2020年4月号(特集 いまこそOOH タッチポイント分散化時代にリーチを獲得せよ)
・『OOHは、“場所起点”から“人の移動起点”のメディアへ』,電通報( https://dentsu-ho.com/articles/7878
・『DOOHの新潮流~ヘアサロン・サイネージ編』,電通報( https://dentsu-ho.com/articles/7987
・『屋外大型ビジョンでキャラクターがリアルタイムにしゃべりかける!その魅力とは?』,電通報( https://dentsu-ho.com/articles/8016
・『3D広告も登場!広がる!キャラクター×OOHの可能性』,電通報( https://dentsu-ho.com/articles/8019
・『必見!OOHの特徴を生かした交通広告の選び方について』,メトロアドエージェンシー( https://www.metro-ad.co.jp/column/detail/id_233.html