8/1は肺の日−製薬企業の呼吸器疾患啓発サイトを調査【2024年7月版】

8/1は肺の日−製薬企業の呼吸器疾患啓発サイトを調査【2024年7月版】

8/1の「肺の日」にちなみ、呼吸器疾患啓発サイトを調査しました。呼吸器疾患啓発サイトの調査は3年ぶりですが、この3年間でサイト数が増え、サイト構成やコンテンツ作成への工夫も変化していました。情報を探しやすい工夫や特徴的なコンテンツ、各社のSNS活用についてご紹介します。

呼吸器領域の疾患啓発サイトを運営している製薬企業一覧

厚生労働省のデータによると、2022年の国内の死亡原因で最も多いのは悪性新生物であり1)、その中でも肺がんが死亡数第1位を占めています2)。さらに、肺炎が死亡原因の第5位である1)ことからも、呼吸器疾患の啓発活動は、製薬企業にとって重要な任務と言えるでしょう。

2021年にMedinewで実施した調査では、呼吸器疾患の啓発サイトを運営していた製薬企業は、対象19社中11社、18サイトでした。3年ぶりの今回の調査では対象企業が数社入れ変わっていますが、19社中11社25サイトと、呼吸器疾患の啓発サイト数は増加していました。
※2023年5月にIQVIAより公開された22年度販売会社ベース企業売上ランキング(期間:2022年4月~2023年3月)より抜粋した19社

呼吸器疾患の疾患啓発サイトを運営している製薬企業一覧

がん関連は7サイト、喘息は4サイト、肺炎/間質性肺疾患は7サイト、その他の疾患関連は7サイトでした。どのサイトもイラストやグラフを挿入し、疾患を分かりやすく伝える工夫がなされていました。その中でも情報を探しやすい工夫やLINEの活用、人気漫画とのコラボ、著名人の起用、スマホ閲覧に特化するなど、各サイトそれぞれにこだわりが見られました。

ここでは25サイトのうち3サイトを取り上げて紹介します。その他のサイトを含めた調査結果はダウンロード資料を用意していますので、ページ下部よりダウンロードください。

アストラゼネカ 肺がんとともに生きる

情報の探しやすさに工夫が見られるサイトです。トップページには、基本情報と今の状態の2種類から気になる情報を探せるタブを設置しています。たとえば「今の状態」に設置されているタブ「肺がんの疑いのある方」をクリックすると、「がんができる仕組み」「がんにかかる人の数」などより具体的な内容からコンテンツを選択できます。

コンテンツ数がとても多いのも、このサイトの特徴です。基礎知識から治療、サポート情報を詳しく解説しており、コンテンツ数が多いからこそ、情報を探せるタブがより役に立つのでしょう。

さらにコンテンツ「みんなの体験談」でも、情報の探しやすさに工夫がなされていました。今の状態と年代から体験談を検索できるため、知りたい情報へ簡単にアクセス可能です。

特設サイト「知ってもらいたい、肺がんのこと」では、肺がん経験者である河村隆一さんと青木さやかさんを起用して啓発活動を実施し、動画やインタビュー記事を掲載しています。お二人が出演されたTV「伝えたい、肺がんのこと」の告知をFacebookとInstagramで実施。その他にも、8/1「肺の日」や11月の肺がん啓発強化月間に合わせた情報をSNSで発信していました。

肺がんとともに生きる
https://www.haigan-tomoni.jp

サイトディスクリプション

「肺がんとともに生きる」は、肺がんではないかと心配な方、肺がんと向き合う方やそのご家族の方などを対象としております。肺がんとともに生きるすべての方にお役立ていただける情報の提供を目指します。

キーワード

肺がんとともに生きる,肺がん,症状,診断,治療

コンテンツ一覧

・肺がんを知る
疾患の基礎知識や患者体験談、緩和ケアについて紹介。まとめコンテンツも掲載
・お役立ち情報
体・心・仕事・情報について各専門家がアドバイス。「仲間と出会いをサポート」では体験談・市民公開講や座談会・患者会などを紹介
・みんなの体験談
「肺がんの疑いのある方」「肺がんと診断された方」などの状態や年代で検索可能
・知ってもらいたい、肺がんのこと
検診を促す啓発サイト。河村隆一さん・青木さやかさんを起用

日本ベーリンガーインゲルハイム わかる、つながる、肺線維症

日本ベーリンガーインゲルハイムは、肺線維症関連の疾患啓発サイトを4つ運営しています。「わかる、つながる、肺線維症」では総合的な基礎知識を解説し、「わかる、つながる、IPF」ではIPF(Idiopathic Pulmonary Fibrosis:特発性肺線維症)に、「咳・息切れナビ 肺線維症」では症状に、「肺線維症と共に」では生活に特化して解説しています。
※ほか、「わかる、つながる、強皮症」内でも合併症としての間質性肺疾患について情報を提供。こちらの記事にて調査済みのため、今回の調査対象からは除外

テーマを絞ってサイト作成することで、各サイトのコンテンツ数を増やしすぎず、詳しい内容を届けられているのではないでしょうか。

「わかる、つながる、肺線維症」のトップページには、「項目から探す」と「今の状態から探す」という2つのタブを設置し、コンテンツの探しやすさに工夫がなされています。たとえば「項目から探す」ではさらに「症状や検査・治療」「病気の経過」「医療費や支援制度」「お役立ちツール」のタブを用意。各項目内では、より細かな内容からコンテンツを選択可能です。また、情報を探すためのチャットボットを導入しています。

オリジナル性があるコンテンツとしては、「あなたの受診準備シート」が挙げられます。11の設問の中には、ポイントを移動するだけで、症状の変化を簡単にグラフ化できる機能を用いています。質問への回答はPDFで保存し、受診時に持参可能です。また動画を複数用意しており、肺の状態や症状を理解しやすいコンテンツ作成がなされていました。

わかる、つながる、肺線維症
https://hai-senishou.jp/pf-ild

サイトディスクリプション

キーワード

コンテンツ一覧

・間質性肺疾患を知る
疾患基礎知識についてイラストや動画を用いて解説。日常生活の注意点やQ&Aも掲載
・間質性肺疾患は進行するの?
病気の進行に気づくポイント、受診時のアドバイスを掲載
・患者ひろば
海外の患者のメッセージ動画、患者会の一覧を掲載
・支援制度・サービス
利用できる医療費助成制度を紹介。難病医療費助成・高額療養費制度について具体例を用いて解説
・お役立ちツール
呼吸器症状セルフチェック・受診準備シート・疾患解説動画を配信。学会や難病センターのリンク集を掲載
・近くの専門病院を探す
外部サイトを活用

アストラゼネカ チェック!COPD

スクロールするとコンテンツを読み進められる、スマホ画面での閲覧に適したサイトです。目次によりどのような内容が書かれているか簡単に把握できる仕組みも、スマホ画面での閲覧には便利でしょう。クリックでより詳しい解説が表示されるボタンを設置しており、ページが長くなりすぎない工夫がなされています。またこれにより、流し読みされる可能性が軽減できそうです。

冒頭には息切れ・咳・痰の症状とともに「それは、肺からのサインかも。気になったら病院へ」と表示し、受診を促しています。コンテンツ「お医者さんに聞いてみた」は、想定される患者像と医師とのやり取りをチャット形式で掲載。診察や検査、治療について解説していますが、スクロールすると、チャットがポップアップ表示される仕組みになっています。

COPDの詳しい解説と「COPD集団スクリーニング質問票」は、同社が運営する疾患啓発サイト「チェンジ!喘息」内へ遷移します。他サイトの情報も上手に活用されていました。さらにサイトにアクセスすると、COPDに関するアンケートが表示されるシステムを導入。Webページの広告閲覧歴を聞く質問もあります。

FacebookやInstagramの公式アカウントでは、5/9「呼吸の日」、8/1「肺の日」9月「敬老の日」、11/15「世界COPDデー」に合わせて情報を発信。またアンバサダーに村山輝星さんを採用するなど、情報発信にも工夫がなされていました。

チェック!COPD
https://www.naruhodo-zensoku.com/sekitanikigire/copd_treatment/checkcopd.html

サイトディスクリプション

歩いたり、階段をのぼるだけで息切れする。咳や痰の出る頻度が、最近ふえてきた。それは、COPD(シーオーピーディー)の初期症状かもしれません。早期発見・早期治療開始で病気の進行を防ぐことが重要です。

キーワード

copd,シーオーピーディー,生活習慣病,肺,息切れ,咳,痰,慢性閉塞性肺疾患,タバコ,高血圧,糖尿病,合併症,肺の生活習慣病

コンテンツ一覧

・チェック!COPD
疾患基礎知識、受診時のポイントを1ページにまとめて掲載。
・お医者さんに聞いてみた
診察・検査・治療について医師と患者のやり取りをチャット形式で掲載。
・COPD簡易チェック
COPD集団スクリーニング質問票を掲載。結果は印刷やブックマークで記録可能。

今後より一層求められるスマホ閲覧画面に特化したサイト作り。情報の探しやすさの工夫は必須

スマホでの閲覧に適したスクロールでのポップアップ機能や、チャット形式での解説などは、読みやすさに配慮したサイト作りと言えるでしょう。呼吸器疾患や生活習慣病など日々の症状の変化を記録することが大切な疾患では、LINEでの症状記録機能も使い勝手が良さそうです。
知りたい情報になかなか辿り着けないと、サイトから離れてしまう可能性が高くなります。離脱を防ぎ必要な情報を届けるために、情報量やコンテンツ数が多いサイトでは、情報の探しやすさが重要です。スマホ閲覧に特化した機能や情報の探しやすさなどを工夫し、読みやすく興味をそそるサイト作りがポイントとなりそうです。

<出典>
1) 厚生労働省, 政府統計 令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況, 
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai22/dl/gaikyouR4.pdf
2) がん情報サービス, 最新がん統計,
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html

ダウンロード資料「製薬企業の呼吸器疾患啓発サイトを調査【2024年7月版】」
・がん 7サイト
・喘息 4サイト
・肺炎/間質性肺疾患 7サイト
・その他 7サイト
(各サイトのディスクリプション/キーワード/コンテンツ一覧/特徴/SNS)