【コラム】JMDC COOに聞く!RWDによる治験2.0

【コラム】JMDC COOに聞く!RWDによる治験2.0

レセプトデータは、活用方法を工夫すれば、プロトコールの精緻化や施設選定のバリデーションなど、治験においても役立てることができます。開発の対象がより希少な疾患になって、治験の設計の難易度が上がる中では、今後データの活用は欠かせないものとなっていくと思われます。


杉田:JMDCのCOOの杉田と申します。今回は「RWDによる治験2.0」というテーマで、治験においてレセプトをどう活用できるかという点をお伝えさせていただき、特に開発部門の方々が実務でレセプトデータを使うイメージを持っていただければと思います!

穴吹:製薬本部マネージャーの穴吹と申します。本記事では私がインタビュワーとなって、進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。治験領域でのレセプトの活用ということですが、これまではJMDCでもあまりなかった話かなと思いますが、新規に取り組まれる背景をお伺いできますでしょうか。

杉田:そうですね、いくつか背景があります。今回は、大きくプロトコールの精緻化と、施設選定のバリデーションの2つのテーマになりますので、まずはプロトコールの精緻化の方からお話しさせていただきます。

これまでも開発部門からのレセプト分析のご依頼がなかったかというとあったのですが、ざっくりと対象疾患の患者数はどの程度いるのか、それをみて施設数やプロトコールなどを検討したい、といった内容がほとんどでした。
一方で、JMDCの方で血液検査の結果や尿検査の結果を集めていく中で(2021年4月時点で60万人程度)、よりプロトコールにおける被験者の選択除外基準に即した患者が実際に何人いるのかということがわかるようになりました。

―開発の業務を少し教えていただきたいのですが、選択除外基準というと具体的にはどのようなものでしょうか。

杉田:例えば、下記の図はすでに終わった治験の選択除外基準を一例としてとってきたものになります。

選択・除外基準のフィージビリティ確認(2/3)

こちらをみていただくと、体重やPSといった一般的な全身状態もあれば、がんのステージや疾患の程度をあらわすスコアといった項目があるのがわかるかと思います。レセプトに触れたことのある方だとすぐお分かりかと思いますが、項目によってレセプトで分析可能なものもあれば、そもそもレセプトにはデータとして載っていないものもあります。

さきほど申し上げたのは、これまではレセプトでわかるものしかわからなかったのですが、今はPT-INRのような凝固の血液検査の値も集まってきていますので、分析できる項目が増えた、ということになります。それが上記の図にかいてあるように、レセプトで判別可能なもの、検査値データで判別可能なもの、ですし、やはり疼痛スコアのような疾患特異的な重症度は、どちらのデータソースにも存在しないので、臨床論文から統計的な割合をとってきて集団全体にあてはめる、ということが必要となります。

―なるほど、ありがとうございます。新しい種類のデータが集まるにつれて、被験者候補となりうる方の人数がより精緻に求められるようになったということですね。それを実際に開発においてはどのように活用するイメージでしょうか。

杉田:例えば、今JMDCで始めているのは、一度製薬企業側で選択除外基準を構築されたあとに、それのフィージビリティを確認するということを行っています。その基準で日本には1000人候補者がいるけれども、それだと200人の試験は難しいよね、というようなことを確認し、次に、ではどの項目をどれだけ緩和したら200人の試験が可能なのか、ということを検討します。下記の図をみていただけるとよりイメージしやすいかなと思います。

選択・除外基準のフィージビリティ確認

上記はイメージ図なのですが、各項目で緩和できる基準、もしくは削除できる基準、というものを製薬企業側と相談して、それを緩和した場合、削除した場合に被験者の母集団がどの程度変化するかということをみます。それによって、臨床的に無理のないプロトコールとしてしまうことを防ぐことができるというわけです。

―それでは先ほど触れていた2点目の施設選定のバリデーションとはどういうものかお伺いできればと思いますがいかがでしょうか。

杉田:レセプトデータでは、個人情報保護の観点から、医療機関ごとの患者数をだすことはできないのですが、医療機関20施設なら20施設に該当する疾患の患者が何人存在するか、ということは分析が可能です。JMDCはおよそ1200万人分のレセプトデータを扱っておりますので、日本の10%の縮図として、みていただくことができます。

それを活用することで、例えば、施設候補を選定した後にその施設に実際何人程度被験者候補がいるのかを試算することができます。現状ですと、SMOを通じて医師や医療機関に質問表を投げるなどをして、実際にどの程度被験者が見込まれるかを判断しているかと思うのですが、やはり過多な人数を報告する医療機関も一定程度存在すると聞いています。私ももともと医師をしておりましたのでわかりますが、やはり自分が担当している患者さんのうち、どの疾患が何人ぐらいいるなどはある程度わかりますが、腎機能がどの程度以上で、合併症としてxxを持っていない方と言われると、まずパッとは人数がわからないのが正直なところです。電子カルテもそういうのを検索しやすいようにはできていないので、医療機関からでてくる数字はかなり医師の性格や忙しさによってしまうと想像します。

それに対して、レセプトデータはある程度客観的数値なので、それらを付き合わせることで、施設選定のバリデーションが可能で、精度をあげることができるというわけです。

―レセプトデータの分析方法もまだまだ進化していて、数年前はやっていなかったことも新しくできるようになっていることがあるということですね。ぜひ最新の情報を知りたいという方はお問い合わせいただけると嬉しいですね。

杉田:まさしくですね!日々製薬会社の方々と議論させていただく中で、そういう業務やそういう課題感をお持ちであればRWDを活用してこういうことはできるな、ということを考えながら、新しい取り組みにチャレンジしておりますので、ぜひ情報交換などさせていただけますと幸いです。

▷記事提供元は こちら (JMDC REAL WORLD)