2022年5月に開催したオンラインカンファレンス「Medinew Digital Marketing Day(MDMD)2022 Spring」。本記事では、株式会社JSOLの植田 翔太氏とワークスモバイルジャパン株式会社の荒井 琢氏の講演から、オムニチャネルマーケティング実践のためのデータ利活用のポイントと、ビジネスチャットLINE WORKSの活用のヒントについてまとめます。
オムニチャネルマーケティング実践のためのデータ利活用
メディカルサイエンス業界でICTソリューションの提案などに携わるJSOL株式会社の植田氏が、顧客とのコミュニケーションモデルやデータ利活用の変化、成功ポイント、LINE WORKSの活用について説明しました。
営業マーケティング領域におけるデータ利活用の現状
コンサルティングからICTソリューションの導入、運用保守までワンストップでサービスを提供するJSOLは、メディカルサイエンス業界でも幅広いバリューチェーンのデジタル化を推進しています。Veeva、IQVIA、Salesforceなど幅広いCRMベンダーと協業し、プライムベンダーとして、メディカルサイエンス業界の企業を支援してきました。
「最近のプロジェクト実績から、顧客データ統合基盤の構築やオムニチャネルの顧客データ利活用がメディカルサイエンス業界で盛んになっている」と植田氏は指摘します。
2020年以降、医療従事者が情報収集するチャネルの幅は広がっています。しかし、拡大するチャネルに利用者は十分には満足していない、という調査結果があります。
各チャネルからバラバラに情報が提供されることにより、医療従事者が情報を迷惑に感じてしまう、医療従事者に情報が適切に伝わらない、という問題が浮き彫りになっています。
メディカルサイエンス業界では減少するリアルな活動を補完すべく、マルチチャネル型の情報提供にシフトしてきましたが、今後は全チャネルが連動し顧客にとって最適なチャネルで最適な情報を提供する、オムニチャネル型のコミュニケーションデザインの実現が求められています。
オムニチャネル型マーケティング実現の成功要因
オムニチャネル型マーケティングを実現するためには「顧客の課題・ニーズを的確に捉える」と「顧客が最も心地良い方法で情報提供する」の二つが要因である、と植田氏は指摘します。
顧客の課題・ニーズを的確に捉えるには、リアルとデジタルそれぞれの特性を活かした情報提供・情報収集が求められます。例えば、デジタルでは難しい他施設の事例や症状別の対処方法についての情報提供は、MRがリアルで行い医師のニーズを直接聞き出します。同時に、デジタルで補完できる部分はデジタルで情報提供し、ログを収集して医師のニーズを捉えます。このように、リアルとデジタルの両方を活用することで、医師の課題やニーズを的確に捉えられるようになります。
顧客が最も心地良い方法で情報提供するには、各医師に個別化された情報や双方向のコミュニケーションが必要なものはMRが対応し、じっくり読みたい患者への説明方法や他製品との使い分けなどの情報はWebサイトや動画などデジタルを活用するといった、情報提供手段の心地良さが求められます。さらに医師の空き時間、例えばスマホを開いても良いと思う時間帯にチャットやメールが来るといった、タイミングの心地良さも必要です。
デジタルチャネルから顧客のニーズを把握するためには、データの収集・分析が欠かせません。従来から営業部門で取り扱っているデータを可視化するだけでなく、例えばLINE WORKSで行われたMRと医師との会話履歴といった非構造データや、他部門における医師との接点データなどを横断的に分析し、定性的な顧客ニーズを予測することが求められます。
製薬企業のデジタルマーケティングに重要な「オムニチャネル型の顧客エンゲージメントモデル」とは
複数のチャネルからターゲット情報を収集するこれからの製薬マーケティングでは、「オムニチャネル型の顧客エンゲージメントモデル」が必要であり、以下のフローで行われるのが理想です。
- 各チャネルから得られた顧客情報を一元管理
- データから各顧客のニーズを把握
- 顧客にとって最適なチャネル・コンテンツ・タイミングで情報を提供
- 顧客のナーチャリングにつなげる
MRとの面談・LINE WORKSの既読タイミングなどの接点を可視化し、医師の空き時間を分析し、良いタイミングで必要な情報を伝える仕組みが求められます。
複数のチャネルを連動させるオムニチャネル型マーケティングを成功させるためには、データから把握したニーズに合わせて、最適なチャネルを用いて最適なタイミングに、最適なコンテンツを提供することです。複数チャネルから顧客の興味関心ワードを可視化分析し、誰に・何を・いつ・どのように情報提供するのがよいか、最適な価値提供アクションをレコメンドする仕組みの整備が製薬業界でも進んでいます。
JSOLでは、クラウド型プラットフォーム「J-Formas for Pharma」による、データの収集・分析・可視化を含む、データマーケティング支援を行っています。
LINE WORKSのデータ活用最新事例
顧客の反応からニーズを正しく理解するには、LINE WORKSのデータ活用が有効です。LINE WORKSでの医師とのチャット内容をJ-Formas for Pharmaを通して自然言語解析し、医師の興味関心ワードを抽出できます。
チャットデータから導き出される興味関心ワードを可視化し、MRにシステムからフィードバックすることで、迅速かつ高品質な顧客ニーズの把握が実現できます。LINE WORKSはコミュニケーションツールとしてだけでなく、顧客ニーズを理解する貴重なデータソースになり得ると植田氏は話します。
LINE WORKSを活用した新しいコミュニケーションプラットフォーム
顧客ニーズを把握するデータソースとしての価値を持つLINE WORKSは、製薬マーケティングにおいて具体的にどのように活用できるのか。セッションの後半では、ワークスモバイルジャパン株式会社でソリューションアライアンスを担当する荒井氏が、LINE WORKSを活用したソリューションについて解説しました。
LINE WORKSは個人のLINEとつながれる唯一のビジネスチャット
ビジネスチャットとしてトップシェアを誇り、35万社以上の企業が導入しているLINE WORKS。ITreviewではLEADERのポジションを取り、ビジネスチャット部門でセキュリティ管理機能と大企業部門での導入のしやすさナンバーワンの評価を獲得しています。
LINE WORKSはチャット、電話ができるコミュニケーションツールとしてだけでなく、グループウェアの側面も持ちます。掲示板・カレンダー・フォルダ・メールなどの機能に加え、APIを使って他のシステムやSaaSと連携できます。
LINE WORKSは、MRと医師のやり取り内容、友だち追加された医師数などを企業側で管理できます。使い慣れているLINEの便利さに、管理面やセキュリティ面も備えている点が、LINE WORKSの魅力です。
気軽に使えるから、医療従事者にもLINEが受け入れられやすい
医療・製薬業界に限らず、営業部門でのLINE WORKSの導入が進んでいる理由に、営業が顧客に連絡する手段としてLINEでのアプローチが簡単であることが挙げられます。LINE WORKSを使うことで、LINEというタッチポイントの拡大だけでなく、気軽に使えるコミュニケーションツールという観点から接触頻度の増加が見込めます。接触範囲と接触頻度の拡大によりターゲットとすべき顧客かどうかを判断し、効率的に追客できると荒井氏は話します。都合のいい時間に連絡ができる、複 数人でトークができる、といった気軽さが、顧客にとってのLINE WORKSを用いたコミュニケーションの受け入れやすさにつながります。
LINE WORKSは、社内のコミュニケーションツールとして使えるほか、LINE WORKSを導入する卸やドラッグストアの担当者、個人でLINEアプリを使用する医師や薬剤師とも、LINE WORKSを介して直接MRがやり取りできます。
実際にLINE WORKSを導入している中外製薬株式会社からは、チャットに既読がつくことがメリットである、という声が上がっています。既読がついたタイミングが、医師の手が空いている時間と考えられるため、MRが即時に返信し、電話や面談の予約へとつなげられます。医師からも、自分が承認した相手のみとの連絡に制限できることで、広告や急を要さない内容が多いメールチェックから解放される、と良い反応が得られているようです。
中外製薬では医療従事者を含むオンラインワークショップにもLINE WORKSを活用。トークルーム機能などを用いて、医療従事者との幅広いコミュニケーションにつなげています。
LINEWORKSとCRMの連携による新しい営業ツールの確立
LINE WORKSのログをSalesforceやVeeva CRMと連携することで、より最適な営業活動への展開が期待できます。株式会社PHONE APPLIの連携モジュールを介すことで、医師とのトーク内容、既読がついたタイミングなどのログと、Salesforce/Veeva CRMの連携が行えます。
LINE WORKSとSalesforceやVeeva CRMなどのシステムをつなぎ、医師とMRのコミュニケーションの新たな形を構築し最適な顧客体験の提供を目指していきたい、と荒井氏は締めくくりました。
ターゲットに適したコミュニケーションツールで最適な顧客体験につなげる
製薬業界では、オムニチャネルマーケティングの実現に向け、チャネルの見直し、構築を図る企業が増えています。オムニチャネルの成功要因である「顧客の課題・ニーズの的確な把握」と「顧客が最も心地良い方法での情報提供」を満たすには、今利用している医師とのコミュニケーションチャネルが最適か。
LINE WORKSのように、データ連携が可能か、医師にとっても使いやすいツールか、セキュリティは安全か、といった視点から適切なコミュニケーションツールを見直す必要があるかもしれません。
本講演 で配布されたLINE WORKSの資料を無料でダウンロードいただけます。
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