多くの方が、ニュースなどで一度は目にしたことがある「人工知能」や「AI」。メディアでは「仕事を奪う」「人間を超える」などと言われていますが、皆さんはどう捉えていますか。本記事では、さまざまな言葉や概念で語られている人工知能について、医療分野での活用事例を用いて紹介します。
人工知能(AI:Artificial Intelligence)とは?!
まず、人工知能(AI)とは、人間の脳が行っている知的な作業をコンピューター上で実現させようという試みや技術のことを指します。具体的には、人間の使う言葉を理解したり、論理的な考えをしたり、経験を通して学習したりするコンピュータプログラムのことです。
参考:人工知能学会(www.ai-gakkai.or.jp/whatsai/AIwhats.html)
さて皆さんは、機械学習(Machine Learning)や深層学習(Deep Learning)という言葉を聞いたことはありますか。人工知能と同じ意味で使われるケースもありますが、正確には 図1 のように機械学習も深層学習も人工知能の1種です。
多くのデータから規則性などを見出しコンピューターに学習させ、予測や判別を行うのが機械学習です。例えば、花の画像を大量にコンピューターに読み込ませ、ほかの大量の画像の中から花の画像を抽出する、といったことです。コンピューターはあらゆる花の画像の特徴量(対象を認識する際の要素になっているもの)を学習により認識しているため、画像の判別が行えるのです。一方、深層学習は、機械学習よりも一歩進んでいて、より複雑な認識や認知、判別機能をコンピューターに持たせることができる技術です。深層学習では、必要十分なデータ量があれば、コンピューターは人間を必要とせずに自動的にデータから特徴を抽出することができます。先ほどの機械学習の例では、人間が花の画像を大量にコンピューターに学習させましたが、深層学習ではコンピューターがすでに所有しているデータを使って独自で特徴量を判別し、花の画像を抽出してしまうのです。深層学習では何層にも渡る複雑な計算を行うため、図2のようなイメージでよく説明されます。
人工知能は、具体的にどこまでできるようになったのか
では、具体的に人工知能がどこまでできるようになったのか、株式会社医薬情報ネットの取り組みを例に紹介します。弊社は、医学関連の学会情報データベースを構築しており、その作業の一部で機会学習を活用し、業務の効率化に挑戦しています。
従来の構築フローは、学術集会の書籍やPDFから、座長の名前、座長の施設情報、演題名、演者の名前、などの情報を人間が目視で確認し収集しています。現在、この一連の作業を深層学習のプログラムを活用して行えないか検証しています。まず、PDFのテキスト情報をプログラムに読み込ませます。そして、プログラムがテキスト単位で、そのテキスト(文字列)が座長の名前か、演題名か、施設名かを自動で判定し、データベース用の並び順でテキスト情報を抽出・整理するという流れです。現在の精度は約80%前後と、まだまだ人間による確認が必要な段階です。それでも近い未来では完全に機会化できるでしょう。“日本語を読み、その意味を理解・判別し、ある一定のルールで並び替える”というパターン化できる作業は機械学習のプログラムで代用でき、かつ、効率も格段に良くなるため、人間がやる意味がなくなってきているのです。
人工知能の医療用医薬品マーケティングでの可能性
現在、放射線画像や病理画像、皮膚の画像などを大量にコンピューターに学習させて診断を支援するといった取り組みを多くの企業が始めていますが、医療用医薬品マーケティングではどのような使い道(可能性)があるのでしょうか。株式会社医薬情報ネットの学会情報データベースで検証している例を2つご紹介します。
あくまで上記は、学会情報データベースのみでのマーケティング活用事例の一部です。多くの企業がさまざまなデータベースを所有しているかと思います。もし、それらのデータをつなげれば、マーケティングでの活用の可能性はさらに広がるはずです。人間が把握できないほどの大量のデータが溢れている今、どのようにデータや人工知能を活用していくのか、みなさんも考えてみてはいかがでしょうか。