データ分析・活用は製薬業界のオムニチャネルマーケティングにどう影響を与えるのか

製薬企業がオムニチャネルマーケティングを成功させるためには、詳細かつ正確な活動履歴データを蓄積して分析することが必要です。今回発表されたLINE WORKSとVeeva CRMのデータ連携は、製薬業界のオムニチャネルマーケティングにどうかかわっていくのか。Veeva Japan(株)カスタマーサクセス部マネージャーの西田竜太氏、ワークスモバイルジャパン(株)シニアソリューションスペシャリストの荒井琢氏、(株)PHONE APPLIセールスフォースカスタマーサクセス部長の古川いずみ氏にお聞きしました。

製薬業界でオムニチャネルマーケティングが加速

―コロナ禍の中で、製薬業界ではどのようなデジタルマーケティングが進行してきましたか?

Veeva Japan(株)西田竜太氏(以下、西田氏):Veeva Japanでは、Veeva CRMを導入された製薬企業様の許諾を得て、Veeva CRMのグローバルデータを統計的に処理してVeeva CRM導入企業様に提供するサービス、「Veeva Pulse」を展開しています。2022年1月19日に実施したセミナーでは、この「Veeva Pulse」の統計データの中から、製薬企業のMRとドクターの間でメール送信とリモートミーティングが急増し、LINE WORKSという新たなデジタルチャネルが加わり、MRとドクターの間でマルチチャネル化が加速していることをご説明させていただきました。さらに、先進的な企業では、さまざまなチャネルを統合して、シームレスで一貫性のある顧客体験を生み出すオムニチャネルマーケティングに着手していることが、統計データ上からも読み取れることを解説いたしました。

Veeva Pulse:デジタルトレンド

オムニチャネルマーケティングに関しては、これまで概念上の予測としてさまざまな方が解説され、話題にもなりましたが、マルチチャネルからオムニチャネル化へのマーケティングのトレンドが、「Veeva Pulse」の統計データからも実証できることが明らかになっています。

マルチチャネルマーケティング
オムニチャネルマーケティング
2022/01/19開催セミナー「ライフサイエンス業界におけるLINEを活用した新しい顧客接点とその管理方法」投影資料抜粋

製薬業界のマーケティングはどのようにかわっていくのか

―LINE WORKSがVeeva CRMとデータ連携することでもたらされる効果についてお聞かせください。

(株)PHONE APPLI 古川いずみ氏(以下、古川氏):今回、LINE WORKSとVeeva CRMのデータ連携機能をリリースする背景には、MRの皆さんが、LINE WORKSを活用して医療従事者、ドクターとのやり取りが急増したからです。私の営業職としての経験から推測すると、これまでは、Veeva CRMの活動オブジェクトに、LINE WORKSでのトーク内容を商談ログとして、MRの方が手入力されていたのではないでしょうか。

MRの方がVeeva CRMにLINE WORKSの活動登録を手入力するのに、1日30分費やしていると仮定すると、一人当たり年間で約15日分の稼働に相当します。これを日給換算すると、年間約42万円になります。データ連携すると、この費用を削減できる効果が見込めます。さらに、お客様とのトーク履歴を可視化できますので、医療従事者とMRの方のコミュニケーションをチームやマネージャーが客観的に把握することもできるようになり、より深いデータ分析が可能になります。

Veeva連携による効果
2022/01/19開催セミナー「ライフサイエンス業界におけるLINEを活用した新しい顧客接点とその管理方法」投影資料抜粋

これにより、さまざまな効果が期待できます。チームでは、担当者がお休みすることや引継ぎをする際に、過去の履歴を容易に共有できます。MRにとっては、入力業務が減ることでより付加価値の高い営業活動の時間を増やすことができます。各製薬企業のマーケティング担当者は、医療従事者の方の興味や関心ごとをVeeva CRM上にデータとして蓄積して分析でき、より有効なマーケティング活動が可能になります。

西田氏:Veeva CRMは、MRが医療従事者、ドクターとのコミュニケーションの情報を集約するのに特化したCRMツールです。今回のデータ連携によって、より多くの情報を集約することができれば、Salesforceのプラットフォーム上のBIの製品を通じて、より正確なマーケティング分析がタイムリーに行えます。また、セールスフォースマーケティングクラウドというMAツールと連動させることで、より効果的なマーケティング活動が展開できるようになります。

データ収集と活用がオムニチャネル化成功に不可欠

―製薬業界各社のオムニチャネルマーケティング成功に向けた課題をお聞かせください。

ワークスモバイルジャパン(株) 荒井琢氏:コロナ禍をきっかけとして、あらゆる業界で非対面の活動が加速しています。その中で、商談相手のLINEにアポイントの連絡や新製品やサービスの情報をダイレクトに伝える営業活動を展開したいという要望から、LINE WORKSを導入される企業が増えてきました。そして社内のCRM、商談管理や顧客管理システムと連携することで、タッチポイントの拡大から企業のレベニュー拡大に、確実に業績向上に貢献できるソリューションへ進化してきたと実感しています。

古川氏:自動的にLINE WORKSでのトーク履歴をVeeva CRMの活動履歴に連携するということは、トークを通じて集められた顧客の声をリアルタイムで収集して分析し、次のアクションに活かす仕組みができたということです。これは、営業現場のMRが一番欲しかった、本社側からのマーケティングの指示やサジェスチョンを、一番いいタイミングで受けることができるようになったということです。この中には、オムニチャネル化も含まれています。どのチャネルを通じて、どのようなコンテンツで、どのようなメッセージを伝えればいいのか、最適なタイミングで指示やサジェスチョンが出せるサイクルができる。今回のデータ連携のスキームを導入し、オムニチャネル化を成功させていただきたいと思います。

西田氏:今回のデータ連携で、ライトタイミング、ライトコンテンツ、ライトメッセージというサイクルを実現できる仕組みが出来上がりました。ぜひ製薬企業のみなさまには、こうした仕組みを活用できる体制づくりに取り組んでいただければと思います。MRの方は、こうしたサイクルを実際のアクションとして習慣化する。また、そのためのチームマネジメントを構築する。本社側では、データを分析し、サジェスチョンする際の、適切なコンテンツを制作する。ITネットワーク上で構築された仕組みを、実際のアクションとして運用する、こうした体制作りにぜひ着手していただきたいと思います。

ここに関してはVeeva Japanでも、Veeva CRMのユーザー会を通じて、ユーザーである製薬企業様同士が、こうした組織体制を構築するために何が必要か、といった議論ができる場を提供させていただいています。このような場もぜひ有効活用され、国内製薬業界のオムニチャネル化成功のサポートをしていきたいと考えています。

LINE WORKSとVeeva CRMのデータ連携は、マルチチャネルからオムニチャネルへと進化する製薬業界のデータマーケティングの福音であることは間違いないでしょう。しかし、それはあくまで、ITネットワーク上で仕組みが構築されたにすぎません。実際のアクションを担う組織体制の構築も重要な課題です。仕組みと組織体制の両輪が揃って初めて、オムニチャネルマーティングが成功する。今後は、製薬企業各社がドライバーとして、マーケティング成功のけん引役となる番です。