もうすぐ心・血管病予防デー- 製薬企業の循環器領域の疾患啓発サイトを調査

もうすぐ心・血管病予防デー- 製薬企業の循環器領域の疾患啓発サイトを調査

死因の20%以上を占める血管に関する疾患1)は、高齢化が進む日本において、理解を深め予防に務めなくてはならない疾患ではないでしょうか。9月の第3月曜日は、敬老の日です。その前日が「心・血管病予防デー」であることにちなみ、今回は高血圧症を除く循環器領域の製薬企業の疾患啓発サイトを調査しました。これまでの調査で、最も多いサイト数であった、循環器領域の疾患啓発サイトの特徴や傾向をご紹介します。

循環器関連の啓発サイトを運営している製薬企業一覧

令和3年の死亡数を見ると、がんが約38万人、次いで高血圧症を除く心疾患が約21万人、老衰が約15万人で、脳血管疾患で約10万人でした1)。今回調査対象とした循環器領域である心疾患と脳血管疾患を合わせると約31万人であり、死亡数全体の22.2%を占めます1)
また、平成29年の報告によると、心疾患患者は約170万人、脳血管疾患患者は約115万人2)と多く、関心が高い疾患領域です。これらの疾患は高齢者ほど割合が大きいため、循環器領域の疾患啓発サイトでは、コンテンツの内容だけでなく、年齢に配慮したサイト作りも求められそうです。

今回は、製薬企業オウンドメディア定期レポートの対象19社の中から、心疾患・肺高血圧症・脳卒中・閉塞性動脈硬化症に関する循環器領域の疾患啓発サイトを調査しました。これらの疾患の啓発サイトを運営している製薬企業は、19社中13社、21サイトでした。

ワクチン関連啓発サイト_調査対象一覧

これまで調査した疾患領域では、漫画の掲載やクイズ、エクササイズ動画、キャラクターが疾患を解説する動画など、コンテンツのシステムを工夫する企業が多く見られました。しかし、循環器領域ではそのような珍しいコンテンツよりも、サイトの見やすさや情報の伝わりやすさ、症状管理ができるコンテンツの提供に重点を置いている印象です。

年齢層を意識したサイト作りも重要です。調査したサイトでは高齢者を意識し、文字サイズを変更できるボタンを配置したり、そもそもサイトの表示文字サイズを大きくしたり、文を簡潔に表したりと読みやすさに工夫が見られました。ただし、その見やすさはパソコン画面だけでなく、スマホ画面でも見やすくなるように工夫しなければなりません。

今回調査したサイトの中には、スマホ画面では次のような理由で読みにくいサイトがいくつかありました。

  • 1段落の文が長く、見にくい
  • 挿入図の文字が小さい
  • ボタン配置がおかしいなど、そもそもスマホ閲覧に対応できていない


一方スマホ画面でも読みやすいサイトでは、次のような特徴がありました。

  • 挿入図が拡大できる仕様になっており、ピンチアウトの方法も表示される
  • 文と図やイラストのバランスが良い
  • 重要ポイントにマーカーを引き、流し読みもしやすい


本記事では、全21サイトのうち、見やすさに工夫があったサイトや特徴的なコンテンツを提供している3つのサイトを取り上げて紹介します。その他のサイトの概要については、ダウンロード資料を用意していますので、ページ下部よりダウンロードください。

アステラス製薬 心筋梗塞・不安定狭心症で入院中の方とそのご家族へ 再発予防ガイド

急性冠症候群に関する情報を発信しているサイトです。トップページでは、スライド形式で主なコンテンツを写真付きで表示しており、キーメッセージが伝わる工夫が見られました。各コンテンツとは別に、「発症から1年未満の方向けの再発予防」ページがあり、発症後3カ月の方、発症後4カ月以降の方と、経過に合わせたおすすめコンテンツを紹介しています。

文章での説明と合わせて図表やイラストを豊富に挿入していたり、重要ポイントを赤字赤枠で囲ったり、見やすいサイト作りがなされています。全体的に文字配置や空白バランスが良く、読みやすいサイトであると感じました。

コンテンツ「再発予防のための管理目標値」は、血圧やコレステロール値の管理目標値を入力し、印刷やメールで送信できるシステムです。患者本人だけでなく、家族が患者支援のために活用できるサービスです。レシピコンテンツは、春夏秋冬で分けられており、旬の食材を取り入れたメニューを掲載。栄養情報や材料、写真付きの作り方など、料理が苦手な人でもチャレンジしやすい内容にまとめられています。

患者向けLINEサービス「ACS再発予防ガイド LINEサポート」も提供しています。治療や再発予防の情報だけでなく、体調や測定値の記録、家族共有、受診リマインドなどの機能を備えたサービスです。


心筋梗塞・不安定狭心症で入院中の方とそのご家族へ 再発予防ガイド
https://acve-navi.jp/memberonly/acve/nlindex.asp

サイトディスクリプション

なし


キーワード

なし


コンテンツ一覧

・再発予防のためのポイント
再発リスクや管理目標値、薬物治療について図やチェックリストを用いて紹介。脂質治療のQ&Aも掲載。

・快適で質の良い生活のための心臓リハビリテーション
心臓リハビリテーションについて、基本や効果、方法を簡潔に紹介。

・急性冠症候群(ACS)の基礎知識
心臓のはたらきやACSの基礎知識、動脈硬化との関係、ACSの治療について、図を用いて解説。

・おいしく再発予防!ACS患者さんのためのレシピ
レシピを季節別に紹介。栄養情報や写真付き調理解説あり。

・【動画】もう、二度と起こさないように。
ACSを発症した患者ストーリーの再発予防啓発動画。

日本ベーリンガーインゲルハイム 心不全のいろは

心不全について詳しく解説しているサイトです。トップページではサイトの目的や概要を掲載しています。各コンテンツの概要も紹介しており、どのような内容を知ることができるか分かりやすく、どのコンテンツから読めばいいかが決めやすいと感じます。全体的に明るい印象のサイトに仕上がっています。

各コンテンツ内では、関連するコンテンツへの遷移タブや、用語解説のポップアップ表示など、詳しく学べる工夫がなされています。コンテンツ「心不全Q&A」では、病気・検査・治療・生活の項目に分けて解説。簡単な回答の下に、詳しい解説があるコンテンツページへの遷移タブを表示し、深く理解できるような仕組みが見られました。

動画コンテンツ「心不全の悪化を防ぐためのコツ」「心不全患者さんのための運動療法」は、ダウンロード可能です。ダウンロードできることは、より気軽に運動に取り組める手助けとなることでしょう。セルフチェックでは、「生活習慣チェックシート」と「心不全症状チェックシート」の2種類を用意。チェックシート下部にも、関連するコンテンツタブを表示し、他コンテンツへ誘導する工夫がなされています。

また、スマホ画面での閲覧は、文字とイラストのバランスが良く、重要ポイントにマーカーが引かれているため、見やすく感じました。Facebook公式アカウントでは、8/10「健康ハートの日」や9/29「世界心臓デー」に合わせ、サイトの紹介や心疾患の啓発も行っています。

心不全のいろは
https://heart-failure.jp/

サイトディスクリプション

心不全のいろはサイトでは、心不全について正しく理解し、患者さんとご家族で協力しながらより安定した生活ができるように、心不全に関する情報(心不全の原因・症状・種類など)を紹介しています。日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社

キーワード

なし

コンテンツ一覧

・心不全について
心臓の働きや心不全の病態、重症度分類についてイラストを併記して解説。一部ポップアップ表示での用語解説あり。

・心不全の診断
心不全の診断の流れや検査の種類を紹介。心不全セルフステージチェックあり。

・心不全の治療
急性期と慢性期、薬物治療と非薬物療法に分け、それぞれの治療について解説。

・治療中の方へ
悪化を防ぐための運動・食事・日常生活の注意点を文や動画で紹介。支援制度や関わる医療スタッフの紹介や、患者へのインタビュー動画を掲載。

・心不全Q&A
病気・検査・治療・生活に分け、Q&Aを掲載。

・ご紹介チラシ

病院などでの掲載用サイトチラシ。QRコードあり。


ヤンセンファーマ Produce A Hope

カラフルですが淡い色で統一され、落ち着いた雰囲気があるサイトです。疑いのある方・最近診断された方・治療中の方・ご家族の方の4パターンに分けたおすすめのコンテンツの紹介や、よく見られているページの掲載は、何から見ていいか分からない人もコンテンツを選びやすい仕組みです。

大コンテンツの各トップページでは、コンテンツに関する患者からのメッセージを掲載しており、悩みに共感しやすく自分事に捉えやすい工夫がなされています。各コンテンツは内容が細かく分かれており、疾患や周辺知識について深く紹介しています。ページ下部には、関連コンテンツの遷移ボタンと紹介を配置しており、他のページへ誘導する仕組みが見られました。

コンテンツ「PAHと暮らす」内では、仕事で使える職場伝達シート・採用事例シートや、診察時に活用できるPAH相談サポートカードを提供しています。コンテンツ「PAHの仲間に会う」では、患者の体験談を紹介。患者別、仕事や家族などのテーマ別、診断前や治療中などのタイミング別など、複数の切り口で体験談を探せるようになっています。

「イベントアーカイブ」では、過去に実施した患者イベントや医師と患者の座談会をレポート。バーチャルキャンプを実施するなど、ITを活用したイベントを過去に開催していました。スマホ画面での閲覧は、色使いや文字と図のバランスが良く、見やすい印象を受けました。

Produce A Hope
https://www.produceahope.jp/

サイトディスクリプション

PAH(肺動脈性肺高血圧症)の治療は日々進歩しています。一人で抱え込まず、PAHのこれからを一緒に灯していきましょう。また本サイトではPH(肺高血圧症)についてもご紹介しています。

キーワード

PAH,肺動脈性肺高血圧症,患者,疾患,治療

コンテンツ一覧

・PAHを知る
疾患編と治療編で2分にまとめた解説動画や、疾患や合併症、治療などの詳しい解説を掲載。外部リンクにて、診療施設紹介とAI受診相談を実施。

・PAHと暮らす
日常生活のアドバイスや、働き方の事例、職場での活用シートを掲載。SDM(患者参加型医療)の紹介もあり。

・PAHの仲間に会う
患者体験談を掲載。患者別・テーマ別・タイミング別に探せる。患者会一覧もあり。

・イベントアーカイブ
過去に開催したイベントレポート。

・お役立ちツール
ダウンロード可能の資料をまとめている。

年齢層を意識したサイト作りが大切!スマホ画面での閲覧にも配慮を

タブレットでWebサイトや動画を閲覧する人は増えていますが、まだまだスマホで情報を探す人も多いです。まして、わざわざパソコンを開いて情報検索する人は、少なくなっているのではないでしょうか。
疾患啓発サイト作りでは、スマホ画面での見やすさや操作のしやすさへの工夫が必要でしょう。特に高齢者を対象としたサイトでは、挿入図の文字の見え方や操作の分かりやすさに配慮しなければなりません。メニュータブは選びやすいか、動画は簡単に再生できるか、文が長くなりすぎていないか、などに気をつけて見やすいコンテンツ作りを行いましょう。

<出典>※URL最終閲覧日2023.8.21
1)厚生労働省, 令和3年人口動態統計月報年形(概数)の概況(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/dl/gaikyouR3.pdf
2)厚生労働省, 平成29年患者調査の概況「主な傷病の総患者数」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/17/dl/05.pdf


本記事では調査対象の一部について紹介しましたが、さらに詳しいコンテンツ一覧など、今回調査した詳細な情報はダウンロード資料よりご確認いただけます。下記フォームに必要事項をご記入の上、お申し込みください。資料ダウンロード用URLをお送りいたします。

ダウンロード資料「製薬企業の循環器領域サイトを調査【2023年8月版】」

  • 心疾患 8サイト
  • 肺高血圧症 2サイト
  • 心房細動・静脈血栓症 1サイト
  • 心房細動・脳卒中 4サイト
  • 脳卒中 3サイト
  • 閉塞性動脈硬化症 2サイト
  • 循環器疾患 1サイト

(各サイトのサイトディスクリプション/キーワード/コンテンツ一覧/特徴)