セミナーレポート/各製薬企業におけるオウンドメディア&マーケティングテクノロジーの活用状況「第2部」

セミナーレポート/各製薬企業におけるオウンドメディア&マーケティングテクノロジーの活用状況「第2部」

新型コロナウイルスの影響により、MR活動は制限されています。その中で注目されているのが、デジタルマーケティングツールを活用した、オウンドメディアなどのパーソナライズ化です。2020年7月21日に開催されたオンラインセミナー「製薬企業におけるオウンドメディア&マーケティングテクノロジーの最新活用事例」の第2部では、株式会社ブレインパッド ビジネス統括本部 カスタマーサクセス部長の柴田剛氏が講演。データ活用の専門企業として数少ない東証一部上場企業である同社が手掛ける「Rtoaster(アールトースター)」の最新活用事例を、製薬企業に特化して紹介しました。

年間2020億回パーソナライズを行うRtoaster

莫大な情報量を運用・分析しているブレインパッド社の主力製品であるRtoasterは、年間2020億回ものパーソナライズを行うツールで、2020年7月現在で大手製薬企業10社が導入しています。

このように製薬企業でも導入が進むRtoasterが、オウンドメディアでどのように活用されているのか柴田氏が解説します。

医薬品情報の収集方法は、コロナの影響で劇的に変化

普段の生活においても、大きな変化を強いられた新型コロナウイルス感染拡大。製薬業界でも訪問が禁止となる施設が出たり多くの企業がテレワークを導入したりと、影響が見られました。これまで主流であったMR活動は、実際どれくらい減少したのでしょうか。

9分の1まで減少した直接面会に対し、デジタルメディア活用は3倍に増大

コロナの影響を皆さんも感じられていることかと思います。「2020年6月26日の化学工業日報に、医薬品マーケティングの変化がリアルな数値で示された」と柴田氏は話します。

PwCコンサルティングが2020年4月最終週に実施した424人の医師を対象にした調査によると、医師の医薬情報収集の手段が、MRとの直接面会からWEBを活用したものに大きくスイッチしたという結果が得られたとのことです。新型コロナウイルス流行前は73%も占めていたMRやMSLとの直接面会による情報収集は、流行後には8%と約9分の1にも減少。一方、WEBセミナーは8%から26%、WEBサイトは10%から27%と約3倍にも増大したそうです。

これには柴田氏も「ある程度は認識していたことではあるが、実際にこれほどまで大きく変化しているとは」と驚きます。

デジタルマーケティングの活用で、情報のフィードバックを狙う

先ほどのデータからも分かるように、これまで医師への情報提供はMRなどによる直接面会によるものがほとんどでした。しかしコロナ禍では、医療機関への訪問は厳しいのが現状です。そのため、デジタル上での情報に医師も頼らざるを得なくなっているとのことです。

しかしここで考えたいのが、MRは一方的に情報を提供するだけでなく、同時に医療現場のニーズも収集してきたということです。MRによる医療従事者のニーズ把握ができなくなっているからこそ、柴田氏は「デジタルマーケティングのメリットは、医療従事者のデータをフィードバックできることにある」と述べます。

これまでと同様にパーソナライズされたチャネル別に行う最適なアクションが重要であることに、変わりはありません。しかし、WEBサイト閲覧者の指向や訪問傾向などのデータをフィードバックし、医師が求めている情報は何だったのかを把握することが、より重要だと見直されているそうです。

WEBサイトのパーソナライズからはじめよう

デジタルマーケティングツールの導入を検討する際には、どのようなツールがあるのか、どのツールから導入すればよいのか、といった悩みが出てくるのではないでしょうか。

データマーケティングツールの活用は多岐にわたる

本セミナーの第1部で医薬情報ネット社の金子氏も述べていましたが、デジタルメディア活用の最大の目標は医師の処方に影響を与えることです。そのため、限られたツールで部分的にアクションを起こすのではなく、さまざまな箇所でデータ活用を行っていくことが肝心なのです。

どのようなツールが活用できるのか、データマーケティングの活用事例を、柴田氏は次のように提示しました。

<デジタルツールから直接配信する医療従事者へのアクションの場合>
WEBサイト…属性・行動情報によるコンテンツの最適化
メール…配信周期とコンテンツの最適化

<MRを介して医療従事者へデジタルツールを活用する場合>
WEBサイト…WEBで捕捉した興味関心をMRへフィードバック
イントラネット…MRへ医師別のおすすめメッセージの提案やEラーニング受講履歴から研修プログラムのレコメンド このようにデジタルマーケティングの活用は、いくつものパターンが想定されます。

パーソナライズをはじめるなら、医師へのWEBコンテンツ配信から

数多くあるデジタルツールは、何から活用すればよいのでしょうか。柴田氏は、「医師が興味を示したり必要としたりするところからはじめるべき」と指摘します。それでは一体、医師のニーズとは何なのか。その答えが、前述した2020年6月26日の化学工業日報記事内に示されていたそうです。

医師に聞いた今後利用したいWEBチャネルは?というアンケートによると、

・「AI(人工知能)活用による論文などで探している情報のハイライト機能」:61%
・「MR・MSLとのやり取りから興味や関心を類推した情報の個別化」:57%

という結果が得られたそうです。過去の情報を加味して、必要な情報に素早く簡単にアクセスしたいと多くの医師が望んでいることが分かります。

では、具体的にツール活用をどこから行うべきか。柴田氏は、「医療従事者へ直接配信されるWEBサイトやメールのパーソナライズからはじめるとよい」と推奨します。

基本の施策を活用することが大切

新しくデータマーケティングツールを活用しようとする場合、目新しいものに興味をそそられるかもしれません。しかし柴田氏がまずおすすめするのは、定番ツールの導入の検討です。

オウンドメディアのパーソナライズ施策の基本5つ

一般的に医療従事者向けサイトのWEB施策は、大きく分けて2つあるとのことです。1つは専門領域や職種などによってコンテンツを出し分ける属性ベースの部分。もう1つは過去の行動からコンテンツを自動で出し分ける行動ベースの部分です。

パーソナライズ化では、医療従事者情報の収集からはじめることが重要です。領域や職種といった属性ベースと、セミナー参加やWEB閲覧カテゴリなどの行動ベースを加味し、パーソナライズ化のルールを決定。それら収集した情報から、製品情報・文献・セミナー情報などのコンテンツを医師別に最適化していくのです。

ではどのような施策を、パーソナライズしていけばよいのでしょうか。柴田氏はパーソナライズの基本施策として次の5つをあげました。

・メインビジュアル…領域ごとにセグメント化し訴求する情報を出し分ける
・記事コンテンツ…閲覧傾向から関連する記事を自動でレコメンド
・ランキング…サイト内で閲覧数の多い記事をランキング形式で表示
・閲覧履歴…以前閲覧した記事をレコメンド
・アイテム軸自動レコメンド…閲覧している記事の関連記事をレコメンド

これらWEBサイト上でのマーケティングツールは、医師へ配信するメールへの転用も可能です。基本施策の導入は、誘導したいセミナーや製品情報への導線構築、記事閲覧数アップ、サイト離脱回避・再訪の促進効果などが見込まれます。「クリック数だけなら、閲覧履歴が一番有効」と柴田氏。未導入であれば、ぜひ活用したいツールであります。

さらに属性別のポップアップ表示でセミナーや製品情報の訴求をしたり、ワンクリックで回答できる簡単なアンケートを行ったりするツールも増えてきているそうです。

集めた情報をフィードバックできるデジタルツールを活用しよう

ここまで企業からの情報発信ツールを紹介してきましたが、「いかに医療従事者の意思決定に資する1次情報を直接収集できるかがポイントである」と柴田氏は指摘します。つまり、デジタルメディアを通じて集めた情報をフィードバックできるツールの活用が必要となるのです。

1次情報のフィードバックツールとして、柴田氏がおすすめするのがABテストです。よく勘違いされるそうですが、ABテストの本来の目的は仮説を検証し顧客の解像度を高めることであり、この領域の医師にはこの情報がヒットするだろうと仮説を立て、実際の効果検証にABテストを活用するとよいと言います。

うまくいくパーソナライズの拡張ステップ

パーソナライズの拡張をするうえでおすすめのステップについても、柴田氏から説明がありました。

  1. WEBサイトのルールベースの出し分けや自動レコメンドをキャッチアップ
  2. ABテストなどで顧客理解を深める
  3. メールへ転用し、サイト同様にPDCAを運用する
  4. MR・MSLへ情報共有し連携する

WEBサイトなどのデジタルチャネルと、対面での訪問や講演会といったリアルチャネル。この2つをばらばらに活用するのではなく、いかに連携させられるかが重要となってきそうです。

オウンドメディアの最適化は、他社へのキャッチアップのために必須のツールとなっています。さらにデジタルチャネルは製品訴求だけでなく、顧客を知る役割も担うようになりました。これからはRtoasterのようなツールを利用し、デジタルチャネルとリアルチャネルの連携をいかに強化できるかが、他社に差をつけるポイントになってきそうです。

今回のセミナーの第1部では、医薬情報ネット社の金子氏が各製薬企業のマーケティングテクノロジーの活用状況について講演しました。その内容をまとめた記事も併せて、マーケティングツール導入の参考にしてください。

※大手製薬企業10社、様々な業種業態で250社以上が導入「Rtoaster(アールトースター)」
※データによるビジネス創造と経営改善に向き合ってきたデータ活用のリーディングカンパニー:株式会社ブレインパッド