デメリットを伝える際の注意点とは?心理学的に有効な方法をご紹介

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製薬企業のプロモーションでは、質の高い医薬品情報を医師や医療機関へ伝え、信頼を得ることが重要となります。そのためには、医薬品のデメリット情報も正確に伝えなくてはなりません。本記事では、デメリットの伝え方に関し、心理学分野で有効とされている方法を紹介。プロモーションの方法を考える際など、一つの手段として参考にしてみてはいかがでしょうか。

デメリットの伝え方に注意しなければならない理由

人は、無意識のうちにネガティブな情報を重視し、ネガティブ情報に引きずられた印象を持つことが心理学的に証明されています。これを、「ネガティビティ・バイアス」と呼びます。ポジティブな情報とネガティブな情報がある場合、判断を下す際にネガティブ情報の影響力が強いのです。

この現象に関しては、社会心理学の分野において「ポリアンナ仮説」で説明されています。
「ポリアンナ仮説」とは、エレナ・ポーター著の小説『少女ポリアンナ』にちなみ、人間は基本的に自分のいる世界は悪いことより良いことの方が多いと信じているため、ネガティブな情報は目立ちやすいという仮説です。また、単純にネガティブな情報は将来脅威となる可能性があるため、敏感になるのが生物として有利であるから、とも言われています。

デメリットを伝える際の2つのポイント

たとえば「飲みにくい味である」など、医薬品の情報提供においても、デメリットを伝えなければならない場面があります。デメリットも含めて情報を正しく伝えながら、その製品をポジティブに理解してもらうためにはどうしたらいいのでしょうか。デメリットを伝える際の心理学的に有効とされるポイントを2つご紹介します。医薬品のプロモーションを検討する際の参考となるかもしれません。

①メリットを先に伝えて「初頭効果」を狙う

社会心理学の分野では、複数の情報に基づいて判断する際、初めに提示された情報が大きな影響を与える現象が明らかになっています。これを「初頭効果」といいます。

吉川(1989)の実験では、ある人物について以下の2つの文を用意し、まず一方を提示して印象を形成させ、その後もう一方を提示しました。

  1. ポジティブな行動の文(例:道に迷っているおばあさんを案内してあげた)
  2. ネガティブな行動の文(例:拾った財布を届けずに持ち去った)

さらに1と2の順番を入れ替えて提示するパターンも実施し、その後の印象を比較しました。

ポジティブからネガティブ情報を提示された場合と、ネガティブからポジティブな情報を提示される場合で、最終的な印象の差は出たのでしょうか。

結果は、ネガティブ→ポジティブのパターンにおいて、最終的な印象が悪くなりました。先にネガティブな行動文を提示されるとポジティブな行動の文を先に提示されるよりも印象を覆しにくく、時間が経ってもネガティブな印象が継続しやすいことがわかりました。さらに、「ポジティブな行動は見せかけで単に社会的規範に沿っただけであり、ネガティブな行動が本来の姿である」とみなされやすいことも明らかになりました。

つまり、先にネガティブな情報を与えて悪い印象を持たれると、後からポジティブな情報を追加しても印象は覆しにくいといえます。このように、「初頭効果」があることにより、先に与える情報が重要であることがわかっています。

②「フレーミング効果」でポジティブな面に焦点を当てる

「フレーミング効果」とは、同じ現象でもポジティブな側面とネガティブな側面のどちらに焦点を当てるかによって、意思決定が変化する現象をいいます。同じ内容であっても、言い方によって判断がある程度左右されるのです。

アレクサンダー・ロスマン(1997)はこのような実験を行いました。同じ成功率の治療を受けてもらう際、患者に以下の2通りの説明をします。

  1. 「600人中400人が死にます」
  2. 「600人中200人は助かります」

1も2も同じく「3分の2の確率で死亡する」と伝える内容ですが、1は後ろ向きな「死」という言葉を使っているのに対し、2は「助かる」という前向きな表現を用いています。

1と2を比較して、どちらの承諾率が上がったでしょうか?

結果は、2の「助かります」と伝えたほうが承諾率が上がったそうです。同じ現象であっても、ポジティブな側面(ポジティブフレーム)とネガティブな側面(ネガティブフレーム)のどちらに焦点を当てるかによって意思決定が変化することがわかりました。このことから、ネガティブな内容であっても、言い方を変えてポジティブな面に焦点を当てることにより、判断によい影響をもたらす可能性が高まります。

【医薬品プロモーションの例】患者説明用の補助資料を用意する

医薬品の処方において、製薬企業が医師に伝えるときだけではなく、医師が患者さんへ医薬品について説明する際にもデメリットを伝える場面は発生します。たとえば、ジェネリック医薬品を提示する際に、薬効が同じであってもジェネリック医薬品の方が苦味が強いなど味にデメリットがある場合や、薬が変わること自体を嫌がる患者さんがいる場合もあります。このような場合は、医師が患者さんへ説明する場面を想定し、患者向けの説明用補助資料を製薬企業が用意することで、医師の負担軽減につながると考えられます。

デメリットであっても伝え方を工夫したり、手厚いフォローを行ったりすることで、ネガティブなインパクトを減らせる可能性が高まります。医薬品の情報を正確に伝えながら医師や患者さんとの信頼関係を築くために、プロモーションを考える際の一つの方法として参考にしてみてはいかがでしょうか。