「連携から読み解く製薬DX」をテーマに2022年9月に開催したオンラインカンファレンス「Medinew Digital Marketing Day(MDMD)2022 Autumn」。セッション「埋もれているWeb講演会の視聴データを掘り起こし」では、株式会社Jストリームの岡田至功氏と中外製薬株式会社の岸端就介氏が、「Webinar Analytics」を活用したWeb講演会の定量分析のポイントから医師のニーズを捉えることの必要性ついて解説しました。
適切なコンテンツ配信にはWeb講演会の「質」の分析が必要
製薬業界に限らず、すべての業界においてデジタル環境の変化スピードが加速するとともに、顧客ニーズの変化も加速しています。それに応じて、マーケティングも同様に進化しなくてはなりません。
製薬業界でもデジタルマーケティングに関しては、さまざまな課題があります。その課題の一つに、Web講演会のデータ分析がされておらず、改善点が分からないという点がありました。
コロナ禍によって各社のWeb講演会の開催頻度が高まり、非常に多くの講演会が日々実施されています。しかし、講演会の視聴に割ける時間には限りがあるため、医師は数多くのWeb講演会の中からより関心度と質の高い講演会のみを選択しています。そのため、医師のニーズに沿ったコンテンツ配信を目指すためには、Web講演会の「質」を分析し、改善していくことが重要です。
Jストリームが提供するWeb講演会分析サービス「Webinar Analytics」は、講演単位のみならず、シリーズ単位で定量的に講演会の「質」を検証できるシステムです。製薬企業では医師のジャーニーマップを作成し、シナリオに沿ってWeb講演会やMR活動などの情報提供をしています。Webinar AnalyticsによってWeb講演会の質を分析することで、医師のジャーニーマップのシナリオが正しいのか、コンテンツ・ポートフォリオ・マップは正しいのか、コンテンツは正しく機能しているのかを分析できます。
Webinar Analyticsを活用した分析手法のポイントについて、岡田氏と岸端氏は具体例を交えながら解説しました。
Web講演会の分析を行う際に着目すべき3つのポイント
Web講演会のコンテンツを分析する際には、3つの「質」をバランスよく分析していくことが重要です。
- 集客の質:集客最適化のための分析
- コンテンツの質:視聴意欲が高まる構成力が適切に伝わっているかを分析
- サービスの質:顧客のエンゲージメント向上のための分析
1つ目の「集客の質」とは、オウンドサイトや3rdパーティメディアからの参加率やターゲットリーチ率など、集客最適化のための分析です。
2つ目の「コンテンツの質」は、視聴意欲を最後まで維持できるようなプログラム構成やテーマ、情報の深度や種類に沿った講演会の構成などを考え、適切に医師に伝わっているのかを分析することです。
3つ目の「サービスの質」とは、医師のエンゲージメントを高めるためにプログラムの進行は円滑なのか、視聴体験は快適なのかなどについて確認と改善を行うことです。
視聴時間を例に考えてみましょう。まずは医師一人あたり、どのくらいの時間視聴したかを割合にした、平均視聴時間割合を見てみます。Web講演会の平均視聴時間割合からは、大まかな視聴傾向や視聴意欲を知ることができますが、これだけでは質を改善するための分析ができません。
そこで、さらに詳細な分析を行うためにWebinar Analyticsでは、視聴時間ごとの人数割合を算出しています。それにより、講演会序盤で何%の人が離脱したのか、最後まで視聴した人は何%だったのかなどを知ることができます。この「視聴時間のばらつき」を可視化することで、さらなる分析の深堀りが可能です。
例えば、全体の平均視聴時間割合は46%の場合でも、早期離脱者が多かったのか、最後まで視聴いただけた医師が多かったのか、どのタイミングで離脱が多かったのかなどの違いについても可視化できます。このばらつきの違いを3つの質の観点で分析します。
「集客の質」の観点では、講演会ごとや集客メディアごとにばらつきが異なる傾向を示すケースがあります。集客方法を見直すとともに、早期離脱を防ぐために、興味・関心を引き起こすような仕掛けづくりをすることで改善できないか検討が必要です。
「コンテンツの質」の観点では、ターゲットのニーズと提供しているコンテンツの情報がマッチしているかの分析が大切です。もし、ターゲットがすでに知っている内容を配信していた場合は、コンテンツ内容を見直さなくてはいけません。また、タイトルを見たターゲットが期待している内容と、実際の内容がどれだけ一致しているかも重要なポイントです。
「サービスの質」の観点からは、講演時間の長さが適切であったのか、視聴遅延やシステム障害は発生しなかったのかなどを分析します。
離脱タイミングに着目した分析でニーズを捉える
離脱者の分析はコンテンツの改善点を発見するために、非常に重要な分析です。医師が貴重な時間を割いてまで講演会に参加しているのは、必ず何らかの目的があると考えられます。早期離脱者が多いということはそのニーズに応えられていないということ。このミスマッチを分析することで、次の改善点が明確になるでしょう。
Webinar Analyticsでは、講演会のどのシーンで何人離脱しているのかが時間軸でグラフ化され、グラフ上にマウスオーバーすると具体的にどのようなシーンだったのかを簡単に確認することができます。これによって、企画者は「離脱が多いシーンはどこか」「考えられる離脱の原因は何か」について深堀りが可能です。
離脱原因を探ると、視聴者との情報ニーズが合っていないという結論に至ることがあります。顧客ニーズとのミスマッチは大きく3つの原因が考えられます。
まずは、そもそも「コンテンツの質が悪い」ことです。これは視聴者の早期離脱につながるため、早期に改善が必要な問題点となります。
次に「視聴者のニーズに合っていない」ことが挙げられます。このケースは参集対象者を間違えている可能性があります。講演会の案内を出すべき対象者を明確にしたり、Web講演会の紹介文に分かりやすく記載したりするなどの対応が必要です。
そして「視聴者のニーズには合っているが、発信のタイミングが合っていない」点も考えられます。タイミングが遅かったために、今はもう必要ないと判断されてしまうケースもあります。環境やニーズの変化が大きいからこそ、適切なタイミングで適切な情報提供することが大切です。
シーン分析機能で視聴者の心理やニーズを知る
Webinar Analyticsでは、感情や感想を表すインタラクションボタンを用意し、シーンごとに視聴者インサイトを知ることも可能です。リアルタイムなインタラクションは直感的で素直な意見であるため、貴重な分析材料となります。
また、「どのシーンでどのような質問があったかを分析し、次回の講演内容を改善する」「視聴開始と終了のタイミングでアンケートを実施し、視聴者の態度変容を測る」といった利用方法もできます。
メディア別比較機能を用いて適切なメディアを選定
3rdパーティメディアやオウンドメディアといった各メディアにはそれぞれ特徴があります。製薬企業はさまざまなメディアを使いながらも、そのときの状況に適したメディアを選択することが重要です。
3rdパーティメディアは集客力が強いもののサイトを訪れる人の目的が曖昧であり、オウンドメディアは集客力が弱いものの深い内容のコンテンツを配信しているという特徴があります。しかし、近年は3rdパーティメディアが顧客情報を自サイト内のみで保有する囲い込み型から、集客力を活かして企業のコンテンツを自サイトで案内し行動データを企業に提供するオープン・イノベーション型のスタンスへ変化してきました。これにより、オウンドメディアは新たな顧客データの獲得が見込めます。
上記のようにメディアごとの特徴や目的も変化する中で、企業は適切なメディアを選択しなくてはいけません。Webinar Analyticsでは、メディア別に講演会を比較することができます。視聴人数やインタラクション数、ターゲット医師へのリーチ率などの項目を比較することで、目的に沿ったメディア選定や、KPIの測定、メッセージの浸透度を分析することが可能です。
統計データを医薬品業界全体で活用していくことが大切
Webinar Analyticsには、業界横断型のデータ分析ができる機能も実装されました。自社のデータだけでなく、同じ疾患領域の業界平均スコアとも比較できる機能です。
製薬業界では、営業活動と処方の変化はマクロ調査データなどの業界で標準化されたデータが活用されています。このオープン・イノベーション型モデルは他業界にはない製薬業界の特徴であり、強みです。
岸端氏は、「Web講演会もオープン・イノベーション型のデータを作り上げていくことが重要」だと考えているといいます。医師のニーズを無視してメーカー同士が競い合うのではなく、医師が興味・関心を持って集まり情報収集できる場を作ることが、業界全体を盛り上げるために必要だからです。製薬業界はもともとオープン・イノベーションの下地があるため、他の業界と比較しても、このモデルを構築しやすいのではないかと岸端氏は話します。
Web講演会データを定量的に分析し顧客満足度の向上を
デジタル化の進展やコロナ禍の影響で、Web講演会の開催数はこの数年で大幅に増加しています。多くのWeb講演会の中で顧客満足度の高いコンテンツを配信し、処方に結び付けていくためには、医師のニーズを的確に捉える必要があります。岡田氏は「質改善のための分析手法を学び、創意工夫しながらベストプラクティスを発見し続けることで、Web講演会の改善に努めていくことが重要」と締めくくりました。
本講演で紹介された、Jストリームの「WebinarAnalytics」のサービス紹介資料をダウンロードいただけます。
以下フォームに必要事項をご記入の上、ご送信ください。資料ダウンロード用URLをお送りいたします。
ダウンロードフォーム