株式会社医薬情報ネットが行う主な事業の一つ、学会情報データベース事業。今回はその事業のサービスについて、2021年4月16日に「ファーマ IT & デジタルヘルス エキスポ 2021」で講演した内容をまとめました。MRの機能強化を図る上で、同社が提供する「学会情報データベース」と「論文情報データベース」が解決できる課題や具体的な活用方法を笹木雄剛が紹介します。
MRのパフォーマンスを高めるための課題
製薬企業は各社、営業活動を支援する施策を数多く実施しています。しかし施策を打ってもうまくいかない、というケースは多々あるのではないでしょうか。医薬情報ネットには「本社から提供した情報をMRがそのまま伝えるだけでは、医師の課題に応えられていない」「MRの情報取集能力のレベルにばらつきがある」という悩みが寄せられます。
マーケティング部門はMRに対して、本社からの情報を担当医師に合わせカスタマイズした上で情報提供を行い、医師から十分な情報を収集できることを期待します。しかしマニュアル通りの情報提供を重視したり、情報収集能力が苦手なMRは一定数存在し、ガイドライン改訂による制限によりトークに困るMRも少なくありません。さらに最近は、「新型コロナウイルス感染拡大の影響により現場からの情報収集に制約が出ている。代わりに別の情報でカバーできないか、という相談が増えている」と笹木は話します。製薬企業のマーケティング担当がこのような悩みを抱えるのには、次のような背景が影響しているようです。
- 医師の情報収集方法がデジタルにシフト
- COVID-19の影響で物理的訪問に制限
- 本社が伝えたい情報と現場が求める情報にギャップが存在
これらの背景から生じる悩みを解決するため、各製薬企業ではさまざまなツールや教育の導入により、MR活動のレベルアップを図っていると考えられます。しかしツールや教育投資だけでは限界があり、他の方法を用いてMRのパフォーマンスを上げる必要が出ています。「パフォーマンスを上げるには、オウンドメディアや学術活動などのデータ活用が鍵となる」と指摘します。
もともとパフォーマンスが高いMRの場合は、能動的に医師に関する情報を収集しています。出身大学や医局などの医師属性情報はもちろん、学会や論文発表、人間関係、オウンドメディアのログなど総合的な情報から医師のニーズを把握します。そうすることで、個々の医師にカスタマイズした提案やコミュニケーションができます。
そのようなMRの情報収集をサポートするため、医薬情報ネットでは「学会情報データベース」と「 論文情報データベース 」を活用し、医師に関する学術情報をMRに通知するサービスを提案しています。
学会情報データベース・論文情報データベースとは
学会情報データベースは、国内で年間約1,400開催される医学系の学会を対象に、発表者や演題などの情報をデータベース化しています。2014年以降に開催された学会を対象に、口頭発表、ポスター発表、スポンサーセミナーなどを網羅。どの医師が、どの医療機関に所属していたときに、なんという学会で、誰と、なんという演題で発表したのか、といった情報を把握できます。
2021年3月には、新しく論文情報データベースをリリースしました。
論文情報データベースは、日本人著者を含む英語論文情報を抽出し、データベース化しています。特徴は、次の3つ。
- 英語論文情報に顧客コードを付与し、業務に活用可能
- PubMedの情報源である「MEDLINE」から情報収集
- 人物名、疾患名などさまざまなキーワードから論文を抽出
どの医師が、どの医療機関に所属していていたときに、なんという英語ジャーナルで、なんという論題で発表したのか、最終著者や共同著者は誰か、といった情報を確認できます。
学会&論文情報のMR支援への活用
学会情報データベースや論文情報データベースをAPIやCSV経由でCRM/SFAと連携させ、PCやタブレット端末にアウトプットすることで、MR活動の支援につながります。
MRの活動プロセスは、計画立案・訪問準備・面談と多岐に渡りますが、一番の目的は、顧客とコミュニケーションし、製品に関する情報を提供することです。しかし実際には、情報収集や話題の考案に一定の時間を割いているのが現状です。「その部分を学会情報データベースと論文情報データベースを活用することで効率化できる」と笹木。情報収集時間の節約により、MRが注力すべきプロセスに割く時間に余裕が生まれ、MRのパフォーマンス向上につながると期待されます。
ここからは、より具体的な学会情報データベース・論文情報データベースの活用例を紹介します。
担当医師の学会活動を抜け漏れなくタイムリーに把握
例えば、担当医師の学会発表情報を、支援ツールを用いて学会会期前・直後にMRに通知するとします。MRは通知された情報を基に、発表演題に関係する情報を下調べして面談に挑め、担当医師とより深いディスカッションが行えるでしょう。さらに医師からは、「自分が学会で発表することを知ってくれていた」とよい印象を得られると期待できます。医師との関係強化へつなげる可能性も高まります。
発表論文においても同じように「自分の英語論文まで把握してくれていた」と医師に好印象を与えられます。海外ジャーナルへの掲載は難しく、医師はその分野について知識を深めていることでしょう。こちらからの情報提供だけでなく、医師へ意見を伺う姿勢で面談するのもよいかもしれません。
担当医師の過去の学会&論文発表情報を収集しディテーリング
担当医師が関心を持っているテーマやニーズを把握するため、過去の発表内容を調べることも可能です。研究内容を話題に盛り込んだり、論文内で頻出する専門用語をトークに交えたりと、活用方法はいくつか考えられそうです。
過去の学会発表履歴から次回発表する学会情報の予測もでき、定期的に発表している学会があれば、今年度の発表予定を伺ってみてもよいかもしれません。発表予定であれば発表内容に役立つ話題を提供したり、発表予定でなければ他の学会予定などを伺ってみたりといった方法も考えられます。
担当医師の人間関係を把握
学会情報や論文情報は、人間関係の把握にも役立ちます。過去の共同発表回数から関係の深さを把握し、関係の深い医師の学術活動を担当医師との会話に盛り込んでみてはいかがでしょうか。
共同発表医師以外にも、所属施設の他の医療従事者の学術情報を話題にすることも、学会情報・論文情報データベースの活用法として考えられます。話題の幅を広げたりニーズを把握したりと活用できそうです。
自社と接点のないターゲット医師へのアプローチに活用
新薬上市や新領域参入時には、自社とつながりがない医師をターゲットとしなければならないケースもあります。飛び込みで面談に向かうより、すでに自社と関係構築ができている別の医師に紹介してもらう方が、ターゲット医師と関係が築きやすいと考えられます。
人間関係の把握は、優秀なMRであれば肌感覚で自然と行っていますが、データを用いて可視化することで、より精度の高いものとなるでしょう。
学会&論文情報データベースを用いてMR活動を支援
大量の学会情報、論文情報の中からMRが必要な情報を探し出すことは容易ではなく、時間がかかる作業です。
医薬情報ネットが提供している「学会情報データベース」「論文情報データベース」は、自社システムと連携させることで担当医師の学術活動をMRに通知、情報収集の効率化につながります。MRのディテーリング活動の強化にご活用ください。
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